第4話 肉バイブの手記②

     「クロエの手記②」

 いや、待ち?
 って、聞いた瞬間になったわ。
 一回目がフェラで? そん次に来る要求が挿入って、色々と飛びすぎなんと違う?
 マジでさ、ないわ。
 ない、マジでないって思いながらね、うちは受け入れたわけなんだけどさ。そのやり方っつったら、まず地べたに仰向け? んで足開いて? 下着は脱いで?
 頭の上でさ、二人がかりで両腕とも押さえんの。
 手首にさ、かかってくるわけよ、体重が。
 そんで両腕封じられて、脚はハズいM字んなって、そっから挿入係りの手でズコバコってのがね。バイブでもディルドでもいいけど、マジでそれ使って犯されてる状況だったかんね。
 つか、痛かったし。
 考えてみ?
 濡れてないからね。
 この前の、痴漢? 集団痴漢の時はさ、アソコに手が来たりしたわけだから、濡れたくもないのに濡れたりさ、あったわけじゃん。けどこん時はちっとも濡れてねーから、初っぱなは痛いばっかしで、どーやって感じんの? どーやって皆様のお望み通りヒイヒイ喘いで、見てお楽しみ頂けるような反応しろっていうのか、マジでわかんなかったからね?
 まあ、でも?
 最終的には?
 まことに遺憾ながら?
 感じたっちゃ感じたわけよ。出入りしてるうちに、よーやっと濡れてきて、濡れたおかげで痛みっていうの? 皮膚と皮膚が擦れて、負担しかねーって感じが和らいで、まあ気持ち良くなっちったんだよね。
 そんで、感じた顔とか、喘いだ声とか、そういうの披露すんのハズいっていうか屈辱っていうか。あんまし見せびらかしたくないから、我慢してたってのが正直なカンジ。
 つっても、濡れてちゃ気持ちいいこと自体は隠せんし、だから周りからエロいとか興奮するとか言われまくって、はぁはぁした息遣いで、すんごく熱っぽい視線とか向けられてさ。
 ぶっちゃけ、うちよりよっぽど興奮してたんじゃね。
 いや、知んないけどさ。
 挿入されて、出し入れされて、それで反応しちゃってたうちに比べてだよ? マジで、本当に、よっぽど顔がやばかったかんね。そりゃ全員じゃないけど、何人かの目つきはそんくらいやばかったかんね。
 あー……。
 あと、あんま書きたくないこと思い出しちった。
 えっと、イったわ。
 また次の刑とか言われたり? 手記に書くべき内容が書けてるみたいな話にされても困っから、まあ書いとくんだけど、出し入れされてるうちにイったんだわ。
 たぶん、ね。
 たぶんってのは、あんまし確証ないっていうか。今のは絶対に絶頂だった、間違いない、みたいな? 言い切れちゃう感じとまではいかなくてさ。
 けど、ま。
 頭は真っ白んなって、脚はビクっと反応して、みんなは普通の感じた素振りだと思ってたくさいけど、あん時のうちはたぶん絶頂してっからね。
 あ、マジでたぶんな。
 ガチで確証とかないから、自分でもよくわかんないから。

     「とある女子の手記3」

 恐れ多くも、クロエさんに挿入する役を務めさせて頂きましたわ。
 ですが、さすがに最初は痛かったようですね。
 まあ準備もせずに入れましたし、それは仕方がないのですが、痛がるクロエさんの、額に少し脂汗を浮かべて、頬もちょっぴり赤いあの様子といったらもう……。
 もう、もう!
 興奮しましたわ!
 本っっっ当に最高でしたわね!?
 あの頬に力が入って、目の下が微妙にピクッピクって動いていました感じがもう、なんと心くすぐることでしょう。
 ただ痛がっていただけではありませんの。
あの表情!
 ええ、そうです!
 不本意です!
 嫌々ながら挿入されて、男性のそれが自分の中に出入りしている状況、嫌悪や抵抗の滲み出た表情に、痛みが生み出す苦しみをトッピングして、眉間に眉の寄っていた感じ!
 なんと、なんと、素晴らしかったことでしょう!
 無論、途中から濡れてきて、気持ち良くなり始めてからの様子も最高でしたわね? 興奮しましたわね? 見てるこっちが濡れるくらい、めちゃくちゃ興奮しましたわね?
 表情は変わらないのです!
 痛くて苦しんでるみたいな顔のまま、だけどアソコは濡れていて、ですから見え隠れする部分は愛液による光沢を帯びていましてですね?
 息遣いは乱れ、クリトリスは突起して、感じているという真実を誤魔化しようのなくなっていた、あの姿!
 途中までペニスを引き、そして突っ込む!
 貫くたび、貫くたび、眉間の皺が少し深まり、頬もぴくっと弾む様子!
 しかもです。しかもです。
 絶頂していたと思います!
 いいえ、してました!
 M字の脚がピクって感じで、一瞬だけ内側に閉じた時、何やらとてもとても、悔しそうな顔をしていました。あの時、イっているはずなんです。
 イってます。
 絶対、確実に、百パーセント、あの時のクロエさんはイっていらっしゃるのです!
 断言します!
 イっちゃっていればこそ、あのちょっと悔しそうな、思い通りにされてしまったことに、思うところのある感じの空気が醸し出されているのです。
 クロエさんのアソコは、悔しい、悔しい、と思いながら貫かれれば、イクのです!
 そう! 悔しイキを!
 するのです!
 そういう素質の持ち主なのです!

     「クロエの手記③」

 えーっと、三回目のリクエストは、なんか木馬みたいのに跨がらされて? 変なゲームを言い渡されて? やることになったんだけどさ。
 そのだ。木馬でいいの? あれ。
 あの木製の跨がるやつ、よーわからんから木馬って書いておくけどさ。
 そこに男性器置いて? 魔法で固定して?
 んで、騎乗位みたく跨がって、二度目の挿入ってなるんだけどさ。その時のゲームがめんどいってか、魔法で上下させるとか、うちの感度を上昇させるとかしてきたじゃん?
 我慢ゲームってのかな。
 気持ち良すぎてっていうか、快感が欲しくなりすぎて? 自分から上下に動いちゃったらうちの負け、所定時間まで我慢できたらうちの勝ち。
 一人あたりの持ち時間が三分とかで、まあやるわけよ。
 一人ずつ、順番に?
 使うもんは同じでも、まー順番に犯されるみたいな状況になるわけだから、やっぱ複数人にやられてる気分ってか。まあ最初から複数人に襲われてる身なんだけどさ、うちは。
 あれって、太さとか形状?
 なんか可変式だったの、あれで初めて知ったわ。
 みんなそれぞれが使う魔法でさ、太さが増したり、逆に細めになったり? 反り具合が変わったりとかしまくって、おかげで使ってるもんは同じなのに、挿入だって複数分っていうか、その人数分の男性器を入れられちった気分。
 マジ、最悪だかんな。
 どうよ、あんた。
 輪姦とかされて、平気でいられる系?
 いられんならいいけど? いや、よくねーけど?
 うちが味わった地獄がどんなもんか、想像できん? みんな女の子だよな? 男子に痴漢されたり、レイプとかされたら嫌だって思う立場だよな?
 そもそも、なんで同性狙いの集団痴漢とかやってんの。
 まあ、いいけどさ。
 よくねーけど?
 この手記の中では、まあええよ。それは。
 で、一人一人の感想っていうか、あの子の男性器は、この子の男性器は、って感じで、覚えてる限りなるべく細かく? どう感じたとか、どれくらい気持ち良かったとか、書かなあかんってわけだろ?
 メンド、マジでメンド。
 とりま最初のは記憶はっきりしてっけど、太すぎてきつかったっての。最初ん時は可変機能とか知らんかったから、急に太さ変わって驚いたってのもあるけど、にしても太いわ。
 穴のサイズ考慮してみ?
 何度も思うけど、同じ女の子だろって、お前らぶっちゃけ指くらい入れたことあるんでねーの? あんまこういうネタなんか振りたかないけど、一本入れただけで痛いとか、そういう経験あるんと違う?
 で、痛いわけよ。
 急に穴の幅より太くなって、めっちゃ圧迫されて、それが魔法で上下して、うちのアソコを貫くわけじゃん。
 太いから。
 密着というか、押しつけられてる感じのさ、触れ合ってる部分の密度? そーゆーんがさ、高いわけじゃん。
 いてーわ。
 ぎゅーって、必要以上に強く押し合って、そんで擦れてくるって、そりゃ痛いわ。痛すぎるわ。いや濡れちゃいたから、ちっとは平気だったけど、にしても痛かったわ。
 んなもんが三分かけて動いたって、うちは興奮せんわ。
 ってか、我慢できずに? 欲望に負けて? うちが、だよ。うちが上下運動を始めたら、うちの負けってルールじゃん。もっと快感的な意味で追い詰めないといかんだろってゲームで、マジで痛いばっかだったから。
 あ、でも、それで興奮してたんか?
 痛がる姿が好きだったんか?
 勝敗、どうでもよかったんか?
 ま、ともかく一人目は駄目で、けど二人目はまことに遺憾ながらっていうか、一応感じたわけよ。
 太さは元通りになってさ、ぶるぶる振動させてきたのが、マジでやばかったわ。気持ちいいだの快感だの、あんまし認めたくないから、書きたくはないんだけどさ。
 すっごく細かく振動して、腹の内側が揺らされまくる感じ?
 あれ、うちが絶対に痛がらないように、めっちゃ上手く調整されてたからね。そりゃ感じるわ、っていう振動具合で、たぶんエロっぽい息遣いとか、うちはしちゃってたと思うわけよ。
 中身がこう揺らされてる感じ、まあね。
 うん、やっぱわざわざ書きたくねーわ。
 ねーんだけど、あれは気持ち良かったし、腹の内側が揺れてる感じのせいで、腰を浮かせそうになるうちがいましたとさ。
 けどま、我慢しました。
 んで、三人目とか四人目とか、あー全部は覚えてねーわやっぱし、無理だっての。いくらなんでも、記憶しきれんわ。その場でメモ取るくらいでねーと、ちと無理があるわ。
 ってわけでさ、まー覚えてる限りでいくんだけど。
 だいたいの子はうちにあの手この手で腰を振らせようって、策略をな、巡らせてたろ? ひたすら感度上昇の呪文唱えてきたり、指でクリトリスやってきたりな。
 あー、書いてるうちに思い出したわ。
 クリトリスをひたすら弄ってきて、魔法で男性器動かすのはやってこなかったのが三人目だったわ。三人目のその指でな、クリトリスの突起した部分をこう、延々と、ずーっと、持ち時間の三分全部使って、くすぐってくんのな。
 感じたわ。
 遺憾ながら感じたわ。
 そんで、うちの腰はちょっぴり浮くとかしてたわ。ちょいとだけ浮かんだ気がしたわ。あんまはっきりとは動かんかったから、誰も動いた動いたとか言わんかったし、うちも自己申告とかせんかったけど、一センチだか二センチだか、そんくらいは動いてたわ。
 ほら、実は気づいてるのがいて、後から追求されたりしても困るなって思ったんで、ここで書いとくからな。
 んで、何人目だったかな。
 うちが動いちゃったやつ。
 さすがにな、覚えてねーの。何人目の時にそうなったか。覚えきれんの。記憶力足りんの。
 とりま、そん時のやり方は、最初の一分? 三十秒? 時間までは知んねーけど、最初の方だけ小刻みに突きまくって、後は振動させるって作戦。
 あれのせいでうち、動いたからな。
 あ、やべ。
 って思った時にゃ、もう十分に腰を上げちゃってたから、あれでうちの敗北ポイントが一つカウントされたけど。
 あの勝敗、なんかあったん?
 なんもなくてええけど、なんも賭けるだなんだ言って来ないから、なんもないってことでええよな?
 とんかく、うちはそのまま少しだけ上下して、やべって思って腰止めたけど、ゲームの趣旨的には、まあ負けたわ。

      「とある女子の手記4」

 いんやー、極エロだったね。
 勝ち負けのゲームを振った瞬間さ、クロエったら凄く身構えていたじゃない? 負けたらなんかあるんじゃないか、罰ゲームとか追加の刑とか? まあ、想像してたんじゃないかって思うんだけど、別にないわけよね。
 いや、後からあったことにしてもいいんだけど、その時は別に何も考えてないよね。
 うん、なかったの。
 だけどクロエは警戒心を働かせて、負けたらまずいと思ってか、我慢してる感じをすっごく出してた。感じたら負け、ましてイったら負けみたいな顔で、きゅっと唇を固く結んで、下唇とかはもう噛んでたよね。
 我慢している感じがありありと現れた顔をしてさ、みんなが試す色んな方法を耐えるんだけど、私の時に動いちゃってくれたのは、達成感あったなー。
 やっぱり、作戦が良かったのかな。
 最初の何十秒かだけピストンするんだけど、なるべく腹の裏側に当たるように擦ってね? 上手く感じさせたところで、ピタって止めるの。
 ピストンを我慢してる顔もよかったけど、止まった瞬間の顔もよかったよね。
「え?」
 みたいな?
 まあ、ごく普通に? 持ち時間をピストンで使い果たすって、思い込みとかあったんだろうね。微妙に驚いたみたいな反応はそれだろうけど、その先がね? 面白かったよ。
 ほら、ピストンを停止して、五秒とかそのくらい待ってみてから、私は振動の魔法を使ったの。振動するバイブの感じで、クロエのアソコを刺激したんだけど、微弱な振動に留めたんだよね。
 あんまり強いと、振動だけで十分に気持ち良かったり、それでそのままイっちゃったりとか、あったと思うから、そこは上手いこと加減したってわけよ。
 で? 面白いのが?
 その我慢!
 誰が動くもんか、動いてなんかやんないぞ?
 みたいな、ちょっと睨んだ顔で我慢してたのに、無意識だったのかな? 知らず知らずに? 微妙に腰が浮いて、浮かんだ分だけ肉棒のほら、竿の部分が見えていてさ?
 次の瞬間。
「あっ、やべ」
 みたいな顔してたの。
 最っ高にエロかったよね。
 あれこそ極エロだよ。
 しかも、そのまま我慢できなくなってて、でも負けるのは癪みたいな、不満そうな顔で上下する姿ったらもう、とにかくエロいのなんのって。
 いやぁ、全員濡れてたでしょ。
 少なくとも私は濡れたね。
 だって、あんな風に我慢とか不満みたいなものを滲ませながらだよ? なのに上下に動いてる姿とか見せられたら、どんだけ嫌々なんだよ、でも自分から動いちゃってるよね? みたいな興奮がさ、こうね? 湧いてくるじゃん?
 ああ、もう一回見たい!
 映写魔法で動画にしたら、どんだけ再生稼げるんだってくらいのエロさだった。
 残しとくべきだったでしょ。
 あー! 損した!
 良すぎたあまり、残してないことの損を感じる!

     *

 三度目の開廷だった。
 裁判長となる女の子は、やはりクロエの真正面に陣取り、他の裁判員は周りを囲む。
「では審議を開始していきます」
 厳格な顔を気取って、裁判長はそう述べた。
「審議ってか。うちは痴漢妨害罪とやらの罪を償い、色々と要求に応じまくったと思うんで、もう釈放? みたいな感じでよろしくお願いしたいんけど」
 と、クロエはきっぱり言う。
 手記に残したプレイの数々は、フェラチオに正常位ポジション、木馬での騎乗位だけでなく、四つん這いによって後ろから出し入れされている。二本目や三本目が用意され、複数の穴が同時に塞がれもした。
 そして射精機能が付いているため、穴の中を汚されたり、顔や体にかけられもしているのだ。
 あんな目に遭い、罰というなら十分に受けたはずではないか。
「ええ、確かに、手記もきちんと書いていますね。感じていたこと、絶頂したことも余さず書いており、他の皆さんの手記ともおおむね一致しています」
「あ、真面目に照合とかしてたのね。はいはい」
「してたんです。で、しかしですね。このまま罪を償いきったものとして、ただ放免するのもつまらないと思っている方も多いでしょう」
「つまらんってね」
 人を辱めることが目的なのだから、どんな超理論を捏ねてでも、まだ罪を償いきっていないものとしたがっている。その空気をひしひしと感じるために、クロエは警戒心を抱いていた。
(まだ続くとか、マジでカンベンなんだけど)
 裁判員の中から、何か発言が出て来るのだろう。
 一体、どんな主張が飛び出てきて、それがどう受け止められるのか。弁護士不在のこの裁判、クロエ自身の言葉によって、少しでも有利な判決を引き出す余地は果たしてあるのか。
「はい」
 一人が手を挙げたらしい。
「発言をどうぞ」
 いつものごとく、発言許可の言葉が発され、クロエは静かに身構えていた。
(なに言う気か知らんけど、まーたロクなことでねーのは間違いないっしょ)
 そう思い、警戒していた。

「クロエさんは非処女隠しをしていたと思います!」

 ぎょっとした。
「はっ!? えっ、ちょい待ち!」
 クロエは慌てた顔をしていた。
「間違いありません! あの挿入感、フェラだって不慣れなフリをして見えましたが、私の目は誤魔化せませんよ? あれは絶対、ぜーったい! 経験者ですから!」
「まっ、待てオイ誰が経験者だコラ」
「皆さんの中にも、違和感があったのではないですか? 今までの処女の反応と比べてどうでした? 破瓜の血はなく、最初の痛がる様子も準備なしで入れたせいに過ぎません。非処女だとは思いませんか?」
 その主張がよほどの賛同を得たのだろう。
「確かに」
「あたしも思ってたわ……」
「未経験の人はもーちょっと抵抗示すからね?」
「そそっ、感度上昇魔法だって最初から使ってたわけじゃないんだから、あの感じ方も違和感でしょ」
「だよねー」
「思った思った」
 最初の意見を皮切りに、実は自分も同じことを思っていたようなことを何人もの裁判員が口走る。右を見ても、左を見ても、頷く顔が並んでいる。
「事実ですか? クロエさん」
 裁判長が問いかけてきた。
「え、いや、事実っていうか……」
「私はね、クロエさん。処女か、非処女か、それだけを問うているのです。誤魔化しはやめてください」
 その瞬間、罪悪感が吹き荒れた。
(やばっ、この感じ……)
 額の内側が痛む。
 心を染め変えようとしてくる罪悪感の色濃さで、感じなくてもいい申し訳なさが、謝らなくてはいけない気持ちが噴出して、抑えが利かないまでに至ってくる。
 だが、非処女である事実を打ち明ければ、一体どこでどのように体を許し、いつから非処女であったのかの追求が始まるのではないか。そうなれば、あの一連の出来事についても話さざるを得ないのではないか。
 その恐れだけが、発言のストッパーとして働いていた。
 だがそのストッパーも、増幅する罪悪感のために徐々に緩んで、ついには外れてしまうのだった。
「えっと、まあ? 経験はあったっていうか……」
「いつから?」
「いつって、割と最近? かは、ちょっとわかんねっけど、数週間? 一ヶ月? なんとなく、そんくらい前」
「相手は恋人でしたか?」
「い、いや……」
 そう口にした瞬間だ。
「恋人じゃ……ない……?」
 裁判員のうち一人には、よほどの戦慄が走ったらしい。
「え? ならどういう?」
「バイブで? ってわけでもなさそうだし……」
「え? え? え?」
 ざわめきが広まっていた。
 いまこの瞬間、クロエがどこでどのように喪失したかの想像が一人一人の中に膨らんで、それがそのまま憶測となり、皆の口から漏れ出ようとしているに違いなかった。
「静粛に」
 裁判長がそう言わなければ、あるいは妄想発言大会でも始まっていたかもしれない。
「詳しくお話頂けますね?」
 裁判長は静かに告げた。
「あ、やっぱ? そーね、なるよね。うん、なると思ったわ」
 話したくない。
 自分でバイブを入れたとでも嘘をつき、それで誤魔化そうかという考えが脳裏を掠め、その瞬間にやはり頭痛と罪悪感に見舞われる。
 駄目だ、誤魔化せない。
 あのスクロールの影響に違いないと、頭ではわかっているのに、湧き溢れる罪悪感のせいで、嘘や誤魔化しという方向には踏み切れない。
「あっ、えと……じゃあ、言うんだけどさ……」
 たどたどしく、クロエは切り出す。
 そして、語った。
 学園祭の時、セクハラを行う一〇歳児を目撃して、それを止めに入ったこと、家庭教師のバイトをやったら、教える相手の子供がその一〇歳児であったこと。
 その父親に犯されたり、おかしな店で働かされたり、しかし最後には地獄から脱出して、平穏無事な生活を取り戻していたことまで、全てを語り尽くしていた。
 そんなクロエの長い話が終わるなり、また周りにはヒソヒソ話の気配が広がっている。
「クロエさん」
「あ、はい」
「あなたは重要な事実を伏せていたことになります」
「そっすか。ああ、そっすか……」
 もう察していた。
 この裁判はごっこ遊びだ。法的な判断を厳格に下す場などではない。クロエの辱めこそが主目的の裁判で、重要な真実を伏せていたことが発覚したなら、その扱いは知れたようなものである。

「判決。あなたには追加の刑を言い渡します」

 最悪の予想そのままに、クロエはまた次の刑に準じて、恥辱を味わうこととなる。
「つきましては、こちらをご覧頂くことになります」
 裁判官が何かを取り出す。
 スクロールだ。
 まずい、まずい、あれはまずい――すぐさま膨らむ危機感で、その中身を決して見てはいけないと、全神経が警笛を発しているのに、何故だか目を逸らせない、足腰も動かない。
 目の前で巻物が広がった。
 そこに書かれた魔法陣が輝くことで、クロエの中に染み込む新たな洗脳の内容は……。