美術部の部室に到着するまでに、さらに何人かの男子とすれ違い、ぎょっとする彼らにそのたびにウェインは声をかけ、悪魔の誘いに乗せていく。幾人かの群れを引き連れながら、部室へ到着することとなる。
「せっかく裸になったんだし、ここで記念を作ってもらおう」
ウェインの最低な提案だった。
(いやぁぁ! これで二人の裸を保存できる! もろもろの罪とか面倒は他の連中におっかぶせて、俺達だけでいい思いをしてミッション完了! 我ながら天才だわー!)
本当に最低である。
美術室へいきなり裸の少女を運び込み、騒ぎを起こした形であるウェインだが、その口八丁にかかれば場をやり込めることは容易い。それに放課後という時間のおかげで、目撃者の数は限られている上、誰が目撃したかも把握済みだ。
ウェインの記憶力にいわせれば、数十人はおろか数百人すら把握可能な範疇だ。
(なーに、事後処理くらい何とかなるっしょ)
楽観的に浮かれているウェインである。
「それにしても、君は本当にヤバいね」
褒めているのか、呆れているのか、どちらともつかないため息をつき、ストラングが隣で肩を竦めていた。
「天才かつイケメンと言って欲しいね」
「いやいや」
「そう遠慮することはないじゃないか。褒めろ、もっと褒めろ」
「まあ、ウェインの手腕は認めているけどね」
そう返しつつ、ストラングは台の上へと目を向ける。
そこに立っているのは、ニニムとロワの二人であった。ひとまずは直立不動になりながら、キャンバス台に筆を走らせる部員達に周囲を囲まれ、ウェイン達は徐々に絵が完成していく紙の上を眺めていた。
「上手いもんだな」
グレンが感心している。
ウェイン達三人は、もちろん台上の二人の裸も眺めているが、その他にもキャンバスの中身を眺めていた。筆を走らせている一人一人の位置取りが異なって、それぞれの見た角度から描かれているが、色が塗られるたびに人の形が形成され、だんだんと顔や胸が出来上がる。
べったりと乱暴に塗りたくった肌色に、細かな色が足されていって、徐々に人間の肌らしくなっていくのだ。
「すっげ」
ウェインも素直に感服していた。
「まったくだよ」
ストラングも感動じみた目をしている。
まだ描き始めたばかりなので、完成までは時間がかかりそうなものではあるが、出来上がる頃には目の前の景色を精巧に写し取り、キャンバス上にニニムやロワが閉じ込められることだろう。
正面からは乳房や性器が、後ろからは尻が正確に描き残され、保存さえすれば後世にまで引き継がれる。二人が歴史に名前を残し、後の時代の歴史研究家の注目を浴びた際、その時に裸の絵が登場したら、胸の大きさやアソコの見た目すら伝わるのだ。
(ってなると、どんな気分だろうな)
ウェインは改めて二人に目を向け、ニヤニヤしながら様子を眺めた。
四方八方を美術部員に囲まれて、前や後ろから描かれている。今のポーズはシンプルに直立不動で、姿勢そのものには何の趣向も懲らしていないが、当人達にとってはポーズなど関係なく、尻や乳房が写し取られる時点で恥辱ものだろう。
顔が面白いほどに歪んでいる。
首から上が綺麗に別色に変わったように、真っ赤で熱々な表情をしている上に、唇がぐにゃりと歪んだり、頬が強張っていたりする。恥じらいのよく現れた顔をしているが、キャンバスの中身を見て、自分がいかに精巧に描かれようとしているか、それを知ったらもっともっと恥じらうのではないか。
そう考えるとぞくぞくする。
どちらの裸体も魅力的だ。胸の大きさはロワなのだが、ニニムの美乳も形の良さでは負けていない。
それらが絵となり、記録となる。
恐ろしいことに、ここにいる部員達は描くのが早い。普通はもっと何時間も、何なら何日もかかると聞いたことがあるのだが、なら彼らは神速の域にいるのだろう。さすがに現実の風景を写し取ったような領域にはほど遠いが、ニニムやロワだとわかるものが、もうキャンバスには形成されている。
「別のポーズも取らせてみたいな」
と、途中からウェインは提案した。
直立不動だけでは面白くない。どうせなら、もっと色んな絵が欲しい。
「っと、その前に。せっかくだし、二人ともみんなの絵の上手さを確かめてみたらどうだ?」
ウェインは皆に声をかけ、それぞれの絵を二人に向けるように指示を出す。
ロワやニニムを包囲している美術部員の、全員がキャンバス台を反転させ、そうすることで二人に対して自分自身の裸体が突きつけられる。
「見せなくていいんですけど? 何してくれてるんですか?」
ロワの声が面白いほどいに上擦っている。
「もう……もういいでしょう……?」
ニニムも懇願の眼差しを浮かべていた。
(うっは)
ウェインはその反応を面白がった。
耳まで染まり上がった顔、歪み切った表情、モジモジとした挙動、その節々から恥じらいが滲み出ている。
「よし、脚でも広げてもらおうか」
ウェインはいい気になって命じていた。
「すっかり調子に乗って……」
ニニムの恨めしそうな、しかし真っ赤な顔が向けられる。
「恨みますからね……ウェイン……」
ロワも本当に恨めしそうにそう言うが、ウェインは意に介すことなくポーズを変えさせる。二人分のM字開脚がまた並び、空き教室ぶりの景色をグレンやストラングと共に眺めるが、やはり恥じらいようといったらない。
脚を左右に開いた瞬間の、ニニムの燃え上がった頬は、見ているこちらにまで熱気を届けてくるようだった。ロワの発熱しきった額からは、蒸気が上がっているようですらあった。
◆◇◆
二人が性器を限界まで開いている。
指で中身を公開して、肉貝を左右に引っ張っているせいで、どちらの皮膚も両側に伸ばされている。M字開脚の中心で、桃色の肉ヒダが輝いているところへ、何人も何人もの、数多くの視線が殺到している。
美術部員が筆を走らせるために観察して、ウェイン達三人はニヤニヤと見学している。その他にも、廊下を練り歩く最中に合流して、ついて来た男子の群れも、ただ裸を眺めるためだけに周囲をうろつき、鼻の下を伸ばしきっていた。
(うおおお! すげぇすげぇ!)
ウェインは興奮しきっていた。
キャンバスに描き込まれる絵という絵は、M字開脚という淫らな姿を少しずつ浮かべている。恥じらいで熱された表情と、きっちり左右に開かれた性器が細やかに描かれようとしている中で、数人だけは性器を中心に描いている。
しかもその数人は、画面をそれで埋め尽くす勢いで、まんべんなく桃色を広げている。最初は乱暴にぶちまけられたようにしか見えない筆使いも、実際には意味があったことをウェインはだんだんと理解していた。
乱暴に、がむしゃらに、いい加減に色をぶちまけ尽くしたのではなく、最終的にはきちんと性器を形成するために、既に最初から描いていたのだ。ここは濃いめで、ここは薄め、という微妙な色加減を最初からやっていたのだ。
(マジですげぇ)
本気で感心しそうだった。
そして、描画が進んでいくにつれ、どちらがどちらの性器であるかは明白になっていく。
随分と筆の速い少年の、指揮者が指揮棒を振っているような神速で、みるみるうちに性器が形成されている。
魔法でも見ている気分だ。
桃色の肉ヒダが纏った粘膜や、光を反射してのキラキラとした細やかな輝きまで、実に正確に表現されている。上端を見た時にあるクリトリスの大きさで、ニニムかロワか、判別ができるのだった。
キャンバスの画面を性器の桃色で染めた絵は、実物よりもずっと大きく描かれているので、クリトリスも拡大に合わせて肥大している。ニニム当人に生える実物は、植物の種ほどの目立ち具合だが、腕すら挿入できそうな膣口の、その上にあるクリトリスは、もはや果実を生やしたほどの大きさに至っていた。
さらに性器の下の方には、放射状の皺の窄まりまで描き込まれている。
ニニムの肛門が描かれる隣で、ロワの肛門もまた少しずつ形を成して、特上の恥部が仕上がりそうになっている。
それに気づいてみれば、指は描かれていないのに、ヒダの伸び具合がきちんと表現されているおかげで、指で開いていることがわかるのだ。ここにいる人間の場合、モデルの状態を直接知っているので、それもあるにはあるのだろうが、では何も知らない人間に見せたらどうだろう。
モデルの状況を知ることなく、絵だけを急に見たとしても、指か何かで左右に引っ張りながら開いているのがわかるはずだ。
いや、それどころではない。
顔だけを切り取って描いている部員もいるが、表情がきちんと描けている。こうも綺麗に、現実の景色を切り取ったように描けるのなら、頬の強張り具合や唇の周囲に出来た歪みなど、もちろん描けて当然ではある。
しかし、二人の表情は絶えず移り変わっているのだ。
右を向いたり、左を向いたり、目の合った相手から顔を逸らしたり、頬の強張り具合が変化したりと、時間を止めたように一定しているわけではない。なのにキャンバスの中には、とある一瞬を捉えたものが描かれているのだ。
本当に凄いものだ。
そんな風に感心ばかりしていると、不意にニニムの様子が気になった。
「うん?」
視線という視線の数々を恥ずかしがり、悶えた表情には変わりがないが、ちょっとした違和感がある。見ていて何か、本当は今までとは違っているような、しかし具体的には何が違うのかがわからない、気のせいだろうか、とも思う違和感があった。
その違和感の正体を探るため、ウェインはニニムの様子をじっと眺める。
見てさえいれば、気のせいか、そうでないかがそのうちわかる。
オシッコか?
と、ウェインは気づいた。
主に脚のあたりがモジモジしていて、アソコを開帳する指も、何やら肉ヒダのある一点を気にしている。左右に肉貝を引っ張ったまま、きちんと中身を晒し続けてはいるのだが、僅かな挙動から何となく、ウェインにはそれが読み取れたのだ。
(ふーん? そういうことね? ふーん、そっかー。ふーん?)
ウェインは悪巧みを始めていた。。
付き合いの長いウェインだから、ニニムの微妙な機微はわかるが、グレンやストラングにまでは様子が見えていないらしい。ロワと同じく、延々と恥じらい続けているだけに映っているのだろう。
(なんかないかなー)
ウェインは部屋の中を歩いて回り、いいものでもないかを眺めてみる。美術室なので変わったものや使えそうなものはなく、デッサン練習に使うと思わしき石像や、テーブルや椅子がひたすら並んでいたり、棚に画材が置かれているばかりだ。
(特に何もないか?)
何故か、果物を積んだバスケットが置かれている。
(ああ、描くのか)
やはり練習用のもので、きっと描くために置いてあるのだ。そう理解したウェインは、ならばもう少しだけ部屋を散策してみようと、キャンバスの群れを尻目に歩いていると、妙なものを発見した。
(なんだこりゃ)
一瞬、首を傾げる。
しかし、それは今の時代でいう尿道プラグと呼ぶべき器具で、女性の尿道口に差し込みフタをしてしまうものである。細いチューブの尻は丸く、現代でならスポイトと言うのが早い。吸引や注入に使う部分が草の茎ほどに細く、水の溜まる部分が指先ほどの大きさである。
一体、どこの職人が、どうやって手がけた道具なのか。
こんなものすら絵のモデルのしているのかと疑問に思うが、とにかくウェインはそれをテーブルから拾ってみる。
普通の人なら、それが何の用途か自体、まったく想像がつかないだろう。
ウェインの場合、読書量のおかげで女性器の形状が脳裏にあり、膣口に尿道、クリトリスの存在なども把握している。そういえば、何かこんな道具があったような、と思い当たるところもあり、その思考はどうにか使い道に辿り着く。
「うぇ、ウェイン……ちょっと……!」
その時、ニニムが訴えかけてきた。
「どうした? ニニム」
「ど、どうしたもこうしたも――」
ニニムはその先を言わない。
言わずともわかってもらおうと、目で訴えかけてきている。
(わかんないフリしとくか)
ウェインはさも不思議そうにした顔で、とぼけたまま首を傾げてみせていた。
「ウェインってば……!」
「いやー。言ってくれなきゃわかんないっていうか」
「言わなきゃ駄目なの……?」
悲痛な声だ。
トイレに行きたいという宣言は、どうやら恥ずかしいものらしい。
(まあ、裸な上に大勢いるしな)
たくさんの美術部員の視線を浴びて、見学の目もある中で、ロワを残して自分はトイレに行くというのが、ニニムにとってやりにくいことなのだろう。トイレに行くんだと思われながら出て行くのも、何か乙女心に来るものがあるのだろう。
だが、だからこそ言わせたい。
「どうしたのかなぁ? わかんないなぁ?」
「うぇ、ウェイン……」
ニニムはいっそ泣きそうな顔すらしていた。
ロワも何かを言いたげな顔で見てきている。
「ニニムさーん? 何のご用か、正直に言ってごらーん?」
「それは…………」
「さあさあ」
「それは……と、トイ………………」
「ん? トイ?」
「トイ……レ…………」
こうして白状させた瞬間である。
「へええ? トイレかぁ! ああ、そっかそっか! なるほどねぇ? ニニムはトイレを我慢していたのか!」
ウェインは必要以上に大袈裟に頷きながら、悪魔の笑みを浮かべていた。
「でも、もうちょっと我慢しよっか」
「で、でも……」
「うん? いくつだ? 我慢できない歳じゃないだろ?」
「そう……かもしれないけど…………」
「ま、とにかくだ。トイレはもう少し待って貰うぞ」
「そんな……」
絶望に近い悲痛な表情をするあたり、本当に限界が近いのかもしれないが、我慢の姿を眺めるのも一興だった。
「いいのか? ウェイン」
と、隣にグレンが現れる。
「なに、そういうのもいいんじゃないかって」
「お前は性癖も特殊だな」
「そうか? いや、性癖ってほどでもないけどな」
言いつつ、ニニムの様子を眺めてみる。
脚を左右に開ききり、指で広げた状態から、ポーズそのものは変わらない。ただ何かを気にした風にそわそわして、脚が小刻みに動いている。落ち着きのない、小さく僅かな開閉が繰り返される。
何を我慢しているのかが、いよいよ伝わってきた。
オシッコだと気づかなければ、ただ落ち着きがないように見えもしただろうが、ここまでくれば明白だ。たった今、初めてニニムの様子に気づいたとしても、尿意を堪えているのがわかる。
顔が歪んでいる。
唇をきつく引き締めながら、顔を固く強張らせ、危機感に煽られた表情だ。
そして、美術部員達はせっせと筆を動かすだけで、そんなニニムに気を遣うつもりがない。目の前の女体を描き残し、美を閉じ込めることの方に夢中である。
(さーて、出るか? 出るかなー?)
ウェインは楽しみそうに待ち侘びる。
永遠には我慢できない。いつか、必ず限界はくる。
さて、その限界は果たしていつか。
(いつかなぁ? いつかなぁ?)
楽しみに待ち侘びていると、ニニムの脚はしだいに震えを強くしていく。もしやと思い、ウェインは前に突き進む。
「ちょっと邪魔するぞ」
と、自分の身体が部員の視線を遮断するので、一応の声をかけつつニニムに迫る。しゃがみ込み、ぐっと顔を近づけると、豆状の突起が生えたその下から、膣口とクリトリスのあいだに位置する小さな穴から、ぷっくりと滴が浮き上がっていた。
「ははっ、ちょっぴり漏れそうじゃないか」
「うぅぅ…………!」
ニニムはただ苦悶した。
その隣にいるロワの非難がましい目は無視して、悲痛と苦悶の浮かぶ顔を見ながら、ウェインは先ほどのプラグをポケットから取り出した。
「これが何かわかるか?」
見せつけた瞬間、ニニムの表情は凍りつく。
「な、何を……する気……?」
「塞ごうと思ってな。ああ、もちろん怪我はさせないように気をつけるぞ?」
「いや、やだ……!」
その拒絶は、今までのものよりも数倍は、やめて欲しい思いを強く宿したものに聞こえたが、ウェインは構わず先端を近づける。別に尖っているわけではなく、細い先っぽは微妙に丸い。もちろん突き刺そうと思えば凶器になるが、負傷させるつもりはないので、ウェインの手つきは慎重だった。
かといって、ニニムが凍りつき、すっかり固まっているのは言うまでもない。
ロワも戦慄しきったような顔をして、ウェインの手元を見守っていた。
こんなことは初めてだが、どうにか差し込むことに成功して、丸い膨らみの部分を尿道から生やした形ができあがる。
「さあ、これでしばらく我慢できるな」
ウェインはニニムから離れていった。
美術部員は信じられないほど手が早く、異能の域で仕上げてしまうので、またもポーズを変えてもらった。四つん這いで後ろに向かって尻を突き出し、アソコと肛門を丸晒しにした状態をそれぞれ取ってもらい、主に背後を描かれる方が、二人にとって恥ずかしいはずとなる。
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