神狩屋に下腹部を治療される雪乃

   




 ロッジの中、セーラー服を着た時槻雪乃の姿があった。何故かスカートとショーツを脱ぎ、下腹部を晒して天井に向かってM字開脚をしている。いや、させられているといった方がよほど正確だろう。
 それを覗き込み、触っているのは治療効果を持つ断章の使い手――神狩屋だ。
「幸い傷は小さいみたいだけど。やっぱり、膣に裂傷がある。いくら小さくても、こういう場所の傷を放置するのは良くないね」
 神狩屋は傷を見るため、雪乃の陰部を指で押し開いていた。ぱっくりと開かれたピンク色の肉ヒダは呼吸でもするかのようにヒクついていて、神狩屋は傷を見るためにそれを凝視している。男に見られ、触られている、そんな状況から沸き起こる羞恥心に、身体は嫌でも反応し、ほのかに分泌液のぬめりが溢れかけていた。
「早く済ませて」
 雪乃は出来る限りそっけなく言う。いくら恥ずかしくて顔が赤くても、態度ではいつも通りを示そうとしていた。
 その彼女らしさに神狩屋は苦笑いしつつ、自分の指先から血液を垂らす。膣内の傷にある傷口に塗りつけるために指を挿入し、出し入れした。指の腹で膣壁を撫で、内部の傷を探るようにして、神狩屋はまじまじとそこに視線を注ぎ続ける。
 込み上げる羞恥に雪乃はひたすら耐えていた。
 本来なら、雪乃ならばこんな場所の治療など必要ないと蹴っている。見せるのも触らせるのもまっぴらであったが、それでも神狩屋からの治療の申し出を受け入れたのには雪乃なりの理由があった。
 それは失敗に対する自己への戒めだ。
 先日、雪乃は泡禍と相対すべく現場である一般家庭へ赴き――しくじった。
 そこで起きた現象を前に、素早く対処しきれなかった結果として、雪乃は恥ずかしい場所に小さいながらも怪我を負ったのだ。
 まず、触手が湧いて出た。
 濃い緑色の中に黄緑の血管の網を通したような、ねっとりとした粘液のしたたる触手の数々が泡禍の現象として発生し、雪乃はそれに襲われたのだ。
 手足を絡め取られたためにカッターを取り出す隙を奪われ、その触手は裾の内側を通って乳房に到達してきた。ブラジャーの隙間をくぐって乳肉に巻き付き、締めつたり緩めたりを繰り返しながら揉んできた。先端は乳首を攻め、残る数々の触手も全身を撫で回す。口内にも強引に入り込み、口淫のような出入りをしてきたので断章詩も口にできなくなった。
 太ももに巻きつく触手は、這い寄るようにして陰部付近まで上がってきた。ショーツの内側に入り込み、尻を執拗に撫で回す。恥丘も触手の先端に愛撫され、ぬめりある粘液によって雪乃は全身をヌルヌルにされていった。
 白いセーラー服は水分で肌に張り付き、内側を透けさせる。いつしかブラジャーはずらされて、触手の揉まれる乳房もはっきりと浮かび上がる。ショーツからも中身が透け、お尻と陰部が布から浮き上がる。こうして全身をまさぐられている状況は風乃にも観察され、屈辱の言葉を浴びせられた。
 手足を封じられている雪乃には、もはやこのまま耐えるしか手段はないように思われたが……。
 ただ一つ、自力で切り抜ける方法があった。
 触手の先端が膣に入り込み、破瓜の痛みを与えてくる。肛門にまで入り込んできて、後ろからの痛みもあった。口と、そして下腹部の二つの穴、合計三つの穴を侵略される痛みと不快に犯された。
 この二つに痛みを利用して、雪乃は触手を焼いた。
 といっても、加減を考えながらの炎しか出せなかった。下手に触手を焦がしては、炭化したまま高熱をおびたものが入り込んで来る予感がして、恥部に火傷を負ったらと思うと加減せずにはいられなかった。
 最悪な状況とはいえ、触手のやることがこれなら命に関わる危機とは違う。屈辱を覚えながらも、雪乃は努めて冷静に焼き払っていた。
 そして、片付くまでにはおよその時間がかかり……。
 解放される頃には、執拗な触手の出入りに恥部はすっかり気持ちよくなっていた。忌むべき泡禍に陵辱され、あまつさえ感じさせられたことになる。しかも泡禍相手に犯されて済んだのは運が良い方で、下手をすれば目も当てられないような残酷な死に様を晒した可能性さえあった。これでも運に助けられたようなもので、雪乃にとってそれほどの恥辱はない。
 だからこそ、二度とこんなヘマをしてはならない。雪乃はそんな思いを心に固め、神狩屋からの治療の申し出も半ば自己罰的に受け入れたのだ。
「恥部の裂傷は放置するべきじゃない」
「そうね」
 そんなやり取りを元に、ロッジへ戻った雪乃はすぐに治療を受け始めた。場所が場所なのでスカートを履いたままではやりずらく、ショーツも一緒に脱いで下半身は丸出しにした。年頃の雪乃にしてみれば、これだけでも死にたいほどの恥ずかしさに見舞われるが、しかもテーブルで仰向けになり、神狩屋が傷を見やすいために足を開いていた。その格好はM字開脚に他ならず、卑猥なポーズを取る羽目になった雪乃に沸き起こる羞恥心は途方もなかった。
「触ってみてわかったけど、内部にも見た目にはわかりにくい傷があるみたいだね」
「……そう」
 膣を出入りし肉壁をなぞる指の感触に、雪乃は神狩屋と目を合わせられない。絶え間ない羞恥に頬も陰部も熱くなる一方で、普段の肌の白さだけに雪乃の赤面が見て取れる。膣を出入りする指にも、ねっとりと分泌液が絡み始めていた。
 最初は逆向きに出入りしていた指だが、傷を探るために膣壁中をなぞられた。穴の内側で指が回転され、人差し指の腹があらゆる膣壁の箇所を撫で尽くす。
 それだけじゃない。
 触手に犯されてからの雪乃は、未だに着替えもせずシャワーも浴びていない。セーラー服には粘液のネバついた水分が染み込んでおり、内側の肌がほとんど透けている。下着だけは直したものの、ブラジャーの柄までくっきり浮かび上がって、もはや裸を見られているに近い状況であった。
 加えて、陰部に注がれ続ける神狩屋の視線である。雪乃の羞恥心は加速し続け、胸で爆発しそうにさえなっている。心臓はうるさいほどに動悸して、指を挿入された股のモジモジするような挙動も、まるで嫌よ嫌よと声を発しているようだ。
 雪乃は必死に耐えるべくして歯を噛み締め、胸元でこぶしを握っている。いかにも恥ずかしさに耐えている表情をしながら、神狩屋の指を感じ続けた。
 触手にされた余韻がソコには残っている。指の出入りによって少しずつ疼きを引き出され、やがては愛液を分泌していた。透明な液が神狩屋の指を濡らし、股から垂れてテーブルにシミを作る。
 そんな状態になって、やっとのことで指は引き抜かれた。
「そろそろ治ったけど、肛門が残っているね」
「……ええ」
「悪いんだけど、四つん這いになってもらえるかい?」
 雪乃はむすっとしながら身体を返してうつ伏せになり、そのまま太ももを垂直にして尻を立てる。お尻を神狩屋へ向ける形になり、雪乃はたまらない羞恥を堪えた。
 しくじったのは自分だ、だからこんな目に遭う必要がある。これに懲りたら、次こそはあんなヘマなどせずに戦い抜くのだ。
 そんな思いが底にあるからこそ、屈辱的な姿勢を雪乃は取っていた。
「じゃあ、傷を見させれもらうよ」
 神狩屋は雪乃の尻肉を鷲掴みにし、ぐいっと割れ目を押し開いた。肛門がぱっくりと口を開かれ、痛いほどの視線を注がれるのがわかった。触手の出入りで出来た裂傷の具合を確認するため、シワの一つ一つを指で伸ばしながら状態を観察している。
「こっちも傷は小さいね。裂け目が見つかるには見つかったけど、シワの隙間にあって目立たなかったよ」
「そう」
「この部位は普通はもっと褐色気味、だと思うんだけどね。いや、一般的な色の具合はわからないけど、雪乃君は黒ずみが薄いから小さい切れ目もわかりやすいよ」
 肛門の具合を詳しく口に出しながら、神狩屋は指先に針を刺して血液の球を作る。雪乃の穴に塗りたくるようにして、彼は指の腹を撫でつけた。
 尻の穴を這いまわる指の感触に、雪乃は必死な思いで耐えた。シワを一つ一つのばされて、その隙間に丁寧に血を塗られる。猛烈な羞恥地獄を堪えるのに一杯一杯で、頭にはもはや「恥ずかしい」以外の文字はない。
「ひっ」
 指先が頭半分まで入れられて、雪乃は喘いだ。
 この指の挿入は肛門の側面にも血を塗りつけ、内側の傷まで塞ぐためのものなのだろう。指の腹が肛門で回転し、ぐりぐりと執拗に撫でてくる。
 屈辱的な構図だ。
 先ほどの仰向けM字開脚も同じことだが、それでなくとも尻を丸出しにして四つん這い情けない。なのに穴までじっくり見られ、あまつさえ指を立てられている状況など、格好悪いことこの上なかった。
 しかし、雪乃は涙を飲んで受け入れる。
 もう二度としくじらないため、失敗を自分自身に刻み込むため……。
「うん。これくらいでいいだろう。悪かったね、雪乃君」
 そして、やっとの解放……。
 治療の終わりにほっとしつつも、雪乃は今一度泡禍への憎しみを抱いた。自分を散々に辱めた挙句に恥ずかしい思いをさせたのは、他でもない泡禍だ。泡禍を許さないための心の燃料が補給され、雪乃は存分に憎しみの炎を抱いていた。
「……殺してやる」
 過去と、そしてこれから出会うであろう泡禍に対して、雪乃は小さく呟いた。