前編
その人物を誰もが大男であると信じて疑わなかった。
分厚いジャケットにプレートを着込み、顔を隠した重装備で、肩幅も広い人物など、一体だれが美麗な少女と思うだろう。
彼らレユニオン部隊はマドロック部隊と交戦していた。
新参者である彼らだが、マドロックがかつては同じレユニオンの仲間だったことを薄らと聞き及び知っている。ロドスに寝返り、志を違えた裏切り者であることも知っている。だが、その中身についてまでは知らなかった。
「武装を解除しろ」
彼らはそれぞれ銃器を向けながら、マドロックを包囲していた。
マドロックが大人しく両手を挙げ、武装解除に従うのは、人質による無力化に成功したからである。
マドロックの圧倒的なアーツを前に、彼らは翻弄されるばかりであったが、ならば周りの部下に狙いを定め、生け捕りにする方向に切り替えた。そして、捕らえた連中から武器を取り上げ、山として積み上げたものを見せた時、それまで猛威を振るったアーツがやみ、急に大人しくなったわけである。
こうしてマドロックは投降した。
当然、武装解除を迫ったわけである。
彼らは勝ち誇った笑みを浮かべていた。
これから、あの分厚い装備の中から正体を現す『男』に対して、一体どんな報復をしてやろうかと、彼らは楽しみに待ち構えていた。どこを殴り、どこを蹴ろうか。骨を何本折ったら惨めな命乞いをしてくるだろうか。
腹の底で考えているのは、そんなことばかりである。
しかし、彼らは呆気に取られていた。
「お、女だと……」
重装備の中から出て来たのはサルカズの美女だった。
「信じらんねぇ……」
「た、体格に合ってねぇだろ……」
着膨れというレベルではない。
確かに、衣服によって体格のラインが変わることはあるのだが、それで太って見えるというのでは説明が付かない。
巨大な鎧を支えるため、マドロックは緩和材の中をアーツで充填しているのだ。頭部装備の影響で声がくぐもり、よって声によっても性別はわからない。これが性別の誤認を招き、誰しもが筋骨隆々の大男が出て来るはずだと信じ切っていた。
その思い込みを裏切られた衝撃で、まずは放心していた。
しかし、彼らはお互いに顔を見合わせながら、少しずつ放心から立ち戻り、一人また一人とニヤニヤした表情を浮かべていく。
マドロックは美しいのだ。
銀髪に白い肌、まるで光っているような美しさもさることながら、黒いスポーツブラジャーの膨らみにはそそられる。半球ドームよりも少しばかりロケット型に近い、あの素晴らしい曲線を見ていると、黒い布の内側には一体どんなボリュームが隠れているのか、想像を掻き立てられる。
その下に穿いたスポーツショーツも、彼らの興奮を煽っている。
なるほど、ああいうパンツか。
と、下着を見て確かめてやることで、何か大きな手柄を立てたような気持ちが湧く。彼ら一人一人がいい気になり、鼻を荒げて興奮しきっているわけだった。
顔が薄らと朱色に染まり変わっている。
どうやら、恥じらいを感じているらしい。
「なかなかのスタイルじゃねーか!」
「おいおい、こんな体を物騒な装備で隠しちまうなんて」
「なーに勿体ないことしてやがるんだ?」
「そのでけぇオッパイが何センチか気になるなぁ?」
彼らは感想を口にしたり、煽るような言葉を投げ始めた。
「いつもその格好か?」
「腹が引き締まってて、そそるぜぇ?」
「おへそがセクシーだねぇ?」
こんなにも盛り上がり、こぞって体つきにまつわることを言ってくる男を前に、マドロックの表情は歪んでいく。
「脱げ」
一人が嬉々として命じた。
「まだ他にも武器を隠し持っているかもしれないからな。余計な動きは見せず、ゆっくりと脱いで見せるんだ。ゆっくりとな」
こぞって銃器の圧をかけ、少しでも妙な真似をすれば引き金を引くことを暗に伝える。
マドロックは脱ぎ始めた。
自らのスポーツブラに手をかけて、それをたくし上げようとした途端、何かに突っかかるかのように動きが止まる。顔の赤らみが増す様子に、それが羞恥心によるものだとわかった時、大いに心がくすぐられた。
てっきり大男だと思っていた相手が、こうも恥ずかしそうにしているのだ。
これが面白くないはずはない。
「どうした? お恥ずかしいか?」
「手が止まってるぜ?」
大喜びでマドロックを煽る。
「――――っ!」
顔を顰め、赤らみを強めていた。
こうなっては余計に脱ぎにくいことだろうが、人質を思えばこそだろう。
マドロックの手は動き、スポーツブラをずり上げる。その豊満な乳房は締め付けによって持ち上げられ、まず真っ先に見えるのは角度の上向きになった下乳だった。それがスポーツブラの上昇と共に露出面積を広げていき、ついにはプルっと乳房が飛び出る。
ほんの一瞬の間、振動を帯びた乳房は上下にプルプルと揺れてみせ、それがぴたりと静止した時、尖った乳首が前を向く。
とても豊かな胸だった。
もしや、今まで締め付けられ、サイズは少し小さく見えていたのではないだろうか。それでなくとも大きな胸は、こうして曝け出されてみると、あと数センチは大きく見えた。
先端で色めく朱色の乳首に、ニヤけた男達の顔は、ますます口角を釣り上げる。
「マジで何センチありやがる?」
「ははは! 確かに武器を隠し持ってたなぁ?」
「俺達でその武器はきちんと使ってやるよ」
屈辱を煽られて、マドロックはますます顔を歪めていく。
赤らんでいた頬から、さらに赤面は広がっていき、ついには耳にまで及ぼうとしている。目尻が力み、小刻みに震え、密かに拳まで握り締めていた。
「次はそのショーツも脱がないとな」
「どんな武器が出て来るか、楽しみだなぁ?」
彼らに従い、マドロックはショーツのゴムに指を差し込む。
脱ごうとして、また手が止まった。
吹き荒れる恥じらいで腕が固まる。こうも煽ってくる男達に、最も恥ずかしい部分を見せた時、一体どんな言葉で辱めを受けるのか、その予感で動きが固まり、ショーツを下げるに下げられない。
「どうしたどうしたぁ?」
「人質がいるってことを忘れているのか?」
マドロックの手が動く。
しゃがみ込んでいきながら、マドロックはその黒いスポーツショーツを下ろしていく。太ももの上を通して、膝のあたりを通過させ、ついに足首まで到達させる。足を片方ずつどかしていき、マドロックは全裸を晒して立ち尽くす。
「ひゅー!」
すぐさま、一人が口笛を吹いていた。
白い髪に合わせたような繁茂に注目が集まることで、マドロックの顔は赤味を増す。白とは対照的な色合いはよく目立ち、サルカズ特有の尖った耳まで染まりきる。恥じらいを大いに含んだ赤ら顔は、そのところどころが固く強張り歪んでいた。
*
マドロックを支配するのは圧倒的な羞恥心だ。
今、頭に沸き立つ熱で、脳に内側から火が通り、顔から煙が上がるかのように激しく心を煮立たせている。あれほどの重装備に身を包んでいたのに対し、一変して丸裸を晒すのは、彼女にとって大きな恥じらいを生み出していた。
周囲を囲まれ、前からも後ろからも視姦されている。
好奇心たっぷりの視線が乳房に絡み、銀髪の陰毛にもギラついた目つきが刺さる。尻に集まる視線も数多く、しかしマドロックはこの状況で手で隠すことすらしていない。
人質を抱えた彼らから、その上に銃口まで向けられている。
「両手を挙げろ」
と、そう命じられれば、従わざるを得なかった。
(素顔を晒すのも慣れないのに……)
ロドスでは「フル装備」で歩き回るなと言われているが、それにすら慣れないマドロックが、こうして素肌を晒している。もはや慣れない感じでは済まされず、より一層のこと落ち着かない感覚に羞恥心を伴っていた。
「身体検査をする。動くんじゃねーぞ?」
一人の男がマドロックへと迫ってきた。
ここにいる彼らは、厳密なレユニオン部隊ではない。傭兵として雇われた者が多く、金しだいで善にも悪にもなる集団だ。
そんな傭兵の男が目の前に立つと、じっくりと検分するような目で乳房を眺める。その品定めの視線を堪えきれず、ふとした拍子に目が合うと、マドロックは顔を背けた。
「なかなかウブなところがあるじゃねーか。え? マドロックさんよぉ」
「……し、調べるなら、早くすればいい」
「早く触って欲しいってか?」
傭兵の男は乳房に手を近づける。
「……っ!」
今に胸を揉まれることを覚悟して、マドロックは顔中を強張らせ、全身を緊張させていた。
そして、彼の指先が乳首に迫ると、下から持ち上げるかのように一瞬だけ、擦り上げるタッチが行われた。
「うぅ…………!」
思わぬ刺激が走り、肩が縮んで両手が動く。
「おおっと、余計な動きを取ったら、直ちに撃つよう周りの連中には命令してある。ついでに人質にも銃口が向いていると思った方がいいぜ?」
「……わかっている」
「引き金を引く場合、アンタと人質の一体どちらが傷つくかは、まあその時の状況と気分しだいってやつだな」
傭兵の男はニヤニヤと己のポケットを探り出し、蓋付きのライターによく似たケースを取り出す。その蓋から手の平に出したのは錠剤だった。
「口を開けろ」
抵抗感が湧いてくるのは当然だった。
何の薬を飲まされるか、わかったものではない。
「アーツ阻害薬だ。一定の時間、力を失う作用がある。ま、毒ではねえ。そんな顔しないで、気にせず飲めばいいんだ。どうせできない抵抗が、より確実にできなくなるってだけの話なんだからな」
説明を受けたところで、抵抗感は薄れない。
その言葉通りなら、万が一にもチャンスが訪れ、抵抗の機会が巡って来ても、肝心のアーツが使えず戦力になれなくなる。ただでさえ、こうして詰んだまま終わるかもしれない状況で、己の戦力を落とすことへの忌避感は強い。
だが、かといって飲まなければ、傭兵の男が言ったように、人質とマドロック自身のどちらが撃たれるかすらわからない。
「これでいいのか」
マドロックは口を開ける。
「さあ、しっかり飲めよ?」
傭兵の男はデコピンの要領で薬を飛ばし、マドロックの口内に放り込む。それを飲み、腹に収めるが、一体どの程度の時間で効果が出るのか。
数十分後か、それとも一時間後か。
即効性なら、あるいは数分後ということもありえる。
(もうロドスの救援に期待するしか……ドクター……来てくれるだろうか……)
「んじゃ、まずこのオッパイから調べないとな」
傭兵の男は無遠慮な視線を至近距離から注ぎ込む。
腰を屈めて、乳首の高さに顔の位置を合わせてまで、真正面から視姦してくる。まるでレーザー照射で皮膚を焼かれるかのような感覚に、乳肌がじりじりと熱くなり、注ぎ込まれた熱の分だけ、そのまま顔の温度でさえも上がっていく。
両手がやって来た。
右手が、左手が、一体どんな風に味わってやろうかと、あからさまに乳房の周りで迷い始めて、その数秒後には触れてくる。
下から持ち上げるタッチであった。
四指を使って下半球を掬い上げ、プルプルと揺らしてみせるタッチが施される。まるで水風船に振動を与え続けるような乳揺れが始まると、乳首も上下に暴れていた。
(くっ、屈辱的だ……人の胸を玩具みたいに……)
好きに遊ばれる感覚に、みるみるうちに表情が歪んでいく。
「なかなか張りがあっていいオッパイだ。感触を確かめてみようか」
「お! 是非聞かせてくれ!」
「頼むぜ? 素晴らしい表現をよォ!」
傭兵の男は乳房を鷲掴みにする。
五指を深く食い込ませ、力を出し入れすることにより、丹念なまでに味わい始める。その揉んでやっていることで得意げになった表情と目が合うと、マドロックはやはり顔を背け、尖った耳の先端だけを彼に向けていた。
「やわらけーなぁ? ま、そいつは当然なんだが、ちょいと硬さを帯びてるのか? なあ、想像できるか? 皮膚の部分っつーか、外側の層はかてぇのよ。だが、その内側が本当にふんわりしていて、指の食い込みが滅茶苦茶いい」
(い、嫌だ……そんなに詳しく……!)
「指を食い込ませた後、力を抜いてみるだろう? すると、あっという間に押し返される。外側に膨らもうとする力って言えばいいのか? きっと、固い層で張りの良さが出来ていて、そういう風になるんだろうな。ゴムみてーにぶよぶよするぜ」
(うぅぅぅぅ……!)
その解説行為にマドロックは苦悶する。
「いいねいいねぇ!」
「俺も揉んでみてぇ!」
「早くそこを変わってくれっつーの!」
周囲は一斉に盛り上がり、次は自分もとばかりの視線がマドロックに殺到する。誰も彼もが傭兵の男が口にした言葉を手がかりに、その揉み心地を想像して、実際に手を触れる瞬間に期待感を膨らませていた。
(私は……耐え抜く……。人質になったのは、ロドスで治療を受けて、助かったはずの仲間達だ……決して見殺しには…………)
歯を食い縛る力が強まって、しだいに顎が震え始める。
「ま、焦るな。身体検査はしっかりしねーとな」
傭兵の男は乳房から手を離す。
それはより恥ずかしい時間の始まりを意味していた。
「前屈しろ。自分で自分の足首を掴め。俺に尻を向けるんだ」
最悪のポーズを指示された。
その言うことを聞くために背中を向け、実際に体を折り曲げると、どんどん尻が高らかになっていく。足首を両手で掴み、従うままとなって感じる屈辱感は、ただの全裸の比ではない。
「尻の穴がよく見えるぜ? おっと、アソコもばっちりだ」
(くぅぅぅぅぅぅぅ…………!)
恥ずかしい穴が二箇所とも見えていることを伝えられ、マドロックは顔から火を噴き出す勢いで恥じらった。激しい炎が顔の内側で燃え盛り、頭部が焼けてしまいそうな感覚さえ覚え始めていた。
ぺたり、と。
尻たぶに手が置かれ、マドロックは全身を強ばらせる。
「さーて、と。アソコの穴から調べましょうかねぇ?」
もう一方の手が性器に迫り、マドロックはその気配を如実に感じた。まさにワレメのすぐ前で手が彷徨い、どんな風に触ってやろうかと指先を迷わせている。その気配があまりにもありありと伝わって、マドロックはまぶたを強く閉ざしていた。
(うぅっ、は、恥ずかしすぎる…………!)
指先がワレメに触れ、マドロックはピクっと尻を反応させた。緊張で力が入り、腰が反ることで、少しばかり跳ね上がっていた。
「可愛い反応があったぜ? ピクってな」
そして、その反応さえも実況のネタになる。
(いやぁ…………こんな……こんなに恥ずかしいものなのか…………!)
「さあ、入っていくぜ?」
マドロックのワレメに指先が侵入を開始する。
真に心を許した者でなければ、本来ならば決して立ち入ることは許されない。究極のプライベートゾーンに侵入される恥辱感に、マドロックは激しい苦悶を浮かべていた。いっそ滑稽に見えるほど頬を歪めて、顔中を硬直させきっていた。
膣口に指が入り込み、根元までが収まることで、拳がそのまま股にぶつかる。
傭兵の男によって、中身をしばし探られた。
「うーん。なーんもねーみたいだな」
膣内に指が軽く出入りして、ネジを回すかのようにいくらかの回転も帯びながら、指腹が膣壁のいたるところを撫でていく。
その指が引き抜かれても、まだ調べるべき穴は残っている。膣が終わって一安心というわけにはいかないのだ。
マドロックの緊張は続いていた。
次に備えた緊張感で、体中が固まっていた。
「さーて、ケツの穴もほじってやらねーとな」
指先が皺の中央に触れた時、さらに身体が強張って、きゅっと皺が窄まった。侵入を拒むかのように、肛門括約筋に自然と力を入れてしまっていた。
「っと、その前にジェルを塗らないと、ここは指が入りにくい。とはいえ、今アンタ、ちょっと抵抗しただろ」
「そんなことはない。体が驚いただけだ」
「ほーう? 今回は大目に見るが、あんまり無駄なことしてっと、人質の一人や二人、脳天に穴が空くことになるからな」
脅しかけられた直後、再び指が触れてくる。
そして、入って来た。
「へへっ、ケツを調べられてる気分はどうだ? 実際、こんなところにブツを隠し持った輩ってのはいるんだぜ?」
指が根元まで入ったことで、拳がそのまま尻たぶに当たっている。
マドロックは激しい苦悶を浮かべていた。
ジェルのおかげで滑りは良く、あっさりと指を飲み込んでいることで、さしたる痛みは感じていない。負荷もかかってこない。しかし、そんな話ではなく、こんな排泄器官の中身を探られている感覚が耐えがたかった。
脳が発火しそうなほどの羞恥熱に苛まれ、マドロックは首を振る。
嫌だ嫌だと言わんばかりに、その前屈で逆さとなった頭を左右に振り回し、それにつられて髪も乱れる。
「おっと、きゅっきゅって締め付けてきやがるなぁ?」
「黙れ……!」
恥辱の余りに言い返す。
彼の言う通り、マドロックは指の蠢きに肛門括約筋を反応させ、条件反射のように締め付けていた。
「よっぽどお恥ずかしいみたいだが、まあ女の子だもんなぁ?」
傭兵の男はマドロックの屈辱を煽るため、もう一方の手で尻たぶをペチペチと叩き始める。軽い力で軽快な音を鳴らし続けて、尻肌に感じる微妙な痺れにマドロックはさらなる苦悶で唇を噛み締める。
(なんて屈辱だ……た、耐えきれない……頭が弾けそうになってくる……)
足首を掴む両手に力がこもり、徐々に震え始めてくる。
肛門に異物が入り込む違和感と、指先で掻き回される恥辱感に、歯を食い縛るための顎の力が時間を経るごとに強まっていく。
(早く……早く終わって欲しい……これはいつまで続くんだ……)
脳の加熱が進む余りに、頭の中身が蒸発して消えてしまいそうな予感にまで駆られてくる。
だが、指は急に抜かれた。
「ま、こんなところだろう」
突如として、前触れもなくあっさりと抜けていき、しかし今まで違和感に満ちていた余韻は大きく残る。まだ指は入ったままであると、思わず錯覚してしまいそうなほど、皺で締め付けていた感覚は色濃い跡となっていた。
後編
傭兵の男がマドロックの元を離れていく。
しかし、それは他のさらなる傭兵達に体中をまさぐられ、恥辱を味わう地獄の始まりだ。
「まだ辱める気か……」
マドロックが周囲を睨む。
「当然よ」
「次は俺達の番だからな」
「身体検査で安全が確認されて、晴れて楽しめるってわけさ」
「ま、お前もせいぜい楽しむといいぜ?」
男達はマドロックの肢体に群がった。
アーツ阻害薬の効果が現れ、たとえ人質を無視しても、もはや抵抗できる術はない。ただの一人の女として取り囲まれ、乳房に伸びる両手に抗えない。
「ほーら、大人しくしろ」
後ろから、腕を押さえられていた。
後頭部に両手を組まされる形となって、マドロックは胸を突き出すポーズに力ずくで固定され、迫る両手に対して動けない。マドロックの両腕は、右にも左にも一人がつき、二人がかりで封じられ、好きにポーズを解くことすらできなかった。
(い、嫌だ……)
指先が皮膚に到達しようという直前まで、マドロックは顔を顰め続けていた。
そして、指がとうとう触れて来て、まずはぷにりと押し込んでくる。乳首を上から押し込んでの、柔らかなクレーターを作るなり、それを契機に両方の乳房を鷲掴みにして揉みしだく。
「くぅ……!」
弾ける刺激に、マドロックは咄嗟に歯を噛み締めていた。
「へへっ、乳首が元気に突起してるぜ?」
事実、マドロックの乳首は硬く尖って、その揉みしだいてくる手の平を突き返している。男は手の平の中央に固いものを感じ取り、すぐにでも乳首へ狙いに切り替え、集中的に転がしていた。
「マジか? この状況で興奮してるってか?」
「だったら、余計に楽しむしかないんじゃないか?」
左右の男がかける言葉にマドロックは嫌悪を浮かべた。
「冗談を言うな……」
「でも体は気持ちよさそうに反応してるぜ?」
「くふぅ…………んぅ………………!」
正面の男は乳輪をくすぐっていた。
産毛だけに触れるかのような、辛うじて接触してくる指使いで、乳輪だけを責め抜こうとしてくるタッチは、先端にムズムズとした快感を生み出してくる。繰り返される愛撫は、時に乳首に掠めてきて、それがまたアクセントとなってしまう。
そして、乳首をつままれた。
左右共々、親指と人差し指のあいだに挟み込まれ、強弱を付けることで行うマッサージに責め抜かれる。
「くぅぅ……うっ、んぅ…………!」
「声の我慢でもしてるのか?」
「違う……そんなことはない…………」
口では否定してみせるが、事実を指摘されたことで、内心ではドキリとしていた。反射的に目も伏せて、図星であることを遠回しに伝えてしまう。決して好きでアピールする気などなかったが、それで快感を気取られてしまっていた。
「おっと? 目を逸らしたな? ははっ、マジに声が出そうなんだなぁ?」
ちょっとした挙動一つで、相手を大いに喜ばせる結果に繋がってしまった。
「こりゃ、是非とも声が聞きたいなぁ?」
聞かせるものかと、マドロックは唇を内側に丸め込む。
顔を背けることで、尖った耳の先だけを相手に向けると、しかしそれさえも喜びを与えるエッセンスとなってしまう。
「耳が真っ赤だな? よっぽど恥ずかしいのかよ」
ニヤけきり、勝ち誇った顔で乳首を上下左右に転がされ、乳房にはより活発に刺激が走る。指先で責め抜かれ、乳首は三百六十度のあらゆる方向を向かされている。その指先だけを使った愛撫でも、乳首に応じて乳房全体がミリ単位で動いている。
凝視しなければわからない。
だが、注意深ければ、その実にかすかな乳房の揺れが見えてくる。
「んぅ……んぅぅぅ…………んぅぅぅぅぅぅ…………………………!」
喘ぐまいとしているマドロックは、声が出そうであればあるほど、丸め込んだ唇をそのまま噛み締める。丸め込もうとする力をより強め、顔を顰めながら喘ぎ声を封印する。
「んぅぅ……んぅぅぅぅ………………!」
丹念に揉みしだかれた。
五指を振るってよく捏ねられ、食い込む指の隙間から肉が盛り上がる。パン生地のように柔らかな変形を繰り返し、揉まれれば揉まれるだけ、乳房の中には甘い痺れが量を増す。もはや乳房という名の器には収まりきれないほど、快楽電流は増えに増え、器を漏れ出し身体のいたるところへ拡散する。
「おいおい、そろそろ交代しろっての」
「悪いな。この辺にしとくぜ」
目の前の男が引き下がると、また別の男が似たようなタッチで揉みしだく。
「じゃあ、そのあいだに俺達はケツでも触るか」
「腕はそのままだぜ? 言うこと聞かねぇと、わかってるよな?」
人質の存在を強調することは忘れずに、マドロックの背後でしゃがみ込むのは、今まで腕を押さえていた二人組だ。頭の後ろに組んだ両手をそれぞれ掴み、動くこともずれることも許さないようにしてきていたが、ついに自分達もご馳走にありつこうというわけである。
(最悪だ……尻と胸が同時に触られるのか…………)
尻のすぐ真後ろから、二人分の視線を感じる。
至近距離から注ぎ込まれる視線照射は、やはり皮膚をじわじわと焼かれるような熱さを感じてならなかった。
尻にもべったりと手が張りつき、撫で回すタッチで触られる。二人で獲物を分け合うように、左右の尻たぶを半分ずつ、それぞれ揉みしだいている。
前からは両手で揉まれ、後ろからは二人で触られ、三人による愛撫で恥辱感が際限なく膨らんでいく。
悔しくてたまらない。
自由に戦うことさえ出来れば、マドロックにとってこの連中は大したことがない。仲間が人質になる前までは、優位に立ち回っていたはずなのだ。
それが今、どうなってしまっているか。
自分が上だったはずであることを思うと、この力関係の逆転が悲しくなる。
泣きたくなるが、それでも今は辛抱していた。
(救援さえあれば……人質さえ、助かれば………………)
好きなようにまさぐられる屈辱に耐えているうち、やがてマドロックは押し倒され、仰向けにされたところに手という手の数々が殺到した。乳房とアソコは早い者勝ちで手が食いつき、肝心な場所にポジションを確保できなかった男は、余った箇所をどこでもいいから触ろうとして、太ももにふくらはぎ、肩に二の腕、顔に至るまで、ありとあらゆる部位が撫で回される。
体中に怖気が走った。
膣には指が挿入され、脚は丹念に撫で回され、乳首は刺激され続ける。どこもかしこも触られている地獄の状況に浮かぶのは、顔が潰れかねないほどの苦悶であった。表情筋に力が入り、顎から額にかけてがまんべんなく強張ることで、自分自身の力で表情を圧縮して、潰そうとしている勢いだった。
それらの愛撫は全て気持ち良かった。
全員が全員とも、マドロックを感じさせるための手つきをしている。下品な顔でむしゃぶりつくようでありながら、タッチだけは繊細で滑らかに、時には産毛だけを撫でてくる。巧妙な愛撫はマドロックの性感帯を活性化させ、時間が経つにつれて全身の感度は上がっていく。
「んぅぅぅ…………! んっ、んぅぅぅ……! んぅぅぅぅぅ………………!」
アソコにピストンしてくる指が気持ち良かった。
その出入りを愛液によって歓迎して、指を綺麗に包んでやってしまっている。指の表皮が愛液を纏うことで、一層滑りがよくなって、ピストンの快感は増してくるのだ。
くちゅり、くちゅりと、アソコからは水音が聞こえている。
(まずい――何かっ、何かが――あっ、ああぁぁぁ――――!)
その時だった。
――ビクン!
と、全身がバネのように弾み上がった。
背骨に駆け巡った電流で、身体がアーチのように持ち上がり、その反り上がった形のままに数秒ほど痙攣する。ビクビクと腰を震わせ、力が抜けると同時に浮かせていた背中を落とし、その次の瞬間である。
マドロックを囲む全員が勝ち誇っていた。
今この場で、一人の女をイカせてやった征服感に満たされて、こぞって勝利の微笑みを浮かべているのだ。
一気に敗北感が押し寄せてきた。
こんなにもいいようにされ、絶頂までさせられて、マドロックは間違っても勝者ではない。ならば敗者に決まっている。そこにどんな過程があろうとも、自分の肉体が征服され、落とされてしまったかのような感覚からは逃れられない。
パシャ!
シャッター音声が鳴り響き、イった直後の顔を撮られたのはその時だった。
*
マドロックはカメラの前に立たされていた。
(写真まで撮られるのか……一体どこまで辱めを受ければいいんだ……)
「あの重装備の中身が女だったなんて一大情報、きっちりと記録しねーとな」
「くっ…………」
直立不動を保つマドロックの前で、カメラマンがレンズを向けている。微妙に前後に動いたり、レンズ機能の操作を行うことで、映り具合の調整を済ませると、シャッターボタンに指を置く。
「…………っ!」
まるで銃口でも向けられたように身構えていた。
即座にシャッター音声が鳴り響き、自分の裸体がどんな風にか画像として保存され、デジタルカメラのメモリーに収まったことが実感としてよく伝わる。
カメラマンは飽き足らずに、何度も何度もシャッターを押していた。
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
こうも執拗に撮影を繰り返すのは、きっとそれ自体が辱めの一環だからだ。
「ほらほら、赤い顔をもっと恥ずかしそうに歪ませてくれよー!」
(うぅぅぅ…………!)
相手の思う壺なのはわかっていた。
しかし、自分の裸体が何十枚もの画像となって、無数に収まり続けていると思ったら、どうしても顔を歪めずにはいられない。尖った耳の先まで真っ赤に燃やし、盛大に羞恥心を膨らませていた。
「お乳のアップを撮りますよー」
カメラマンが接近する。
そして、宣言通りにあからさまに乳房にレンズの位置を合わせ、シャッターボタンを押していた。
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
胸だけですら、一体何枚撮るつもりなのかがわからない。
カメラマンがしゃがみ込むと、次の対象はアソコとなる。陰毛とワレメをアップにした写真であろうことなど、あえて言われるまでもなかった。
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
(くぅぅぅ……! く、苦しい……!)
まるで苦痛を与えられているように、マドロックは汗を噴き出しながら耐える表情を浮かべている。
「お尻撮ろうかー」
背後に回り込み、尻のアップが撮られていく。
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
「次はさっきみたいに前屈しようねー? 足首を自分で掴むやつだよー?」
マドロックは再び屈辱のポーズを取る。
長い髪が垂れ下がり、地面に広がり、サルカズのツノの先端が掠れもする。
(このポーズだけですら……こんなにも…………!)
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
肛門を撮られているはずだった。
尻の穴にレンズを近づけ、排泄器官さえもアップにされ、マドロックの浮かべる苦悶といったらない。
「次はM字開脚いってみよっか。アソコを開いて、中身をみせてもらおうかなー?」
(くぅぅっ、耐えろ……耐えるんだ……誰も死なせたくはない……!)
マドロックは歯を食い縛り、もはや激痛に備えるような緊張感で、顔中に玉の汗を引き出しながら、言われるままのポーズで中身を開く。指でアソコを開帳した瞬間から、首から上が火災となった勢いで、羞恥心は激しく渦巻いていた。
煙が上がっていると言ってもいい。
プライドや自尊心が焼かれていき、そうして上がる羞恥の煙は、決して目に見えるものではない。だが、顔中から放出される信号で、周りの男達にはひしひしと伝わるのだ。マドロックが一体どれほどまでに恥ずかしがり、苦悶しきっているのか、手に取るようにわかっていた。
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
性器の中身が執拗に撮られていく。
そのシャッター音声を聞かされて、まるで羞恥の炎に油を注がれているように、恥じらいは激しさを増していく。
(うううっ、辛い……辛すぎる……! 恥ずかしさで死にたくなる……!)
噴き出た汗に混じって、涙さえ出て来そうだ。
恥ずかしさだけで十分な拷問だった。
痛みによる拷問と、今まさに受けている仕打ちと、どちらかを自由に選ぶとしたら、一体どちらがマシなのか、きっと一瞬迷ってしまう。痛みの方がマシではないかと、ほんの少しでも錯覚してしまう自分がいる。
(うぅぅ……きっと、救援が……ドクターが……それまで待てば…………)
信じて耐え忍ぶマドロックに対して、カメラマンは早速のようにデータをタブレット型の端末に移し、タッチ画面によるスライドショーを作り出す。
「ほーら、見てみろ! お前自身のマンコの中身だ!」
「くぅぅ…………!」
歯を食い縛るあまり、本当に折れそうだった。
端末画面を見せつけられ、そこに映った桃色の肉ヒダは、今まさに撮ったばかりのマドロック自身の性器である。自分自身の性器をこんな形でまじまじと見せつけられ、さらにカメラマンがタッチ操作を行うと、別の画像へスライドして移り変わった。
(やめろ…………!)
お尻の穴だった。
放射状の皺の集まりが、美白肌の中心に浮かぶ薄らとした黒ずみに刻まれている。毛穴や肌質まで細かく観察できる鮮明な画像によって、皺の本数さえも正確に数えることができてしまう。
そして、全てを見せつけられた。
お尻のアップ、乳房のアップ、直立状態での性器のアップに、直立不動の全裸を丸ごと映した全身写真――それら一枚一枚を見せつけられるたび、まるで激痛でも走ったように顔中を歪めていた。
激しい苦悶で汗を流し、発熱しきった顔で周囲の大気さえも温める。
「さてさて、面白い反応してくれっから、つい遊んじまったが、ここらで本番といくべきとは思わないか?」
男が周囲に呼びかける。
それが何を意味するか、あえて考えるまでもない。
女の身で、男の敵集団に捕まったのだ。
ならば運命は決まっている。
(耐え抜く……仲間のためにも……必ず…………)
その運命に負けない覚悟を心に固め――
「おいみんな! 人質が奪還された!」
急に一人の男が慌てふためきながら駆け込んで、緊急事態に声を荒げる。
「んだと?」
「あれだけいたのにか?」
「くそっ、一箇所に固めといたからだ!」
その瞬間、マドロックの顔には希望が宿る。
(ドクター!)
しかし、そんなマドロックの顔は次の瞬間には曇っていた。
「ここにもロドスの連中が来る。多勢に無勢だ。そいつの奪還に、既に近くに潜伏しているかもしれねぇ」
「……ちっ」
「女は放棄した方がいいか」
彼らはマドロックのことを始末しようと思えばできたのかもしれないが、その暇さえ惜しんで慌ただしく準備を始める。
影のように忍び寄り、既にどこからか見られている――そんな可能性を彼らは警戒したのだ。
よって、彼らは脱出を優先する。
その時、最悪の捨て台詞を残していった。
「……っと、データは後でロドスにプレゼントしておくぜ!」
「…………なっ!?」
マドロックは驚愕した。
その去り際の一言を聞いていながら、アーツ阻害薬の効果が未だ切れないマドロックには、逃げて行く背中を捕らえる術などない。
あれを……全部……見られる…………ロドスに……ドクターにも…………?
ロドスに所属する者のうち、彼らは一体何人までの連絡先を把握して、何人にデータを送ることができるのか。マドロックには想像もつかない。ただ、きっと不特定多数に送信するのではないかという不安が大きく膨らんでいた。
撤退した傭兵部隊と入れ替わりに、救援は駆けつけてくる。
しかし、その後に無事だった仲間達の姿を見ても、マドロックの表情から影が消えることはないのだった。
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