こんな事があるだろうか。
「ほら、ちゃんと歩きなよ明日美ちゃん」
栗木にチェーンを引っ張られ、首輪を引かれた明日美は泣きたい思いで歩行する。奴隷宣告を受けた明日美は首輪を付けられ、あろうことか校舎内で犬の散歩のような真似をさせられているのだ。
「え? 何あれ」
「何かのプレイ?」
女子達はヒソヒソ話す。
「あいつら付き合ってんのか?」
「知らねーけど、あんなプレイ学校でするってのはなぁ……」
「男もそうだが、拒否らない女も変態だろ」
男子達もそんな会話を交わしていた。
廊下を行き交う通行人のほとんどが、お散歩をする明日美に視線を向け、まるでドン引きしたような、あるいは好奇に満ちた眼差しをそれぞれ向けてくる。首輪のチェーンを引かれるだけでも明らかなSMプレイで目立っているのに、明日美は事もあろうに四つん這いで歩かされているのだ。
「ほらほら、ちゃんと進みなよ」
調子付いた栗木にチェーンを引かれ、明日美は屈辱に満ちた思いで足を進める。
「畜生が……」
少しでも足を止めると、
ベチン!
スリッパで尻を打たれる。
「くそっ、てめぇ!」
睨み返すその行為さえも罰するように、
ベチン!
スカート越しに打ち鳴らされ、それを見ていた周囲の生徒はより引いてそそくさと立ち去っていくか、あるいは好奇心を持って野次馬となるか。
「あれって四ノ宮じゃん」
「おいおい、マジであんな事されてんのかよ」
クラスメイトの声まで聞こえ、明日美の学校での立ち位置はもはや絶望的なものとなっていた。こんな犬のような姿を見られ、目の前で尻まで叩かれているのでは、葉山から受けた宣告だけでなく、クラスメイトの認識の中でも明日美は栗木の奴隷となってしまう。いや、たった今なったのだ。
「ワン、って言ってごらん?」
「何でそんな事……」
明日美はもはや精神的にも抵抗力を失って、それでも本能的な拒否感が支えとなって栗木を睨む。自分は言う事など聞きたくない、好きでやっているわけじゃない。そんな態度を示すべく、いかにも嫌そうな表情をしてみせた。
しかし、それ以上の気力は既に残されてはいないのだ。
「ほら、言ってごらん?」
「…………ワン」
明日美は小さな声で呟いた。
「もっと大きな声で」
「ワン」
多少はトーンを上げてみるが、それでも周囲には聞こえない程度の声量までしか絞り出せない。
「あれ? 聞こえないなー」
「おい栗木、もっとケツ叩いてやれよ」
野次馬達は期待感を膨らませ、明日美の「ワン」を聞こう聞こうと耳を傾けているようだった。そして声量の不足にケチをつけ、主に明日美へ向かってブーイングを飛ばしている。
「仕方ないなぁ」
栗木はまたもスリッパを振りかざし、
ベチン!
叩いた。
「ほら、言ってみ? ワンって」
「――わ、ワンっ」
明日美は涙ぐんだ震えた声を発していた。
屈辱に震え、本当に涙がこぼれかけているのを見ても、栗木は容赦するどころか余計にニヤつき増長する。
「やっぱり声が小さいなー。もしかしたら、お仕置きが足りないのかな?」
栗木はそして、スカートをばっさりと捲り上げた。
「――――っ!」
パンツが丸出しになり、衆目に晒された。
「うおっ、いい尻」
「プリプリじゃねーか!」
遠慮ない男子の声。
「パンツも下げようか」
栗木はさらにずり下げて、明日美の生尻を露出させた。野次馬の目という目が一瞬にしてお尻へ集中し、そこからでは見えない角度に立っていた男子達は一斉に移動する。クラスメイトや他クラスの生徒、他学年までいる中で――
ベチン!
生のお尻が叩かれる。
「ほらほら、大きな声でみんなによーく聞こえるように」
「――わ、ワン!」
明日美はとうとう、声を張り上げていた。
「もう一回!」
「ワン!」
「さらに!」
「ワン!」
それはもう、一種のショーとなっていた。明日美が犬を真似てワンと鳴き、声が小さいと見なされればお仕置きと称してお尻を叩く。生尻のプルンと震える瞬間に男が興奮しないはずがなく、写真まで撮る生徒もいた。
ベチン、ベチン、ベチン!
例え声が足りていても、栗木は気ままにスリッパを振るう。
「ほら、歩くんだよ」
そして歩行を再開し、尻を揺らしながら進むのだった。
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