サリアの検問陵辱 前編

 ロドスの任務先となった町では、厳しい検問が行われていた。
 サリアの引き受けた任務は、端的に言えば町の調査だ。
 それまで鉱石病の少ない町で、だから感染者への差別も、それに対する反発の声も、必然的に上がって来ない。ほとんどが病気を知らず、健康に暮らしている町なのだったが、ある日を境に急増して、唐突に問題が山積みになったと聞く。
 それは単なる偶然でなく、何か裏があってのものとドクターは睨んでいる。
 その裏を暴き出し、原因を突き止めるのがサリアに課せられた任務であり、ドクターの睨んだ通りであれば、事態を引き起こした危険な連中と接敵することになるだろう。大人数では目立ち過ぎ、かといって単独では危険が予測できることから、腕の立つサリアに任務は任されることになったのだ。
 いざ町に到着してみれば、つい数日前まではなかったはずの検問が始まっていた。
 聞けば鉱石病が増えたからというもの、さらに犯罪者などの流入まで増え始め、治安の悪化で厳しくせざるを得なくなったとの話だが、果たしてこれをどう読むか。
 検問官の話をそのまま受け取るか、それともロドスからの調査員派遣に合わせたものと捉えるかは、まだ判断がつかない。
 ともかく、サリアは今、検問所の中にいた。
 町の周囲をぐるりと囲う防壁の、その出入り口として作られたトンネル状の通路には、住民や来客の出入りを記録する管理所が設置されている。普段は通路内の受付で簡素な手続きをするだけで、簡単に出入りができたそうだが、検問の厳格化により、臨時に検問室が設けられることになったという。
 つまり、サリアは検問室にいるわけだったが、ここで行う話を聞けば聞くほど、顔を顰めそうになっていた。
 それまでは簡単な作業で済んでいたのだ。
 ならば、やる方にとっては急に仕事が増えて面倒なことだろうが、体を詳しく調べると言われては、サリアとしてもあまり良い顔はできないのだった。

 サリアは今、検問官と二人きりだった。

 訪問の連絡は事前に行っており、通路受付で名前を名乗るなり、すぐさま担当者を呼ぶと言われての、それから現れた担当者に案内される形でここにいるが、こんな密室ではまるで容疑者の取り調べだ。
 担当のこの男は、そのまま検問官として仕事をこなし、サリアの入場について書類を作成
しなくてはいけないらしい。ではどういった審査があり、どういうチェックの末に町に踏み入る許可が下りるのか、その説明を受けたところで、サリアは腹の底でため息をついていたわけだった。
 気持ちを露骨に顔に出したなら、一体どれほど嫌そうな顔を自分は浮かべていることか。

「入念なボディチェックを命じられておりまして」

 などと言われて、機嫌など良くならない。
 事務的な職務の一環として、淡々とこなすのだろうが、かといって他人に体を触られることに関して不快感がないわけがない。その際の説明として、中には抵抗して暴力に走る者もいて、その場合は入場を許可できなくなるとも言われている。
 訪問理由や滞在期間について、口頭でのやり取りや書類への記入をこなしていくと、そしてボディチェックの時を迎えることとなる。

「ではサリアさん。体に手を触れさせて頂きます」

 いよいよだった。
「ああ、早く済ませてくれ」
 せめて一秒でも早く終わって欲しいのが、サリアの心からの願いである。
「そうですね。まず、頭の後ろに両手を組んで頂いて――」
「こうか」
 後頭部に両手をやると、検問官の両手が早速のように伸びてくる。服の上から脇下をそれぞれ擦り、衣服の内側に何か物は隠していないか、素手によるチェックは始まっていた。
 不快感でたまらない。
 脇下から肋骨へ、腰のくびれへと手は移り、一箇所ずつ丁寧に調べてくるが、こんな風に調べる目的で触れる感覚は、まるで痴漢でもされているような気分の悪さで落ち着かない。本当の痴漢であれば撃退など造作もないのに、町への入場や任務がかかっている中で、事前にあった説明にサリア自身が同意しているのだ。
 ボディチェックを受けない限り、入場の許可はできないとする旨に対して、では受ければいいのだろうとサリア自身が返している。
 いわば手続きを経て自分自身で許可を出した状況では、それを糾弾することなどできようはずもない。
(まあいい)
 サリアは密かに歯を食い縛り、表情にこそ出さずとも、ぐっと我慢していた。
(何分かかるかは知らないが、こうして立っていれば終わるだろう。早いところ任務をこなし、この町について調べなくては)
 町の状況について思いを巡らせ、様々な推測を頭に浮かべてみることで、触られている不快感から気を逸らそうとしていた。しばらく我慢していれば、数分後にはチェックは終わり、晴れて町に通してもらえるものと考えていた。
 しかし、なかなか終わらない。
 這い回る手は腹部に移り、やがては胸まで揉まれ始める。
(そんなところまで触るというのか……)
 不快感はより猛烈なものとなっていた。
 サリアの着ている衣服は生地が厚めで、ちょうど乳房の部分には『×』の形を成すようにベルトが装飾として通してある。その黒い×印の上から両手によって、胸がしばし揉まれた挙げ句、さらにはスカートにまで手は移る。
 膝よりも何センチも下まで伸びた丈の長さの、その上から検問官は足を触って撫で回す。ふくらはぎをしばし揉み、太ももに手を移し、後ろ側に回って尻まで触る。やはり痴漢でもされている感覚に陥って、もはや耐えがたいほどの不快感を感じていた。
(まったく、いつまで耐えていればいい……)
 眉間に皺が寄っていく。
 苛立ちで顔が強張り、しだいしだいに頬が震え始めていた。
「いつまで続くんだ?」
 触られ続ける状況に耐えかねて、サリアは苛立ちを押し隠しつつも尋ねていた。
「そうですね。どうも衣類が分厚いようなので、上から触るだけではどうも」
「何だと?」
「申し訳ありませんが、スカートの内側をチェックしても構いませんか?」
「ふざけてないだろうな」
「もちろん職務上の行為です。他意はありません」
 検問官はあまりにもきっぱりと答えていた。
 これだけ体中を触られただけでさえ、抵抗感でいっぱいだったのだ。それをスカートの中もなど、いくらなんでも耐えがたいとは思うのだが、この検査を受けなければ町に入ることもできないはずだ。
「……ちっ、いいだろう」
 実に仕方なく、サリアは了承した。
 その瞬間にスカートは持ち上げられ、丈が膝よりも高い位置にきたところで、検問官はその中身を覗き込む。
「黒、ですか」
「――っ!」
 羞恥と共に怒りが込み上げそうになり、サリアはひどく歯を食い縛っていた。顔がみるみるうちに赤らんで、拳は力んで震え始めた。
「では少し詳しく調べますので」
 検問官は断りを入れつつも、ポケットから取り出すペンライトで中身を照らす。そんな場所に何も隠してなどいないサリアにとって、何をそこまで詳しく調べたいのかが理解できずに、ただの下心ではないかと疑念を抱いていた。
(検問など口実ではないだろうな?)
 疑念が顔にも浮かび上がって、その眼差しはいかにも相手を問い詰めんばかりの、どこか攻撃性を帯びたものとなっていたが、肝心の検問官は自分を見下ろす表情に気づいていない。
 検問官は頭にスカート丈を被っていた。
 中に潜り込まれた形となって、だから検問官の頭の分だけ、サリアのスカートは膨らんでいた。そして、その中で検問官は、片手ではペンライトで照らしつつ、もう片方の手でショーツ越しの性器まで触り始める。
「くっ……!」
 しかも、なぞられただけではない。
 少しのあいだ愛撫され、その数秒後にはずらされたのだ。きっとペンライトが照らし出す明かりの中ではワレメが剥き出しに、そして検問官は肉貝を直接触り、指まで入れようとしてきている。
「そこまでするというのか」
 サリアの声色にはかなりの怒気が含まれていた。
 検問官が言葉を選び間違えれば、少々のきっかけで暴発しかねないまでに、サリアは怒りや屈辱を胸に溜め込んでいた。
「ええ、内部をチェックする必要がありますので」
 ワレメの内側に隠れた膣口に、とうとう指先が突き刺さる。
 そのまま指を埋め込むと、検問官は探るような手つきて膣壁を擦り始める。そのタッチはいかにも調査といった具合で、膣壁の触感を調べでもしているように感じられたが、手つき一つで気持ちが変わるはずもなく、サリアの中で羞恥も屈辱も膨らみ続ける。
 ようやく、その指が抜かれた時だ。

「では審査を行いますので、このままお待ちください」

 スカートの中から出てきた検問官は、まだ全てが終わっていないようなことを言い出していた。
「これでまだ通れないだと?」
「検査結果を報告して、上層部のチェックを受けた後、その認可で初めて出入りが許可できます。書類上の手順が色々とありますので、どうかご理解を」
「……ふん。まあいい」
 気持ちとしては納得しきれていないものの、膣口まで調べたのだ。これで通れないはずはなく、審査が済めば今度こそ完了になるのだろうと、この時までは思っていた。
 だから思うところはありつつも、ここは飲み込むことにしていたのだ。

     *

 しかし、あれから十分以上は経過していた。
 室内にあった椅子を借り、静かに座って待つあいだ、サリア自身には場所もわからない審査の場では、ここでの身体検査の報告と、それにアーツユニットの検分も行われているはずだった。
 サリアは壁掛け時計に目をやった。
 特にやることもないせいで、物思いに耽ったり、任務にまつわる考え事でもしていなければ、なかなか時間が潰れてくれない。ただ座って過ごすだけでは、一分間さえ長く感じてしまう中、サリアは尿意を感じつつあった。
 まだ我慢の効く範囲だが、早めにトイレへ行くに越したことはない。
 だが、断りを入れてこの場を離れていこうにも、待たされるばかりで誰もいない。声をかける相手がいないのでは、勝手に動くのも憚られ、仕方なくじっと過ごしていると、さらに数十分が経過していく。
「本当に、いつまで待たせるつもりだ……」
 こうしているあいだにも、尿意は強まっていく。
 しだいに危機感を覚え始めていた。
 まだ我慢ができはするが、いずれは危険な領域に達するだろう。お漏らしなどしてしまうより、やはり勝手に部屋の外を出歩いて、勝手にトイレを探した方が、いくらかはマシなはずだと考え始めていた。
 この時までは、また頭の中で考えているだけで、実行するつもりはなかった。
 しかし、さらに十分以上の時が流れて、そろそろ一時間は待った頃合いになった時、さすがのサリアも立ち上がった。
「……もういい。どうせすぐ戻る」
 もちろん、トイレの場所を知っているわけではない。
 かといって、道に迷うほど複雑な構造などしてはいないだろうと踏み、サリアはとうとう無断で部屋を出ようとした。
 ちょうど、その時だった。

 サリアが開くよりも前に、ドアが外から開かれていた。

 立ち上がるなり突き進み、そしてドアノブを掴もうとした時に、開いたドアから先ほどの検問官が戻ってきていた。
「おや、どちらに」
「トイレだ。行かせてくれ」
「そうですか、トイレですか」
「私一人だっただろう? 断りを入れる相手がいなかったんだ。だがいつまでも我慢はしていられない」
「すみませんが、審査が完全に終了するまで、部屋から出してはいけないと言われておりまして」
「何?」
 怒りが込み上げそうだった。
「ですので、トイレは許可できません」
 こちらは切実だというのに、人の気も知らずにあっさりと言われては腹も立つ。
「正気か? 生理現象を好きで止められるわけではないんだぞ」
「あの、すみません。しかし、こちらも規則には逆らえないもので……」
「融通が利かないな」
「申し訳ございません。ああ、それと、審査結果の方はまだ出ません。内情をぶちまけますと、審査員の中にロドスを迎え入れることに懐疑的な者がおりまして、余計に時間がかかっているのはそういう面のためでして……」
「わかった。なら、あともう少しだけ待っていよう」
 仕方がなく、サリアは椅子に座り直した。
 すると、検問官はどうするのかと思いきや、ドアの横で休めの姿勢を取り始め、まるで見張り番のように立ち始めた。
「監視のつもりか?」
 サリアは尋ねる。
「役目、ですので」
「まったく、お前も大変だな」
 これでは軟禁状態と変わらない。
 審査結果さえ出てしまえば、入場可否に関わらず、どうあれ部屋の外には出られるはず。あともう少しで済んでくれれば、トイレはその時にでもと思ったのだが、やはり一向に結果が出ない。
 何の連絡もない様子で、検問官はただ一人、監視としてサリアを見ている。
 決して居心地が良いとは言えない。
 監視名目の視線が向けられている中、時間が経てば経つほど尿意は本当に切実になってきて、我慢のために性器や内股を力ませるようにすらなってきている。こうも排泄を堪える状況が続くのは、もはや真っ平だった。
 検問官が見張りと化し、それからまた十分以上が経ってなお、サリアに何の結果も伝わってこないのだ。
 もう我慢ならない。
 この歳にもなってオシッコを漏らすのが、時間の問題と化していた。

「おい」

 サリアは立ち上がる。
「はい、なんでしょう」
「限界だ。トイレに行かせてもらう」
「ですが――」
「本当にトイレに行きたいだけだ。監視なら監視らしく、着いて来ればいいだろう」
「そう言われましてもですね」
 どうしてもトイレに行きたいサリアに対して、決まり、規則、役目といった言葉を並べる検問官では話にならない。このままでは押し問答になるだけだと思ったサリアは、無理にでも突破していこうとした。
「もういい、通してもらうぞ」
 それほどまでに切実なのだ。
 強行突破を考えるしかなくなるほどに、尿意による危機感でサリアは焦燥しているのだった。
「ま、待ってください! では今すぐに確認を取りますので、あと一分! 一分でいいのでお待ちください!」
 ようやくサリアの焦りが伝わったのか、それでも融通を利かせられずに、確認の連絡などと言って部屋を出る。
 言葉通りに一分ほどで、すぐに戻っては来るのだが、その口から伝えられる結果は、決して面白いものではなかった。

「すみませんが、トイレはこの部屋で行って頂きます」

 一瞬、言っている意味がわからなかった。
 あまりにも突拍子のないことを言われたせいか、まるで理解できない言語でも聞かされたようにして、サリアは随分と大きく目を丸めていた。
「……正気か?」
 やや沈黙を挟んでの問いかけだった。
「仰ることはわかりますが、部屋を一歩でも出たら、無条件で不許可になるそうで、トイレの件を伝えてもなお、上からの意見は変わりませんでした。となると、他に手段がありませんので、この部屋で用を足して頂きます」
「冗談じゃないぞ。漏らせとでもいうつもりか?」
「立って床にして下さい」
「トイレの中まで、個室の中まで監視された方がマシだ」
「そういった対応はできませんので」
「本当に話にならないな。正気を疑うぞ? もう一度言うが、個室の中まで監視された方がマシだ!」
 トイレでもない場所で、それも人様の部屋でするなど考えられない。そんな風にするくらいなら、いっそ本当に個室に入ってもらい、用を足す瞬間まで監視してもらった方が、一体どれだけマシかとさえ考えていた。
「もう一点、身体検査が不十分であるとの指摘を受けましたので、改めてお体を調べさせて頂きます」
「お前は……! この検問所は……!」
 怒りのあまり、もう本当に暴れ出したい。
 暴れて、何かを破壊してやりたい衝動さえ湧いてきていた。
「どうか、ご理解を」
 こちらのトイレに行きたい主張は聞かないくせに、自分達の指示には従ってもらおうとする姿勢が気に入らない。いっそツバでも吐きかけてやりたかったが、頭に熱が溜まったところでサリアは一度深呼吸を行った。
 それは精神的な作業であった。
 怒りで熱にまみれた脳に、少しでも冷気を与えようと試みて、サリアは少し気を落ち着かせる。もっとも、そんな風にしてみたところで、全てが鎮まりきるはずもなく、腹の中にはふつふつと煮えたぎるものが残っていた。
「どうあっても、非常識な真似をさせようというのか」
「そうなります」
「そうか。なら、好きに調べればいい」
 サリアはどこか諦めの境地に至り、そうしたサリアの様子を見るや否や、検問官はすぐさま指示を行ってきた。
「ではスカートを持ち上げて頂けますか?」
「……ふん」
 心底気に食わないとは思いながらも、サリアはスカートをたくし上げ、穿いている黒いショーツを表に出す。
「では下着の方を」
 などと言い、検問官は目の前に膝をつくなり、サリアのショーツを下げ始める。先ほどはずらされただけだったが、今度はより明確な形で性器が剥き出しとなり、しかも自分の下着が男の手に渡った不快感までもが胸中にせり上がる。
 検問官はワレメをなぞり始めた。
 指先が恥部のラインに沿って上下に動き、その触れるか触れないかといった具合の加減で足腰がむず痒くなってくる。不本意な話だが、こんな状況であれ快感の気配もあり、サリアは顎をぐっと引き締めながら堪えていた。
 愛液が染み出し始める。
 まだ微妙な気配だけだが、指の上下が続けば続く分だけむずむずと、快感のようなものが膨らんで、やがてはワレメが湿っぽくなってくる。あともう少しだけ濡れて来れば、指とアソコのあいだに糸を引きそうにまでになって、検問官はそこで指の挿入を開始していた。
 膣に指が埋まってくる。
「……さっさと済ませろ」
 サリアの語気は荒かった。
 他人の指が入ってくることへの不快感もそうだったが、しかも放尿を我慢している状態で、いつ限界が来るかもわからない危機感の中で、膣口を調べられている。埋まってきた指が出入りを始め、その刺激が太ももに走った時、危うくこのまま漏らすのではないかと、さしものサリアも心臓が跳ね上がっていた。
「いい加減にしたらどうだ? もう十分だろう?」
 本当に強い口調で、睨む視線の鋭さはますますのものとなっていた。
「おい、聞いているのか」
 語気がより荒っぽく、低くドスの効いた声さえ発していた。
 終わる様子のない指の出入りに、その快楽電流の拡散に、尿道口や膀胱のあたりにまで刺激が及ぶ。我慢に我慢を重ねた部分にも伝わる刺激は、ただでさえ高まった危機感をより煽られ、このままでは本当にいつ漏らしてしまうかもわからない。
 いいや、もう今すぐにでも出てしまっておかしくない。
 そんなサリアの焦燥を証明でもするように、とうとう尿道口から尿の滴が、小さな玉となってぷっくりと浮き出ていた。

 まずい……!

 焦りでピクっと頬が強張り、弾んでいた。
「おい! 本当にトイレには行かせないつもりか!」
 サリアは大声まで出して、もはや恫喝の勢いだった。みるみるうちに強まる尿意に煽られて、あまりにも焦ったせいで、他にどうしようもなく怒鳴り散らしていた。そして、そんな怒鳴り方をするということは、つまり限界を示していた。
 もうサリアの尿意は来るところまで来てしまっている。
「くっ、お前は……! 人に漏らさせて面白いのか!?」
 たった今から移動しても、トイレに向かう途中で漏らしかねない。もう下手な身動きを取ることさえ憚られるほどまでに、決壊直前にまで来てしまった尿意のために、もはやサリアの運命は決まっていた。

 チョロッ、

 と、ほんの少しだけ、スプーン一杯にも満たない程度の量が、まずは手始めのように放出された。
 それは検問官の指がアソコに入ったまま、だからその手にもかかっていた。尿道口から出てきたものが、表面を伝って流れ落ち、刺さっていた指にそのままぶつかり、指の形に沿って二手に分かれる。
 半円を成してぐるりと流れた滴の玉は、ちょうど半周後には正面衝突のように合流して、床にぽたりと落ちていた。

 ぽたり、ぽたりと、

 何滴も、落ちていた。
「……これで、満足なのか?」
 サリアは実に恨めしそうに検問官を睨んでいた。
 人を呪い殺してやりたいほどの、憎悪にさえ満ちた目つきは、しかし真っ赤に染まり上がっていた。もはや避けようのないところまでやってきて、これから小便を漏らす運命に置かれたサリアには、これでもかというほど憎しみが浮かび上がっていた。
「この……最低のクズめ……!」
 親の仇でも睨みつけているようか顔をして、視線を鋭くしたサリアは、やがて決定的な放尿を開始していた。

 ジョロォォォォォォ…………。

 先ほどの少量をきっかけに、そのまま歯止めが効かなくなり、一気におびただしく噴き出ていた。勢いを伴う放尿に、検問官が咄嗟に指を引き抜き横へと退くと、床に向かって激しい直線が叩きつけられていた。
 出力が高い分だけ、床で広がる飛沫も激しく飛び散る。
 みるみるうちに円は広がり、サリアの足元にまで及んでくるのは言うまでもなかった。
「こんな……! くぅ……!」
 サリアの屈辱に満ちた表情が、なおも検問官を睨んでいる。
「では検査を続けます」
「何?」
 なんと検問官は、サリアの眼圧に気圧されたり、怒りに萎縮するどころか、むしろ何一つ気にしていない涼しい顔で、改めてサリアのアソコに触り始める。

 放尿の真っ最中のアソコにである。

 尿道口のすぐ上の、クリトリスの部分を狙って、検問官は指先をやってくる。指でそっとくすぐるように、優しく撫でる刺激に襲われて、サリアはこれ以上なく激しい引き攣りようとなっていた。
「正気か? どうかしているんじゃないのか?」
 まだ止まる気配のない放尿が続く真上で、検問官はクリトリスを愛撫している。
 その刺激が入ることで、太ももが微妙にモゾモゾと動いてしまうが、しかしサリアはそんな身体的な反応以上に、何かおぞましいものでも見る目をしていた。一変して青くなり、完全に引ききっていた。
「……ありえない……正気じゃない、頭が壊れているのか?」
 ただの暴言でしかない言葉だったが、サリアとしては本気であった。
 心の底からそう疑い、どこか純粋な疑問をぶつけるようなニュアンスさえ、そこには含まれているのだった。