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 次の身体測定は身長や体重といった、身体サイズの計測だ。
 これもやっぱり男女混合らしくて、あたしは自分の順番を迎える。
「如月咲夜くん。こちらへ」
 いやらしい顔を浮かべた眼鏡教師が、あたしを呼んだ。教師の名前は確か岡部といって、さっきの医者以上にみだらな笑みを浮かべている。ていうか、ズボンの中でもう何かが膨らんでいるんですけど……?
 まさか勃起? なんてことはないよねえ?
 教師は別に聖人君主じゃないけどさ、教え子相手に、ここまであからさまに浴場するとか、それってどうなの? マジでキモイ。
 あたしは岡部先生の元へ立つ。
「では咲夜くん。最初にスリーサイズを計測いたします」
 ニヤニヤしながらメジャーを伸ばした。
 まったく、何故に伸長や体重よりもスリーサイズが先なわけ? まあどうせ全部計るわけだし、遅いか早いかの違いにしかならないちゃ、ならないけど。
 ならないのだけど……当然、横の列で並んだ男子達に見られながらになるし。
 やっぱり恥ずかしい……。
「咲夜くん。オッパイから計りたいので、さっきのように上半身を晒してください」
 またか……。
 バストじゃなくて、わざわざオッパイって言い方をしてくるし、男共は相変わらずこっちをじろじろ見てくるし、最悪だよ……。こういう目に遭うのは、AVの中の女優だけで充分じゃないの?
 あたしは泣く泣く、再び体操着とブラジャーを脱ぎ去る。
「やっぱお前の乳大きいよな」
 列をなす男子の一人が言ってきた。
「うっさい! 女子の体ばっか見るな!」
「おいおい、この学校では男子は女子の体を見る権利があることになってんだぜ?」
「くうぅ……」
 制度を盾に取って来やがった。
「咲夜君。さっそくオッパイの大きさを測るので、バンザイしてください」
 あたしは言われるまま、両腕をあげた。
 岡部は品定めでもするようにしてあたしの胸を観察し、すぐにメジャーを巻きつけてきた。わざとらしく乳首の上で目盛りを合わせ、手の甲を押し付けてきながら計測する。
「しかし女子高生の体は綺麗ですねぇ。えーっと、87.2ですか」
 岡部は眼鏡を光らせながら、サイズを声に出してきた。
「あの、せめてサイズは小さい声で……」
 あたしは言ってみるも、岡部は聞こえた素振りさえしてくれない。
「では乳房すぐの下は……74.4で、Cカップですか」
 くうぅう! 無視かよ! カップの大きさまで男子に聞こえるように言いやがった!
 あたしが恥ずかしさを堪えているのを他所に、岡部はメジャーをずりさげ腰まわりを測り始める。
「くびれのカーブが絶妙な、最高の腰つきですなあ! さすが女子高生……ウェストは63センチですか」
 うぅ……とにかく、これでバストとウェストは終わった。
「もう着替えなおしてもいいですか?」
「駄目駄目! 体重も量るんだからそのままでいなさい!」
 そんなあ……。
 あたしは泣きたい気分にすらなった。
 体重ごときで衣服を取る必要なんてないはずだけど、この学校のことだし、どうせより正確な数値を出すだのって言うんだろうね。
「じゃ、次は太ももですよ? 女子高生の太もも!」
 よもや岡部は、それ目的なのが台詞にすら浮き出ている。これほど露骨に女子高生を好んでるところからして、こいつ意外と援交でヤったりしてんじゃないの?
 そして、あたしの体操着の短パンに手をかけて――
 ――ずるり、
 と膝まで下ろさらた。
 白と水色の縞パンが丸出しにされ、周囲の男子が歓声でどよめいた。
 この計測では、女子は二列に別れて並んでいたのだけど、どうやらとなりの女の子もパンツ一枚の姿にされて、男子の視線に恥ずかしがっている。違いがあるとすれば、向こうは完全にパンツ一丁、あたしは短パンが膝で止まっているってところか。
「ちょ! あのっ、どうして下まで」
「布地の上からじゃ、正確に測れませんからねえ。いやしかし、女子高生の太ももというのはスベスベですなあ」
 岡部はやけに女子高生というものを好んでいるようだ。膝までしかおろさなかったのも、もしやこいつのマニアックなこだわりなんじゃないか? こんな奴の趣味趣向なんかに付き合いたくない。
 あたしの白い脚をさすってくる。どう見ても計測とは関係のない行為に、あたしは憤った。
「早くして下さい!」
「わかっていますよ」
 岡部はにやりとして、あたしのお尻を一瞬だけ鷲掴んだ。
「やっ!」
 いきなり尻を掴まれ、あたしはその感触に悲鳴をあげた。
 セクハラの上に痴漢まで! 最っ低!
「や! だってよ? 可愛い」
「パンツからはみ出た肉もいいよなあ」
 後ろの男子が相変わらずなのが、さらにあたしの羞恥心を引き上げる。もう耳まで真っ赤になって、どこでもいいから穴にでも隠れたい気分になっていた。
 太ももにメジャーが巻き付いて、ヒップが計測される。
 岡部はやっぱり、太ももの自分の好きな位置に目盛りを合わせ、さりげなく触ってきながら数値を出す。
 もうヤダ、このセクハラ教師。
 結局、スリーサイズの全てを声に出されてしまうし。
 どよめき合う男子の喋りが後ろから聞こえて、あたしはますます赤くなる。
「……もう、着替え直していいですよね?」
 せめて、一秒でも早く服を着たい!
「いえ、体重をより正確に測るためにパンツ一枚になってもらいます」
「そんな……」
 あたしは絶望的な気持ちになった。
 ここで服を着させてくれないってことは、どうせ座高や伸長を測る時になっても、なんだかんだ言って裸のままにさせられるのだろう。と、そんな予感がした。
 見れば予感した通り、順番の早い女子は既に裸体のまま伸長を測っていた。
「ちなみに、この後の検査もしばらくパンツ一枚で行ってもらうことになっていましてねえ。なので女子の方は、ここでパンツ以外の衣服は一時的にお預かりすることになっています」
「嘘……!」
 じゃあ、着させてくれないどころか、持ち歩かせてさえもくれないの?
 だいたい、まだ裸でする検査が残っているなんて、そんなの最悪すぎる……。
「さ、短パンも脱いじゃってください」
 あたしは泣きたい気分になりながら、膝で止まった短パンを下ろす。おずおずと、それを岡部へと手渡した。
 次は体重計の列に並んだ。
 あたしがスリーサイズの計測を終わる頃には、もう裸の女子の列が出来上がっていて、みんな一様に腕でオッパイを隠している。中には股間のあたりに手をあて、両方を隠そうとしている人もいて、あたしもまた両方隠しているうちの一人となった。
 並んでいる最中、男子が横の列からにやにや視線を送ってくる。
 ようやくあたしの番となり、体重計に乗る。
 普通なら何でもないようなこの体重計が、今は羞恥形の晒し台か何かに思えてくる。
 ここでも、どういうわけか気をつけの姿勢のまま後ろを向くよう指示されたので、やっぱり男子に胸を見せる羽目になってしまった。
 今は縞々のパンツ一枚だから、加えて太ももまで見られちゃってる……。
 座高計も、同じように晒し台か何かに思えた。
 測定器に座って背筋をぴったり当てている間、列の男子は当然のようににやにやあたしを見つめてくる。そればかりか、とっくに伸長まで測り終えた人達まで集まって、あたしの周りに輪を作っていた。
 うぅ……衆人環視の中で裸なんて……!
 心音や乳がんを見てもらった時の、あの医者にされた行為がまだマシなものだったようにすら思えてきた。
 最後に伸長測定器に背筋を当て、気をつけしながら測り終わるのを待っている間……。 計測を終えた男子が増えて、あたしを囲む輪の人数がさらにいくらか増えた。誰も彼もがにやついて、前のめりになりながら観察してくる。
「164センチですね」
 と教師の声が聞こえるや否や、あたしはすぐに両腕で胸を隠すのだった。

 次の検査って、何だろう?
 本当、早く終わらないかな……

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