教室へ向かうおり、観月は自分のアソコの具合を気にしながらも、あたしの事を気にかけてくれていた。
「咲夜さん。ブラ……平気?」
「まあ、何とか」
あたしはそう答えるけど、実は恥ずかしい気分だ。
だって、あたしの胸は一応それなりの大きさがあるわけで。ちゃんとブラをしていないと、歩く時に乳房が上下にぷるぷる揺れてしまう。だからバスから校舎へ入り、廊下を歩いている最中はずっと腕で胸を隠していた。いや、揺れないよう押さえていたっていう方が厳密かな。
あたし達の席は隣同士だったので、一緒に座った。
「がんばろ、観月」
「うん」
とりあえず、励ましあう。
しかし、自分で言っておきながらあれだけど、こんな学校で一体何を頑張ればいいんだろうね。授業はしっかりやるとしても、その他もろもろエロイベントに関しては、頑張りたがってるのは男だけだろう。
チャイムが鳴るとともに、あたしとしては顔も見たない担任の岡部が、相変わらず女子に変な視線を向けながら入ってくる。あたしや観月を目ににやついてから、朝の挨拶で色々と形式ばった内容を語った挙句、またもおかしなことを言い出す。
「さて、入学からまだ間もない今日ですが、今から服装チェックを実施したいと思います」
男子は期待に目を輝かせ、女子は不安で騒然とした。
普通の学校だったなら、せいぜい髪の長さや色を見られる程度かもしれない。この学校となると、女子が恥ずかしい目に遭うのは確実だ。
あたしもごくりと息を呑む。
「我が校では特に髪型の制限や染髪の禁止などはありませんが、ただ一つ、ノーブラとノーパンだけは許可していません」
ああ、どうせ服をまくらせるための建前だ。
そんなもんをわざわざ禁止してくれなくたって、普通は下着くらいつけるっての。
でも――。
あたしはついさっき、バスの中で岡部にブラを奪われたばっかりであって、つまり普通の状態ではない――ノーブラだ。
チェックのためには全体に胸を晒す羽目になってしまう、どうしよう……。
「ブラを普段からしていないと、オッパイの形が崩れますからねえ。それに、いつもノーパンではパンツ好きの需要も満たせません。さあ女子は立って、さっそく服とスカートを捲り上げなさい」
岡部は女子だけに指示を出す。下着の着用を見るってわけだし、そりゃまあ男子は関係ないのだろうけど、みんな躊躇って立とうとしない。
「おいおい、どうしたんだ?」
「検査でお前ら裸見せてんだぜ? 今更だろーが」
男子達は女子に向かって心ない言葉を投げてくる。
何が今更だ。
だからこそ二度と誰にも肌は見せたくないっていうのが、このクラスの女子共通の思いだとわからないのか。わからないんだろうね。いや、わかったとしても、女子の恥じらいに何の気も遣わない男子達だし、早く下着を見てみたいって気持ちだけでいっぱいなんだろう。
次々に野次を飛ばしてくる中、
「俺も早く咲夜の下着見てーなー」
あたし個人をせかす奴までいた。
「女子のみなさん。もしも身だしなみに応じないのであれば、学校への反抗と見なして減点しますよ? 生活態度の面で十回の減点を受けた女子は、生活指導部にて相応の指導を下す決まりになっています」
相応の指導――そう称した本番行為だ。
そうなるのと、今度は裸体でなく下着を見せるだけで済むのとどちらがマシかというのは、さすがに一々天秤にかけるまでもない。女の子達はぞろぞろと立ち始めた。
観月もしぶしぶ立ち上がり、自分のセーラー服とスカートを捲り上げて下着を丸出しにした。桃色のブラと縞々のパンツが露になる。
「へー、可愛いねー」
近くの男子が、興味津々に覗き込む。
どいつもこいつも、下着を見ることに遠慮がなかった。
「くそ、岡部死ね……」
あたしもブラの恨みを抱きながら、席を立つ。涙を呑んでスカートを撒くってピンク色のショーツを見せるけど、下着がないことを思うと服は上げられなかった。
「どうしたんだ? 咲夜。早くオッパイ出そうぜ」
近くの男子がまた言ってくるのに、あたしは歯を食いしばりながら岡部を睨んだ。
その岡部は座席の間を歩いて、女子一人一人の下着を確認し始める。
「浅井レナ君。水色の下着とは可愛いですねえ」
廊下側先頭に立つ、レナという子に向け岡部は卑猥な笑みを向ける。
レナは黒髪のポニーテールを結んだ綺麗な子で、席が前の方にあるあたしの角度からでも横顔が覗けて見える。下着を見られる恥ずかしさに、あくまで無表情を装おうとしているものの、やっぱり羞恥心にもじもじしているような状態だ。
「そういえばレナ君、今日は日直ですねえ。学級日誌を書くのと、後は放課後にも仕事があるので、私のところに来ていただきますよ」
「……はい」
返事の声はそっけない風だった。
しかし、日直にも何らかのエロ仕事が待っているというのか……。学級日誌があるのは普通の学校と同じだとして、放課後に岡部のところへ行くなんて、確実に何かあるのは簡単に想像がついた。
「さて、咲夜君」
岡部はそれからあたしの前へ来て、屈んだ姿勢から見上げるようにして下腹部を観察してくる。やがて、言ってきた。
「ところで何故ブラを見せないのでしょう?」
「それはアンタが……」
そうだ、お前が取ったんだ。なのに、さも知らないようなフリをして下着の着用チェックだなんて、ふざけているにも程があると思うんだけど。
「おやおや、私がどうかしましたか? いいから胸を見せなさい。出来ないというのなら減点をつけますよ?」
「くぅっ……」
生活指導なんて溜まったもんじゃない。
あたしは泣く泣く、生のオッパイをさらけ出した。
「お? 咲夜ノーブラだったのかよ!」
「なるほど、どーりで躊躇うわけだ」
このぉ、たとえ下着があっても躊躇うに決まってるだろ。
「ふむ、咲夜君はノーブラですか。これは立派な校則違反ですねえ」
「っ! 人から奪っといて何を!」
「奪う? 何の話でしょう?」
岡部は口先ではとぼけながらも、表情だけはあからさまにニヤニヤしている。その顔はもう、あたしをわざと陥れてやったのだって事を、嫌というほど物語っていた。
「咲夜君、減点1です」
「くっ……」
また生乳を見られただけでなく、結局は減点をカウントされた。
「今後、減点の必要がないよう指導を致しますので、キミも放課後、私のところへ来てください」
こいつ、日直のレナだけじゃなくあたしまで連れ込んで、好きに遊ぼうって腹か。
許せないけど、どうにもできないのが悔しい。
岡部はあたしの横を通り過ぎ、他の女子の点検を済ませていく。
「観月君。何故、濡れているのですか?」
観月の順番になったとき、岡部はしゃがんで中指を突き出して、恥丘を撫ぜ始めた。
「うぅっ……何でって、そんなの先生が……」
そう、他でもない岡部、お前が自分で触った場所でしょうが。日直の名目に加え、あたしにも飽き足らず、今度は観月まで陥れようっていうのか。
「私が関係あるのですか? ないでしょう? 教えてください、観月君。キミはみんなに見られて感じているのかね」
「そんな! 違います!」
観月は慌てて否定する。
「では、学校に来る前にオナニーでもしていたのでしょうか」
「そんなわけ……」
観月は顔を赤くしながら俯いて、言葉を詰まらせる。そこへ向かって、岡部は「どっちですか」とさらに強く回答を迫った。自分で痴漢をしておきながら、見られて感じたかオナニーをしたか、そのどちらかという事で返事をさせたいらしい。男子達がにやけている中で、これもとんだ羞恥プレイだ。
「どっちですか?」
「わ、私は――」
観月は答えられずに俯く。
「おやおや、回答できないのであれば減点をつけますが、よろしいですか?」
くそ、何が減点だ。こんな学校とはいえ、仮にも生活態度のチェックを建前にした減点を、その二択の回答拒否ごときて行おうってのか。ブラの恨みだけでもこっちは怒りのゲージが溜まっていたのに、この展開のおかげでさらに溜まったよ。
「触ったのはあたしよ」
「咲夜さん!?」
一番ぎょっとしていたのは、他でもない観月自身。
岡部と周りの男子は、あたしの発言ににやっとしていた。
「おやあ? どういうことですかな咲夜君」
「口直しならぬ体直しってやつ? 検査で色々された分を、観月で上書きしてやったまでの話よ。何か悪い?」
「いいえ? 当校はレズを推進はしていませんが、禁止もしていません。いいでしょう、そういうことにしておきましょうか」
岡部は最後に、あたしににやっとした視線を見せながら、残る女子の下着チェックを済ませていく。
全員のチェックが終了したところで、ようやく服を下ろさせてもらえた。
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