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 次のコーナーを撮影するため、四人のアイドル達は移動する。
 肝心な部分を丸出しにしたセーラー服と、実質的に全裸と変わらない鷺沢文香の彼女ら四人は、それでいて靴だけはきちんと履き、野外を出歩くこととなる。
 山頂の旅館から移動して、行き先は絶景スポットだ。
 単に広場を付くっておき、そこに柵を立ててあるだけの、山から地上を見下ろす絶景という以外、特に何も変わったことはない。眺めるべきを眺めたり、設置してあるベンチで休むためのスポットだ。
 絶景は絶景だが、寺や滝など、他のスポット同士の道のりを繋ぐ休憩所としての意味合いが強く、これ自体が売りという場所ではない。
 そこへ向かって歩く四人は、揃って落ち着きのない様子である。
 先ほどまでは屋内だったが、今度は青空の下、頭上の木漏れ日から差し込む清々しい日光を浴びながらの移動である。もちろんエキストラの配置はされており、先ほどからすれ違う男という男の数々は、決まってアイドル達を視姦していた。
 もうこれだけでも、四人にとっては恥ずかしい状況だった。
 変わった衣装によって注目を集め、乳房とアソコが丸出しであることがより一層の注意を引き、そして文香に至っては何もかも丸出しで、ショーツの後ろすら穴あきなので、尻すら出ている。
 目立つ服装で注目するせいでの、そこに恥部の露出が重なった恥ずかしさ。
 文香の場合は、三人は一応服の形をしたものを着ているのに、自分だけが全裸同然でいることの、着衣の差をつけられてしまっている恥ずかしさ。
 それらを四人それぞれ胸に抱え、肩を小さく縮めて歩いている。いかにも恥部を隠したくてたまらない、手で乳房やアソコを気にした仕草が、四人の誰からも、いくらでも確認できるのだった。
 そして四人は絶景スポットの広場に辿り着く。
 そこに集っているエキストラは、やはり単なる一般客になりきって、絶景にカメラを向けたり、ベンチでペットボトル飲料を片手に休憩するなど、ごくありふれた光景を広げている。
 アイドル達だけが異分子だった。
 どう考えても、明らかに、みんなは普通の格好をしている中で、おかしな露出をしているアイドル達こそ、この中では異質な存在と化していた。格好がおかしいのだから、スタイルが良いだの美人だの、ルックスが輝いてるから人目を引くのとは、また大きく話が違っていた。
 チラチラとした視線が四方八方から集まっている。
 それを気にして四人揃って、赤らんだ顔でいかにも小さく縮こまろうとしている。この番組の趣旨としては、もちろんそれも撮りたい絵で、カメラマンはここぞとばかりに顔を大きく映しているが、ただそれだけでは終わらない。
 どうせなら、もっと大きな羞恥心を煽りたいのが、この番組の企画意図だ。
 温泉では体洗いの中年が登場し、ケツ島お尻アイランドを披露した芸人がいたように、そして塩見周子の前にはサインをせがむ少年が現れたように、出演者の羞恥心を煽るための仕込みはここにも用意されている。
 今、その仕込みの人物がやって来た。

「おっ? お、お、おぉおぉぉ!?」

 金髪にサングラスの、日焼けで肌の浅黒い、いかにもチャラついた男であった。美人のお姉さんを見かけるなり、すぐにでも飛びつき声をかけ、ナンパを試みようとするような、その見た目のイメージ通り、彼はまさしくチャラ男としか言いようのないキャラだった。
 あるいは彼も芸能人で、そういうキャラクターをテレビ向けに演じているだけかもしれないが、ともかく彼の役どころはチャラ男であった。
「へぇぇ? こーんな可愛くてエロい子が四人もいるなんで、こんなの声かけない方が失礼ってやつじゃね? じゃね? マジでそうじゃね? こんにちはおっぱい! チーッス!」
 チャラ男はすぐさま四人へ迫る。
 そして、四人横並びとなったアイドル達も、これは道端で受けた本物のナンパではないので、無視して歩み去るということや、迷惑なので警察を呼ぶといった対応は不可である。番組上の脚本に沿ったチャラ男に対して、彼のチャラつきぶり自体を咎めたり、追い払ったりするわけにはいかないのだ。
 そうとわかってはいても、四人が感じる不快感というか、困った気持ちというかは本物に近いところがあり、しかも手で隠すことは禁止されている。
 スタッフがそうカンペで指示を出している。
【現在、手で隠すのは禁止】
 と、放送時にはテロップで表示する予定もあり、そのような指示が出ている最中、それでも隠してしまった場合、たちまちアウト判定が出て罰ゲームが執行される。それを避けるため、四人そろって我慢しているわけだが、チャラ男の振る舞いは嫌に自由だ。
「アナスタシアちゃーん? 君、知ってるよ! へえ、肌綺麗じゃん? じゃん? 一体どんだけおっぱい可愛いわけぇ?」
 チャラ男はアナスタシアの乳房に顔を近づけ、露骨な視姦でニヤついた表情を隠しもしない。
「あ、あんまり見られると、その……私…………」
 アナスタシアは困った顔で、赤らみの色を濃くしながら、顔を背けそうになっている。それを微妙に我慢して、うっかり背けないようにしているのは、アウト判定を警戒してのものだった。
「ふーみかちゃーん! 鷺沢文香ちゃーん! ケツ島見たよ?」
 ほぼ裸の文香の前では、その以前出演した番組の内容をあげつらう。
「そ、そうなのですね……」
「で? 何? 透明制服? いやいやいや、無理ありすぎっしょ! その設定! だーれが考えたんすか? 前のプールの設定の方がマシすぎてマジでウケるんすけど!」
 馬鹿にしてきた。
「……っ!」
 好きでこの格好をしているわけではなく、腹にマジックペンの書き込みを入れているわけでもない。それに文香が考えたアイディアでも何でもないのだが、チャラ男はまるで文香を馬鹿にして嘲るように言ってくるのだ。
 格好を馬鹿にされるのは心に来る。
 ただでさえ、周りのエキストラは普通の格好をして、他の三人のアイドルも、服の形をしたもの自体には袖を通している中で、自分だけが丸裸という文香の、着衣に差がついているせいでの感情は、チャラ男によって余計に煽られているのであった。
「しゅーこちゃーん! 京女なんだっけ? マジであれじゃん? 京都弁じゃん?」
 今度は周子の前に立ち、やはり乳房に顔を近づけ視姦する。
「そ、そやな……」
 愛想笑いで返す周子の頬は、いくらでも引き攣っていた。
「で? で? で? 渋谷凛ちゃーん! クールな顔してるねー? 何何何? そんなオッパイとマンコ出してるくせに平気なわけ?」
 さらに凛の前に移った時には、例によって乳房の視姦をした上で、さらにアソコにまで顔を近づけ、これでもかというほどの視線を注ぐ。
「うぅ……」
 その恥ずかしさに、凛の頬は強張っていた。
「いやーでも、四人もいちゃうとさ? 俺も誰をナンパすりゃいいのかわかんねーっつーか? もう全員にアタックしちゃうよね? 俺の部屋来ない? 来ない? 来ない? 来ない?」
 と、その「来ない?」をもれなく一人に一回ずつ、順々に投げかけていくものの、誰一人として頷かないのは、言うまでもない話である。
「ああ! そうそう! そーいや、温泉の更衣室で宝物めっけちゃったんだよねー」
 と言って、彼はアナスタシアの前に立ち、その見ている前でポケットに手を突っ込むと、一枚の布切れを取りだし見せびらかす。

『アナスタシア! アウト!』

 ショーツのせいだった。
 温泉の脱衣所で脱ぎ、そして上がった後には消えていた下着が、こうも思わぬ形で出て来たのだ。自分の穿いた今日のショーツぐらいは覚えていて、純白の生地にパープルの刺繍を入れ、紫の薔薇を刻んだ上に、青いフロントリボンを着けたショーツは、まさしく今日のアナスタシアが穿いていたはずの下着であった。
 それが急に出て来た驚きと、見せびらかされる恥ずかしさ、チャラ男なんかの手に渡っている恥辱感が一気に表情へ吹き荒れて、目を逸らすような、モゾつくような、今までよりもわかりやすい反応に出てしまった。
 罰ゲームの内容は変更となっている。
 ハリセンに変わって、穴あきショーツの上端部分、二重になった布に仕込んだローターの、クリトリスを刺激するように作られたセットが起動する。スタッフの誰かがリモコンのスイッチを押し、振動が始まる途端、アナスタシアは強い刺激に声を上げ、右手では口を塞ごうとしながら、左手はアソコへ伸ばしていた。
 アナスタシアはたちまち悶え、甘い声を吐き始める。
「あっ、んぅ……! んぅぅ……!」
 ショーツが見るからに振動していた。
 スカートの一部分を切り抜いて、さらに穴あきショーツで割れ目は丸見えにしてある上端、布の及んでいる箇所は、二重の布の内側に小石でも仕込んだような膨らみがある。その膨らみがぶるぶると、ローターとしての振動を披露して、ちょうどその位置にあるクリトリスにピンポイントで刺激を送っている。
 やがて、絶頂した。
「んぅぅ――――!」
 ビクっと震え、文香はその場に蹲る。
【文香、絶頂!】
 放送時の映像には、そんなテロップが出る予定だ。何ならガヤの笑い声まで入れ、絶頂した事実を番組上で茶化し抜くことすら、あるいはあるのかもしれない。
 チャラ男は全員のショーツを持っていた。
 今度は周子の目の前で、純白無地にフロントリボンがあるだけの、実にシンプルなものを取り出し、指でピンと左右に広げている。俺はお前の下着を持っているぞと、獲物でも誇示せんばかりに突きつけて、それが周子の心を煽るのは言うまでもない。
 文香にも、凛にも、同じことを繰り返した。
 桃色の文香のショーツ、薄水色の凛のショーツ、いずれも指でしっかり広げながら突きつけて、本人に対して見せびらかすが、いずれも反応は薄かった。本当は大きく心を抉られて、うっかり顔を背けたり、激しく赤らんだりしそうなところ、アウトにはなりたくないので、必死に押さえた結果として、表面的には反応が薄かった。
 ネタが割れていれば、そう来るだろうと予想がしやすい。
 一人がアウトになったその直後に、同じネタが繰り替えされても、それにはどうにか耐え抜くことが出来るのだった。



 
 
 

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