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 男の声が聞こえた瞬間、心臓が飛び出るように驚いて、しかしサリアは表に出さずに険しい表情を保っていた。
(そんなに声が出ていたか?)
 と、まず反射的に考えたのが、絶頂時の声量というものだった。
 抑えていたつもりの声は、これなら公園の外までには聞こえまいと思っていたが、サリアがそう思っていただけで、本当は通りすがりに届いていただろうか。というものだったが、サリアは直ちに考え直した。
 ――あいつの言ってた通りじゃねーか。
 声は二人分聞こえるが、その片方が確かにそう言っていた。
 つまり、サリアをここに拘束して、放置して立ち去ったあの人物は、こともあろうに住民にサリアの存在を伝えたのだ。
 果たして、それを信じたのかどうかは知らないが、面白半分で確かめにきた男二人は、実際にサリアの存在を目にしてニヤけているというわけだ。
「おい、大変そうだな」
「野蛮な奴のせいでそうなってんだろ?」
 随分とまた、嬉しそうな声だった。
 目当ての獲物が本当に見つかって、さぞかし嬉しいというわけだ。
 サリアは声の方向を見ようとするが、真後ろには振り向けない。背中を沈めて座った状態で、拘束に阻まれ身体の可動も制限されている。振り向いたとしても、背もたれの存在に視界を阻まれ、サリアにはその二人の姿は見えなかった。
 ただ、足跡だけが大きくなる。
 靴で砂を踏み鳴らす音がだんだんと、着実に迫って来て、ついには息遣いすら聞こえてきた。足音が止まった時には、真後ろに立つ二人分の、呼吸や体温からなる気配がサリアには如実に伝わっていた。
 二人が正面に回り込む。
 サリアの視界に現れたその姿は、それぞれフェリーンとヴィーヴルだった。種族の異なるその二人は、すっかり変色しきった黒ずんだシャツを着ている。ところどころ糸がほつれて、穴の空いた箇所まであり、そのボロボロ具合が二人の生活レベルを物語っていた。
「なかなか身なりが綺麗そうだな?」
 フェリーンの男はサリアの肢体を視姦する。
 顔から爪先にかけて一箇所ずつ、舐め回すような視線を向けて、いやらしい顔で唇をつりあ上げていた。
「普段から清潔にしてるんだろ? 風呂とか、シャワーなんかでよ」
 ヴィーヴルの男はわざとらしく、いかにも羨ましがっていることをアピールしながら、大袈裟なほどに腕を広げて、大仰に肩を竦めてみせていた。
 きっと、無理だろう。
 そうは思いながら、サリアは駄目元で言ってみる。
「助けてくれないか?」
 そう告げた瞬間に、二人揃って鼻で笑う。
 案の定の反応だった。
「おい、聞いたか?」
「助けてくれってよ」
 人を指差しながら、小馬鹿にすらしてくる表情だった。
「ははっ、俺達が善良に見えるってか?」
「ま、『お礼』をしてくれるってなら考えないでもねーけどよ」
 にやっと笑う表情で言う『お礼』の内容が、一体何を想定しているかなど、せせ笑ったその目つきからあまりにも明白だった。
「確かに期待できそうにはないな」
 こうしている今にも、乳首が感じ続けている。アソコとアナルからも甘い痺れが発され続け、愛液は滴っている。サリアの今の体勢上、尻尾は尻の下にでも敷いたかのようにして、M字開脚となった股のあいだから垂らしているが、愛液はその尻尾の表面にさえ伝っていた。
 アソコから流れ出し、肛門の皺に染み込んだ愛液は、さらにその下へと筋を伸ばした挙げ句に、尻尾にさえも、よく見れば滴の通ったような薄らとした筋が出来上がっていた。
 それを見て、興奮しない男達ではなかった。
「ま、まずは記念記念っと」
「俺達みてーな身なりでも、こういうものは持ってるんでな」
 二人の男はそれぞれポケットからカメラを取り出す。
「お前達……!」
 サリアはますます表情を険しくした。
 目つきを鋭く、強く睨みつける眼差しを前にして、しかし男二人は微塵もたじろぐ様子を見せない。拘束され、身動きの取れない女など、恐れるはずがないわけだった。
「おうおう、いい笑顔なこった」
「んじゃ、撮るぜ? ハイ、チーズ。なんてな」
 その瞬間だ。

 パシャッ、パシャッ、

 フラッシュ機能を使ったカメラの、それぞれのシャッター音が同時に鳴った。あのレンズの奥にサリアの痴態が収まって、またしても恥ずかしい記録がこの世に増えてしまったのだ。
 最悪の気分でならない。
 今すぐにでも手錠を破り、この二人の男に思い知らせてやりたくてたまらない。それが出来ない歯がゆさに、サリアはひたすら歯を食い縛るのだった。
「次は顔いこうかー」
「おっぱいも撮っておこうね?」
 撮影会が始まっていた。
 フェリーンの男がサリアの顔にレンズを近づけている一方で、ヴィーヴルの方は乳房の接写を狙っている。二つの箇所に同時に迫り、しかしサリアは身じろぎをしてみせる程度の動きしか取れずにいた。
「くっ……」
 またしても、シャッターの音が鳴る。

 パシャッ、パシャッ、

 ただ撮られる一方だった。
 二人の男はここと思った場所にその都度カメラを接近させ、バイブが刺さった状態の、アソコや肛門を接写する。逆に離れた位置から全身を収めたり、角度を変えて横から撮ってみたりと、大いに撮影を楽しんでいた。
 そこにサリアの気持ちを慮る意思はない。
 自分達さえ楽しければいい。サリアなど娯楽か鑑賞物でしかない。助けようと思う気持ちなどありもせず、二人はただただカメラばかりを振りかざした。

 パシャッ、パシャッ、

 と、その音をサリアは聞き続ける一方だった。
 抗うことなどできないまま、無念にも写真を撮られ続けていた。

     *

 二人が撮影を終了しても、サリアはまるで安心できずにいた。
 自分の裸が写真にされ、カメラの中に収まっている事実は、ちっとも面白いものではない。
「なあ、これなんてどうだ?」
「いい表情だよなぁ?」
 今度は写真を見せつけてきた。
 デジタル式のカメラのため、撮れた写真をモニターに表示可能なようだったが、二人がそれぞれ見せつけてくるのは、サリア自身の強張った表情だった。
「……ふん」
 サリアはそれから目を背ける。
 モニターの中でのサリアは、カメラレンズを睨み返して、険しく鋭い眼差しを浮かべながらも、頬は立派に赤らんでいた。怒りと恥じらいが同時に現れ、それでいてローター付きの乳房まで映したバストアップは、撮った二人からしてみれば、さぞかし面白いものなのだろう。
 撮られた上に、見せつけられるサリアにしてみれば、ふざけた画像に他ならない。
 表情や反応をからかわれて、面白いはずなどないのだった。
「あとはこっちだよな。こっち」
「そうそう。中身の色が見えてるぜ?」
 今度は下腹部の写真を見せつけてきた。
 サリアが顔を背けようにも、その背けた方向に回り込ませて、二人は楽しげに見せつけてくる。右へ背けていたサリアへと、右側から見せつけられた写真から、さらに顔を背けて左を向けば、そこにはもう一つのモニターが待ち構えていた。
 アソコと肛門、それぞれの接写であった。
 バイブの太さに合わせて穴が丸く拡張され、咥え込んだ状態の写真の中では、愛液が存分に滴り出ていた。バイブの表面にはまんべんなく愛液が広がって、ぬかるみが光を反射していた上、どちらも透明なバイブなのだ。
 中身の赤い色合いが透けて見えている。
 二人の男はそんな下らない事実に盛り上がり、やたらに嬉しそうにしているのだ。
「何が面白いのかわからないな」
「面白いんだよ。お前にはわからなくてもな」
「ほーら、このオッパイなんて、汗ばんでてエロいじゃないか」
 皮膚の表面に水気が染み出て、しっとりとした具合の肌からなる、美しい膨らみ具合を見せつけてきた。ローターをテープで固定して、それが乳首を隠した周りは、滲んだ汗がほどよく反射してなのか、きめ細やかなキラキラとした光が妙に散りばめられていた。
「おっと、ずれて来てるんじゃないか?」
 ヴィーヴルの男はニヤニヤと、アソコのバイブに手を伸ばす。
 写真の中ではそうは見えず、抜けそうになっている感覚などありはしないが、猥褻な目的を持つ男だ。本当にずれているかどうかなど、きっと初めから関係無い。ただただ、写真を撮ったり、見せびらかすという楽しみを終え、プレイは次の段階に進んだのだ。
「んっくぅ……!」
 男はバイブを出し入れし始めた。
 ヴィーヴルの男がピストンで責め立てて、サリアの反応を楽しんでいる一方で、フェリーンの男もひどく口角を釣り上げている。
「へへっ、なんだぁ? その反応は」
 隣で鑑賞に徹しながら腕を組み、笑顔でサリアを視姦していた。
「だっ、黙れ……」
「黙った方がいいのはアンタだぜ? 色っぽい声なんか出して、我慢したって感じてるのがバレバレなんだぜ?」
「んぁ……くぅっ、くぅぅ…………!」
 サリアは歯を食い縛る。
 感じた素振りを見せて、喜ばせてやるつもりはなかった。
 しかし、感度が高まるだけ高まって、すっかり敏感になっているアソコからは、耐え難い快楽がいくらでも押し寄せてきた。そんな性器の反応を見ることで、男達はサリアの我慢など関係無しに嬉々としたものを表情に浮かべていた。
 もうイクのは時間の問題だった。
 まずい――そう感じた時には、既に取り返しの付かない段階まで、絶頂の予感は膨らみきって、堪えようなどなくなっていた。

「んっ、ぬぅくぅ……………………!」

 サリアは潮を噴いてしまっていた。
 声こそ抑えたものの、最後まで反応は隠しきれなかった。
 男がバイブをピストンさせての、そのタイミングの良さにより、まるで押し込むことで弾け出て来たかのように、無数の滴が飛び散っていた。飛沫はサリア自身の内股に、男の腕やシャツにと降りかかり、たちまち愛液の香りは漂っていた。
「あらまー」
 フェリーンの男が人を小馬鹿にした顔をする。
「イっちゃったなぁ?」
 ヴィーヴルの男もまた、煽らんばかりに嘲った表情で、あからさまに顔を近づけ、サリアの表情をわざとらしく覗き込む。
 サリアはそれらの顔から目を背け、頬を固く強張らせた。
「黙れ……害虫が…………」
「おっと、生意気な口を利く元気があるなら、もう一発くらいイってもいいんじゃねーか?」
「次は動画に撮っておいてやるよ」
 そうして、休む暇も与えられずに、再び責めは始まった。
 フェリーンの男が横からカメラを構えている一方で、ヴィーヴルの男はせっせとバイブをピストンさせる。その出し入れによる刺激は、ピストンそのものによる刺激は言うまでもなく、そこに振動まで加わっていることで、通常では得られない快感が生まれていた。
「ぐぅぅぅ……!」
 サリアは激しく歯を食い縛る。
「我慢してんのか? ええ? 耐えきれんのか?」
 ヴィーヴルの男はそんなサリアを責め立てて、我慢している相手をそれでも感じさせることが楽しくてたまらないようにして、バイブをピストンさせ続ける。アソコへの快感だけでなく、肛門にも休みなく与えられ続けている快感も合わさって、サリアは瞬く間に次の絶頂を迎えようとしていた。
 もう駄目だ。もう耐えきれない。
 ほどなくして限界を迎え、サリアは再び仰け反っていた。

「んんぅぅぅ――――――!」

 本当は大声が出そうなところを抑え込み、しかしサリアは背中だけでなく、首によっても仰け反って、満天の星空を見ながら絶頂していた。噴き出た潮がヴィーヴルのシャツをより濡らし、漂う愛液の香りもまた、より濃いものとなっていた。
「どんだけ声ばっか抑えてもよぉ」
「体は物凄いぜ?」
「ぬぁっくぅぅ………………!」
 サリアは歯を食い縛る。
 口を開けば喘ぎ声が出て来そうで、言葉を返す余裕などなかったが、たとえ喋る余裕があっても言い返すことはできそうにない。さすがに身体の反応は激しいあまり、男達の言う通りでしかないのだった。
「さぁて、もう一丁!」
「まっ、待て――んぅぅ――――!」
 イったばかりのアソコに対して、続けてピストンを繰り返す。
「待たねぇよ。何度でもイっちまいな」
「くぅぅ…………!」
 サリアは全身をビクつかせた。
 足を執拗に反り返し、首で仰け反るままに夜空を見上げ、さらには胴も震わせる。全身で反応を示すあまりに、椅子さえガタっと揺れ始め、数秒後にはまた絶頂を迎えていた。
 とうとう、声も抑えきれなくなっていた。

「ぬぁぁぁあああああ……!」

 また、潮を噴いていた。
 大きな声をだしてしまい、同時に飛沫をチラしていた。
 その潮をシャツに浴び、しかし汚れたことなど気にも留めずに、絶頂しているアソコに対してピストンを継続する。
「あーあー」
「とうとう喘ぎ声が聞こえちまったな」
「あっ、あぁぁ……! やめろ……! もうやめろぉ……!」
「へへっ、あと何回潮が噴けるのか試してみたくなっちまったぜ!」
「ぬあぅぅ…………!」
 何度でも、何度でも、飽きもせずにイカせ続ける。
 サリアは改めて歯を食い縛り、耐えようとした。
「くぅ……!」
 声だけでも抑えようとしていても、快楽の痺れが顔中に広がるあまり、顎や唇の力さえ、いつまでも自由になりそうにはない。
 激しい電流に頭の中身が掻き消された。

「んぅぅ…………!」

 その絶頂ではまだ、無意識のうちに声を抑えていた。
 しかし、次の絶頂では――。

「んぁぁぁ……!」

 明らかに我慢が緩んでいた。
 その連続したピストンの刺激に溺れ、サリアの頭は始終真っ白なままと化していた。もはやものなど考えられず、痺れた脳は何の思考の役にも立たない。
 とうとう、声の我慢もなくなっていた。

「くあっ、あぁぁぁぁぁぁ――――――!」

 その頃にはもうとっくに回数などわからない。
 頭が真っ白なサリアはもちろん、男二人のどちらも数えておらず、とはいえゆうに十回以上はイカせているはずだった。
 そして、それだけの絶頂を繰り返せば、とうとう椅子の足にすら愛液の滴が筋を作って、それは地面にまで到達していた。
「さーて、そろそろ休憩だな」
 などと言い、やっとヴィーヴルの男が手を止めるのは、自分の腕が疲れたからに過ぎない。サリアの体など初めから気遣ってなどおらず、ピストンをやめはしても、バイブそのものはアソコに押し込んだまま、抜いてやることはしなかった。
「はぁ……あっ、あぁ……あっ、んぅ………………」
 サリアは放心しきっていた。
 激しいピストンに比べれば、ただ内部で振動が続いているだけで済むのは軽い。とはいったところで、あくまでも比べれば軽いだけである。振動もまた刺激は刺激であり、与えられる快楽の量が減るだけで、サリアには本当の意味での休憩など与えられてはいなかった。
 振動は続いていた。

 ブィィィィン………………。

 と、鳴り続けるバイブとローターは、バッテリーが切れる気配もなく、延々と震え続けていた。



 
 
 

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