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 初夜の権利を手にした男は、七日間に渡って女を抱いてもよいとされている。リーナはそれまで宿に泊まり、期限のあいだジョードに調教を受ける羽目になるのだ。
 ジョードと順番で浴室で身を清め、共にベッドへ進んだリーナは、いよいよゲスに抱かれる運命を前にして、何かを呪いたい気持ちでいっぱいになっていた。
 キアランには色々としてあげたし、裸を見せる自体は決して初めてではない。
 しかし、きちんとベッドでするシチュエーションは、よりにもよってジョードが初めてだ。
「綺麗になったね。リーナちゃん」
「――――うっ」
 生肌の肩に触れられ、背中全体に寒気が走った。
 せめてもの抵抗として、なるべく長く風呂場にいてやった。七日という期限上、なけなし程度には時間を削ってやれたと思うが、本当になけなし程度の話である。毎回長湯を行ったとしても、削れる時間量はあまりにたかがしれていた。
「さあ、握ってごらん?」
 直立したジョードは、リーナに肉棒を突き出してくる。
「……最悪っ」
 リーナは顔を背けた。
 キアランのものを握るのも、口に咥えるのも、何も抵抗はなかったが、相手がジョードに変わっただけで汚らしい腐敗物に見えてくる。こんな肉棒に触るくらいなら、便所の汚物でも手に取る方がマシなくらいだ。
「わかっているよね? 僕に逆らうこと自体が、法律違反と同じなんだ。リーナちゃんにとっては僕が法律なんだ」
「ふん。とんだ拷問ね」
 リーナは完全に仕方なく肉棒を握った。
 ――気持ち悪い。
 手の平にある肉の硬い触感と、熱い温度が、皮膚を接触部から汚染して、少しずつ腐敗させられているような錯覚が沸いてくる。
「手でしごくんだ」
「――くっ! 私がクズにこんなことをするなんて、こんな拷問を受けなきゃいけないほど、何の罪も犯した覚えはないってのに」
 自分の気持ちを言葉に吐き、ジョードを強く睨みつけながら、リーナはその手で肉棒に刺激を与え始めた。
「いいねぇ? さすがだねぇ? リーナちゃん」
 ジョードは勝ち誇った表情を浮かべている。
「黙りなさいよ」
「ねえ、リーナちゃん。君はすごい剣の腕だけど、こっちの剣の扱いも上手なんだねぇ?」
「だから黙って!」
 ジョードの囁く嫌な言葉にリーナは怒鳴った。
 こんな男に手で奉仕をしているリーナの気持ちは、まさしく糞尿を素手で触らされるようなおぞましさと変わらない。いや、この世に排泄物よりも汚いものがあるのなら、そちらに例えてもいいほどだ。
 それほどの拒否感を抱きながら、リーナは手を使い続けた。
 リーナにとって屈辱なのは、この手淫だけではない。仁王立ちで偉そうに胸を張っているジョードの前で、自分は裸で膝をついている。まるで身分差を証明されているような立ち位置自体すら、死ぬほどの苦痛に等しい。
「これから君の処女を散らす大切なオチンポなんだから、きっちり奉仕しないとね」
「ああ! ゲスの声なんて聞きたくない! せめてその口閉じて!」
「わかったから、手を止めない」
 ジョードがリーナに注意をする。
 悲劇的な目に遭っているのは明らかにリーナに違いないのに、ジョードはまるで自分の方が正しくて相手を叱りつけるような態度をしていた。
「いちいち細かいことを」
 本当はキアランでコツを覚えているが、リーナは全ての技巧を封印して、できる限り適当に手首を動かしていた。やる気のない握力で、肉棒を気持ち悪く感じる本心を遠慮なく表情に浮かべながら、ジョードを睨みながら続けていた。
「トークがないのは寂しくない?」
「ふざけんな! ブタ野郎!」
「しょうがないなー。だったら、変わりにリーナちゃんの口を塞ぐとしようか」
「はあ?」
「つまりね。お口でペロペロ舐めるんだよ」
「あ、アンタ……!」
 リーナは戦慄した。
 相手がキアランならば、リーナにとっても望むところだ。口ぐらい使えるが、リーナにとってのジョードの肉棒は、糞尿や腐敗しきった食物よりも、なお触りたくない汚物なのだ。手で握るだけでも泣きたいほどの気持ちなのに、それを口でするというのは、リーナに対して恐ろしく残酷なことである。
 脱糞を口に詰める方が数倍マシだと、リーナはほぼ本気で思っている。
 だが、ジョードは言う。
「わかっているよね? 僕の言う事が聞けないと違反になるって」
「……最低の生き地獄ね。アンタ本当に死ねばいいのに」
 死にたい思いを堪えながら、リーナは口を接近させた。唇が腐り落ちるような心地の中で亀頭の口をキスを交わし、舌先で先端を舐め始める。
「おおおっ、気持ちいいよ? リーナちゃーん」
「死ねばいいのに……」
 ぎこちなく亀頭の口を舐め込む。
 ジョードはそんなリーナの姿を満足そうな顔で見下ろして、悪魔の微笑みのようににったりほくそ笑んでいた。

 ――悔しい! 悔しい!

 リーナは涙をこぼしていた。
 忌まわしいものを見る目つきで、強い拒絶の意志が篭ったキッとした睨み顔の瞳から、涙がこぼれて頬に伝う。

 ――ゲス野郎! ジョードのゲス野郎!

 この舌先にある亀頭が、世界で一番悦んでなど欲しくない肉棒が、リーナによって刺激を受けて快楽の先走りを分泌している。ジョードなんかの味が舌につき、吐き出してうがいをしたい気分になりながら奉仕に励む。

 ――舌が腐るじゃない! こんなの!

「そうそう。そうやって、しっかりと僕のチンポにお仕えするんだ」
「ふん!」
 リーナはともかく、ジョードを睨んだ。お仕えの意志などないことを伝えるため、自分がいかに仕方なく舐めているかを顔で示した。
「いつまでも先っぽを舐めるだけじゃいけない。もっと奥まで咥えるんだ」
「偉そうに」
 卑怯な手を使わなければ、最後までリーナをどうにも出来なかったくせに、ジョードはここにきて自分が上であるように振舞っている。
「さあ、ジュポジュポとやるんだ」
「――んぷぅ、ちゅっ、じゅるぅぅ……」
 口に糞尿が入ってくるかのような最悪の不快さを堪え、全身が痙攣して見えるほどの屈辱の震えを起こしながら、リーナは頭を進行させて肉棒を飲み込んだ。
 太さのあまりに口内が占領され、口を大きく開かなくてはいけないので顎が辛い。舌の上に硬い重量感が乗ってきて、肉棒の皮膚の味が舌に広がる。
「ぷふぅ……じゅるじゅるっ、じゅるん。ちゅぷぅぅ……」
 リーナは頭を前後に動かし始めた。

 ――噛んでやりたい。こんなもの。

 口を内側から広げられる圧迫感だけでなく、歯を当ててはならない苦しさがある。舌にある肉棒の味も最悪だし、口全体の神経が汚染され、穢されている気分がした。
「ほらほら、もっともっと!」
 ペースを上げろと要求してくる。
「――じゅっ! じゅじゅっ、ちゅぶぅ――ちゅっ、ぢゅぢゅっ」
 前後運動を早めていくと、ジョードはますます悦びの表情を浮かべていた。
 自分の舌が肉棒の下を這い、口腔粘膜が擦れつく。ジョードにとって快感となるであろう全てが嫌だ。

 ――悔しい! こんなもの! 悔しい!

 リーナの流す涙は、単に悲劇に泣くだけのものではない。憎い男へ奉仕をしなくてはならない悔し涙だ。
「さあ、僕のエキスを飲ませてあげるよ!」
 ジョードが口にした途端。

 ――ドックン! ドクっ、ドクっ、ビュルル! ドクン!

 熱い白濁が口内に撒き散らされた。
「飲むんだよ。リーナちゃん」
 喉を鳴らす羽目となったリーナは、汚液を腹に収めていく。固形状のような精液が食道を流れ落ちていく感覚は、体内にナメクジでも這ってくるようなおぞましさがあり、リーナは思わず嗚咽しそうになっていた。
「よく飲めたねぇ? リーナちゃん」
「よくもこんな汚いものを!」
「ははっ、どんな味だった?」
「アンタの薄汚い人間性の味がして、それはもう素晴らしかったわよ!」
「それはどうも。次は下のお口で味わおうね?」
「…………っ!」
 リーナはひどく引き攣った。
 いよいよ本番が迫っている。
 こんな男に処女を奪われる瞬間が迫っている。

 ――死ねばいいのに! こんなゲス!

 いっそ、殺してやりたい。
 リーナが本気で人に殺意を抱いたのは、人生で初めてのことだった。



 
 
 

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