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 検査日程のプリントの記憶を辿り、次の検査内容を思い起こすなり、麗奈は大いに腹をくくった。もし、羞恥という感情一つが死因になるなら、自分はこれから死ぬかもしれない。他のみんなも、精神的に生きて帰れるかはわからない。
 何せ、尿検査だ。
 普通の学校生徒が自宅で尿を出すのと違って、ここでは学校の中で、教師が手に持つ紙コップに向かって放尿しなくてはならない。その様子はクラスメイトにも公開され、男子の見る前でおしっこを出すのだ。
 緊張で出せない子が出ないように、朝の教室で事前に利尿剤が配られた。時間差で効果が出るよう調整され、みんなもうじきトイレに行きたくなる頃だ。麗奈もしだいに尿意を覚え、これは人前で出すものなのだと思うと、試練に今から顔が赤くなった。
 場所は視聴覚室。
 机や椅子は一切どけられ、広々としたスペースに仮設トイレが三つ設置されている。利尿剤の効果が出すぎて、待っているあいだにお漏らしをする子がいてはいけないので、三列に分かれて早めに検査を終わらせるためである。
 三列にも分かれると、一列あたりの人数は少なくなる。
 運悪く最後尾になった麗奈は、しだいに強まる尿意に不安を覚えながら列を進んだ。早くしなければ、きっと漏らす羽目になるだろう。けれど自分の番になれば、みんなに見守られながらの放尿だ。前も後ろも地獄でしかない状況など笑えない。
 ジョォォォォ……。
 三つの様式便座に座る三人の女子が、放尿を開始した。見えやすいよう、紙コップを添えやすいようにと足を大きく広げながら、視線を浴びながらの放尿だ。今にも泣きそうになっている子もいれば、口元を押さえて恥らう表情を隠したがっている女子もいた。白の水玉パンツの子は、必要以上に俯いたまま一切顔を上げなかった。
 利尿剤の効果もあって、緊張で出ないという子は一人もいない。便座に座って足を広げればすぐに放尿は始まって、それぞれの教師は淡々と紙コップに採取したものを専用容器に移している。あの尿検査についてくるプラスチックの容器を見ると、お弁当に入れるしょうゆ入れを思い出す。スポイトの要領でコップに溜まった尿を吸い取り採取する方法は、まさに弁当用のあれと酷似していた。
 うぅ、まずい。
 漏れる予感に麗奈は自分の股を抑え、太ももを引き締めながらお漏らしを我慢した。
 自分の並ぶ列だけ、運悪く放尿時間の長い子が多かった。他の列が順調に人数を減らしているのに、麗奈の列は少しばかり遅れている。麗奈の待ち時間は普通よりもいくらか長引かされていた。
 まだだ、まだ解放する時ではない。
 自分に言い聞かせながら、とうとう両手で股を押さえて我慢する。その頃には他の子達は最尿を終え、麗奈は最後の一人として残ってしまった。
 なんということだ。これでは他の女子への視線の分散が一切起きない。全ての男子が自分を集中的に見つめてくる。
 両手でおしっこを我慢して、一歩ずつトイレへ近づく様子をクラス全員に見守られる。もうこの時点で死にたいほど恥ずかしかった。
「脱がすぞ」
 便座に到着すると、まずは担任の手で足首までパンツを下げられる。何の意味があってか、自分で脱いではいけないのだ。わざわざ人に脱がせてもらって、片足にパンツがかかるように足首を抜くのは一本だけ。右の太ももにパンツを引っかけ、そこで着席が許される。
 着席後は足を側へ開いていき、乙女の園を曝け出す。この時、当然アソコを隠すことは許されないので、麗奈は初めから胸しか守っていなかった。
 性器に視線が集中し、麗奈は顔を熱くした。あまりに真っ赤に染まり上がり、首から上の血液だけが熱湯にでもなっているような勢いだ。肩が震え、全身が強張り、麗奈はそれでも決まりを守って開脚を維持していた。
 コップが添えられ、息を呑むのは麗奈だけではない。
 麗奈の便座にたかるように集まった男子全員が、放尿の瞬間を今か今かと待ちわびて、尿の飛び出す瞬間を見逃すまいと全員が目を見開いている。強く視線を突き刺してくる中には、やはり皆川も混ざっていた。
 そして……。

 ジョォォォォォォォォォォォ……。

 放尿が淡々と紙コップを打つ音が、静寂の中に染み入るように響き出した。初めは紙を打っていた水音だが、すぐにコップの中身は溜まっていき、水面の弾けるびちゃびちゃとした音に変わっていった。
 ――見られている。
 尿道から尿を打ち出す乙女の園が、ゆうに二十人近くはいる男子と、数人の立ち合い教師と、そして目の前で採取している担任にじっくりと観察され、この光景を目に焼き付けている。誰もが麗奈の放尿を一生の思い出にして、天寿を全うするまでに、きっと何度も麗奈をオカズにするのだろう。途方もなく溢れる羞恥心を懸命に耐え抜いて、大股開きでおしっこ姿を公開する麗奈の有様を誰も一生忘れないことだろう。
 十分尿の溜まった紙コップが股下から外されるが、最後の一滴まで放尿しきるまでは絶対に足を閉じてはいけない。担任が良しと言わない限り、開いたままにしておくように手順が定められているのだ。
 ようやく尿の勢いは緩む。
 担任はトイレットペーパーを用意して、ちぎった紙を折りたたんで、麗奈のアソコを拭き始めた。
 顔から火が出るどころの話じゃない。火炎が巻き上がるとまで言わなければ、麗奈が感じる羞恥心にはとてもでないが見合わないほど、赤く熱くなっていた。額に手でもあてれば、風邪で出た高熱と勘違いされても不思議はない。
 担任の手によってアソコを拭き取ってもらう瞬間までも、みんなに見られなくてはいけなかった。異性に触れされたことのない性器がこんな形で、おしっこの雫を拭き取るなどという目的のために触られている。紙で割れ目を擦られているあいだ中、麗奈はずっと下を向き、唇を噛みながら耐え忍んでいた。
 拭き終わると。
「さあ、立って」
 麗奈は立ち上がり、最後の締めとして担任にパンツを履かせてもらう。足首を通したパンツがするすると持ち上げられ、割れ目に食い込まんばかりに上に向かって持ち上げられる。ずれていたわけでもないゴムを指で確認され、さらに二回三回とパンツを上に引っ張られてから、ようやく尿検査は終了した。



 
 
 

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