部屋を一歩出た途端から、二者面談を受けた三人目の女子生徒の頭の中で、つい先ほどまでの出来事が変化していた。
「あれ? 私って、今まで何を……」
まず、忘れかける。
そして、直ちに思い出す。
「ああ、だから面談で、色々話したんじゃん。何をド忘れしますかねぇ? 私は」
もちろん、それらの話は全て、セックスの中で交わしたものだ。性器を繋げた状態で、それでいて交わす言葉は、間違いなく生徒と教師の関係上、信頼できる担任に対して行う相談ごととしては大いにありえる内容だった。
だからこそ、暗示によって記憶は変わる。
普通に椅子に座って、何の問題もない面談を行ったはずだとしか、生徒は自覚していない。
四人目も、五人目も、六人目も――。
催眠の効く生徒は全て、同じように服を脱ぎ、おかしな状況での面談を経て、部屋を出た途端にまともな記憶に書き換えられる。
教師の犯行に気づく者は誰もいない。
記憶がない以上、ある意味では被害者も存在しないからだった。
*
二者面談は滞りなく進んだ。
催眠にかかりにくい子に関しては、時間のこともあるので諦めたが、大抵の子には服を脱がせてある。性の低年齢化などというものの、本当に中学のうちに経験する子は限られる。元よりだらしない女子の入り込む隙間などない、お金持ちの学校ということも大きいが、処女率は非常に高かった。
こんな生徒もいた。
周囲からの抑圧でストレスを溜め込んで、だからイケナイことをしてみたい。親の厳しさに苛立って、いっそ何もかも捨ててしまいたい。そういう子に対しては、図らずもストレス解消に貢献することとなっていた。
本来なら、本当にイケナイことに走って、ヤり散らかすことはなかっただろう。
催眠によって、その常識的な分別を取り除いたから、堂々とペニスを受け入れ、悪いことをしている気分に浸って楽しんだ。部屋を出るときにはセックスの記憶は消失するから、どうして精神的にスッキリしているのか、きっと本人も不思議がることだろう。
願わくばそれが俺へのさらなる信頼へと繋がり、何か困ったことがあったら俺に相談してみようとなり、再び交わる機会が得られるものと信じよう。
必要以上に怖がるから、手コキをやらせるだけで済ませた子もいる。痛そうだとか、不安だとかで怯えていて、催眠効果も恐怖だけは除けない。もしや、虐待なのか痴漢なのかで、トラウマでもあったのだろうか。
逆に興味のある体位を言ってくるから、リクエストに応えてやった子もいる。元から性的好奇心が強い方で、催眠によってガードが消失していたから、本能の赴くままにバックを試し、騎乗位を試し、面談というより単なるセックスとなってしまった。
「特に相談というほど困っていることはありませんし、学校生活も順調ですわ。
しかし――」
村上麗子という生徒は恋をしていた。
「あのお方が気になって気になって、先生から見て、あの人はどうでしたか?」
男女共学であるからして、当然男子の面談も行っている。
麗子が恋する相手の男子は、やはり金持ちの家計に生まれ、小さい頃からピアノやヴァイオリンを習っているような、経歴からすれば典型的なお坊ちゃまだ。
煌びやかなルックス。中性的な美貌。軽やかな美声。
男をここまで綺麗にするだなんて、もしこの世に神がいるなら、いったい雲の上の連中は何をやっているのかと小一時間問いただしたい。おまけに教師の俺から見ても、成績は当たり前のように良く、性格も真面目で良い子だから、モテないわけがないのだろう。
別に生徒の人生まで食うわけではない。
恋の相談、まあ構わない。
ただ、麗子という女はこういう奴だ。
――彼以上に私に相応しい男はいません。
――あれくらいでなければ、私とは釣り合いませんわ。
自信過剰。自分は宝石のように美しいと思っている。まあ事実として、凛とした美貌の顔立ちと、メロンサイズの瑞々しい乳房が目を引くのだ。もてはやす男は多いだろうし、おまけに学力と運動神経まで兼ね備えている。
ツンとした何かを睨んでいる表情で、いつも苛立っているように見えるから、俺の見立てでは意中の男子からは怖がられている。恋する乙女の視線のつもりが、相手にとっては忌々しいものを見下す視線と映るわけだ。
素直にものを褒められない性格で、いざ勇気を出して声をかけてもこうだった。
――あなた、コンクールで優勝なさったそうね?
――ま、実力を認めないことはないけれど?
――あまり調子に乗らないことね。
意訳、あなたの演奏に惚れ惚れしました。
教師生活によって、生徒の考えが読めるようになっているから、俺には言葉の外側にある部分を察せるが、誰もが鋭いわけではない。おまけに妙な威圧感まで、麗子は無自覚に放っているから、たとえ褒めているのだとしても、普通の男子が麗子に物を言われるのは可哀想だ。
こんなことを言ってくる女の子が、欠かさずコンクールを見に来ていたら、果たして相手はどう感じるか。
敵が自分を視察に来たとでも思うのでは?
間違っても、「あれ? 応援してくれてるんだ! 嬉しい!」とはならない。
男子にも催眠をかけ、麗子にも催眠をかけ、恋のキューピットというか、催眠キューピットになることは可能だが、果たしてそれは正しいことなのか。
まあ、正しいことをする前に、俺は自分の生徒を食いまくっているわけだがな。
何にしたって、麗子も俺に抱かれている最中だ。
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