第3話「実習開始から」
御影梓はバっと突然起き上がった。
「すみません! 復活しました!」
スポーツで全国大会へ行く人間だ。
スタミナならいくらでもあるのだろう。
梓がだらけていた数分間――というか、壁時計を見て気づけば二分もないが、ともかくそのあいだの俺は、下げたショーツを直しやったり、愛液で汚れたソファや床を拭いたりして、こうして起き上がるのを待っていた。
おっぱいを出しっぱなしにさせても良かったが、必要ならまた脱がせればいいので、ブラやボタンは直してある。
「ああ、復活おめでとう」
「頭が真っ白になって、物凄く力が抜けて、初めて絶頂を知ったものでつい……」
申し訳なさそうにしている梓。
「けど、梓ちゃん。勉強になったんじゃない?」
「……そうですね。ヒジョーに恥ずかしい思いをしましたけど、一度ハードな思いをすれば、後がラクに思えますからね」
そんな梓を隣に抱き寄せ、太ももに手を置くと――こうでしょうか? とでも尋ねたいような、授業中に質問を行うのと変わらない表情を浮かべて、脚をかすかに開いていた。俺が性器を触りたがっていると思ったようだが、まさしくその通りだったりする。
「そうそう。相手がシたそうにしてきたら、目上のご機嫌を損ねないようにする」
スカートの中へと手を潜らせ、俺はショーツ越しに指で触った。
もちろん、まだ乾いてはいない。
ヌルっとしたものが、今さっきティッシュで拭いたばかりの指に絡みつく。布としての感触はほとんど愛液にコーティングされ、ホカホカになったアソコの温度が俺の皮膚に伝わった。
「こ、これ……答えがなくて難しいですね……」
微妙に感じる素振りを見せながら、梓は俺の背中に手を回し、梓の方からも俺のことを抱き寄せる。
「さて、梓ちゃん。では何が難しいと思う?」
あまり喘がせると、まともに喋れなくさせてしまうので、刺激を与えすぎない程度に、下着に染みる愛液のねっとり感を指に味わう。
本当にヌルヌルだ。
気持ちとしては、まるでスープをかき混ぜるようなつもりで、指の先端をぐるりぐるりと滑らせていく。
「……んっ、んぅっ、た、例えば人形みたいに動かない子としたいって人は少ないと思いますけど、もしそういう相手だったら今のは不正解になりますし、それが面接官の心象を悪くしないかっていうのが怖いかなと」
息を乱しつつも、梓はしっかりと自分の考えを述べていた。
「相手を完璧に見抜くのは、まあ無理だもんね」
「見抜けたらエスパーですよ」
「ただまあ、面接官が見たがっているのは受験生の熱意や人間性だから、何度も言うけど性癖願望を見抜いて叶えることは重要じゃない。そこは判断基準じゃないから、やりたいプレイができない理由で点数を下げてくる。なんていう心配をしすぎても駄目だぞ?」
経験則で男性側の性的心理を見抜くなど、それこそ風俗嬢でも目指すべきだ。
普通の女の子には関係ない。
ただ、一般的な性的奉仕は経験が無ければ土壇場で出来ずに終わったり、やる気のないフェラチオと勘違いされ、何のために咥えているんだと思われる危険性がある。あらかじめ練習を行うのは、本番でのリスク軽減の意味合いが大きい。
「だけど、愛情表現とも関わりますよね。別にまだ彼氏なんていませんが、できたときにはきちんとできた方がいいですし、やるからには色んな意義があった方がいいと思うんです」
梓も一人の女の子だ。
意中の相手がいるなら、この場所に恋人でも受け入れたいものだろう。
「好きな男子は?」
いずれどんな男が梓の肉体を手に入れるのかは置いても、今のところは俺の手でぬかるみを広げている。
「……いやぁ……わかりませんよ。放課後になったらソッコーでバスケの練習。それ以外の時間は成績上げるために勉強で、男子のこと考える時間が少なすぎて」
普通に喋っているようでいて「はぁっ、はぁっ」と、かなりの熱気を含んだ息遣いの音が聞こえて来て、表情からも感じてる様子がよくわかる。
「そっかぁ、それで高校でもバスケバスケって生活になるでしょ?」
ここを気持ちよくしてやるような男が、果たして高校生活中に現れるのか。仮に彼氏が出来ても、ライフルスタイルを考えるとデートの時間は少なすぎる。となると、男は他の女の子に目移りすることもありそうだ。
「そうなりますけど、感度を鍛えて損はない気がしまして」
「まあ、感じやすい方がね。彼氏がいたら喜ぶだろうね」
「そこで思うんですけど、交際相手との本番も、もしかしたら私って、緊張しすぎてやばいくらいに頭が真っ白なんじゃないかって……」
「そうか? むしろ梓ちゃんの方からリードできそうに見えるけど」
私生活でのイメージでは、お互いエッチに踏み切る際も、梓のリードで場を作りそうな気がしていた。
エッチでは緊張しすぎると本人は言ったが、今まさにもう慣れている。
不慣れな女子が、手マンされながら会話などできはしない。
「いやっ、どうでしょう。ともかく経験あるのみ! 今先生がやってるのって、用語では手マンでしたよね」
梓はおもむろに自分のアソコを意識して、俺の指に合わせてくねり始めた。ワレメのラインに指を合わせて、バイブ代わりに振動を送ってやると、やや悩ましげになって声を出す。
「んぅぅぅ……んっ、気持ちいいです…………」
「エッチが好きになった?」
「ちょっとだけ…………」
「エッチが好きな気持ちがあると、どんな時の役に立つ?」
「いっ、異性との――あっ、んっ、た、正しいコミュニケーション……。こ、交際相手との関係がっ、あふぁ……進めばっ、んむぅぅ……と、当然セックスしますけど……お互いに初々しかったりすると……んっ、肝心の行為に踏み切れない可能性があるから……あっ、んっ、エッチが好きな気持ちを――んくっ、育てておくと……そういった時の役に立ちます……」
「よろしい。用語もわかってるようだし」
「っは、はい……。んぁっ、暗記してます。気になったのは――はふぁ……んっ、あぁ……手コキや尻コキって名前なのに――はふぅぅ……んっ、んっ、おっぱいに挟むのは、パイコキじゃなくてパイズリなんですよね」
「そうだなぁ」
喋りにくそうなので振動は止めるが、代わりに手の平全体でアソコを包んで、指を躍らせたマッサージによって愛撫を継続する。
「だったら手ズリや尻ズリでも、別にいいんじゃないかって」
「そう言われると、語源までは勉強してなかったな。教師としての盲点だよ」
「まあテストには出ないんでしょう?」
「出ないね」
「それはそれとして、私のお尻の穴まで見ましたよね」
「見たよ? 梓ちゃんの肛門って、色合いがいい方だね」
「あぁっ、恥ずかしい以外の言葉は特に出ません」
梓は思い出したように赤面して、両手で顔を覆い隠した。
「でも、快感の方で頭が真っ白みたいな状態だったでしょう? きちんと恥ずかしがるっていうと変だけど、そういう状況じゃなかったんじゃない?」
「それなんですが、面接ってあの書類も資料にされてるんですよね?」
梓のいう『あの書類』とは――。
全国の中学生に行われる性にまつわるアンケートで、そこではオナニーの経験があるかないかや、乳房の膨らみ始めた時期、陰毛の生えた年頃などを記入する。ありとあらゆる性関連の項目が並んだものだ。
推薦入試では面接官がその資料を片手に質問を行う。
――あなたはオナニー経験有りだそうですが、普段はどのようにしていますか?
――初めてのブラジャーの色を覚えていますか?
――今まで接したことのあるアダルト作品はどのようなものですか?
なんて聞かれても、受験生にはきちんとした受け答えが要求される。
「あの書類のことで何か心配ごと?」
「あれって、恥ずかしくて受け答えが困難になったら困りません?」
「普通の質問なら受け答えが悪いと駄目だけど、性にまつわるものは答えようとする意志が見受けられれば大丈夫だよ」
「いえ、でもマナーとしては、お忙しい中を来て頂いている方々のはずでしょうから、そういうことにならない緊張対策は必要だと思ってます」
梓は目が真剣だ。
この生徒が自主性を発揮しようとする様子は……。
「何か個人的に対策方法を思いついたっていうことかな」
「私の恥ずかしい部分。見て頂けませんか? 今のうちに恥ずかしい経験をすれば、後々に繋がるはずですから」
やっぱり、いい生徒だ。
学び、自ら成長しようとする意欲がある。
そういったハングリー精神の持ち主だから、バスケでも全国大会へ行くほどの練習量を望んでやり、そして優勝したのだろう。何度か部活の様子を見た限り、チームメイトはみんなで梓のことを慕っているようだった。
十中八九、推薦は通るだろう。
落ちる可能性があるとするなら、狭い枠の中で梓を揺るがすほどの強敵がいた場合。そんなライバルはやたら滅多にいないだろうが、その万が一が起こった時、ロクに面接の対策を考えていなければどうにもならない。
梓としては、そういうどうにもならない状況を作りたくないのだろう。
本番では自信を持って、練習では自分をまだまだ未熟と思う。
これもまた、そういう心がけから来る申し出なのだろう。