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 晴れて恋人同士。
 つまり、ますます見たいに違いない。
『いま、何してる?』
 金曜日の夜、日和はメールを送る。
 晴美の彼女になってからの初メールだ。
 アドレスを交換したのは、帰り道のおりに連絡先を聞かれた時のこと。その時は大喜びで連絡先を交換したはいいが、お互いに話題不足の口下手同士だ。そのせいもあって、実はきちんと会話が弾んだ回数など、そう多くはないのが今までの現状だ。
 だからこのメールも、口数の少ない日和が急に喋り始めた形になるが、果たして返事は来るのだろうか。即時返信を求めるわけではないが、送信後の空白というのいつも不安だ。無視はされてはいないか、おかしな文面ではたなかっか。いざ送信した後になってから、気になって気になって仕方がなくなる。
 日和は既に風呂も食事も済ませているが、晴美もそうとは限らない。もし入浴中ならメールに気づくのも遅れるだろう。
 気長に待とうと思ってはみるものの、どうしても返事が気になって、スマートフォン前で構えるようにして待機していた。
『もう寝る前なんだけど、まだ起きていようかな。で、読書中だよ』
 返事があって、安心した。
 五分以内だったことを考えると、晴美もちょうど起きている。
『私は今、着替えでも始めちゃおっかなと思ってるよ。どうしちゃう?』
 そんな文面を、もちろんカーテンを開けてから送信する。これまでの半開きより、隙間は大きい。カーテンの片側を完全に開ききり、部屋を公開しきったのだ。もはや締め忘れなどという言い訳は不可能である。
 すぐに晴美側のカーテンが隙間を開け、晴美の顔が部屋を覗いているのがはっきり見えた。
(よし、見てる)
 日和は体を横向きにして、晴美に横乳を見せるつもりでパジャマを脱ぎ始める。ボタンを丁寧に一つ一つ、上から順番に外していき、最後の一つまで取ったところで、まずは生の右肩を剥き出しにする。
『僕、覗いてるよ?』
 好きな人の視線であれば嬉しいことなど、既に晴美も理解している。ギブアンドテイクが成立する以上、後ろめたさを覚えながらのオドオドした覗きなどでなく、バレることなど恐れもしない隙間の広さで、晴美は顔の半分近くを堂々と向けてきていた。
『わかった。でも、私は覗かれてるなんて気づいてないかも。カーテンはやっぱり閉め忘れているだけで、誰かさんのエッチな視線になんて気づかないまま色々しちゃうかも』
『了解』
『覗きメールが欲しいな。ちゃんと送ってね』
『了解。日和のことをじっくり眺めた文面を送ってあげる』
『恥ずかしい……。でもちょっと期待』
 正座した足のあいだでスマートフォンを操作して、メールに返事を書いてからストリップを再開する。
 パジャマの右側を完全に脱ぎ去って、あとは左腕の裾が通っているだけとなる。
『ブラの横乳が見えてるよ? 大きいね』
(おっぱい見られてる……。大きさチェックされてる……)
 日和の胸はメロンとリンゴの中間か、あるいはメロンそのものか。中学生としては確実に大きいサイズがハーフカップのブラに包まれている。下乳しか隠さない、谷間は露出してしまう下着を、晴美がゴクリと息を呑む表情で凝視していた。
(すごく見てる。恥ずかしい……)
 顔が火照り、頬が燃えるように熱くなる。
 家の隣接もそうだが、二つの窓はかなり近い。どちらかが窓を開け、腕を伸ばせば簡単に相手の窓をノックできるほど、建築物にしてはお互いスレスレの距離にある。
 晴美の視線はそれだけ至近距離からなのだ。
『白だねぇ? しかもレース付きのブラジャーだねぇ? おっぱいがとても柔らかそうなのがね、ここからでもよーくわかるよ?』
 晴美はその都度羞恥を煽るようなメールを送り、目を通した日和は恥じらいに悶えている。
(もうっ、恥ずかしいってば……)
 なので日和も返事を送信する。
『恥ずかしい……』
『恥ずかしがる日和も可愛いよ? そのおっぱい、じーっと見ててあげる』
『うん』
 日和は既に耳まで染め上げ、頭が破裂しそうなほどの膨大な羞恥心にかられている。ともすれば気がおかしくなるのではというほどに、恥ずかしさという感情が全身を駆け巡り、血管中をまわって全身を熱くする。
『ねえ、日和はなにかしてみせて?』
『了解』
 下着越しだが、自分の乳首を指で摘んでみた。
(……ほ、ほら! 女の子が……。女の子がいけないことしてるよ?)
 これがどこまで晴美の趣味に適っているかはわからないが、乙女がいやらしい遊びにふける姿を覗くのは、きっと楽しいことのはず。
 日和は自分の胸を揉みしだいた。
『すごく興奮するよ。こっちを向いてよ』
(は、はい……)
 日和は窓け体を向け、見せつけるようにして乳揉みを披露する。指に強弱をつけるような単純な揉み方しかしてはいないが、限界まで恥らいきった表情が晴美をより楽しませる。
『おっぱいが指で潰れたりしてるのがわかるよ。とっても柔らかそう』
(やだもう。実況しすぎ……)
 メールて逐一自分の様子を文にされ、視姦をされている実感に日和は実は興奮していた。
 恥じらいはきちんとある。
 思春期の女子中学生ほど羞恥心の塊のような娘は他にいない。視姦相手が好きでもない男であれば、普通の女の子のようにショックで寝込むなりの反応を日和もしていただろう。
 だが、相手はもう恋人だ。
 晴美の視線によって全身を撫で尽くされ、羞恥のどん底に叩き込まれることに日和は一種の悦びを感じていた。本来なら耐えようのない羞恥心だが、そんなものと日和は不思議と折り合いをつけて付き合えていた。
 きちんとお互いの気持ちを了承し合ったおかげで、これまでの覗き覗かせはカップルの羞恥プレイに変化している。
 言葉責めを受けても精神的負担がなく、むしろ晴美が喜んでくれているのがわかって嬉しいと思えるのは、晴れて気持ちが通じ合っているおかげであった。
『ここからでも谷間がよく見えるよ? 日和のブラジャーって、乳房を真ん中に寄せ上げているんだね。もう視線が吸い寄せられちゃうから、目を離そうと思っても離せない』
 言葉で苛められることによって顔を歪め、日和は息まで熱くしていく。
『ブラジャーは外せる?』
 一応、意思を確認してくれるのがありがたい。
『生はまだ駄目。下着までだよ』
『じゃあパンツも見せて?』
 座っていては見えにくいのだろう。
 日和は膝立ちになって今日のパンツを公開する。
 窓の高さはやや低めで、ベッドが足場になるのもあり、膝立ちをしただけでも下着の上下が鑑賞可能であった。表情まで含めて、晴美からは全てが丸見えだ。
『レース付きのパンツだねぇ? 腰位にレースが巻いてる。で、その上に薄ピンクのリボンが通っているのはレースを縫い合わせるためなのかな? そういう感じで、リボンの縫い目が点線みたいに通って見えるよ?』
(そんなに詳しく……。もう! 丁寧に書きすぎだってば……)
『直接話したい。電話していい?』
 羞恥を煽るような言葉の数々が、今度は耳から入ってくるということだ。
(無理無理! それは無理!)
 日和は首を振りながらスマートフォンを操作して、しかしメールを打つのではなく、無理だ無理だと思っておきながら、自分から電話をかけた。日和に芽生えたマゾヒズムが、より恥ずかしい思いをしてみたい欲求を生み出していた。
 着信コールが数秒続き、「もしもし?」と、すぐに晴美の声が耳に飛び込む。
「あのっ、ええと……。こんばんわ」
 こんな格好でなにを話していいかわからず、浮かんだ言葉は挨拶だけだった。
「こんばんわ。綺麗だね。日和」
「そう……かな?」
 褒められるのは照れくさい。
「日和のこと、いっぱい声に出してあげる」
「……はい。お願いします」
 日和の性癖を晴美も理解しかけていた。
「ブラとパンツがとっても綺麗だよ?」
「そ、そう?」
「もちろん、日和の方が綺麗なんだけどね。似合うっていうか。ハーフカップがぴったりと胸を包み上げているところとか、白いパンツから白い太ももが伸びていて、とっても眩しいというか。天国を見てる気分になるよ」
「天国って、大げさすぎだよ」
 あまりに大仰な言葉を選んでくれるので、嬉しさにニヤニヤが顔に出る。けれど、すぐに自分の恥ずかしい状況を思い出し、羞恥の顔に立ち戻った。
「ねえ、日和のお尻が見たい」
「後ろ向けばいいかな」
「うん。四つん這いね」
(あぁ……。恥ずかしいポーズ取らされる……)
 日和は窓に背中を向け、膝立ちのまま手を下につく。電話をしながらだと肘をついた方がスマホを片手に持ちやすいので、自然と頭は低くなり、お尻だけが高いいやらしい姿勢になる。
 途端にお尻に視線が集中した。
「可愛いお尻がよく見えるよ? これが日和のお尻なんだねぇ?」
「いやぁ……」
「白いパンツがお尻でまーるく膨らんでるねぇ? プリプリだねぇ? とても綺麗だよ」
「んんぅ……」
「なので……。えーと、お、オナニー……。のオカズに頂いても構わないかな?」
 散々言葉責めをしてきた晴美でも、淫語を口にするのに抵抗をみせていた。ここまできて素直にオナニーと口にできないところに可愛らしさを感じた。
 しかし、それはエッチな視線どころではない。男は成人向けの画像や動画を見ながら自慰行為をするものだと、知識の上では知っていたが、晴美はまさに日和でヌこうとしている。この下着姿を直にオカズに頂こうというのだ。
 本来ならば、好意などないそこらの男子に同じ台詞を言われたなら、どんなに気持ち悪くておぞましいはずの言葉だっただろう。
「……どうぞ。お召し上がりください」
 ただ晴美に言われたというだけで、自分をネタにしてもらえる事にむしろ悦びを覚える。是非ともこの体で興奮し、気持ち良くなって頂きたかった。
「では頂きます。アレを出したよ? 日和を見ながら右手で握っているからね」
「……うん」
 今の日和が見せてやれるのはせいぜい下着までだ。全裸に耐えきるにはまだまだ慣れが足りてない。晴美は果たして、四つん這いのお尻だけでどこまで気持ち良いオナニーができるだろうか。
 もし晴美が望むなら、どんなはしたないポーズを取ってでもオナニーを手伝いたい。立派なオカズになってあげたい。
「お尻をフリフリしてみてよ」
 そう思っていた矢先のリクエストだった。
「そんなこと……。んん……」
 日和は恥を忍んで腰を左右に振り動かし、フェロモンでも放出して雄を誘う、魔性の女の気持ちになりきろうと努力する。もちろん日和になりきれるわけがなく、お尻の振り方もなかなかぎこちないものがあった。
「ぷりぷり振っちゃって、可愛いねぇ? お尻が踊ってるよ」
「そんなぁ……」
 羞恥の底で苦悶しながら、それでも立派なオカズになろうと、日和は一生懸命に腰を卑猥にグラインドさせ、お尻を左右に往復させ続ける。
「その姿勢のまま窓にくっついてみて?」
「うん。やってみるけど……。四つん這いじゃ足が壁につっかかるから、立ってもいい?」
「いいよ」
 日和は一旦立ち上がる。
 膝で屈むようにして腰を低めて、ガラスにぺったりとお尻を押し付けた。
「すごいよ? 日和。お尻がぺたって潰れているのがよーくわかるよ? ゴムボールを潰したみたいにこっちに向かってお肉の面積が広がってるよ?」
「恥ずかしい……。言わないでぇ……」
「ほら、そのままお尻フリフリし続けて?」
「は、はい……」
 お尻をまるで窓拭き掃除に使うようなつもりで、日和は腰を左右にスイングする。ガラスのひんやりとした冷気がパンツ越しに肌に伝わり、ひやっとするのを我慢しながら懸命に拭き掃除に励んでいく。
「こっちに向かって潰れているお尻がねぇ、左右にずるずる動いているよ? ものすごーくいやらしい光景だよ?」
「言わないでってばぁ……」
 日和への恥辱はこんなものでは終わらない。
 晴美はなんとカーテンを開け、自分の窓を開いて顔をぐいっと押し寄せたのだ。
「後ろを見てごらん?」
「ひゃっ!」
 日和は軽く悲鳴をあげた。
 そこには突き出したお尻を覗き込む、晴美の顔があったのだ。二の窓の隣接具合はそれだけ距離の小さいもので、身を乗り出して顔を近づけることなど造作もない。ガラスで潰れたお尻をかなり間近で観察されることになり、ただでさえ膨大に膨れ上がっていた羞恥がさらに膨張を加速した。
 そうなるともう、声もまともではなくなってくる。
「悲鳴も可愛い」
「――も、もう! 開けるんだったら言って欲しいな」
 恥じらいのこもった震えで上ずった声は、日和がどれほどの羞恥を覚えているのかをまさに物語っていた。
「開けました」
「もう遅いよぉ……」
「怒った?」
「怒らないけど、びっくりしたよぉ……。恥ずかしい……」
「パンツの生地までよく見えるよ? この距離だと毛穴まで確認できるね」
「そんなものは確認しないでぇ……」
「だーめ。ほら、お尻がサボってるよ?」
「はい……」
 そして、日和は向こう十分間はお尻を振り続けた。潰れたお尻が窓に沿ってスライドし、左右に往復し続ける有様を、晴美は窓へ身を乗り出してまでじっくりと凝視し、これでもかというほどの熱い視線を注ぎ続けた。
 お尻はもうすっかり熱い。
 視線に熱され続けたお尻は皮膚の内側から火照りだし、全身まで温まっている状態だ。視線だけの愛撫は確実によりのお尻を撫で回し、女の子の秘密の部分に性的な欲求が芽生えて、ウズウズさせる。
 日和にとって、恥ずかしさはイコール悦びに変わり始めている。羞恥心と快楽が少しずつ同義になり、もっと恥じらいに叩き落されたい欲求が日和の中に生まれていた。
「ストップ」
 日和はお尻を停止させる。
 すると、晴美はこう言った。
「お尻の真ん中をツンツンしてるよ? わかる?」
「え? そう、なの? わからない……」
 しかし、窓に貼り付けたお尻にかすかな振動が感じ取れた。ガラスの厚さでか、それとも意外に分散しやすいのか。どの箇所をつつかれているかなど日和からはわからないが、振動だけは確認できると伝えておく。
 すると晴美はこう続けた。
「お尻の穴を狙ってるよ」
「え? そ、そんな場所……」
「肛門を指でつついてる」
 感覚はなくとも、指でガラスをトントン叩く軽快な音は確かに聞こえ、そのリズムがいかにお尻を責めたてているかを物語る。
「私、そんなことされてるんだ。いやぁ……」
 日和は悩ましげに表情を歪める。ガラス越しでなく、本当にお尻の穴などつつかれたらどんなに屈辱的かを想像し、悶絶の表情で耐え続けた。
「もう一回、おっぱい見せて?」
「……どうぞ」
 日和はやっとのことでお尻を下ろし、膝立ちに戻ってブラ越しの乳房を見せる。
 次はどんな恥ずかしいリクエストをされるのか。期待感が正直ある。
「晴美君。こちらからもお願いしていい?」
「いいけど、なに? 日和」
「あのね。なんかもうここまできたら、お互い窓を開けた方が話しやすいかなって」
「そっか。開けたい?」
「開けたい」
 どうせなら本当に声を聞きたい。
 晴美は黙って通話を切る。日和も自分の窓を開け、いよいよお互いを遮るものがなくなり、日和は緊張感を高めていった。
「こんばんわ」
「こんばんわ。日和」
 夢にまでみたラブコメチックな挨拶を交し合い、気恥ずかしいようで嬉しくなった。
 もっとも、初めてが下着姿になるとは思わなかったが。
「窓まで開けっ放しになっちゃったね。晴美君」
「あ、まだ閉め忘れって設定は残ってるんだ」
「そうだよ? じゃないと、こんなことしてられないもん」
 日和は晴美の下腹部へ目をやった。窓位置の高さに隠されているが、今すぐ頼んで膝立ちになってもらえば、そそり立った肉棒の姿がわかるはず。あるいは身を乗り出して覗いてしまえば、晴美の股間が見えるはずだ。
「んと、気になる?」
「いやその……。見たいってことではないけど、私はちゃんと晴美君のオカズになれているかなあって、気になって……」
 恥ずかしいことをたくさんしたのだ。今この瞬間さえ、晴美はパジャマを着ているのに日和は下着姿である。着衣の差から生まれる惨めさが、お互いのあいだに身分の差を広げているような気持ちにかられている。
 ここまで身を捧げているのだから、満足してもらえなければ泣いてしまう。
「すっごくなってる。日和はお尻もがプリッて膨らんでて、おっぱいもプルプルで本当に魅力的だもん」
「……そんなに言われたら、恥ずかしいってば」
「谷間をじーっと覗きたいな」
「……はい。どうぞ」
 自分を差し出すようなつもりで、日和は少しだけ身を乗り出し、乳房を下へ垂らして谷間を覗き込みやすいポーズを取ってあげる。
 晴美はすぐに顔を近づけ、息が当たるほどの至近距離で谷間を視姦する。
「すごくいい。シャンプーの香りがしてくる……」
 興奮で荒くなった息が谷間の乳肌にかかってきた。
 晴美は股間で右手を使っている。今まさに日和の胸をオカズにして、気持ち良くなっている最中だ。胸元に頭が来ているせいで、そのゴシゴシやる様子は背中に隠れているのだが、肘の動きを見ればオナニー中なのはすぐにわかった。
「気持ちいい?」
 自分の胸がどこまでオカズになっているか、日和は知りたかった。
「気持ちいいよ。すごく、気持ちいい……」
「よかった。晴美君に満足してもらえて嬉しいな」
 日和は自分の谷間を覗くその頭を撫でてやり、耳やうなじを触ってあげた。さすがに手でしてあげたり、揉ませるのは早いと思うが、こうやって撫で撫でと可愛がってあげる程度のことなら問題ない。
 晴美は空いている片手を肩にかけ、ブラ紐を弄んだりうなじに指を這わせてきたが、彼氏なのでそれくらいは黙認して受け入れる。
「……見たい?」
「え?」
「おっぱい。見たい」
 再び頼まれてしまったが、下着だけでも一応は激しい羞恥を覚えているのだ。まだまだ慣れが足りない中で上半身など曝け出しては、果たして生きていられるかわからない。恥ずかしさで死ぬかもしれない。
 だから、まだ見せる勇気がない。
「……ごめん。それはちょっと、ごめんなさい」
 日和はとても申し訳なさそうに誤った。
「い、いや……。無理を言ったのは僕だし」
「でも、本当は見せた方が、その……。お、おっ、オナニー? ――も、気持ちよくなるんだよね? 見せたかったけど、いきなりなので勇気が足りません」
「うん。わかった」
「あ、そうだ! 変わりになるかはわからないけど、別のものを見せてあげるね?」
 日和は一旦、晴美に後ろを向いてもらうように頼み、そのあいだに背中のホックを外してブラジャーを脱ぎ始める。生のおっぱいを見せるわけではないが、下着よりも色っぽくなる方法があるはずだった。
「いいよ? こっち向いて?」
 晴美が振り向くと――
「す、すごい……!」
 ――日和の手ブラ姿が焼きついた。
 もはや体を守るものはパンツだけだ。恥ずかしいことこの上ないが、晴美が絶句しながら夢中になってくれているなら、恥を忍ぶだけの価値は十分あった。
 晴美は我を忘れて乳房を凝視し、手の甲を透かさんばかりに見つめている。
「……どう?」
「こ、興奮する! 今の日和、とってもエッチで色っぽいよ? 手ブラで潰れたおっぱいがはみ出ていて、主にそこに目がいっちゃう」
「そっか。潰れてるのがいいんだね? だったら、モミモミするところとか、見たくない?」
「見たい!」
 かなりの即答だ。
「じゃあ、見てて? 恥ずかしいけど……」
 日和は自身で掴み込んだ二つの乳房を揉み始めた。
「おお、すごい。揉んでる指の隙間からはみ出てるのがとってもいいよ?」
「恥ずかしいけど嬉しいな。晴美君も、私を見ながら気持ちよくなってよね」
「うん。日和でオナニーする」
 晴美は顔を乳房へ向けたまま、首から上は一切不動となって、一瞬たりとも目を離すことなく日和の胸を観察する。右手を股間で動かす以外は、一秒でも目を逸らすなど惜しくてたまらない食いつきぶりだ。
「ねえ、日和のブラジャーを貸してほしいな」
「ブラをって、どうするの?」
「股間に挟んで使いたい。いいかな?」
 それが果たして気持ちいいのか。日和には純粋に疑問である。少しだけ迷い、やっぱり彼氏に捧げたい気持ちが押し勝ち、片腕で胸を守りながら手渡した。
「どうぞ」
「ありがとうね。日和」
 晴美は早速のように弄び、眺め回して匂いを嗅ぐ。
「……か、嗅いだって匂いはないと思うよ?」
 体臭を探られるなんてたまらない。
「そう? それじゃあ、使うね」
 晴美はカップで股間を包み、自慰道具に変えてゴシゴシ動かす。おっぱいを守るための大事な衣類が男のそんな部分へ使われていることに、なんともいえない気分を味わった。
「気持ちいい?」
「うん。気持ちいいよ。間接キスってあるけど、これで日和の間接おっぱい」
「そうなんだ。なら、好きなだけ使ってね」
 日和は大胆に指を動かし、乳房へ沈め込むような揉み方をして、少しでも晴美の目を楽しませようと工夫した。はみ出る肉が良いというなら、指を広げた鷲掴みで強弱をつけ、指の間から出てくる乳肉を見せてやる。
 視線が痛いほどに乳房を舐め、刺激してくる。
 手の平の内側で乳首が尖り、自分自身も気持ちよくなっているのを日和は悟った。
「頬の火照り方が、なんか色っぽくなってるよ? さっきまで恥ずかしくてたまらないっていう感じだったのが、今はエッチな顔になってきてる」
「駄目、そんなこと言っちゃ……」
 言葉の上ではそう返すが、日和も自分の胸を揉むことに夢中になっていた。
「エッチな日和」
 晴美の頭はほぼ不動だが、視線だけは時折パンツへ移っていた。日和はオカズだ。主食が乳房とするなら、パンツは副菜なのだろう。視姦によって摘まれ続け、日和の下腹部にもしだいに火が点り始めた。
「ねぇ、私も……。あの……。じ、自分のアソコ――触っていい?」
「ほ、本当? 日和のオナニー見せてくれるの?」
 晴美は勢い良く食いついてきた。
「も、もうっ、オナニーなんて言い方……」
「でも、オナニーなんだよね」
「……うん」
 日和は恥ずかしそうに頷いた。
「絶対見たい! 見せて?」
「……わかった」
 左腕では胸をガードし、右手をアソコへ運んでいった。
 ごくり。
 晴美の息を呑む音が聞こえた。
 股間に手を当てたまではいいのだが、オナニーの開始がなかなか出来ない。もはや下着を見せるだけの羞恥心となら上手に付き合っていられるが、人前での自慰行為など当たり前だが初めてだ。緊張で腕が動かず、右手はただ添えられただけになっている。
 晴美は黙って待っていた。
 日和のオナニー開始を心待ちにして、相変わらずブラで肉棒を刺激しながら、楽しみに待ち構えている様子である。
「……始めるね」
 やがて決心し、日和は指でアソコを貪った。
「おおっ」
 晴美は食い入るようにじっくり見つめる。
 正直、ぎこちないオナニーしかできなかった。緊張で腕が硬くなり、擦り付ける動きはどこかガチガチだ。
 それでも指がアソコの表面をなぞり、上下に動く有様は晴美を強く惹き付ける。
 もっとよく見てもらおうと五本の指を広げきり、真ん中の中指だけを使い、アソコを上下に摩擦し続けた。
「ね、ねえ……。なにか意地悪言ってよ」
「……うん。それじゃあ、えーと。人前でオナニーなんてよくできるねぇ? そんなに見て欲しいならたっぷり見てあげるよ。ほら、もっと摩擦のスピードあげて?」
「……は、はいっ」
 日和は摩擦運動のペースを上げ、摩擦熱を起こさんばかりに擦り続ける。じわじわと子宮の奥から熱くなり、切ないような甘い痺れが女性器の肉貝全体に漂い充満し、溢れるような快楽が襲ってきた。
「気持ちよさそうだねぇ?」
「ひぃ……そんなぁ……。そんなことぉ……」
 何かのスイッチが入ってか。
 日和のオナニーは活発化して、布地越しに爪で軽く引っ掻いたり、突起した肉芽を探るようにして快楽を貪り出す。愛液が滲み、やがては股間に染みが広がって、その一連の様子を晴美はまじまじと観察していた。
「濡れてるねぇ? そんなに気持ちいい?」
「言わないでぇ……」
「言われたいって言ったのは日和でしょ? ほら、手がすごく動いてるね。日和がオナニーに夢中なのがよーくわかるよ?」
「……夢中じゃないもん」
 しかし、指を駆使してアソコを揉みしだいているようでは、到底説得力などない。
「見られながらオナニーして気持ちいいの?」
「気持ちいい……気持ちいいの……。でも、恥ずかしくて死んじゃう……」
「せっかくだから、もっと恥ずかしくなってみようよ」
「そ、そんなぁ……。これ以上どうやって……」
 それでなくとも、触れれば熱いのがわかるほどの赤面ぶりだ。顔から火が出るという言い方がよくあるが、いずれは内側から焼けて燃え死ぬのではというほどの羞恥に日和は今も苛まれている最中なのだ。
 これ以上の羞恥に陥ればどうなるか。
 晴美は心にサディズムを芽生えさせ、ニヤニヤしながら提案する。
「下半身は毛布で隠して構わないから、パンツを脱いで僕に貸してよ」
「……嘘、パンツも?」
「うん。パンツも」
 果たして、これ以上のことをして生きていられるのか。
 恥ずかしさのあまりに、日和は自分の生死を切実に心配するほどだ。
「……どうしても?」
「うん。どうしても」
 迷いに迷った挙句、膝立ちをやめて座り込み、毛布で下半身を隠しながらパンツを脱ぐ。
 全裸になった日和は晴美と顔も合わせられなくなり、羞恥のあまりに震えた腕で、愛液のこびりついた生暖かいパンツを手渡した。
 これで全ての下着は晴美の手に渡ったことになる。
 受け取った晴美はすぐに両側を引っ張って、ぴろんと広げて眺めまわす。 
「アソコの部分が濡れてるねぇ?」
「うぅ……」
「裏返してみようか。うわぁ、粘液がべっとりついてて、触ると糸が引いちゃうよ? 日和はこんなに濡れていたんだねぇ?」
「言わないでってばぁ……」
 自分のパンツの有様を声にされ、日和は全身を熱く燃え上がらせ、息さえ苦しげになるほどの恥ずかしさに陥った。
「日和のアソコは熱くなっているんだね。ベトベトの部分が温かいからわかるよ? 日和の体温が残っていて、全体的に生温かいし」
「んん……」
「これを僕のに巻きつけて使ってあげる。気持ちいい……。僕のモノに日和の体温が巻きついているのが気持ちいいよ。こびりついた日和の汁を亀頭に塗りつけさせてもらってるよ?」
「そ、そんな……」
 日和は想像した。
 ブラジャーだけでなく、これでパンツも股間に使われたことになる。一度肉棒を包んだものを身に纏い、明日はその下着で一日を過ごす。間接キスになぞって考えるなら、それは乳房に肉棒を押し付けられたり、性器同士が接触するのと同じことでもある。晴美はそのことでニヤニヤして、きっと良い気分に浸るのだろう。
 自分が晴美のための存在になっていく。
 それはとても魅力的なことに思えてきた。
「わ、私も……。晴美の目の前で、全裸でオナニーの続きをします……」
 まるで教会で己の罪を懺悔するかのように、日和は自ら告白した。
 日和は毛布をひざ掛けのようにして下を隠しているが、内側にあるアソコへ触れ、愛液で指を滑らすようにしながら、貪り尽くすような勢いで活発に手を動かした。
 体は完全に晴美へ向けている。
 正座で折り曲げた足を柔軟性の許す限り左右に開き、可能な限り窓際へ体を押し出す。乳房を隠す左腕からは、より乳肉がはみ出るように意識する。オナニーの右手は、それが自慰だとわかりやすいように意識して動かしていた。肘を連動して動かせばわかりやすいかと思い、そう心がけてやっている。
 股間を見せこそしていないが、お互いに正面を向き合ってのオナニーだった。
「ねえ日和。自分のアソコを実況してよ」
「え? ええと、濡れていて……。それから、クリトリスが……突起してて。指でぐるぐるなぞる感じにしています」
「気持ちいい?」
「うん。晴美は?」
「日和のパンツが気持ちよくって、さっきからすぐに出ちゃいそうだから、達しないように右手を休憩させながらやってるんだよ。ブラジャーも股間に当てっぱなし」
「そっか。私はね、クリトリスを指で可愛がるみたいに――あっ!」
「今の喘ぎ声」
「……はい」
 お互い、自分の快感具合や触り方を実況しながら感じ合った。特に少女のアソコは多様な触り方ができるので、今触れているのはクリトリスか、それとも皮か、膣口か。全てを声に出して説明し、乙女の情報を握った晴美は、勝ち誇った顔で肉棒を心地良さに染めていた。
「男の子って、白いのが出るんだよね」
 ネット上で得た知識でしか知らない日和は、本人に確認せずにはいられない。
「そうだよ」
「精液はつけないようにして欲しいな。洗い直さないといけなくなるし」
「了解。ちゃんとティッシュに出すよ」
「……でも、透明な汁だったら、少ししか出ないよね? 履けなくなるほどじゃなかったら、少しだったら汚してもいいからね?」
 日和はひどく恐る恐る、そんな下着をつけたい望みを明かす。
「わかった。透明なのだけ、日和の下着につけておくよ」
「……うん。お願いします」
 それからは快感に集中していた。
 実況するでもなく、言葉を交わすでもなく、日和はひたすらアソコを貪り、指先で愛液を絡め取る際の色めく表情を晴美に見せる。気持ち良くなっている顔をオカズにさせ、晴美に満足してもらうべくして快楽へ落ちていく。
 甘い快感にうっとりと目が細まり、性感へ集中したおかげで恥じらいが一時的に薄れていたその時だった。
「そろそろ、出すね」
 晴美はティッシュを数枚重ね合わせ、そこへ射精していた。
「出した?」
「うん。日和のおかげですごく気持ちよかった」
「一人でするより良かった?」
「うん! 物凄く良かった!」
「……じゃあ、また一緒にしようね?」
「是非お願いします」
 自分達のしていた行為を思い、二人は気恥ずかしいような顔で苦笑する。
 股間にしっかり使われていた下着を返してもらい、晴美の透明汁が染みているであろうことを思いながらパンツとブラジャーを着替えなおす。
 そしてパジャマを着た日和は、おやすみ前のスキンシップとして、お互いの頭を撫でたり触り合ったりをひとしきり行い、何度も顔をくっつけ合ってから窓を閉じた。
 とても幸せだった。
 すぐそこに彼氏がいる中、眠りにつける。窓とカーテンという隔たりこそありものの、これだけ物理的距離が近いのだ。
 一人じゃない。
 二人の心の中では、今夜は立派な添い寝だった。



 
 
 

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