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 次の日、氷織は顔を赤らめていた。
「へえ、気持ちよさそうにしてるじゃん」
「おーい。感じてるのかー?」
「さっさとイっちゃえよ」
 今は若手社員が三人ほど、ガラス張りの向こうに並んでいる。
 女社長は不在のため、あの手練手管による愛撫は受けていないが、その代わりであるように、氷織は別の形で刺激を味わっていた。

 ガラス小屋の中に、分娩台が搬入されていた。

 婦人科検診で使うあの台で、氷織は開脚を強いられているのだ。
 医療上の目的で使用するのが本来の用途だが、今ここではいやらしい目的のために使われている。アームパーツに足を乗せ、ベルトで縛り付けることにより、M字開脚を強いられているのだ。
 ユニフォームこそ着ているが、ポーズがポーズであるだけに、男の視線はアソコに集中しやすかった。
 まるで中身を透視され、覗き見られているかのように恥ずかしく、氷織は平静を装った表情を染め上げて、真っ赤なままに静かに佇む。目を瞑り、静かに過ごしている表情の、しかし耳まで赤いのが、今の氷織の状態だった。
 氷織がここまで恥じらっている理由は、もちろんポーズの恥ずかしさによるところが大きい。
 だが、他にも理由がある。
「もう濡れてんじゃないのー?」
「具合を確認したいねー?」
「ユニフォームの上からでもさ。振動してるのがわかっちゃうよ?」
 氷織のアソコには、ピンクローターが入っているのだ。

 ブィィィィィィ――

 ――と。
 卵形の器具がアソコの真上に当たっており、その振動によって氷織は絶えず刺激を受け続けている。ユニフォームが内側から膨らんでいるとでも言いたいのだろうが、そんな振動など確かめるまでもなく、有線式のローターなので、布のあいだから桃色のコードが伸びており、すぐ股の近くには手動式のスイッチが転がっている。
 そして、氷織は両手を封じられていた。
 手錠のかかった両手がさらに鎖で繋がれて、頭の後ろへと回されている。
 腕さえ自由なら、勝手にスイッチを切ることも、ローターを抜き取ることも簡単だったが、それが封じられている。どうすることもできないまま、氷織は無抵抗にも視姦をされているしかなかった。
「気持ち良さそー」
「感じてる感じてるぅ!」
「平然としたフリしたって、丸わかりですよー?」
 男達の投げかけてくる声は、一つ一つが屈辱を煽って来る。
「くっ」
 氷織は歯を食い縛り、薄らと目を開くなり、三人の男達を睨みつけた。
「おー。怖い怖い」
「そんな顔したって、股が濡れてるぜ?」
「マジじゃん! 黒いからわからなかったわ」
 三人の注目が一気にアソコへ集まって、その瞬間に氷織も自分の具合を自覚する。
 氷織は本当に濡れていた。
 ユニフォームの黒色は、黒といっても濡れればその部分だけ色が濃くなり、吸水状態が目に見える。アソコのワレメから染み出す汁は、最初のうちは内側のクロッチだけを濡らしていき、外側からはわかりようもなかったが、こうして時間を過ごしているうちに、とうとう彼らにも濡れ具合が伝わってしまったらしい。
「なんか返事してくれよー」
「それとも、声出ちゃう?」
「喋ったら喘いじゃうくらい気持ちいいんだな?」
 そう言われ、ムっとした。
 ここで否定しなければ負けのような気になって、氷織はすぐさま口を開いていた。
「感じてなどいません」
 ムキになって否定していた。
 その否定の勢い余って、喘ぎ声の出る出ないばかりか、そもそも気持ちいいこと自体をつい否定してしまっていた。
「そりゃ無理があるよー」
「だってさ。そこだけ汗かいたの?」
「アソコだけから出る汗って、つまり愛液じゃん!」
 そして、現に濡れた状態が視認可能になっている以上、氷織の否定に意味などない。かえって意地張りをからかわれることとなり、氷織は余計な恥辱に駆られてしまった。
「可愛いねえ? ムキになっちゃって」
「そんなにムカついちゃった?」
「でも、そのうちイっちゃうよね?」
 彼らは言いたい放題だった。
 好きなように煽ったり、いやらしい言葉を投げかけて、思い思いに楽しんでいた。
「感じてなど…………」
 意地になって、なおも否定したがる自分がいるも、氷織はそこで口を噤んだ。自分でも無理があるとはわかっていて、だからそれ以上は言えずに押し黙り、あとは恥ずかしさで表情を歪めるばかりであった。
 アソコの濡れた状態を観察され、ニヤニヤとネタにされている。
 何の恥じらいも湧かないはずがなく、氷織の胸中では羞恥の感情が存分に膨らんで、頭の中まで熱くなる。
「くっ、くぅぅ…………」
 氷織にできることは、三人組を睨み返すか、目を合わせないために顔を背けているか。そのくらいのことしかなく、そして取り出すことのできないローターは、延々と止まることなく、アソコの中に始終快感を蓄積させる。
「くぅ……うぅぅ……」
 どんどん快感が膨らんでいた。
「おおぉ?」
「良くなっちゃってる?」
「エロい声さ、聞かせてよー!」
 氷織の様子に気づいた三人組は、口々に煽ってきた。
「ほーら、喘いで喘いで」
「どうせ声出そうなんでしょ?」
「我慢するより楽でいいんじゃない?」
 冗談じゃない。
 誰がこんな奴らに聞かせるものかと、氷織はぐっと歯を食い縛り、顎に込めた力で頬が強張る。喘ぎ声など、特に出そうではないのだが、腹立たしさのあまりに出て来る前から我慢を始めていた。
「あーらら、意地になっちゃって」
「でもほら、濡れた感じが広がってるよ?」
「ほーんとだ。皮膚が湿ってる」
 指摘された瞬間だ。
「………………っ!」
 頬から火の粉でも飛び散るように、顔の内側から熱が弾けた。
 両腕の拘束に伴って、上半身を背もたれから離せない関係上、氷織は自分自身の股を確認できない。覗き見るには角度が悪く、見えない以上は三人が嘘を言ってからかっている可能性も否定できない。
 だが、時間が経つにつれ、股の濡れ具合は広がっている。
 長々と吸収を続けるうちに、ついには吸水の限界を迎えるほどに、クロッチの濡れきっている氷織のアソコには、ぬかるみの感触が存分に広がっている。もしかしたら、本当に皮膚にも湿り気が及び始めているのではないかと不安になり、氷織はより一層の羞恥に飲み込まれた。
 アソコの濡れ具合を観察され、進行状況を聞かされる恥ずかしさは、頭に熱を足され続けているようなものだった。
「んっ、んぅぅ…………」
 さらに感度は増していく。
 氷織は無意識のうちに、それでなくとも力の籠もった顎により大きな力を込めて、意地でも声を出すまいとしていた。
 息が乱れ始めたのだ。
 厳密に言うのなら、乱れそうな気配を感じて、それを懸命に制して誤魔化している。快楽が増しているのを悟られないよう、我慢に我慢を重ねているわけだったが、三人組は不思議とそれを見抜いていた。
「お? 我慢の感じが変わったぞ?」
「いよいよ絶頂への階段を上り始めたかな?」
「カウントダウンまでもうすぐだ」
 完全にふざけている。そんなはずがない。
 馬鹿馬鹿しい連中に対する侮蔑の視線を送りつけ、氷織は内股の筋肉さえも意識する。下腹部まで強張らせ、我慢の意識を全身に広げていくが、そうやって強張ることが、男達にとっては快楽の証拠に見えるらしい。
「ますます気持ち良くなりましたねー?」
「社長が来る頃には何回イってるのかな?」
「楽しみだなー」
 既に人の絶頂を確信しているように、男達は口々に言葉を投げかけ、ニヤニヤとした表情をよりいやらしいものへと変貌させる。
(こ、この人達は……!)
 憤りとは裏腹に、ユニフォームの内側ではクリトリスが突起していた。

 ブィィィィィィ…………!

 そもそもの、ずっと刺激を続けているローターは、三人組の言葉がやむと聞こえやすい。無機質な駆動音が延々と響き渡って、その分だけ膣壁は揺らされ続けている。
 何かが、アソコで膨らんだ。
 見えない何かが膨張を始めたような、風船が破裂に向かい始める感覚が生まれた時、氷織は内心で焦燥する。
「お? イクイク」
「カウント開始じゃね?」
「よーし、んじゃあ数えますか」
 冗談じゃない、イクわけがない。
 心の中では反射的に言い返すが、体の方には確かな絶頂の予感がある。三人組の言っている通りのものが現実にある以上、自分自身の絶頂を本当には否定できない。
 氷織はただ、心で構えた。
 イってたまるものか。

「三!」
(三って……!)

 確かに、絶頂の予感はある。
 だからといって、そんなはずがあるものか。
 いくらなんでも――。

「二!」

 そんなに早いはずはない。
 決して、ない。
 ありえない。

「一!」

 氷織は思っていた。
「イってませんが?」
 と、カウントが終了すると同時に、侮蔑を込めた冷たい声で、せめてそう言ってやることで、ほんの少しでもいいから溜飲を下げたいと思っていた。好きなように視姦され、言葉を投げられ続けた恨みを僅かでも晴らしたかった。
 だが――。

「あぁ――――――――――――」

 一瞬だけ、声が漏れていた。
 氷織はその意地でもって、出て来た声を直後には噛み殺す。
 決定的な喘ぎ声は、だから一度として出してはいないが、絶頂さえも誤魔化すことなど出来はしなかった。
「はーい! 絶頂!」
「これで一日延びちゃったねぇ?」
「で、明日はどんな風にイクのかな?」
 三人組は大喜びだった。
 氷織の感じている様子も、絶頂の瞬間も、彼らにとっては面白おかしいエンターテイメントなのであり、氷織は男を悦ばせるための消費物でしかない。物理的に減っているものなどなくとも、身体の一部をすり減らされでもしたような気持ちであった。

「あら? 氷織ちゃん。イったのね?」

 その時である。
 三人組の隣には、腕を組んだ女社長が現れていた。

     *

 ブィィィィィィ――――

 今日もローターが震えている。
 昨日の体験から夜を越え、睡眠を通した肉体は体力を取り戻し、積み上がった快楽もリセットされて、まだ入ったばかりのローターには愛液が付いていない。
 だが、時間の問題なのはわかっていた。
「どうだった? みんなにイクところを見てもらえて楽しかった?」
 それが、昨日の女社長に言われた言葉だ。
「興奮したでしょう? 人に見られながら、だんだんと愛液を出していき、そして最後には絶頂する。自分では隠しているつもりでも、イっているのがきちんとバレてて、絶頂の様子を見た男達は大喜び。楽しかったでしょう? 興奮したでしょう?」
 恍惚とした声で、うっとりとした顔で語って来る女社長の言葉が耳に染み込む。
 散々に聞かされた言葉の数々は、魔法のように氷織の心に浸透して、朝になっても一字一句が記憶に深く刻まれていた。言われた直後の感情さえ、まるでつい先ほどの出来事であるように新鮮な形で残っていて、だから何をされたり言われることもないうちから、氷織は恥辱の念を抱えてユニフォームに着替えたのだ。
 そして、今日もまた昨日と同じ形式で、分娩台でM字開脚を強いられていた。
 昨日との違いといったら、観測員が付いていることである。
 三脚台にカメラを立て、氷織の様子を動画に収めつつ、白衣を纏った観測員の男はニヤニヤと視姦してくる。特別な言葉はなく、ただ視線だけを送ってくる男と延々と対峙して、そのうちに濡れてきた時である。
「午前十時三一分。視認可能な愛液を記録。濡れていることを確信したのはこの時点でのこととなりますが、おそらくはもう数分前から、視認困難な程度にはユニフォームが変色を始めていたものと思われます」
 実に淡々と、そういう仕事をこなしているかのようにして、彼は『計測結果』を口にしていた。自分の言葉をカメラに流し、音声記録を取っているわけなのか。誰が隣にいるわけでもないのに、観測員はわざわざそんなことを唱えたのだ。
 それから、ついにはビクっとした瞬間だ。
「一回目の絶頂を確認」
 と、そんな言葉に始まって、彼はイった時間や、ローターの振動開始から絶頂にかかった時間についてを事務的に述べていく。
「二回目の絶頂を確認。一度目から約五分の間隔を経ています」
 まるで動植物の観察だった。
 顔こそ、女体に対するいやらしい視線であるが、やっていることは本当に観測行為だ。天体でも微生物でも、化学物質でもないというのに、白衣の彼は氷織の『反応』を研究作業の一環であるかのように観察していた。
「三回目の絶頂を確認」
 彼は時間が経つごとに、カウントを繰り返す。
 昨日とはまた違った屈辱感に、氷織は始終顔を歪めて、憤然とした顔で過ごしていた。誰が見ても機嫌の悪さが一目瞭然の、険しい眼差しがそこにはあった。
 やがて、だんだんとまた見学者が現れる。
 その頃にはもう五回はイっていて、男達が観測員の報告を耳にするなり、大盛り上がりとなっていた。
「へぇ?」
「そりゃまあ、随分とイったねぇ?」
「また一日延びちゃったわけだ」
「わざとイってるのかなぁ?」
「気持ちいいもんね? 興奮するもんね?」
 最悪の言葉をかけられ続け、氷織は苦悶を強めていく。

「あらあら、ぐっしょりじゃない」

 さらに女社長も現れて、嬉々とした表情でガラス小屋に入ってくる。
 鍵がかかっているわけでもない、その気になれば誰でも出入りできてしまうこの中に、男は決して立ち入らず、女社長だけが氷織の元までやって来る。
 氷織はすぐさま顔を背けた。
 女社長にM字開脚を見下ろされ、ニヤニヤした顔で濡れた股を視姦されるのは、本当に惨めでならない。とても目など合わせていられず、耳だけを彼女に向けて、その上さらにまぶたを閉ざす。
「さあ、今日は私の手で可愛がってあげようかしら?」
 女社長がローターのコードを引っ張り、卵形の器具を引き出すと、股布の部分をずらし、ワレメを直接視姦してくる。いかに嬉々とした表情で、目を輝かせながら見ているかは、もはや顔を確かめるまでもなく目に浮かぶ。
「みんなぁ? 本当にぐっしょりよ? 可愛いワレメがヌラヌラと輝いているわ?」
 ガラス小屋の外に向かって、女社長は発表を開始する。
「クリトリスも出て来ているわね? ここはどれくらい敏感なのかしら?」
 すぐに股に力を入れ、氷織はぐっと堪え始める。
 触られもする前から我慢を始め、すると実際に指が置かれて、クリトリスを撫でる愛撫にビクビクとした刺激が走る。激しい電流がアソコから全身へと行き渡り、手足に至るまでの体中の筋肉が弾み上がった。
「すっごく敏感よ? ワレメがヒクヒク動いているわ?」
 クリトリスを撫でながら、女社長は実況する。
「お汁もすっごく増えているわよ?」
 そうやって、周りのみんなに状態を語って聞かせ、小屋の外を盛り上げるのも、女社長にとっては氷織に対する責めの一つだ。ギャラリーを駆使した羞恥責めで、氷織を大きな苦悶に貶めて、彼女はそれを楽しんでいる。
「ふふっ、糸もたっぷり引くわね?」
 恍惚とした顔がそこにはあった。
「アソコのすぐ下がね? もう愛液の水溜まりになっているわよ? まるで漏らしちゃったみたいな状態よね?」
 そんな言い方までしてくる女社長に、目論見通り羞恥を煽られ、氷織の脳には熱がこもった。恥じらいの熱気が脳細胞を浸蝕して、頭が沸騰しそうな思いさえ味わっていた。
「真っ赤ねぇ? 恥ずかしいのぉ?」
「……うるさいです」
「ねえ、このままだと、氷織ちゃんは毎日イっちゃうわよね? ずーっと、うちにいたいってことかしら? こういう生活をずっとしていたいのかしら?」
「そんなわけありません。いい加減にして下さい」
「だったら、あなたがいい加減にイクのをやめたらぁ?」
 煽らんばかりに、女社長は膣口に指を入れ、もう一方の手ではクリトリスへの刺激を続行する。二点からの刺激に電流が迸り、神経を焼き切られるかと思うほどの激しさに内股が激しく反応して、足首はやたらに上下に動く。
「んっ、んぁぁ――――――」
 声が出てしまっていた。
 堪えようと思っていたはずの喘ぎ声は、絶頂の瞬間だけは大胆に出てしまい、氷織はそれでも意地で噛み殺す。たった一瞬だけの喘ぎで済ませ、あとはしっかりと歯を食い縛り、無惨にも喘ぎ散らす真似だけはしないでみせるが、その代わりに潮を噴いていた。

 ピチャッ!

 と、小さな飛沫が巻き上がり、それが女社長の顔へとかかる。
「あらあら」
 顔が汚れて、しかしそれを怒るでもなく、むしろ困った子供に対する呆れと微笑ましさの入り交じった表情で、頬の滴を指で拭う。女社長はそんな濡れた指を咥え、氷織の愛液をおもむろに味わっているのであった。
「せっかく声は我慢できたのに、残念ねぇ?」
「……っ!」
 泣きたいほどの無念に襲われ、氷織はこれ以上なく激しく顔を顰めた上で、女社長を睨みつけるのだった。





 
 
 

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