これらが送られてきた動画の内容だ。
誰が見てなどやるものかと、送られてきたメッセージの添付ファイルは開かずに、サリアは書かれた文章だけに目を通す。ドクターが受け取ったものと同一の文面なのか、動画の流通をやめて欲しければ、サリアの身柄を引き渡すようにとする旨は、確かに書かれているのだった。
しばらくすると、また新たなメッセージが届いてくる。
「……チッ」
サリアの舌打ちは当然だった。
そのメッセージには、サリア自身の手でファイルを開くまでもなく、初めから画像が表示されていた。その表示される画像の数々は、おそらくあの時の出来事を撮った動画から、これと思った場面をキャプチャーしたものだった。
ストリップでブラジャーを外す瞬間の画像があった。全裸になって、カメラの前で直立している際の画像があった。後ろから持ち上げられ、背面駅弁のような形で開脚した上、放尿をした時の画像。土下座、ダブルピース、あらゆる屈辱の画像が流れて来る。
見れば見るだけ、屈辱の記憶が蘇る。
メッセージの送信元をブロックしようにも、見れば送信元は一つ一つが別々だった。たった一通を送るためだけに、個別に送信元を用意しているのだ。きっと、どの送信元の情報も、使用者の身元を特定する役には立たないはずだ。
「ゲスめ」
サリアはそう吐き捨てて、電子端末を机に置く。
せめて向こう数時間だけでもメッセージを見ないため、手元から遠ざけておくのであった。
そして、その数日後のことである。
結局、サリアを囮にした作戦を決行することに決まったらしい。
指定の場所に、指定の時間に向かうことになるのだが、そのための格好にすら指定が行われていた。
まず、裸だ。
現場近くまでは車で移動して、車内で服を脱いだ後、一糸纏わぬ姿で指定場所へ向かわなくてはいけなかった。裸という指定だけを考えるなら、武器や通信機など、余計な物品は持たせないための、合理的な作戦だと捉えることもできたのだが、そこにローターやバイブが加わっては、そういった見方をすることもできなくなる。
もちろん、散々な辱めを受けた手前、そういった玩具があってもなくても、どうせいやらしい目的だろうという警戒はするのだが。
ともかく、サリアは運転手を前にしながら、後部座席で服を脱ぎ、アーツユニットも車内に置いて出て行くことになる。
さすがに靴だけは履いているが、全裸で野外に出た瞬間の、違和感と落ち着かない感覚といったらない。風呂場であったり、自室であったり、人目を気にせず過ごしたり、裸が当然の空間では、決して生まれることのない感覚が外ではあった。
指定の場所は廃都市の公園だ。
かつて天災に見舞われた後、建物は無事でも源石の発生でまともに住める環境ではなくなって、数十年といった環境の変化で、やっと非感染者でも気にせず出入り可能になった場所らしい。
しかし、環境が改善されたところで、亡くなるか、逃げ出すかした人々は、もうここに戻ってくることはない。生き残った人間は、とっくにどこか別の場所に居場所を作り、そこで血筋を残しているのだろう。
もはや誰も住んでいない、寂しさに溢れた町並みへ向かって行く。
夜空に月が輝いていた。
満天の空には星々が敷き詰められ、そのキラキラとした光の一つ一つが地上を照らす。夜目に慣れたおかげもあるが、白銀の満月が大きいおかげで、足元の様子もどうにかわかる。周囲一帯が荒野となっているのも大きかった。
森や山という環境なら、樹木の生み出す影や枝葉によって、辺りの様子は見えにくく、方向感覚が掴めずに迷いやすくなってくる。獣なども考えれば危険性は高かったことだろうが、寂れた荒野に敷かれた一本の道路舗装で、転がっている石の数もそう多くはなく、おかげで夜道の行き来という理由一つで進むのが困難ということはない。
ただただ、裸なのだ。
風が吹けば、裸体の表面を大気が撫でる。尻や乳房に風が当たれば、自分が裸であるという事実をより強く実感させられる。
そして、この上でローターとバイブの装備である。
まず、どちらの乳房にもピンクローターを押しつけて、テープで固定していた。さらにはアソコと肛門のどちらにもバイブを咥えており、しかも色が透明なタイプである。中身が完全には見えないだろうが、覗けば肉ヒダの色合いが透けている。
最悪極まりない。
確かに、自分を囮にした作戦を立てても構わないと、それ自体はサリア自らが意思を表明している。その通りに作戦の実行が決定され、こうして駆り出されることは構わない。
ただ、本当なら忘れたいことではあった。
あんなメッセージがロドスに届き、連中がサリアの身柄を指定してくるような、そんなきっかけさえなければ、屈辱の記憶を少しでも別の記憶に埋もれさせ、忙殺の彼方に消し去りたいと思っていた。
しかし、そうもいかなくなってこそ、サリアは今ここにいる。
町中へ進んでいくと、見渡す限り全ての建物が劣化していた。風雨に晒され、表面が土埃を被る一方のまま、店の看板は誰も手入れをすることなく、錆びまで付いてとっくに文字が見えなくなっている。窓ガラスにもびっしりと埃が付着して、屋内の様子が外から見えそうな建物など見当たらない。
寂しいばかりの町をしばらく歩き、目的の公園に到着した。
そして、そこには肘掛け付きの椅子が置かれていた。
遊具がどれも錆び付いて、経年劣化によって痛みきっている中で、明らかに新品の椅子がぽっつりと、月明かりに照らし出されていた。
その時である。
「来たな。サリア」
後ろから、男の声が聞こえてきた。
「ああ、約束通りお前達の趣味の悪い格好をしてきたが」
「そのまま振り向くな。両手をゆっくりと腰の後ろに組め」
「どうする気だ」
「少なくとも、指示に従えば危害は加えない。まあ、性行為の強要を危害のうちに数えるなら、話は変わってくるだろうがな」
「やはり、そんなことが目的だ」
呆れ果てた連中だ。
こんな奴らのために陵辱され、屈辱を味わったのかと思ったら、本当にやりきれない思いでいっぱいになってくる。
サリアは言われた通りに腰の後ろに両手を回すと、決して振り向くことは許されないまま、背後に迫る気配だけを感じ取る。足音による接近と、一歩でも後ろに下がれば尻や背中が接触するであろう至近距離からの、耳まで届く息遣いから、サリアはその男の存在を確かに感じ取っていた。
手錠がかけられた。
冷たい金属の感触に、両手の自由が封じられてしまっていた。
「ここはな。もう誰もいないように見えて、実は密かに住み着いている住民がいる。迫害されるか何かして流れ着いたんだろうな」
そんなことをいいながら、背後の男はサリアに次の指示を言い渡す。
最悪の内容なのは言うまでもなかったが、囮であるサリアとしては、下手に逆らうわけにはいかなかった。ドクターの采配しだいによって、こうしている今にもどこからかこの男に対する監視は行われ、身を隠したオペレーターが作戦を継続しているはずなのだ。
それをサリアの方から台無しにするわけにはいかなかった。
*
サリアはM字開脚となっていた。
椅子に座り、背もたれに背中をかけ、肘掛けを利用して開脚せよと、男によって命じられてのことである。すると足にも手錠をかけられ、肘掛けのアームと足首を繋がれて、椅子の上から身動きを取れなくされてしまった。
その手錠をかける瞬間も、サリアの視界に入らないように後ろから、慎重に行われていた。
こうして、サリアは最後まで男の姿を見ることは叶わずに、こうして放置されていた。自由を奪い、さっそく何かしてくるのかと思いきや、男の取った行動は立ち去ることだったのだ。
サリアは一人、取り残されている。
ブィィィィィィィ………………。
ローターやバイブにスイッチを入っていた。稼働状態のまま自分自身では外すことも停止も出来ず、誰かに抜いてもらうし以外にない。しかし、その肝心の誰かがいないのだ。
「こんなことを思いつくとはな」
サリアは顔を顰めていた。
入った時には気づかなかった。が、こんな町にも誰かが生活していると言っていた。サリアが通ってきた道にはたまたま誰もいなかったか、あるいは余所者を警戒して、気配を隠していたかといったところか。
人がいるというおんあら、誰かが通りかかって、サリアのこんな有様を偶然見かけてもおかしくない。
「冗談ではないな」
その通行人が善良ならば良いのだが、そうでなければどうなるか。
かといって誰も来なくても、それはそれで困るのだった。
ブィィィィィィ………………。
無機質に音を鳴らして振動しているローターの、ブルブルと生み出す振動は、乳首を震わせながら刺激を生み出し、気持ち良くなるのも時間の問題となっている。アソコや肛門に入ったバイブの方も、内部に振動を送り込み、今にサリアを喘がせかねない。
「脱出は……無理か……」
いざとなったら、自力で手錠を破ることも考えたいが、アーツユニットが手元にない今、カルシウムの操作もできない。金属を破壊するほどのパワーは、今のままでは発揮できそうにはないのだった。
とにかく、今は待っているしかない。
その時が来たと判断が下れば、オペレーターの誰かが駆けつけて、サリアを拘束から解放してくれるだろう。今はまだ、せっかく囮となったサリアをそうすぐには助けずに、周辺調査の方を優先している段階か。
いずれその段階が終了すれば、必ず助けてもらえるはず。
ただ、それにはどれほどの時間がかかるのか、きっと作戦中のオペレーター達自身にも、明確にはわからないだろう。
今は時を待ち、ローターとバイブの刺激には、ひたすら堪えているしかないのだった。
ブィィィィィィィ…………。
それにしても、こうなると時間を長く感じてしまう。
身動きが取れない以上、今のサリアにできることといったら、夜空の星を眺めて星座でも探したり、月の美しさに見惚れるくらいだ。そんな雅な趣味に興じようにも、恥部への刺激が邪魔して浸りようがなかった。
「くっ、ふぅ……んぅぅ…………」
だんだんと、気持ち良くなってくる。
放置され始めてから、一体何分が経ったのか。
もう随分と経った気もしてくるが、こう何もすることがなく、空を眺めるか、目を瞑って瞑想でもしているしかない状態では、一分一秒が普通よりも長く感じる。一時間は経過したような気はするが、実は十分も経っていないのかもしれない。
「いつまで……かかる…………」
アソコから愛液が滴り始めた。
栓で穴でも塞いだように、どちらの穴にも突き刺さった透明バイブの、アソコに刺さった方の表面は、徐々に愛液を纏いつつあった。最初のうちは膣壁の内側だけで湿っていたのが、少しずつ外側にまで染み出して、ついにはバイブ全体がまんべんなくぬかるみを帯びていた。
そして、アソコと肛門のあいだを繋ぐ溝のラインも、だんだんと光沢の筋を伸ばしている。
まるで湿気の付着でいつの間に濡れているように、少しずつ、本当に少しずつ、徐々に出て来た愛液が、はっきりとは目視できないペースで表皮に広がっていく結果、光沢の筋はアナルにまで到達していた。
この愛液が広がって、筋が到達するまでの様子を明確に視覚化するには、動画でも撮って倍速再生をする必要があるだろう。
バイブと肛門の皺が触れ合う円形のラインに沿って、愛液はさらに広がる。
時間が経つにつれて皮膚が水分を吸収して、もう吸水の限界を超えた表面がまとった愛液は、さらに肛門から椅子のシートへ向かって伸びていく。シートも湿っぽくなっていき、その最初のうちの濡れ具合は、やはり湿気に晒してしっとりとしたかのようなものだった。
「くっ、くふぁ…………」
気温に恵まれているのは不幸中の幸いか。
裸でも寒くはない。
「あっ、ぬぅぅ…………」
しかし、染み出る愛液の量は徐々に増えている。助けが来るまで、あとどの程度かかるのか。時間を確認することすらできず、ちっとも見当がつかない中で、アソコの内側には絶頂の予感が膨らんでいた。
「ぬっ、くふっ、ぬぅぅ…………」
サリアは着実に呼吸を乱していった。
こうして感じている様子は、誰に見られているわけでもない。兵士達に囚われていた時のようにして、癪に障るような表情を向けられたり、不快な言葉をかけられることはない。それもまた、不幸中の幸いの一つのなのかもしれないが、その代わりとして身動きが取れないという別の不快感があるのだった。
アソコや肛門の状態が気になって、そして乳首のローターが気になって、せめて出力の強弱だけでも調整したいと思っても、手錠のかかった腕ではそれもできない。
何よりも、やはり不安を煽られた。
今はまだ誰も来ないが、最初に現れる人間がオペレーターでなく住民だったら、身動きの取れない女を親切に助けてくれるとは限らない。見ず知らずの他者を助ける人もいるだろうが、善良な相手を引き寄せる運が自分にあるとは限らない。
「はぁ……くぅっ、ぬぅぅ…………」
みだりに大きな声は出せないと、サリアはそう考え始めていた。
身動きが取れず、この場から移動ができないのは、もうどうしようもないことである。この点は嫌でも諦めるしかなく、だったら声量を抑えることでしか、通りすがりの誰かに見つかる可能性は減らせない。
だから誰に見られているわけではないのに、結局のところサリアは快楽を我慢していた。
しかし、絶頂への予感は膨らむ一方で、堪えようとする意思一つでは、それをどうしても食い止めることができなかった。我慢の意思を保ってみても、ただ膨らむ勢いが緩んだだけで、絶頂そのものは止められなかった。
「くぅぅぅぅぅ――――――!」
どうにか、声だけは抑えていた。
公園の外にまで聞こえるような声量には、決してなっていなかったが、それでもサリアは絶頂していた。頭が一瞬真っ白に、全身がビリっと痺れ、足首も反り返っていた。
「くっ、イってしまったか…………」
サリアは顔を顰める。
バイブも、ローターも、サリアがイったからといって止まってくれない。絶頂しようとお構いなしに続く振動は、情けも容赦もありはしない。バッテリーが残っていて、スイッチが入っている限り、泣こうが笑おうが決して停止しないのだ。
そして、その時だった。
「お、いたいた」
「あいつの言ってた通りじゃねーか」
サリアの表情が凍りついていた。
二人分の男の声に、すっかり全身を強ばらせていた。
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