前の話 目次 次の話




 その悪徳医師の名は池山信夫。
 もう何年も前に発生した新型ウイルスの流行以来、それを手口として何十人、何百人もの乳房を揉んだり、性器や肛門の『本来不要な』視触診を繰り返している。胸ポケットにペン型カメラを差しておいたり、デスクや棚に上手いこと隠したり、果ては天井や壁紙の裏にまで仕掛けたカメラで、やがて盗撮まで繰り返すようになっていた。
 初めて動画をアップロードした時の快感といったらない。
 本人の知らないところで裸体を拡散させ、大勢の目に晒してやるのは、信夫にとって刺激となった。ロクに収益を得ているわけでもなく、見世物にしてやること自体を楽しむ、彼は愉快犯であった。
(しかし、あの時の子は惜しかったなぁ)
 偶然気づいてのことなのか、ある時一人の少女が盗撮について尋ねてきた。たどたどしい口調で、本当は勇気もないのに、震えながら追求してくる少女に対して、信夫が行ったのは口止めのレイプであった。
 その時の動画も撮り、これ以上の動画をアップされたくなかったら、果ては既にアップ済みの動画を知り合いに宣伝されたくなかったらと具合に脅迫して、その少女には常連になってもらった。
 通ってもらうのは初めてだったが、定期的に性交を強要するうち、ある時少女は急に姿を見せなくなった。
 しばらくすると警察がやって来るので焦ったが、警察に信夫を疑う様子はなく、ただ聞き込みに現れただけだった。
 最近少女が自殺したので、おかしな様子はなかったか聞きに来た。
 ただ、それだけだった。
 そう聞いた瞬間、ホッとしたような複雑なような思いで質問に答えていき、それからは一度も警察の対応はしていない。
 信夫に罪悪感などなかった。
 その時にあったのは、バレてはいなくとも、盗撮犯である自分の元に警察が出入りするのは落ち着かない。そういう複雑さであって、自殺という話に何の罪の意識も浮かんでは来なかった。
 むしろ、憤りすらあった。
(せっかくの性奴隷だったのに)
 なのに、なのに――黙って死ぬとは。
 歪んだ憤りを抱えた彼は、向こう何日かは引きずったが、二週間も経つ頃にはそれも忘れて、新しいチャンスが来ないものかと夢見るようになっていた。何かの拍子に脅迫のチャンスが巡って来て、セックスに持ち込めないものかと、日々妄想しながら過ごしていた。
 仮にも接客業である以上、男や老人の患者にも笑顔で対応するのだが、心の中では舌打ちを繰り返し、若い女性に限って歓迎していた。

 士堂瑠璃という患者が現れたのは、その時だった。

 おかっぱ頭に眼鏡をかけて、素朴な風でいる女子高生が現れた時、信夫がまず真っ先に目をやったのは、メロンでも眺めるような乳房であった。
 なんと素晴らしい果実か。
 真正面から見た二つの円は、胴体の幅を少しばかりはみ出して、その膨らみは二の腕にかかっている。球体の成すカーブによって、赤いスカーフが手前へと、山の高さの分だけ押し出されて、腹とスカーフ先端とのあいだには、その分だけの隙間が作られていた。
 胸ばかりを見てしまうが、顔もそう悪くはない。
 華やかに飾っているわけではないので、パっと見た瞬間には地味な印象が強いのだが、見てさえいればそう悪い顔立ちでないのがわかる。いや、むしろ可愛らしい方で、それにたどたどしい様子のある女の子なら、いくらか押しに弱い部分がある。
 警戒心の強いタイプに比べ、かなりやりやすいはずだ。
 信夫は受付処理を済ませた後、早速彼女を診察室の中へと招く。
 椅子に座って、お互いに膝を突き合わせたところで、診察券で確認した名前を早速口にしてみるのだった。
「さて、士堂さん。風邪あたりかな?」
「なんといいますか。胸が……」
 尋ねた瞬間、少しだけ恥ずかしそうに、瑠璃は俯きながら答えていた。
「乳房の症状かな?」
「はい、たぶん」
「ああ、あれかな。思春期狙いの」
 信夫の使った言い回しは、ある種のスラングと化している。十代半ばの少女が中心なのだから、そのウイルス達を指し示し、思春期狙い、少女狙い、ロリウイルス、そんな言い方がネット上には存在して、現実でもある程度は通じてしまう。
 特に診察室という場においては、スラングなど知るまでもなく伝わりやすい。
「たぶん。最近、痒みがあって、気になる張りもあって」
「胸だけかな?」
「下半身も、ちょっと……」
 しめたものだ。
 ならば、アソコや肛門を調べる口実もできた。
「なるほど、いつからかな?」
「三日前? いえ、四日くらいかも。ちょっと気になって、調べたら病院に行った方がいいかもってわかったので、ここは診察を受けるべきかと……」
「そうだね。うんうん、来て正解だよ。たとえ違ったとしても、きちんと確かめて、安心しておかないとね」
「そうですよね。少しでも確率があったら大変ですし」
「うんうん、だからね。まあ、わかっているとは思うけど、脱いでもらおうかな?」
 早速、信夫はそう告げる。
「……はい」
 すると、瑠璃は素直にスカーフを弄り始める。抵抗感があってのことか、ほんの少しのあいだだけ、指で弄ぶだけだったが、やがてするっとほどいていき、引っ張り抜かれたスカーフは、真横に用意してある脱衣カゴへと置かれていった。
 ワゴンに置いた脱衣カゴの、その中でスカーフは、無造作によれた形で置かれていた。
 手前にファスナーのあるタイプで、それを途中まで下ろす仕組みらしい。首回りの穴を広げた後、シャツと同じように着脱するのだ。
 すぐに谷間が見えていた。
 途中までしか降りないファスナーは、かえって谷間だけをピンポイントに露出して、深い乳房の溝に視線を引き込む。信夫は真面目な表情を装っているが、腹の底では一刻も早く揉みたい思いでいっぱいだった。
(揉み心地抜群なんだろうなぁ)
 揉んでみての感触まで、信夫の脳裏には広がっている。
(柔らかいんだろうなぁ)
 うっかりすれば、すぐにでも表情に出かねない。
(さあ、早く見せて欲しいな。メロンみたいな君のおっぱいを)
 まじまじと見つめる前で、瑠璃はセーラー服の丈を掴んだ。シャツを脱ごうとするのと同じ動作で、躊少しだけ躇いながら持ち上げて、腹から胸にかけてが徐々に覗ける。そして、脱ぎきったセーラー服は、既に置かれたスカーフを上から隠し、脱衣カゴの中へと積み上げられた。
 過剰に恥じらっている様子はない。
 どちらかといえば、反応は淡泊気味か。
 頬が染まっているにはいるが、微妙に薄らと赤い気がする程度である。
 下着くらいなら平気な子、診察経験が多くて慣れている子など、恥じらいの程度は人によってそれぞれだ。
(ほーう? なかなか)
 心の中で、信夫は乳房を品評する。
 ブラジャーには飾り気がなく、カップ部分の布には刺繍もない、完全な無地のようである。ただカップとカップの狭間には、赤いセンターリボンが付いているので、それが唯一の装飾だった。
 カップの丸みが豊満さをきちんと包み、紐によって吊り上げているものの、サイズが少しだけ小さいらしい。V字のラインが微妙に食い込み、ぷにりと凹んでいる。その一センチか二センチだけ、微妙に零れ出ようとした感じを見ていると、ブラジャーが外れた瞬間の瑞々しさに、ますます想像が掻き立てられる。
「スカートも脱いじゃおうか」
 そう告げると、瑠璃は一瞬だけ固まる。
 しかし、もう割り切ってしまってか、先ほどに比べて抵抗や躊躇いの様子もなく、あっさりと椅子から立ち上がる。瑠璃はスカートの留め具を外し、ぱちりと腰の部分を緩めてすぐに、スカートを下げ始めた。
 僅かに腰をくの字にして、両手によって膝まで下げる。
 そして、片手だけを離したことで、片側だけがばさりと床に落ちようとそて、瑠璃はその片方の脚をスカートの内側からどかしていく。そのまま、もう一方の足もどかして、下着姿となる瑠璃は、脱衣カゴのセーラー服に二着目の衣類を重ねた。
 下着はきちんと上下揃い、ショーツの方も無地である。
 飾り気がなく地味なものだが、やはり赤のフロントリボンだけは付いている。スカートを置く瞬間、その一瞬だけ身体の向きが変わったことで、お尻のボリュームにも目がいったが、巨乳な上に巨尻である。
(楽しめそうだなぇ?)
 尻まで視姦され、品評されていると知ってか知らずか。
 ここまで脱いで、瑠璃は座り直した。
「すみません。お見苦しいとは思いますが……」
 胸の診察を受けるため、瑠璃は両手を背中に回していた。
「見苦しいだなんてとんでもない。君こそ、我慢をさせるようですまないね」
 思ってもいない謝罪を形だけは口にする。
 いかにも申し訳なさそうにしたような、表情さえ作り上げてみせていた。
「いいえ、必要なことですし」
 後ろでホックが外れたらしい。
 締め付けから解放され、紐が緩んだ瞬間に、カップが僅かに打ち出された。弾力で押し出され、発射でもされるようにして、しかしほんの一センチかその程度だけ、手前に向かってブラジャーは弾んでいた。
 瑠璃は両腕をだらりと垂らす。
 それから、肩紐を一本ずつ下ろそうとしているが、片方を指に絡めた途端、躊躇いなのか動きが止まる。
(ま、そうだよね?)
 躊躇うのも当然だ。
 ブラジャーを外したら、もうショーツしか残らない。
 さぞ恥ずかしかろう。
 平均的にはまだまだ淡泊な方で、過剰に赤らむ様子こそないものの、頬の色合いが僅かながらに変化していた。意識しないとわからない程度の薄色から、パっと見た感じてわかる程度の薄桃色に移り変わっていた。
 いくら反応が薄くても、無反応というわけではない。
 薄らながら、信夫は瑠璃の反応を感じ取っていた。そうすれば喰われるとわかっていて、猛獣の前にみすみすエサを曝け出すのを躊躇うような、どことなくの警戒心がなくもない。
 もしもエッチな目で見られていたらどうしよう。
 真面目なフリをして、本当は変態だったらどうしよう。
 どんなに平然として見えても、腹の底にはそんな不安があるはずだ。反応が薄いなりに、少しくらいは躊躇いながら、瑠璃は肩紐を下ろし始めた。
 どこか観念しきった顔で、諦めの境地で片方の肩紐を下ろしていき、そしてブラジャーは胸を離れる。
 瑠璃の片腕が脱衣カゴへと向かっていった。握ったブラジャーをぶら下げて、それを今まで脱いだ衣類に積み重ねる。申し訳程度に軽く畳んだスカートの、その上にブラジャーは置かれていた。
(おおっ)
 やはり、顔には出さない。
 だが、内心では感激していた。

 素晴らしい果実がぷるっと飛び出ていた。

 メロンでも生やしたような半球ドームは、やはり胴の幅を微妙に越え、カーブが二の腕を数センチほど隠している。それほどのボリュームが丸っこく手前に突き出て、自重による下垂具合も少しばかりに留まっている。
 手の平では、まず包みきれない。
 確かな巨乳の中央には、サクランボのように可愛いピンクの乳首が乳輪をほどほどに広げている。瑞々しさたっぷりの、新鮮な果実を出されたように、信夫の口内ではみるみるうちに唾液が分泌されていた。
 表情は決して変えない。
 事務的な顔付きを崩すつもりはないものの、もしも己の欲望を曝け出し、勝手気ままに振る舞うことが出来たなら、信夫は今にも牙を剥きだしている。唇の両端から、だらだらとヨダレを垂らしながら、じゅるりと舌なめずりをしているところであった。



 
 
 

コメント一覧

    コメント投稿

    CAPTCHA