最終的に剣による攻撃ではなかったが、スパンキングに加えてパイズリまでされたセリアンヌを勝者と呼ぶなどありえない。
「俺の勝ちッスよね?」
デュックはまさに勝ち誇っている。
「…………」
セリアンヌは答えない。
こんな勝負は無効だと言い張ることも考えも頭をよぎるが、顔射までされたセリアンヌが本来あるべき決闘の姿を唱えたところで、言い訳として捉えられるのは明白だ。見苦しい真似などしたくはない。
セリアンヌはただ、とにかくデュックを睨み返していた。
「ま、お望みならもうちょい遊んでやってもいいんッスけどね」
未だ跨ったままでいるデュックは乳を揉み、柔肉をたっぷり捏ねる。
「んっ、くっ……。やめろ……」
「やめて欲しいッスか?」
「そう言っているだろうが」
「だったら、自分の言葉で負けを認めてみなっつーの」
せせ笑うデュックを心底憎らしく思った。
以前から相手を馬鹿にした闘いばかりを続けていたが、セリアンヌのことさえこの扱い。殺してやりたいほどの屈辱を受け、もう憎んでも憎みきれないほどの激しい憎悪がデュックに対して生まれていた。
そんな奴を相手に、しかし負けを認めないわけにはいかない。ここまで体を弄ばれ、それでも負け惜しみを唱えるようでは騎士道に反してしまう。己の弱さを受け止めてこその王国騎士であり、屁理屈を捏ねるようではデュックと同レベルに落ちることになる。
「負け……だ」
セリアンヌは小さく言った。
「何? 聞こえないッスよ」
しかし、デュックはさもわざとらしく返すのだ。
「だ、だから……。私の負けだ」
こんなことを乳を揉まれながら言わされる。もう自分がどこまで落ちているのか、どんな扱いでしかないのかもわからない。
とにかく、悔しい。
それ以外の何でもない。
そして……。
敗者は勝者の言うことを聞く。
その約束によりデュックがセリアンヌに命じたのは、この闘技場に集まる大観衆が見守る中で、全裸で犬の散歩をすることだった。
「こんなこと! こんなことが……!」
これ以上の屈辱があるだろうか。
まず、大勢の観衆達が列を作る。途方もない大行列だ。その列と列のあいだに道を空け、鎖付きの首輪を巻いたセリアンヌが四つん這いで歩行するのだ。
「おら、早く歩くッスよ?」
当然、鎖を引っ張るのはデュックである。
「歩いているだろうが!」
「しっかり顔を上げろって言ってんッスよ」
デュックは鎖をぐいぐい引っ張り、まるで動物でも躾けるように言うことを聞かせている。
セリアンヌは歩いた。
四つん這いで手に平に石畳の固さを感じながら、慣れない姿勢での歩行で国民のあいだを突き進む。一歩ごとに乳が揺れ、お尻が左右に動き、人々はそれを興奮しながら視姦する。
「すげぇぇぇえええええええ!」
「セリアンヌのこんな姿! 二度と見られねぇぜ!」
「まさか犬になっちまうとはな! 犬に!」
言葉の嵐がよりセリアンヌを責め立てて、屈辱のどん底へ叩き落していた。
晒し者と変わらない。
公開処刑を行う場合、王国では受刑者を観衆の中で歩かせ、そして十字架にかけて命を取ることになっている。死の瞬間を晒されるというわけだが、とはいえ、処刑の決まった罪人ですら四つん這いでは歩かない。普通はただ両腕を後ろで縛られ、首輪も巻かれるものの、普通に二足歩行で歩かされるだけなのだ。
ところが今、罪人でも何でもないセリアンヌが犬の姿勢だ。
「歩くたんびにケツがプリプリ動いてるぜ?」
「尻肉が揺れてるよ! 尻肉が!」
「たまんねーなァ? おい、セリアンヌちゃんよォ!」
(い、言うなぁ!)
「肛門がピンク色だぜ?」
「綺麗なアナルしてんじゃねーか!」
「なんかヒクヒクしてなーか?」
「本当だぜ? キュゥゥゥウって萎んだり広がったりしてんじゃねーか!」
(そんな場所を……。そんな場所を見ないでくれ!)
「揺れてるおっぱいが見えてるぜ?」
「ワンって言ってみろやワンって!」
もはやこれが何かの刑というわけではなく、単なる罰ゲームに過ぎないことが不思議なほどのむごい扱いとなっていた。
「犬の鳴き真似だそうッスよ? やってみようやセリアンヌちゃん」
「冗談じゃない! これだけで十分だろう!」
「えー。やらないんッスか? やらないそうッスよ?」
デュックは残念そうな顔をして、観衆に呼びかけた。
すると人々は呼応する。
「ふざけんな!」
「犬のクセにご主人に楯突いてんじゃねーぞ!」
「ワンって言えよワンって!」
「おらどうした!」
途端に罵声が飛び交い、責めるような言葉の数々がセリアンヌに投げかけられる。
そして、それはしだいに一つのコールとなっていった。
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
一声ごとに拍手を交えながら、国民総出で『ワン』の鳴き声を要求する。何百人いるとも知らない観衆から受ける最大級のプレッシャーは、いかに女騎士とて経験のないものだった。
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
だからといって素直に鳴けるわけがなく、そして本来守るべき国民相手に逆らえるわけでもなく、従うことも刃向かうこともどちらもできないまま、ただ顔を落として石畳の地面だけを見つめていた。
気高いセリアンヌがまるで苛められっ子のようになっていた。
「ほら、早く鳴くんッスよ」
デュックに尻を叩かれ、せかされる。
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
コールが続く。
「どうしたんッスか? 鳴かないんッスか?」
デュックがせかす。
(こんな! こんなことが……!)
セリアンヌは歯軋りした。
これは悪夢だ。
こんなことが現実のはずがない。
夢なら早く覚めて欲しい。
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
「鳴ーけ! 鳴ーけ!」
そして、コールに押されていき……。
セリアンヌはとうとう口を開いた。
「ワン!」
鳴いた。
「ワン! ワン!」
犬の鳴き声を真似しながら、後ろにお尻をフリフリと見せつけるようにしてセリアンヌは歩いていく。
「ワン!」
屈辱に肩を震わせ、涙を流したい思いで鳴き声を発し続けた。
「いいねぇ? セリアンヌちゃん」
デュックの満足そうな顔。
「うおおおお! 鳴いた! 鳴いたぞセリアンヌが!」
国民の興奮。
全てがセリアンヌを締め上げていた。
~完~
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