なにこれ、軽く死刑宣告なんですけど……。
志野川明菜は軽く青ざめた。
無事にお尻の検査も終わり、数週間が経って、ようやくあの屈辱的な思いを忘れられそうになっていた時だ。帰りのホームルームで担任に名前を呼ばれ、何かと思って帰宅解散後に教卓に向かっていくと、明菜は一枚のプリントを手渡された。
――検査結果のお知らせ。
と、そう書かれていた。
普通、健康診断などは一度終わればそれっきりで、特別なお知らせなどやって来ない。わざわざ結果のお知らせが通知される事が何を意味するのか。明菜はすぐに察していた。だからこそ軽く青ざめつつ、あの恥ずかしさを思い出して頬を染めた。
「ああ、別にそれほど深刻な病気じゃない」
何を勘違いしてか、担任はどうでもいいフォローをする。確かにそれも重要だが、病状よりもまず先に、またお尻を曝け出すハメになる事への憂鬱さが沸いて出て、自分が何の病気かなど気にする余裕さえなかった。
「病気の種類によっては費用は学校負担になるから、志野川の家にお金はかからない。対処療法も保健室の先生が教わってきているから、病院には行かずに毎朝保健室に行くように」
「保健室、ですか? しかも毎朝って」
「ま、詳しいことは書いてあるから。あとは自分で読んでくれ」
明菜はすっかり沈みきりながら、教室を後にした帰宅後に家で再びプリントを広げる。何の検査でどんな病気に引っかかり、どういう治療が必要なのか。一から丁寧に書かれていた。
まず、直腸粘膜がから異常な細菌が出たらしい。
あの綿棒を挿入しての粘膜採取から、おかしな病気が見つかったのだ。初めは何も起きないが、禁は少しずつ繁殖して数を増やし、本人に自覚症状を与えないままゆっくりゆっくり事態は進行する。直腸内部を腫れさせて、排泄時に痛みを与えるものらしい。
つまり、トイレに行くとお尻が痛む。
(それだけかい!)
ツッコミでも入れたくなる症状だが、さらに進行が進めば腹痛を引き起こし、常時痛みを感じるようになるらしい。最悪の場合は日常生活に支障が出て、まともに立っていられなくなるのだとか。
病名は『超腸腹痛』――。
(超って何! 超って!)
初めて症状を発見した人のネーミングセンスを疑いたい。単純にお腹が痛くなるのと、直腸にも痛みが出るのとをかけての超、腸、なのだろうが、上手さよりも下らなさの方が勝っている。そんな下らない病気に明菜はかかっているのだそうだ。
自覚症状はない。よほどの早期発見にあたるらしい。
それはいいだろう。
色んな病気の増えている現代だからこそお尻の検査は導入され、こうしてきちんと病気が発見された。恥ずかしい思いをした甲斐があったと、それに関しては思っておく。思っておかなければ、あの屈辱的な思いを無意味にしたことになってしまう。
問題なのは保健室だ。
毎朝早く保健室へ通って、保健室で措置を受けるように指示がされていることだ。もちろん、わざわざ通院しなくとも保健医程度で務まる措置だというなら、それはそれでありがたい。明菜の家から病院までは少し遠いので、学校内で済むのは助かる事ではある。
しかし、すると学校内で毎朝お尻を出すことになってしまう。
措置内容に目を通しても、憂鬱な気分になってしまうような項目で目白押しだ。まずは直腸検温で毎朝お尻の温度を測り、座薬を定期的に投与する。綿棒を挿入して直腸粘膜を採取し直し、それを病院に送って治ったかどうかを判断する。放置するのは危険だが、一度治療を施せばすぐに治るものなので、医師の手を借りずとも校医で十分なのだとか。
校医どころか、薬をもらって医師の言う事を聞く程度の事など、個人で十分だ。なのにわざわざ保健室へ通い、人に診てもらう必要があるのは何故なのか……。
「はあーあぁ……」
明菜は深く深く、ため息をついた。
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