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 このぉ、岡部の奴……!
 いくらバッグでお尻を守り、ドアに胸をくっつけ触られる面積を減らしていても、岡部は残るガードのない箇所を愛撫してきた。
 わき腹を擦り、耳をいじくり、そして首筋に吸い付いてくる。
「つぅ……うう……」
 皮膚を据われる感触に怖気が走った。
「シャンプーと石鹸の香りが混じっていていいですねえ、咲夜君」
 耳元に息をかけながら、いやらしい声で囁いてきた。
 それから、首筋で鼻をくんくんさせてくる。
 今度は太ももの側面に手を伸ばしてきた。バッグで後ろは触りにくいだろうけど、横はがら空きなので、簡単に撫でられる。最初はスカートの上からだったけど、やがて岡部は丈をまくって直に触ってくる。
「咲夜君。昨日のキミの裸体は実に素晴らしかった」
 身体のサイズを測る時も、性感検査の時も、あたしはこいつに大事な部分の全てを見られ、しかも触られていた。だからこそ、気持ちとしては二度とどんな目にも遭いたくなかったのに。
 残った手がわき腹に伸びて、セーラー服の内側へ侵入してくる。さらに背中を這い回って、指が背筋を撫でてくる。
 指は背中を締めるブラ紐のホックを探りにきた。
「ちょっ…こんな場所で何を!?」
「ブラを取るんですよ。嫌なら咲夜君、背中をガードしたらどうですかねえ?」
 くうっ、そうしたら今度は他の場所が手薄になって、そっちを触られるに決まっている! でもこうして背中を指でなぞられるだけでも気持ち悪いし……。
「お、ホックが取れましたよ? 咲夜くん」
 まずい、このままじゃ本当にブラが取られる。
 どうすれば……。
 あたしが迷い焦っていた時、
「咲夜…さん?」
 緊張にあがったような、そーっと尋ねるような声がかかってきた。そして人混みをかき分けやって来たのは、白野観月だ。
「観月……!」
 よりによって、岡部がいる時に来ちゃうなんて。
「私その…咲夜さんが乗ってくるの見えたから、挨拶したくて――」
 観月はそうして、もじもじしながらあたしのとなりに立つ。肩のくっつくような距離で、あたしに並んでドアに体をよりかける形だ。
 来てもらえるのは嬉しいけど、あたしの背には岡部がいやらしく抱きついてきている。それが見えないわけじゃあるまいに、色々と覚悟の上で来てしまったのだろうか。
「おはよう、観月くん」
 背中にくっつかれている関係で、あたしの角度からでは岡部の表情は見えないけど、卑猥な笑みを浮かべてニヤニヤしているであろうことは簡単に想像がついた。
「おはようござ――ひゃ!」
 挨拶が途切れたかと思うと、岡部はあたしの背筋を撫でつつ、もう一方の手を観月のお尻へ伸ばしていた。
 馬鹿、観月の奴、バッグを盾にしないから――。
「観月」
 あたしは名前を呼びかけ、目で合図を飛ばした。こっちに寄り添って来いというあたしのアイコンタクトを読み取り、観月は腕にしがみついてくる。
 くっつき合えっていれば、肌が慰めになってこの状況にも耐え抜きやすい。
 それでも、岡部はスカート越しとはいえ観月のお尻の割れ目に指を食い込ませ、いやらしく揉みしだいているわけだけど。
「ほほう? 君たちは仲良しなのですねえ」
 岡部の手が、ブラの肩紐を下ろしてきた。
「――っ!」
 観月の首筋に顔をうずめ、皮膚に吸い付いたのだろう。くちゅっと音が鳴ると共に、「ひゃあ!」と喘ぎ声が漏れた。
 ――けど、もうすぐバスも止まる。
 窓の景色からして、ほとんど到着が近いことがわかった。停車してくれれば、ひとまずこの時間は終わるはずだ。
「では咲夜君。君のブラをもらいますよ」
 下着は引っ張られ、胸のカップが外れかける。
「――! 待って、もらうって勝手に――」
 あたしは即座に声をあげるも、抵抗の間もなくブラはずるりと引き抜かれた。
 薄ピンクのブラジャーが、こんな奴の手に渡ってしまった……。しかも、これでは一日ノーブラで過ごさなくてはいけなくなる。
「返して!」
「何を言うのですか? 咲夜君。嫌なら背中をガードすればよかったのに、ブラを取られる事より乳房とお尻を守る方が大事だったのでしょう?」
 岡部は取り上げた下着を、見せびらかすようにして指からぶら下げる。
 く、悔しい!
「このブラは今宵のオカズにさせていただきます」
 耳元でどんな用途に使うのかまで囁いてくる。
 さらに観月のスカートを撒く利上げ、パンツ越しに撫で始めた。その感触にか、観月はあたしの腕にしがみつきながら、堪えるようにして震えている。
「そろそろ観月君の方も堪能しましょうかねえ」
 岡部はあたしの背から観月の背へ乗り移り、その両腰を掴む。観月のお尻をぐいっと突き出させ、そして、岡部はそこに自分の腰を打ちつけ始めた
「そんな…これって……」
 観月は泣きそうな声であたしの顔を埋める。
 痴漢だけでも充分に酷いのに、これはさらに酷い。
 岡部がやり始めた行為は、擬似セックスだ。肉棒こそズボンの中だけども、勃起したソレを何度も何度もお尻に叩き付けている様は、さながら立ち姿勢でのバック挿入だ。
「びゃあぁあ気持ちいぃいい! 女子高生の膣は最高ですねえ」
 擬似性交に膣の感触もあったものじゃないだろうに、岡部はさも本当に挿入しているかのような台詞を言ってくる。
 セックスごっこのつもりなのか?
 こんな最低な遊びに自分の体を使われるなんて、観月が感じている屈辱は言いようのないものなのは間違いない。あたしの腕を掴む力も、だんだん強くなっていた。
「先生! 何もここまで……」
 無駄とはわかっていても、さすがに何も言わずにはいられなくなる。
「ええ、ここは最高ですよ?」
 あたしの言葉を何だと思ったのか、本当に無駄にもほどがあった。せめてと思って、あたしは懸命に観月の頭を撫でる。
 けれどそのうち、岡部はバサっと観月のスカートをまくりあげ、パンツを丸出しにしてしまう。加えてそのパンツの中に手を差し込み、擬似性交の上にアソコの愛撫を重ねていく。
「ひゃ! ああぁ――さく…や……さん」
 観月は喘ぎながらもあたしの名前を漏らしていた。
 岡部の指使いは、腹の立つことだけど上手い。
 あたしが性感検査でイかされたように、こいつはこっちがどんなに嫌がっていようと、それでも身体の生理的な反応を引き出して、望まない快楽を与えてくる。それが出来るような技巧を持っているのだ。
 観月は膝をがくがく震わせ、あたしの肩で身もだえする。
「さくやさん…さくやさん…………」
 女の匂いが漂って、愛液が漏らされているのがわかった。
 くちゅくちゅ、と水音が激しくなっていく。
「あっ、んんっ、さく…さくやっ――さ――あっ――」
 観月はどうにか声を抑えようとはしている。
 けれど、やはり喘ぎは漏れてしまい――
「もっ、もう―駄目っ、さくやさ――」
 イキそうになったのだろう。
 けど、ここでバスのアナウンスが響き、
『まもなく黒坂高校へ到着します』
「おっと、そろそろこの辺にしておきましょうか」
 岡部は急に愛撫をやめ、パンツに差した手を引き抜く。
「ううっ……」
 解放されたはいいけど、イかされる直前でやめられたせいで、余韻が強く残ってしまったのだろう観月は膝を震わせながら、よだれをたらしながら自分のアソコを手で押さえる。
「観月、大丈夫?」
「咲夜さん……」
 だらりともたれかかってくるのを、あたしは抱きとめた。
 バスがゆっくりと停車する。
「では、この後は教室でお会いしましょう」
 岡部は先に人混みの奥へ消えていく。
 あたし達は、寄り添いながらバスを降りるのだった。

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