女子生徒との二者面談はベッドで行う。
相互理解を深めるには、セックスが一番だからな。
方法は、催眠。
既にあらゆる催眠の仕掛けを用意している。
俺が務めている私立高校は、一般人からすれば少しばかり敷居が高く、校門から校舎にかけての道のりが、レンガによって舗装されている。校舎の作りも中世のお城をイメージして、石造りであるばかりか、屋根という屋根がコーン状で、鎧の騎士や魔導師達が集まっても、この城を襲いにドラゴンが攻めてきてもおかしくない。
それくらい、豪奢な学校だ。
だから通ってくる女子も、普通より裕福だったり、公立など目もくれない学力だったり、スポーツ推薦で入試してくる運動神経抜群の子や、どこぞのお嬢様まで集まってくる。
さて、今年は一年生のクラスを担当する俺だ。
やがて二者面談の時期が訪れると、生徒を毎日のように一人ずつ呼び出して、全員との面談で生徒と一対一の話をする。進路相談や部活にまつわるちょっとした小話に、学校生活の悩みまで、交わす内容は相手によってそれぞれだが、そう堅苦しい面談でもないので、面接試験のように硬くなる必要はどこにもない。
むしろ、全てを解放して欲しいくらいだ。
服も、下着も、脱ぎ捨てて――。
その日、俺は一人目の生徒を呼び出していた。
名前は赤崎有香。
場所は校舎内にある俺の部屋だ。
金のかかった学校なので、ここで働ける教師の待遇はそれなりで、仕事用の個室にベッドやシャワーまでついている。
そこで、まずはアロマを焚いて、部屋に香りを撒いておく。
「あれ? いい匂いがしますね」
ここに来る生徒は、だいたいそう言う。
「せっかくの機会なんだし、緊張しないで、リラックスしてもらいたいからね」
俺は生まれつきの穏やかな顔立ちと、優しげな声色を使いこなす。昔から、人をなんとなく安心した気持ちにさせることが、俺の大事な特技である。
相手との信頼関係を築き、リラックスさせてやるのも手順のうちだ。
自分でいうのもあれなのだが、俺は生徒達から評判がよい。授業はわかりやすく、相談にも乗る優しい人と、男女からの信頼を集めているのだ。日頃の行いということもあるので、大抵の生徒に対して、信頼関係の構築は容易い。
「それで、部屋も綺麗にしてあるんですね」
と、有香。
「うん。汚い場所に呼び出すのはマナー違反だと思うしね」
埃一つないように掃除して、書類や教材といったものも、きちんと整頓して置いてある。
それだけではない。
時計だ。この部屋には、針の音がなるべく大きい時計を置いている。単調な音のリズムには人の意識を低下させ、いつの間にかウトウトさせる効果があるからだ。
この部屋に静寂が満ちれば、チッ、チッ、チッ、と、秒針の刻む音が聞こえるはずだ。
「それになんか。ぼやーっとしちゃうような……」
さっそく、有香は催眠状態に入り始めている。
うん、いける。
「いいよいいよ? 楽にしちゃって。紅茶淹れようか? コーヒーもジュースもあるけど」
「いえ、そんな……」
「よーし、紅茶にしよっか」
「……はい。頂きます」
有香に飲ませる紅茶にも、当然のようにリラックス効果があり、そればかりか意識をぼんやりとさせ、夢うつつな気分にまでさせるのだ。
催眠にかかりやすいタイプとあらば、俺はその子とセックスに踏み込む。効果には個人差があるため、断念するケースも珍しくはないのだが、赤崎有香とはヤれそうだった。
「さて、と。じゃあ、色々とお話でも、ってところだけども、その前にこれを見てごらん?」
俺はポケットからライターを取り出した。
別に喫煙者ではない。むしろ嫌煙者なのだが、ライターは催眠道具になるから持っている。
「この火を、じーっと見つめてごらん?」
「……はい」
凝視法だ。
人は一点を集中して見ていると、自然とトランス状態に移行していく。
「リラックス……リラックス……」
俺は静かに、暗示の言葉をかけ始めた。
「…………リラックス」
有香はもう、意識を薄ぼんやりとさせている。
「だんだんと、全身の力が抜けていきます」
「…………」
有香の身体は、ゆらゆらと左右に揺れて、もうほとんど力は入っていない。筋肉という筋肉の数々が、柔らかく解れている。暗示によって力を抜いたわけだが、筋弛緩もまた催眠方法の一つなので、より一層効果は高まることだろう。
「力が抜ける……力が抜ける……」
「…………」
これで、表面的な意識は完全に閉じている。
真っ白な状態だ。
まるで何一つデータの入っていない媒体に、必要な情報を一つ一つインストールしていくように、あとは色んな言葉を囁いてやればいい。
「これから、あなたは先生とセックスをします」
「はい……赤崎有香は……先生と……セックスを……します…………」
「それは二者面談において、大切なことです」
「二者面談……大切……な……こと…………」
「全身を使って、生徒と教師で理解を深め合うためです」
「理解……深め合う……」
このようにして、俺はあらゆる情報を叩き込んだ。
二者面談とは教師と生徒がお互いに理解し合うための大切な場であり、特に女子生徒の場合は裸体になって交わり合うのが、非常によいとされている。立派な教育指導の一環で、先生は非常に真面目な気持ちで生徒を抱く。
いかに大切で、きちんとこなすべきことなのか。重い認識や使命感を刻み込む。
さらにはセックスに対する恐怖や抵抗感を取り除き、相手は先生なんだから、別に問題ないじゃないかと、考え方を軽くさせる。重要な教育内容の一部だから、そのために服を脱ぐのは普通だし、必要以上に躊躇うことは決してない。
しかし、羞恥心まで取り除いてはつまらない。
「あなたはだんだん、裸が恥ずかしくなっていく」
「恥ずかしく…………」
「パンツを見られただけで、裸を見られたかのように恥ずかしくなる」
「…………恥ずかしくなる」
「風船をイメージしてください。どんどん、どんどん膨らんで、だけど絶対に割れません。永遠に大きくなる。とても不思議な風船です」
「不思議な風船……」
「その風船のように、あなたの羞恥心は膨らみます」
「膨らむ……」
さて、と。他には――。
「初めての挿入が気持ちいい」
痛がらせては悪いからな。
「気持ちいい……」
「痛まない。大丈夫。先生に任せれば痛くない」
「痛く……ない…………」
あとは、全てが終わってから催眠が解け、余計な記憶は消えるように暗示をかける。
そして――
――パン!
俺は急に、有香の目の前で両手を叩いて驚かせた。
「ひ! あれ?」
びくっと肩を弾ませた有香は、まるで急に目が覚めて、今まで自分が何をしていたのか思い出せないかのように混乱している。
眠らせた意識を元に戻したのだ。
ぼんやりしていた最中の出来事がわからないから、本人にしてみれば、いつの間にか居眠りでもして、気がついたら時間が経過していた気分だろう。
「あれ、面談? ですよね。ここに来て、なんかぼんやりして、それから……」
「それから、よーく思い出すんだ。これから何をする?」
「何って、二者面談ならセックスですよね?」
有香はケロっとした顔でそう言った。
よし、成功だ。
常識じゃない発言を、さも常識であるように口走る。
「よくわかってるじゃないか。さっそく始めよう」
「あ、はい。そうですね」
こうして、俺達はベッドへ向かう。
何人もの女子生徒を抱くことになっていく。
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