その後、明日美は毎日のようにお尻を叩かれるようになった。放課後のたびに空き教室へ呼び出され、四つん這いで栗木にスカートを捲り上げられ、ドラム感覚で左右の尻たぶをタップされる。
明日美は屈辱の日々を送っていた。
「最近、毎日呼び出されてるよね?」
「反省文とか。掃除とかやらされてる?」
「いやいや、この前ケツ叩かれてたじゃん。あたし達の前で。絶対もっとやばいことされてると思うよ」
仲間だったクラスメイトには陰口のように囁かれ、男子達も心なしかいやらしい目を向けてくる。あの時の紫色のパンツの公開やスパンキングで興奮し、何日も経った今でも明日美を見るたびに興奮する輩が多いのだ。
「なあ栗木。昨日も明日美のパンツ見たのか?」
一人の男子が、栗木に馴れ馴れしく肩を組む。
「う、うん……」
「何色だったんだ? なあ、教えてくれよ」
「昨日は確か……。黄色、だったかな」
栗木がうじうじしながら答えると、その男子を含む仲間達は大いに盛り上がりを見せた。
「黄色だってよ! 黄色!」
「うっひょー! 紫に黄色か。結構、いいの履いてんじゃん」
からかうように囃したて、明日美はそういった下品なやり取りのネタとなる。
――畜生……!
明日美はそうして、歯噛みする。今までスクールカーストの高みにいた自分が、このたった数日間で下位に高落してしまっている。最下位だった栗木と同列か、あるいはそれ以下だ。自分と栗木ごときとの差がその程度しかなくなっている事実が明日美には耐えられない。
――畜生が! どいつもこいつも調子付きやがって!
誰も彼もが気に入らないが、やはり最も虫唾が走る存在は栗木だった。
いつものように葉山の権威に反抗できず、素直にならざるを得ない明日美は、今日も放課後の空き教室へ向かっていく。栗木と葉山とで三人だけになった途端、栗木は急に元気になり、明日美のスカートを捲ってくる。
「きょ、今日は赤なんだね!」
犬のようにはぁはぁと興奮しながら、明日美のパンツで大喜びだ。恥ずかしい上に豚を喜ばせているかと思うと、本当に悪寒が走る。一人の女の子が豚のエサ扱いなど、どんな人権無視の拷問だ。
「赤だったらなんだよ。そんなん口に出さなくたっていいだろ?」
「でも可愛いし……。そうだ! ブラジャー! ブラジャーも見せて!」
葉山の手前、明日美に対してならそんな我がままも通ることを、この豚でしかない男は覚えてしまった。だから、まるで動物がエサにがっつくかのように、栗木は自分の体にがっついてくる。
――くそ! 蹴ってやりてぇ……。
本当なら、実際にこういう輩を蹴ってやるだけの気概を明日美は持っている。
通学電車で痴漢に遭った時、明日美は触ってくる男の手首を掴み挙げるだけでなく、鳩尾めがけて肘内を食らわせたり、足を踏みつけてやったりという事をやってのけていた。
栗木のようなキモい男ならいつかは絶対にやるはずだし、前もって痴漢扱いしても問題あるまい。そうやって釘を刺し、それでも性犯罪に走るようなら、その時は容赦なく駅員に突き出し警察に身柄をくれてやる。
そもそも、悪事を働く勇気などない栗木に対して、明日美は本気でそう思っていた。
「明日美さん?」
思っていたはずが、微笑む葉山による穏やか圧力が、明日美から抵抗という選択肢を奪い去る。ただただ受け入れ、言われるままにワイシャツのボタンを外し、明日美は前をはだけてやるしかなかった。
「おら、満足かよ」
ワイシャツから肩を剥き出し、上半身を見せてやった。
「わあ、胸綺麗! 肌綺麗!」
栗木は子供のように大喜びして、無遠慮に肩を掴んで撫でて来た。
「ううっ!」
あまりの気持ち悪さに鳥肌が立ち、背筋をかけめぐる悪寒で明日美は呻いた。前から豚のような見た目だとは思っていたから、そんな奴の手で触れられればそれは気色悪いだろうと思っていた。
しかし、想像以上だ。
汗っかきなのか、手汗でヌルっとした手で撫でられるなど、例えるなら生きた魚のヌルヌルさを肌に直接押し付けられるような気持ち悪さがそこにはある。それだけ、栗木の手汗にはヌメりが効いていた。
気持ち悪い、気持ち悪い!
なのに、そんなものを我慢させられる。
「お、おい! 触るのは無しじゃねーのかよ!」
明日美は葉山に向かって喚く。
「無し、とは言ってません。明日美さんは散々お尻を叩かれているんですから、毎日尻を触られているようなものでしょう?」
「けどなぁ、こんなのって……」
「そういえば、今日はスパンキングがまだですねえ。栗木君、せっかくですから叩くだけじゃなくて、揉んだり撫でたりしてあげましょう。明日美さんも男性の手を待ちわびていることでしょうから」
「ざけんな! なんでそうなんだよ!」
明日美は喚き、抗議でもしようと掴みかかる。
だが、薄い目つきで一瞬睨まれ、無言で権力を盾にされ、明日美は萎縮せざるを得なかった。
「じゃあ、触るからね? 揉むからね? お尻出して?」
犬のように興奮した栗木に向け、明日美は四つん這いでお尻を差し出す。赤いパンツに包んだ尻肉に手を乗せられ、尻たぶを揉みこまれた。
「や、柔らかい……!」
お尻の触感に栗木は感激の声を漏らす。
「柔らかいじゃねーよ。いつまでこんなの続くんだ……」
「ずっとだよね。そうだよ! ずっとだよ! 僕がいっぱいマッサージするからね?」
栗木は味わうように撫で込んで、指をぐにぐに食い込ませる。ついでのように太ももに触れ、丹念に撫で尽くしてからお尻に戻り、思うままに揉み続けた。時間が経つのも忘れ、栗木は明日美のお尻を揉むことに夢中になった。
そして、ゆうに数十分という時間が経ち……。
ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ、ペチ……。
栗木は今までの憂さ晴らしのため、忘れることなくお尻をタップした。初めは女の子の涙ぐんだ顔にたじろきもしたものだが、ほんの数日でそれも見慣れ、栗木はむしろこの仕返しを楽しむようになっていた。
「いっち、にー。いっち、にー」
とても楽しげに、栗木はお尻でリズムを取る。
少しでも多くの恥辱を与えるため、わざとリズムに合わせて叩き、女を虐げる優越感に浸っていた。叩き飽きれば再び揉み、お尻の堪能の次には上半身を鑑賞する。どこまでも味わい尽くした挙句、下校時間を向かえるのだった。
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