第4話 そして陥落の時
モスティマに休憩が与えられることはほとんどなくなっていた。
せいぜい、数時間かその程度の、僅かな睡眠時間だけが与えられ、それ以外ほとんどが調教に費やされた。
「あぁぁ……!」
今日の娼婦は三人だった。
二人に乳房をしゃぶられながら、股のあいだにも一人の頭が入り込み、クリトリスをペロペロと舐められている。舌先でくすぐられる感覚に、モスティマは激しく悶えてイキかけるが、やはり絶頂が近づくと愛撫も止まる。
「な、なんで……!」
「どうしたの? 何が、なんでなの?」
「いつになったら……い、イカせて…………」
「イキたいのね。でも、駄目よ? あなたの心がどん底に堕ちて、自分が卑しい雌豚だと認めるようになるまで、イかせてあげることはできないの」
「そんな……!」
モスティマはいつの間に、そんな状態に陥っていた。
イキたくてイキたくて、だけど決して絶頂させてはもらえない。寸止めを繰り返された回数は、一日で百は超えているかもしれない。
体中、キスマークでいっぱいになっていた。
腕や太ももにかけてまで、歯を立てて吸い上げた際の、皮膚に残される赤らみの跡は、おびただしく広がっていた。
「そろそろ休憩にしましょう」
「そうね」
「お昼はどうしようかしら」
娼婦達が休憩の話を始める。
モスティマにとって、ちっとも安心できる話でなく、娼婦達がここから消えるということは、単に辱めの種類が変わるだけとなっていた。
また、昨日のようにディルドが入る。
肉棒の感触が如実に再現されたリアルなディルドは、モスティマの膣に埋まっていくなり自動ピストンを開始する。それはもちろん、モスティマを事前に検知して、決してイかせることなく寸止めを繰り返す。
そして、娼婦達が休憩から戻って来れば、ディルドが抜かれる代わりに手や口での愛撫が再開され、体中を舐め尽くされる。
翌朝になると、それが四人で行われた。
さらに次の日には五人に増え、また次の日には六人に増え、娼婦の数が増える分だけ、ローテーションで分かれるようにもなっていく。三人ずつのチーム分けが休憩を挟んで交互に入り、ディルドか娼婦か、どちらかの刺激を受ける時間が絶えず続いた。
モスティマは決してイカせてもらえない。
何日経っても、それが義務であるように寸止めだけが繰り返され、どれだけ気持ち良くても爆発寸前で手が止まる。
モスティマには限界が近づいていた。
ここまで延々と焦らされ続け、頭の中には絶頂への渇望が溜まっていく。みっともなくても構わない、一度きりならプライドを捨てたっていい。どんな惨めなおねだりをさせられても構わないから、お願いだからイカせて欲しい。
そんな渇望が日に日に強まり、それでもモスティマはギリギリのところで耐えていた。
実際にクリトリスを愛撫されたり、ディルドが入っている最中には、自制心など消し飛んでしまっている。気持ち良さのあまりに何の余裕もなくなるが、寸止めされた直後であれば、渇望してしまう自分に気づいて、心を強く保とうと意識する余裕が辛うじて残されていた。
一体、何日経っただろう。
その日、モスティマは四つん這いにさせられていた。
やはり、ベッドの上で拘束用のベルトを巻かれ、手首足首からは鎖が伸びる。その鎖がベッドの骨組みに繋がることで、鎖のリーチの分だけしか四肢の可動範囲がなく、あまり自由には動けない。
いつも仰向けだったモスティマにとって、急に姿勢が変わることへの微妙な驚きもありはしたが、どうせ寸止めに耐える羽目になるのは変わらない。
ただ、いつの間に日数がわからなくなっていた。
数える余裕があったのは最初の一週間くらいなもので、牢屋に入れられてからは一日に数時間か数十分か、その程度しか寝ていない。トイレや食事など、厳密には細かな休憩がある以外、毎日二十四時間かけて、休みなく愛撫を受け続けているも同然だった。
今日の日付を見る機会もなく、日数感覚なくなったことに気づいた時、ちょうどその日になって四つん這いを命じられた。
「素敵だわぁ?」
今、モスティマを囲む娼婦は三人だが、その中でも存在感を感じるのは、同性愛の気がある美女だった。他の多くの娼婦には、そういえばレズビアンの気質はあまり感じず、ボスの命令だから調教に励んでいるのかと思ったが、これだけ色んな娼婦を抱えているなら、同性愛者の一人や二人くらい、いないはずもないわけだった。
「このお尻、とってもすべすべね。形も、大きさも、この尻尾も、みんな好みだわ」
レズ娼婦は真後ろから尻を撫で、いやらしい手つきで撫で回す。
「それはどうも」
と、そう答えてはみるが、こんな余裕はじきになくなり、数分後には喘ぐばかりとなる自分の未来がモスティマにはわかっていた。
「お尻の穴も、可愛いわねぇ?」
尻たぶに両手が乗ると、ぐにりと割れ目が開かれた。
「うぅ……!」
肛門を覗き込まれる恥ずかしさに赤らむが、こんな風に羞恥心を感じる余裕すら、愛撫の始まりと共に失われる。
「ふぅー……」
息を吹きかけられた。
「あら、ヒクってしたわ?」
嬉しそうに指摘してくる言葉に、ますます羞恥を煽られた。
「ま、まったく……うるさいよ……」
モスティマは赤らみながらそう返す。
しかし、この顔の赤みは果たして羞恥心によるものだけか。尻を撫でられる感触さえ、異常なほどに気持ちいい。ただ他人の手が接触してくるだけで、その部分から甘い痺れが解き放たれ、それが周囲に拡散する。
細胞がむずむずして心地良い。
軽く撫でられているだけで、本格的な愛撫でもないうちから、モスティマは既に息を荒っぽくしているのだった。
その時である。
ぺちん!
急に、尻を叩かれた。
「な……!」
その仕打ちにモスティマは目を丸める。
もちろん、散々な愛撫や寸止めも、全て立派な仕打ちであったが、この手の方法は初めてだった。
「今日からね? 私達、あなたが生意気な口を利くたびに、こうやってお尻を叩いてあげることにしたの」
その言葉に、モスティマは汗を噴き出す。
「……へえ、上下関係の教育っていうことかな?」
などと答えた瞬間だ。
ぺちん!
それもまた生意気な口の利き方であると判定され、そのお仕置きが早速のように行われた。
「んぅ……!」
そして、それが気持ち良かった。
(な、なんで……!)
叩かれてさえ気持ちいいことに、モスティマは軽く驚いていた。
確かに、力加減から考えれば、痛みを与える目的はそこにはない。ただ辱めの一種として、屈辱感を与えるためなのだろうが、それにしても叩かれて気持ちいいなど、痛みの代わりに快感が走ったも同然だ。
ぺちん! ぺちん! ぺちん!
お仕置きはもう何発か続いていき、その一撃ごとに走る痺れは、全てが甘い信号として神経を駆け巡る。尻が疼いて、肛門がヒクつき、まだ乾いていたアソコから、濃厚な蜜が流れ始めた。
スパンキングだけで、モスティマの内股は密かに湿っていた。
「あら、興奮した?」
「ど、どうかな……」
モスティマ自身には余裕ぶったつもりもなく、聞かれたことを無難に誤魔化してみただけなのだが、それさえもレズ娼婦の前では許されなかった。
ぺちっ、ぺちん!
ベチン! ベチン!
一言だけで、四発もやられた。
「あっ、あぁ……!」
「興奮した?」
改めて、レズ娼婦は尋ねてくる。
「した……した、から……。ほら、素直に答えればいいんだよね」
そう思って、興奮を白状する。
ぺちん!
「んぅぅ……!」
だが叩かれ、それに喘いだ。
「まだよ? まだ、自分が格下の卑しいメス豚である自覚に欠けているわ。ほら、もう一度チャンスをあげるから、もっといい答え方をしてみなさい? 興奮した?」
急に言われても、レズ娼婦の求める答えなどわかるわけがなかった。
一体、どんな媚びへつらった台詞があり、それを言えば相手を満足させられるのか。そんな言葉が咄嗟に浮かぶはずもなく、プライドの有無など関係なしに、そうそう言葉は出てこなかった。
だが、答えに詰まっただけでさえ、お仕置きは行われた。
ベチッ!
「んくぁ……!」
叩かれることで、まるで性感帯の愛撫のように声が出た。
「ほーら、何度でも聞くわ。興奮した?」
「したって、言ってるじゃないか……!」
ペチン!
「んぁっ、あぁ……! なんて、答えて欲しいのか……教えて欲しいね……!」
「自分が卑しいメス豚だと認めればいいのよ? ほら、言ってみなさい?」
「わ、私は……お尻を叩かれて感じるような……め、メス……豚………………」
屈辱的な台詞を言わされて、しかしプライドが声を小さくしていた。メス豚と口にする時に限って、か細い声が出ているのだった。
「ま、今回はそれで許してあげるわ。今日もたっぷり感じましょう?」
何度も尻を叩かれた挙げ句、やっとのことでいつもの調教は始まった。
その内容は大きくは変わらない。
全身にキスをされたり、ペロペロと愛撫され、乳首もアソコも舐められる。手と口を使った刺激で肉体にスイッチを入れられて、絶頂だけは決してさせてもらえない。娼婦だけに休憩時間はやって来て、そのあいだは電動式のディルドが自動寸止めを繰り返す。
モスティマに与えられる休憩は本当に僅かなものだ。
トイレや食事のために貰える時間は、全て十分間までで、たった十分が過ぎれば調教は再開される。眠気で意識を保てなくなる直前まで、延々と辱めを受けた末、ほんの一時間や二時間だけの睡眠で叩き起こされ再開される。
快楽地獄としか言いようのない日々が続いた。
モスティマには日数感覚がなくなっても、調教は二十日目に差し掛かっていた。
*
二十二日目。
モスティマは犬の散歩を行っていた。
もちろん、飼い主がペットを外に出すという、本当の意味での犬の散歩であるはずがない。ましてモスティマが飼い主になることもなく、娼婦こそがリードを握る主人となり、モスティマは四つん這い歩行を行っていた。
細い尻尾を振りながら、牢屋の部屋をぐるぐると、何周もかけて歩かされ、上手に歩けたご褒美として、バー状の栄養食を『エサ』として与えられる。
食事ですら、モスティマに上下関係を叩き込むための手段になる。
空腹でひもじいモスティマは、時間が経てば経つほど食事への渇望を強く抱くが、娼婦の言うことを聞いたり、何か満足をさせない限り、何も与えてもらえない。こんな監禁生活では、モスティマ自身の力で食事にありつくことは不可能で、与えられなければ何も食べることはできなかった。
「さあ、もう一周よ」
「……わん」
返事は『わん』と決められている。
勝手に人の言葉を喋ったら、尻を叩かれてしまうというのが、今日のモスティマに課せられる調教内容なのだった。
巻かれた首輪の感触は、モスティマにとって隷属の証のように感じられた。
(私って……)
丸裸で首輪に繋がれ、四つん這い歩行を行っている。
後ろでリードを握る飼い主には、丸出しの尻を向けている。
この状況のどこが奴隷ではないと言えるのかと、モスティマは自分に疑問を抱き始めていた。いいや、心まで屈することはない。精神的にも奴隷になる必要はない。逆らえない状況下にあるから、仕方なくそうしている。それ以上でもそれ以下でもないというのが、理屈としてはあるのだが、しかしモスティマはどうしても感じてしまう。
このどこが奴隷でないと言えるのか。
これではとっくに、卑しいメス豚の立場に成り下がっているではないか。
調教が心の中にまで染み込むことで、どうしても自分を下げる考えが浮かんでしまう。自分自身を下に置き、精神的にも奴隷であろうとする感覚が、自然と滲み出るようになっている。
(これじゃあ、みんなの思い通りじゃないか……)
我ながら、自分の心に呆れてくる。
(まだまだ……最後まで意思を保って、必ず一蹴してやるさ……)
どうにか、その目標は維持していた。
一ヶ月という調教期間の終了後に、ボスが再び「性奴隷になれ」と言ってきた時、それを一蹴してやろうと思う気持ちは、まだ完全には消えていない。染みつきそうな奴隷根性を必死に拒み、本来の自分を保とうとする意地を隠しもっていた。
だが、何周か歩き続けて、お散歩が終わる頃には、飼い主の手から『エサ』が与えられるのだ。ビタミンやタンパク質を豊富に含んだスナックバーが手渡され、モスティマはそれを口で受け取り、咥えるように食べていく。
手を使わず、口で受け取りながら食べるなど、まさしく動物の行動だ。
こんなことをさせられては、やはり奴隷根性が染みつきそうで、それを拒むのに心の中は必死であった。
「じゃあ、今日のエッチを始めましょうか」
この日も全身に愛撫を受け、いつものメニューで寸止めが繰り返される。
焦らされ続け、一度も絶頂していない日数は、こうしてまた一日増えていた。
*
二十五日目。
「んんっ、んずぅ……じゅるぅ……」
モスティマは咥えさせられていた。
それは壁から生やしたペニスで、実物に似せた作り物だが、性奴隷になった時の練習をさせられている。
「ほら、ボスにはたっぷり奉仕しないとね」
もう娼婦達は、モスティマが堕ちるものと考えていた。
そのつもりで準備を始め、感度を鍛えるだけでなく、奉仕の練習までさせているのだ。
*
眠る時、いつも何らの拘束具を付けられている。
人目を忍んでこっそりとオナニーして、寸止めが生み出す切なさを取り除くのは、だから不可能なのだった。自分自身の手でアソコを触ることは許されず、トイレの時さえ勝手にオナニーしないようにと、最低限の監視が入る。
だが、その代わりに夢を見た。
それは実にいやらしく、はしたないセックスの夢なのだった。
*
二十八日目。
眠りから揺すり起こされ、意識が覚醒した時から、とっくの昔のようにシーツがぐっしょりと濡れていた。
決して、おねしょではない。
だが、それが愛液だとしても、寝ているあいだに漏らした以上、お漏らしではあるのだろう。
「これはお仕置きね」
最初のメニューはスパンキングに決定された。
お漏らしをしてごめんなさいと、何度も何度も言わされながら尻を叩かれ、モスティマはそのスパンキングで気持ち良くなっていた。
*
そして、最終日の調教を終え、とうとう牢屋の外に出て、ボスの前に差し出されることとなったモスティマだが、その目つきはすっかり変わっていた。
何かを求め、媚びへつらうかのような、従属した犬の目つきがそこにはあった。
(だ、駄目だ……拒むんだ……性奴隷になんて、ならないって……)
ボスの問いかけに対し、それを一蹴する準備を心の中に整える。
しかし、本当にギリギリで、実に辛うじて意思を保っているモスティマの、その首には犬用のリードが繋がれている。犬のお散歩状態で歩かされ、ボスの間まで出て来たモスティマには、それを蔑む数々の視線と笑い声が降りかかる。
「おいおい、マジかよ」
「ワンちゃーん!」
「見ないあいだに、随分エロくなったねー?」
大勢の部下達がモスティマを見守っていた。
モスティマの歩くコースの両側に、何十人もずらりと揃った男達の視線という視線の数々は、その剥き出しの尻に突き刺さる。四つん這いのために垂れ下がり、真下に向かってプルプル揺れる乳房に刺さる。
そして、アソコは濡れていた。
この日、モスティマは一度として愛撫を受けていない。
にも関わらず、長い日数をかけて行い続けた寸止めで、触る前からヨダレを垂らし、内股を輝かせるまでに至っていたのだ。
「見違えたな。モスティマ」
王座にかけたボスは、段差の上からメス犬を見下ろしていた。
「そう、見える……かな……」
今までと変わらない、自分らしい自分を演じてみせるが、その息遣いは明らかに興奮で荒くなっていた。犬がハァハァとしているように、性欲に駆られた体からは、刺激を求める熱が放たれ、誰が見ても性的に興奮している状態だった。
「さて、肝心の言葉をかけるとしよう」
いよいよだった。
「この言葉を拒むことが出来たら、約束通りに解放しても構わない」
そんな前置きを耳にして、モスティマは気持ちを固める。
拒むのだ。
絶対、何があっても。
どんなことがあっても、性奴隷になどなってたまるか。
「イカせて欲しかったら、性奴隷になれ」
一瞬にして、モスティマの中で固まっていた強い意思が砕かれていた。
「え……」
まず先に、呆然としていた。
イカせて、もらえる?
まるで縋り付くべき希望を見つけたような、そんな眼差しさえ浮かんでいた。
「どうする? モスティマ?」
その瞬間、猛烈な嵐が吹き荒れる。
イキたい――イキたい――イキたい――イキたい――イキたい――イキたい――イキたい――イキたい――。
いいや、駄目だ!
どうして性奴隷なんかに!
でもイキたい――イキたい――イキたい――!
理性を保とうとする心は、押し寄せる嵐に飲み込まれる。
絶頂への渇望という強烈な風に吹かれて、どんなに強固な意志を保とうとしてみても、体中が疼いて求めてしまう。
「もちろん、性奴隷にならないのなら、それ以上の刺激は与えない。解放された後、一人でオナニーでも何でもすればいい。我々はもう君に手を付けない」
それは今のモスティマにとって、人を見放す言葉のように感じられた。
寸止めが今日まで続いた体には、あんまりな言葉に聞こえてしまった。
どうする……どうするんだ……。
でも、性奴隷って……。
ここで、ここで流されたら……。
最後の最後まで、モスティマの中には心を強く保とうとする部分があった。
「こ、ことわ…………」
そこまでは言いかけていた。
断ると、ボスの言葉を一蹴してやるための、実にシンプルな語句を吐き出そうと、そこまでは言えていたのだ。
だが、その先が途切れたままだった。
ここで断れば、もう永遠に絶頂できないかのような心理に陥っていた。
そんなわけがない。
ボスの言う通り、解放された後になって、好きにオナニーをすればいい。そのくらいの理屈は頭の片隅ではわかっているのに、何故だかそういう気持ちに囚われるのだ。
「わ、私は……!」
そして、ついにモスティマは答えようとした。
決めた言葉を吐き出すはずだった。
*
しかし、そこには失神したモスティマが倒れていた。
散々に調教を行って、モスティマに奴隷根性を叩き込んだはずの娼婦達にとって、モスティマの言葉は決して面白いものではなかった。ボスに対して生意気な口を利くのが気に入らず、怒りのあまり取り囲み、みんなの見ている前で乱暴な愛撫を始めたのだ。
四つん這いのモスティマに対して、そこに笑顔でもあったなら、みんなで犬を可愛がろうとする場面に見えてもおかしくない。だが、怒りや苛立ち紛れの表情では、そんな光景に映ることもなく、そこから悲鳴のような喘ぎ声が響いたのでは、むしろリンチに似ていただろう。
「どうですか?」
「この通り、簡単に絶頂します!」
「よい仕上がりだとは思いませんか?」
娼婦達にとって、プライドがかかっていた。
精一杯仕込んだ『品物』の良さを伝えるため、こんな形で絶頂を解禁し、こうすればイってしまうと教えている。こうやっても大きく喘ぐ。こんな風にしてもイキ散らすと、必死にプレゼンテーションを行っていた。
「おあああああああああ!」
獣の雄叫びにさえ似た喘ぎ声が再三にわたって響き渡った。
そのたびに潮が噴き、床が汚れる。モスティマ自身の身体も、娼婦達の下着やネグリジェにも愛液がかかっていくが、お構いなしに娼婦達は愛撫を続け、乳首やクリトリスをいじめ抜く。
そんな娼婦達の様子を見かね、やれやれとため息をつきながらも、ボスは改めてモスティマに尋ねるのだ。
「では彼女達に免じてもう一度だけ――性奴隷になれ」
イカされたことで、モスティマの頭はどこか朦朧としていた。
脳で何かが弾けてしまい、ぼーっと瞳の焦点も合っていない。ぼんやりとした表情に、色っぽい赤みのかかった顔は、誰が見ても普通の状態のものではなかった。
モスティマにとって、散々焦らされ続けた上での絶頂地獄は、せっかくの覚悟と意思を打ち砕き、いとも簡単に押し流すほどの力があるのだった。
「なる……なるよ……」
とうとう、モスティマは陥落した。
最後の最後で、保てるはずだった心を快楽に砕かれたのだ。
*
「よお、モスティマ」
「ちょいと咥えてくれませんかねぇ?」
バーのテーブル席に配膳を行った時、そこに座っていた二人の組織メンバーは、モスティマに奉仕を命じてくる。
「しょうがないな……」
言われるままに床にしゃがんで逸物を咥えるのが、今のモスティマの立場であった。
このバーは地下施設の一部であり、ボスの管理下で出店の許可を得た経営者が、そのままボスの居城で稼いでいるのがこの店だ。当然のように組織メンバーが主な客層となり、店員には多くの娼婦が使われていた。
つまり、ここは娼婦にとっても稼ぎ場所である。
「あむぅ……」
もっとも、新人であるモスティマには、最初の月は収入がない。
ただの使い走りであるように、言われれば咥える立場で、テーブルの下に潜って逸物を頬張っているのだった。
(脱出……したいんだけどね……)
相変わらず、薬は打たれ続けている。
私生活にも監視が入っているために、武器になるものは迂闊に所持できず、アーツユニットの所在も掴めない。まだどこかに保管されているのか、それとも売り払われているのか。それさえわからず、ただ無意味に機会だけを窺っていた。
隙がなく、毎日のように断念を繰り返す。
そんな形で脱出を意識し続けて、咥えている今にも心では諦めていなかった。
だが……。
だらっ、と。
調教され尽くした肉体は、ただフェラチオをしているだけで濡れてきていた。ワレメの奥がヒクヒク疼き、今にも内股を濡らしそうになっているのだった。