翌日、佐藤始はそわそわしていた。
このクラスの男子に通知される順番は、決して口外禁止と言われているが、彼は仲間内だけには明かしていた。
この始に加え、村田武史、藤村拓也。
三人揃って有村沙弓のファンであり、彼女の日頃の行動に注目したり、こっそりと隠し撮りを行うことが、そのまま彼らの活動内容になっている。堂々と表立って名乗ってはいないのだが、彼らはいわば沙弓ファンクラブとでもいうべき存在だ。
その三人組は昼休みにこっそり集まり、周囲の視線を気にして校舎裏でヒソヒソと、会合を行っていた。
「そうか。来週か」
拓也はどこか感慨深そうに、腕を組みながらしきりに頷く。
「楽しみだね!」
武史も鼻息を荒げている。
「俺達三人は是非とも高得点を目指したい。なんたって、宣言しているからな」
始はそう口にしながら、保健体育の授業で行われた校長の言葉を思い出す。
「高得点の方にはご褒美を与えます」
と、校長が教卓で言っていたのは、性行為の実践授業を実施するため、沙弓の肉体を教材とするにあたっての、事前の注意やルール説明が行われていた際のこと。具体的なご褒美の内容は言わなかったが、あの満面の笑みを浮かべた顔は、つまり本当に素晴らしいご褒美を用意しているに違いない。
「きっと、本番許可だよ」
始はそう確信していた。
「決まってもないのに、後で違うってわかったら、それ落ち込むぜ?」
拓也も口ではそう言うが、どことなくニヤニヤが止まらない。目が期待しきっている。そうあって欲しい願望でいっぱいなのは一目瞭然だった。
「まあ、決まってないのは確かだけどさ。校長先生、僕達にサービスしてくれたじゃん」
武史の言葉で、三人揃って思い出を振り返る。
一時期、校長は沙弓にローターを入れていた。リモコンスイッチ式のローターがいつどのタイミングで振動するかわからない。そんな学校生活を沙弓に強要して、しばらくのあいだ三人組はスイッチを与えられていた。
その上、道場を覗きに行った時である。
校長は部活終了後の沙弓とセックスをすることがあるから、その盗撮ができないかと画策したのだが、するとその時の校長は、なんと野外プレイに出て来たのだ。
犬の首輪をつけ、リードを引き、まさしく犬の散歩のように扱いながら、途中からはアイマスクまでかけていた。それらの行動を密かに伺い、覗き見ていた三人組は、校長から思わぬサービスを貰ったのだ。
気配に気づかれかけたことがきっかけだ。
密かに尾行していたつもりが、後ろの足音が気になってか、「誰かいるの?」と、裸で歩く最中の沙弓は、不意に後ろを振り向いて来た。アイマスクをかけたまま、反射的にそうしたようだったが、もしも視界を封じていなければ、そのまま本当にバレていただろう。
だが、一緒にいた校長の方は、言うまでもなくアイマスクなどしていない。三人組の行動に思いっきり気づきつつ、「いいや? 誰もいないよ?」と、わざわざ三人組に目を合わせ、どこかわざとらしくそう言った。
明らかに目が合図を送ってきていた。
校長は彼ら三人組に撮影を許してくれたのだ。
つまり、そんなサービスをしてくれた校長なら、ご褒美の内容がセックスだとしてもおかしくないと、三人組は期待を膨らませているわけだ。
「とにかく、話はこうだよ」
始は言う。
「高得点でご褒美にありつくには、素人であり、かつ童貞でもある俺達が、どうにかして沙弓ちゃんを濡れさせたり、できることならイカせる必要がある。では女を悦ばせるためのポイントとは何か。コツは? テクニックは? 高度な情報収集をせねばなるまい?」
まず真っ先に思いつくのは、ネット検索で得られる数々の情報に触れることである。
「あ、そういう著書があるの知ってる。図書館にあったわ」
拓也の口からはそんな言葉が出て来ていた。
「とにかく、たっぷり予習して、実践に備えないとね!」
武史もはりきった顔をしていた。
この三人にとって、有村沙弓は決して触れることのできない存在のはずだった。自分達のモテるモテない以前の話として、そもそも白石冬馬という彼氏がいた沙弓だ。自分達が沙弓に触れる余地はなく、こんなことでもなければ裸を見るなど夢のまた夢だった。
それが今、順番さえ回って来れば叶うのだ。
必ずや高評価をもぎ取ろうと、三人組は決意を分かち合っていた。
*
この一週間、有村沙弓は放課後を迎えるたびに教材となり、あるいは審査員としてクラスメイトの愛撫に点数を付け続けた。
残念ながら、二日目からは唇に肉棒を押しつけられ、フェラチオを余儀なくされて、その不満から点数を下げるなどしていたが、そもそも今のところ特別な快感は得られない。良くてただ丁寧にするだけで、どうにも上手いこと沙弓のツボを突いてこないので、最高評価はC止まりで、Bを上回る者は一人もいない。
だが、この日は違った。
今日もいつも通りにヘッドホンをかけ、ノイズキャンセリング機能で周囲の音をかき消した上、アイマスクで視界も閉ざす。目と耳を封じた状態で横たわると、まず真っ先に頬に手を当て、額を優しく撫でられた。
(なに? いつもと違うけど……)
今までの相手はこんな風にしてこなかった。
(……冬馬?)
だといいのだが、視覚と聴覚も無しに相手を冬馬と断じるほど、沙弓には自信がなかった。もしも別人を冬馬と思い込み、てっきり高評価を与えてしまい、フタを開ければ好きでもない男だったなど、そんな展開は考えたくもないものだ。
しかし、今の相手は皮膚の表面を辛うじて撫でているような、産毛だけに触れるタッチで指を鎖骨に移してくる。いきなり乳房を揉むことなく、がっつかずに他の場所からやってくる流れは、少なくとも今までの男子にはなかったやり方だ。
全員を低評価にしてはまずいだろうか。
いくらなんでも、高評価が一人もいないのは恣意的ではないかと気になったが、考えてもみればどうしてそんなことを気にしなくてはいけないのか。この部屋は校長に監視されているので、よほど誤魔化しようがなく感じることがあったら仕方がないが、さもなくば全員の評価をC以下にしてやろう。
沙弓にとって、せめてもの反抗でもあった。
好きでこういう目に遭っているわけではないのだから、制度のおこぼれで人の体を好き勝手する男子共は低評価で十分だ。丁寧な人ならせめてCにはするだけ有り難く思え、といった具合に考えていた。
(にしたって、こいつは誰なの?)
産毛だけをなぞるタッチで、乳房の周りをすりすりと擦ってくる。本当にギリギリの、実に際どいラインまで迫ってくるが、はっきりとは乳房に触れてこない。
(焦らす気? 馬鹿みたい)
たとえ冬馬の愛撫だったとしても、沙弓には相手の正体がわからないのだ。ただ冬馬の可能性を感じただけで、本当は別人かもしれない相手に必要以上に感じてたまるか。
反抗的な意思を示すつもりで、沙弓は顔を背けてみせる。
しかし、アイマスクのせいで表情が見えず、伝わらなかったのだろうか。
(こ、今度はそっち?)
両手共々、下へと移る。
ヘソよりも低い位置を撫で、太ももや内股に指をやってくる。相変わらずのフェザータッチでくすぐられ、むしろ気持ち良さよりくすぐったさを感じるが、妙にアソコを意識させられる。周りを触ることはあっても、性器そのものには直接来ないのが、余計に焦れったいのだった。
(触るなら触りなさいよ)
と、一瞬思う。
(いいや、駄目。触られずに済むなら、その方がいいじゃない)
そう思い直した沙弓は、このまま妙なくすぐり方をされるだけで済むようにと、心の中で祈り始めた。
だが、さすがに延々と焦らしてくるわけでもないらしい。
(ふん。結局、揉むんじゃん)
指が乳房の下弦に及び、沙弓は内心相手を見下す。
触らないフリをしておいて、結局はそういう場所に触れたがる――もっとも、校長に教えられた基準では、胸やアソコに一度として触れずに終わるのも、それはそれで減点対象にしなくてはいけないという。
実践授業だというのに、そういった場所に触れなければ授業の意味がなくなるからだ。
(揉み方は……丁寧か……)
手の平に包み込まれて、揉まれ始めた沙弓が思うのはまずそれだった。今までの男子には加減がわからず強く揉みすぎる手合いが多かったため、マシな触り方をしてくれれば、E評価にはしないでおいてやろうという気にもなる。
それにしても、乳首には触ってこない。
乳房を揉むにしても、下から持ち上げるかのような、下弦だけを包む触れ方で、乳首への接触は避けている。あえて避けているのか、たまたまか。この時点では定かでなかったが、乳房の皮膚をくすぐるような、指先だけを使ったタッチに変わった時、それでも乳首には指が来ないのは、きっと焦らそうとしているからだ。
(うぅ……さすがに……)
乳房の内側から、ムズムズとしたものが広がって来る。
このままでは感じてしまいそうだ。
もし、この流れで乳首を触られたら、声は出ないまでも、正体不明の相手に気持ち良くなってしまう。冬馬だという保障はどこにもないのに、感じた素振りなど見せたくない。
指が中央に迫ってきて、今に乳輪のラインに触れかけてきた。
(や、やばい……)
あと一ミリでも踏み込まれれば、もう乳輪に触られる。そのまま乳首をくすぐられ、否が応でも快楽を感じさせられてしまうだろう。
(嫌……わざわざ、感じたくない……)
校長相手に絶頂するのも屈辱なのに、ただのクラスメイト相手にまで感じた姿を晒すなど、恥と屈辱の上乗せだ。しかし、この授業において、沙弓に拒否の権限はない。まるで突きつけられた銃口から逃げる手段がないかのような、ただ引き金が引かれる瞬間を待つしかない心地で、乳輪に迫る指先を感じていた。
だが、触っては来なかった。
不意に離れていき、両手とも別の場所へと移っていた。
(え……)
一瞬、きょとんとしてしまう。
そして、こんな呆然とした顔をしていては、まさか触って欲しかったのではないかと相手に思わせ、調子に乗らせるきっかけを与えそうだと気づき、直ちに表情を引き締める。
「………………っ!」
その瞬間だった。
(は、はあ!? フェイントのつもり!?)
今度こそ乳首に触られた。
てっきり、乳首は避けるのかと思ったその瞬間に、まさに油断の隙を突き、相手は指で乳首を転がし始めた。しかも、つまむ強さや転がす加減が丁度良い。痛いほどの負担はなく、上手いこと感じさせようとしてきている。
(やだっ、嘘……)
気持ち良かった。
声が出るほどではない。大袈裟なよがり方をするほどでもない。喘ぎ散らす段階にはまだまだ至りそうにはないが、確かな快感が生まれていた。甘い痺れが乳首を中心に弾けて広がり、乳房全体がムズムズとした快感の塊になり始めていた。
(冗談じゃ……校長相手も本当は感じたくないのに……)
不本意に快楽を感じた相手を増やしたくない。
だからといって、この授業そのものをどうにかできるわけでもなく、監視されているこの部屋の中で、沙弓はただただ我慢をするしかない。
(んぅ……まずい…………)
このままじっくりやられれば、いつかは声が出てしまう。
いいや、制限時間があるのだ。
一人あたりの時間は決まっているのに、それまでに自分が喘ぐはずはない。
「んっ」
だが、ふとした拍子に、とても小さな声ではあるが出てしまった――不意打ちのようにアソコを触られ、クリトリスに指が掠めたのだ。そんな下半身への刺激に腰がピクっと反応して、脚が内側に縮んでいた。
「んっ、んぁ……うっ、ちょっと…………」
感じたくない。
だが、相手の指は止まってくれず、ワレメへの愛撫が始まるなり、少しずつ愛液が滲んでしまう。濡れたとわかるや指遣いが調子づき、滑りを活かしてより活発に、スムーズに指を往復させてくる。
さらに次の瞬間、乳首を舐められた。
「んぅぅ……」
唾液を塗られたおぞましさにも関わらず、皮膚の内側には甘い痺れが拡散して、肌中がゾクゾクと震えていた。
「んひぃ…………」
膣に指まで挿入される。
実に慎重で、優しくやろうとしているのがわかる手つきで、そーっと出入りしてくる指の動きは、痛みでも気持ち良さでもなく、まずはくすぐったい感じが強かったが、それは着実に快楽へと変化していく。
愛液が増えていき、このままでは指のピストンで水音が鳴ってしまう。
『はーい! ここまで、時間終了でーす!』
皮肉にも、校長によるアナウンスが救いになるとは思わなかった。
相手は名残惜しそうに、あと数秒だけ愛撫してから手を離す。ヘッドホンへの通信で、相手が部屋を出たと伝えられ、沙弓はすぐにアイマスクを取り外した。
「最悪…………」
どうして、ああも感じなくてはいけないのか。
無理に上手くやらなくてもいいというのに。
『沙弓ちゃん。感じたよね?』
「別に」
『感じたよねぇ? 評価シートにはきちんと正しい評価を書いてね? 今回のがC以下だったら、その理由はきちんと話してもらうからね?』
「わかったから、切っていいですか」
『はいはい。ごゆっくり』
沙弓はすぐにヘッドホンに手をやって、ボタンで通信機能をオフにする。
評価シートへの記入、ボディペーパーでの身体清掃のため、小休憩となるこのあいだに、癪ながらも評価はBにせざるを得ない。
今の校長は単なる校長でなく、わざわざ校長の席を『買った』らしい人間だ。
仮にも権力者に見張られている状況で、虚偽の評価で不当に点数を低めることはできず、せめてA評価など出してやらないことで抗っていた。
*
この日の二人目だった。
「あぁ……んっ、ぬぅっ、くふぅ…………」
それは小さな声だったが、沙弓の口から確かな喘ぎ声が出始めていた。
あの妙に丁寧で、今までなかった触り方をされた次の相手も、同じく最初は頬や額に触れて来たり、乳房の周りだけを撫で回し、散々に焦らしてきた。先ほどまでの余韻のあった身体には、その愛撫はよく効いて、とうとう乳首やクリトリスも突起してしまう。
指の出入りは始まる頃には、アソコを指で突かれる快感に息遣いを荒くして、このまま順調に高められれば、一体どこまで乱れてしまうかわからない。
冬馬ならいい。
どうせセックスに誘われても構わないまでには、仲の深まっている相手だ。感じて乱れた顔を晒す覚悟は決まっているが、冬馬とは限らない相手には見せたくない。
「んぅ……んっ、んぅ……」
最初に冬馬の可能性を感じた理由は、いかにも大切に扱うかのような、優しい手つきであると感じたからだ。
「んぁ……あふぅ…………」
だが、この丁寧さが二人目だ。
たとえ片方が冬馬でも、片方は冬馬じゃない。
「あぁぁ……くぅ…………」
冬馬でない可能性がある以上、ならば操を立てたい気持ちが湧き、せめて感じた声は堪えてみせたい。何も冬馬のためばかりでなく、自分で決めた相手以外に晒すなど、元から真っ平なのだ。
「うぅ……んぅ……んぅぅ…………」
感じるものか、感じるものか。
心ではそう繰り返していながらも、息はより乱れていき、頬には熱が浮かんでしまう。
(こ、これ以上……!)
感じた表情を見せたくない思いで、沙弓は両手で顔を覆う。それでなくともアイマスクに隠れた顔は、口や顎さえ覆ってしまえば、もう顔付きなどわからなくなるはずだ。
しかし、その時、ヘッドホンに校長の声が届いてきた。
『おやおや? 顔を隠したくなるほど気持ちいいんだね?』
真っ最中にかかってきた声は、これが最初の最後であった。
急にこんなことを言われたせいで、自分は気持ち良くなっているのだという自覚を補強され、ますます頭が熱くなる。アソコが漏らす愛液は量を増し、乳首の反応も明らかに変わっていた。
「んっ! んぅ……んぅ……」
一瞬、大きな声が出てしまう。
「んぁっ、あぁ……! あぁ……! あっ、んぁぁ……!」
クリトリスに指が消え、すぐさま元に戻ったはずの声量は、たちまち一瞬前までの大きなトーンに立ち戻る。
沙弓は始終喘ぎながらの時間を過ごし、もうこうなったら、早く解放されたい思いがいっぱいに膨らんでいた。時間終了という救いに早く訪れて欲しいとばかり願うようになり、もはや快楽そのものは抑えきれなくなっていた。
『終了でーす』
校長のふざけた口調なんかを救いに感じるなど、自分はどこまで堕ちたものなのか。
小休憩の時間を迎え、評価シートへの記入に入ると、今さっきの快楽全てが脳裏に蘇り、これでは高評価にせざるを得ない気がしてしまう。本当はCで済ませてやりたいが、感じた様子は全て監視カメラ見られ、何なら声まで拾っていることだろう。
きっと、これで低評価を付けてしまえば、どうしてそうなのかの理由の説明を求められ、そこで校長を納得させることができなければ、きっと評価を書き直さなくてはいけなくなる。
『個人的にはAで良さそうに見えたけど、どうかなぁ?』
「Bだから!」
沙弓は反射的に意地を張った。
そんな高評価がいてたまるか。
高評価など……。
『沙弓ちゃんの気持ちはどうあれ、愛撫のやり方が良くて気持ち良ければ、それはきちんと評価に反映して欲しいなー』
「反映するんで、今回はBにしときますから」
A評価など、わざわざ出してたまるか。
まるで気持ち良かったことを白状するかのようで、クラスメイトを調子づかせるような評価など出したくない。
『まあいいけどね。今日はあと一人で終了だから、頑張ってねー』
そこで校長からの通信は一旦途切れ、短い休憩時間をぼーっと過ごす。
やがて最後の相手がやって来て、例の合図によって行為が始まるも、今度ばかりは最初から不安があった。
(余韻が強まってる……)
一人目で感じ、二人目でも感じ、身体はすっかり温まってしまっている。
もし、この流れで最後の一人でさえも似たようなタッチであったら、自分は一体どうなるのか。その不安で自然と体中が固くなり、今までにない強張った顔で沙弓は横たわっているのだった。
そして、不安は的中した。
またしても丁寧かつ優しげで、あたかも大切に扱うかのように両手で頬を包んでくる。恋人でもないくせに、さも純情で温めてくるようにしてくる腹立たしさは大いにあったが、今まで通りに焦らされ始め、乳首や性器にスイッチが入ると、もう自分が喘ぎそうな心配しかしてはいられない。
ひとしきり焦らしに時間が使われて、とうとう胸が揉まれるようになってから、ほどなくして膣への指挿入は行われた。
「あぁぁ……! あっ、くはぁ……!」
もう、はっきりとした声が出てしまっていた。
指のピストンに翻弄され、首をよがらせ顔を左右に振りたくる。ベッドシーツを握り締め、マスクの裏では悩ましげな表情を浮かべずにはいられない。
しかも、この相手は口まで使ってきた。
「ひあぁ……!」
膣にピストンをしながらも、舌でペロリとワレメを舐め上げ、さらに左手の指がクリトリスを弄り始める。下半身から広がる快楽電流は徐々に激しくなっていき、もはや耐えがたいものにまでなっていた。
(こ、このままじゃ……!)
沙弓は焦り始めた。
校長と散々交わっているおかげで、アソコに集まる奇妙な感覚の正体など、沙弓はとっくに知っている。このままいけば、一体何がどうなってしまうかも理解している。だからこそ焦り、もうやめて欲しい思いで溢れていた。
「ちょっ、ちょっともう……これ以上……!」
だが、指は止まらない。
沙弓の耳には聞こえなくとも、ノイズキャンセリングを解除したら、クチュクチュと淫らな水音が響き渡っている状態に違いない。クリトリスはきっちりと突起して、それを撫でる指遣いが沙弓の扱いをわかっている。
全身がピクピクと、モゾモゾと、快楽に反応していた。
脚はしきりに小刻みに弾み上がり、もはや限界を迎えていた。
「んぁぁぁぁ――!」
腰が一瞬だけ痙攣して、頭が真っ白になっていた。脳が弾けてしまったような、頭の中身がどこかへ消えた体験から、数秒かけて立ち直り、沙弓は静かに悟っていた。
(イカされた………………)
誰かもわからない相手なんかに、絶頂をさせられた。
その余韻で肩が上下に動いている。自分自身の呼吸音は聞こえるから、ハァハァと荒れた息遣いもよくわかる。
当然、こればかりはA評価にせざるを得なかった。
『絶頂したのにBだなんていったら、いくらなんでもハードルを高く設定しすぎていると思うんだよねー』
終了後に校長はそう言って来た。
だから評価シートにもそう書いたが、せめてもの抵抗のように記述欄を駆使して捕捉した。手前の順番にいた人達が上手く蓄積したおかげで、最後の最後に弾けただけだ。一人きりの実力で沙弓をイカせたわけではない。
そう書き残し、それから沙弓は自らの横たわっていたベッドを見る。
まるでお漏らしだ。
シーツが水気を吸い込んだ丸い染みは、それだけを見れば小さい子のお漏らしの痕跡だ。これを自分が作った事実に顔が赤らみ、恥辱感で拳が震える。
クラスメイトなんかにイカされた。
せめて冬馬の手でイカされたのなら、いずれセックスをしようと思う相手によってなら、いくらでも納得しよう。そんな確率は一体どれほどあるだろうか。
『ところで、沙弓ちゃん? このあと、シたいと思わない?』
「思わないから」
『なんてこと言ってもダメダメ。そのベッドで校長先生とシてから帰りましょうねー』
かくして、最後には肉棒を入れられる。
この日、沙弓が本当に解放されるのは、校長が満足してからの話であった。
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