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 アニエスはベッドに押し倒された。
 情報屋の男はそろそろ交代とばかりにアニエスのことを譲って、金髪とスキンヘットの二人組が入れ替わりでベッドに上がる。
 そして二人組によって押し倒され、アニエスは一瞬恐慌した。
「あ、あの! 本番は――――」
 真っ先に不安が膨らみ、破裂しそうな勢いだった。
「ああ、しないしない」
「約束だもんなぁ?」
 守る気があるかもわからない、ヘラヘラとした態度でもって、金髪が両腕を押さえにかかってくる。掴まれた手首が頭上でシーツに埋め込まれ、押さえ込まれて、抵抗ができなくなった恐怖感が表情に滲み出る。
「かんわいー顔すんなっての」
 脚のあいだには、金髪の胴体が入り込んでいる。
 まるで正常位を始めようとするように、太もものあいだに腰を置き、座り込んでくる金髪である。本当に挿入されずに済むのだろうかという、とても大きな不安を感じて落ち着かない。
 アニエスは生唾を飲み、薄らと覚悟を決めた。
 本番だけはしない約束など、所詮は口約束に過ぎず、彼らにそんなものを守る気はないかもしれない。何より、情報提供や捜査協力を本当にしてくれるのか、疑わしさもある。
(覚悟を……決めて…………)
 アニエスは目を瞑った。
 犯されたくなどない。真っ平だ。回避できるのなら、きっとそちらの道を優先する。
(もし、犯されたら……)
 一体どうやって、協力や情報提供の約束を守らせるか。
 いっそ犯されたことを警察に持ち込むと、脅してでもどうにかなどという、綺麗とは言い難いやり口が脳裏を掠める。
「きゃ……!」
 だが薄らと浮かべた作戦も、次の瞬間の恥ずかしさに吹き飛んで、アニエスは咄嗟に顔を背けた。
「きゃっ、だってよ?」
 スカートを捲った金髪は、実に嬉しそうにニヤニヤと、人の顔を指差していた。
「ウブなもんだなぁ? たかがパンツだろ?」
 スキンヘッドもケラケラと笑いながら言ってくる。
「だって、こんな…………」
 恥ずかしくてたまらなかった。
 水色のショーツに視線をたっぷりと注ぎ込まれて、色や柄を記憶に刻み込まれる感覚に、頬に炎が宿って染め尽くされる。
 そして、ワイシャツ越しに揉みしだかれた。
 指を埋め込み、捏ねるように変形を繰り返させて、その両手から急に力を抜いたかと思いきや、紐の部分に指をやる。鎖骨のあたりで布をつまんで、内側にある下着の紐をなぞってきているのであった。
「さあ、オッパイオッパイ」
 金髪はその次に、ワイシャツのボタンを外し始めた。
 下から順に一つずつ、プレゼントの中身でも楽しみにするような、ワクワクした顔でアニエスの生肌に視線をやる。ヘソが見えた時点で恥じらって、表情を歪めていくのは、ブラジャーを見られるまで時間の問題だからである。
 下着どころか、そのまま乳房を拝まれかねない。
 恥ずかしい瞬間が迫ったことで、既にその時が訪れた後であるように、たっぷりと赤らんでいるのであった。
「ほーら、ブラが見えてきたぜ?」
 そして下着が見えるところまでボタンは外れ、アニエスは注がれる視線を胸に感じる。
「へへっ、かんわいー恥じらい顔だなぁ?」
「そんなに恥ずかしいか?」
 二人して大喜びで、赤らむアニエスの表情を覗き込む。
「当たり前です。そんなの」
 低い声音に非難を込めて、アニエスはそう返す。
「あーあー。これから、オッパイを見るってのによー」
「下着だけでその調子で、大丈夫なのか?」
 ボタンがさらにまた一つ、また一つと外されて、もう位置が位置だけに、そのたびに指は下着に擦れてくる。
 ついには最後のボタンも外れ、ワイシャツは左右に引っ張られ、ブラジャーを丸出しにされるのだった。
「でけぇでけぇ」
 スキンヘッドが興奮で息を荒くしている。
「こりゃ中身も期待だなぁ?」
 そして金髪はブラジャーに指を差し込み、ずらして持ち上げようとして、引っ張り上げる力をかける。
「あ……!」
 それにカップはずらされて、乳房さえ露出してしまった。
「ひゅー!」
「すんばらしー」
 その瞬間にかかる乳房への、いやらしい言葉と好奇の眼差しに、ただでさえの恥ずかしさが余計に煽られ、顔から火が出そうな勢いだった。
「やっ、いや……あんまり、見ないで下さい……!」
 切実な願いが口を衝いて出て来ていた。
「そいつは無理な願いってもんだぜ?」
「こんなにデカくて綺麗なもん、見ないわけがねーだろ?」
 二人組が視線を注いでくるのは当然のこと、情報屋の男からも、久しく声がかかってくる。
「アンタ、本当に上玉だな。なんなら、ここで雇ってやってもいいんだぜ? 娼婦としてな」
 言葉による辱めに、アニエスは恥辱を感じて、頬を硬く強張らせた。
「そんなこと……」
 目尻を震わせ、まぶたを閉ざすアニエスへと、金髪やスキンヘッドの視線は注がれている。二人組がニヤニヤ眺める光景は、自重で少しだけ潰れた巨乳の、綺麗な形や張りの良さ、乳首の色合いだけではない。
 ネクタイにも目をやっていた。
 ワイシャツを左右に広げたことで、結び目の位置も変わって、首にかかったリングも広がっている。そんな赤いネクタイが乳房のあいだにだらりと伸びて、巨乳のあいだに挟み込まれているのである。
 二人にとって、大きさをより強調するシンボルに見えた。
「それじゃあ、モミモミしようかねぇ?」
 そして金髪は楽しみそうに手を近づけ、乳房に手の平を押しつける。
「うっ……!」
 小さな悲鳴を上げたのは、直接触られたという理由だけではない。
「おっと、悪い悪い」
 悪びれもしない、ヘラヘラとした謝り方。
 金髪は今までよりも力を込めて、指を深く食い込ませてきていた。その痛みに頬をピクっと弾ませて、顔を軽く歪めたアニエスだが、しかし本当には痛くない。
 皮膚を爪でつまんでも、加減しだいては痛いとは言いがたい、けれど厳密には無痛でもない、実に微妙な加減の上で、乳房は揉みしだかれている。
 指の動きは活発で激しかった。
 少しでも大胆に捏ね回そうと、大いに指を踊らせる手の平に、アニエスの胸は変形を繰り返す。五指が深く食い込むことで、五本それぞれの指のあいだから、乳肉がいくらでも盛り上がり、しかし本当に痛いと感じる直前には力が抜ける。
 痛いようでいて、本当に痛いとは言い切れない。
 乱暴なようで加減がないわけでもない、雑とも丁寧とも言い難い手つきによって、アニエスの乳房はしばしの活発な変形を繰り返した。
「うっ、んぅ……んっ、んぅ…………」
 アニエスはもっぱら、こんな形で乳房を見られ、揉まれている状況こそを堪えているが、同時に快楽も感じていた。突起している乳首によって、相手の手の平を突いているのは、他ならぬアニエス自身が感じていることだった。
「いい光景だねぇ?」
 降り注ぐスキンヘッドの声は、未だ自分では触っていなくとも、乳房の揉まれる光景を楽しんでいる。
「乳首もどうだ?」
 金髪の手は切り替わった。
「あ……!」
 敏感な部分だけに刺激が集中し始めると、アニエスは喘ぎ声を上げ、苦悶めいたものを表情に浮かべていた。

     *

 情報屋の男はベッドから少し離れて、その光景を見て楽しむ。
 スキンヘッドが頭上から腕を押さえいる。
 金髪の方は股のあいだに腰を入れ、正常位でもやりたいような密着の状態で、乳首を集中的に責め立ている。
 乳首がいかに突起しているかは、情報屋の男から見ても丸わかりだ。一メートルは離れているのに、試しに膝立ちになって視線の高さを合わせれば、半球ドームから硬く飛び出た豆の形から、いかにビンビンに感じやすくなっているかが伝わってくる。
「あっ、んっ! んっ、いやっ、だっ、だめ――すみません……ど、どうか手加減を……!」
 面白いことを言い始めていた。
「ああ? 手加減だぁ?」
「だ、だって薬のせいで――あっ、あぁ……!」
「薬のせいとはな。アニエスちゃん自身がエロいだけだぜ?」
「そんな! だって、さっき媚薬……あっ、あぁぁ……!」
 感じたアニエスの様子を眺めるのは面白い。
 その喘ぎ声は言うまでもなく、胸で感じているはずが、反応は脚にも現れている。
「あぁ……!」
 と、声が上がる時、軽くピクっと脚が跳ねていた。
「んっ、んぁぁ……!」
 足首がしきりに上下していた。
「んっふぁ……あっ、んっ、んぅ……んぅぅ…………」
 太ももがもぞもぞと、開閉のような上下のような、小さな挙動を繰り返す。
 ズボンこそ脱いでいない、アニエスの方もショーツを穿いたままの状態でこそあるが、股と股が密着して、結合じみている形で、それだけ脚が動いているのだ。
 見ようによっては、正常位のセックスが既に始まっていて、その快感に喘いでいる光景として楽しむことも、出来ないことはないのだった。
 脚の反応もさることながら、両腕もしきりに動いている。
 スキンヘッドによって手首を束ねられ、シーツに押しつけられている両手は、頭のたった数センチ上にある。まるで筋トレの腹筋の際のように、しかし実際には手の平でなく、手首の方をクロスに重ねたものが、頭の下ではなく上にあり、スキンヘッドの握力が食い込んでいる。
 その折れ曲がった肘がピクピクしている。
 上に跳ねようとして、しかし手で押さえられているために、可動範囲が足りずに数ミリしか動かない。跳ねようとしながら弾みきれない、ピクピクとしかならない肘を見て、アニエスのいかに感じているかを観察した。
「あっ、あぁ……!」
 その時、アニエスは足を引きずった。
 靴下だけを残した両足の、爪先でシーツを掴むようにしながら、ベッド上に足の平を滑らせる。感じるあまりの反応で、シーツを引っ張っているのであった。
「あっ、んぅ……!」
 そして、今度は空中にキックを放つ。
 大の字に広がりたいようにして、勢いよく伸ばした両足は、しかし伸びきった状態でベッドに広がることはない。金髪の両脚が正常位のように入っているので、アニエスの太ももはその両脚に乗ってしまう。
 きちんと脚が伸びきって、だらりと広がることはなく、その角度は必ず上向きなのだった。
「うっ! あっ、あっ、やっ、ああぁぁ……!」
 髪を振り乱している。
 首の挙動にも快楽を現して、胴体もやたらにくねくねと、腕も脚もモゾモゾと、全身のあらゆるところに、胸や乳首がいかに気持ちいいかを表している。
「そろそろ、俺にもやらせろよな」
 その時、スキンヘッドの男が言う。
「んじゃ、交代すっか」
 二人がポジションを入れ変わる。
 今度は金髪が頭上につき、そしてスキンヘッドが正常位さながらの位置に腰を入れると、やはり股間がショーツへ押し当てられ、ズボン越しとはいえ肉棒が当たっていることに、アニエスは引き攣ったような強張った顔をしていた。
「さーて、頂こうか」
 スキンヘッドによる愛撫が始まる。
 待ち侘びていたご馳走に、やっとのことでありつく楽しみを満面の笑みとして顔に浮かべて、両手を乳房へ迫らせる。
 スキンヘッドが真っ先の行うのは、二本の人差し指をピンと真っ直ぐに伸ばしての、乳首だけを集中的に嬲る愛撫であった。
「あぁっ、あぁ……!」
 一瞬だけ、数ミリのアーチとなって腰が浮く。
「んっ、んっ――」
 指が上下していた。
 レバーが同じ動きを繰り返すようにして、指先が延々と上下する形で、乳首もまた上下する。爪によって持ち上げられ、角度が上向きになった直後に、今度は指の腹によって下げられて、逆に下向きに角度を変える、そのループである。
「あっやっ、やぁ……!」
 アニエスは足で拳を作っていた。
 指をぐっと丸め込み、足の指をグーに変えようとするように、きつく力を加えている。その直後には逆に開いて、指の隙間が大きくなるなり、また改めてグーへ変わって、アニエスの両足が開閉を繰り返す。
「あんっ、やぁ……!」
 浮き上がったかかとがベッドへと叩きつけられ、軽くどすんと音が鳴る。脚がビクっと弾む拍子に、そう動いてしまっているのであった。
「んぅぅぅ…………!」
 乳首がつままれ、引っ張られる。
 情報屋の男はそれを横から、乳房の伸びる有様をゆっくり眺めて楽しんだ。伸び具合によって少々尖り、しかし両手が上に動くにつれ、やがては指のあいだから、乳首のすっぽ抜けるなり、乳房が元の形状へぷるっと戻る。
 その一瞬の乳揺れは、良い目の保養なのだった。
 だが、目の保養というなら、もう一つある。
「んで? ここはどうして濡れてるんだ?」
 スキンヘッドはおもむろに狙いを変え、逞しい両腕でアニエスの脚を持ち上げる。膝の裏あたりに手をやって、力ずくでM字開脚の形を取らせた上で、わざとらしくアソコに顔を接近させる。
「見ないで……下さい…………」
 アニエスはより一層の羞恥を浮かべ、頬や顎を激しく歪めていた。
「おい、こっちにも見せろ」
 と、情報屋の男は命じる。
「あいよ、リーダー」
「ってわけで、アニエスちゃん。向こうでも向いてもらうか?」
 二人はアニエスを抱き起こす。
 その身体を情報屋の男に向けさせて、アニエスと彼の向かい合わせの形が出来上がる。
 無論、ただ体が向き合うだけではない。
 スキンヘッドが後ろに回り、両手でやはり脚を持ち上げて、改めてM字開脚を強要している。
「隠したら本番の刑だぜ?」
 金髪は横から囁き、その脅しの効果なのか、アニエスは真っ赤でありながら、せっかく自由になった両手で、どこも隠そうとはしていなかった。
「ひゅー」
 情報屋の男は口笛を吹く。
 こんなに素晴らしい景色があるだろうか。
 赤面しきった顔には薄らと汗を掻き、その火照りようが色気を強め、目を伏せてしまった表情からも、恥じらいのほどが窺えてたまらない。
 両手の仕草も可愛らしい。
 もじもじと指を動かし、鎖骨の中央に両手をやっている。本当は乳房を隠し、胸だけでも視線から守りたい気持ちがいくらでも窺えるが、アニエスはその巨乳を健気にも晒し続けてくれている。
 ワイシャツが左右に広がった影響で、ネクタイの結び目も広がって、そのまま胸に垂れ下がっていた。巨乳の狭間に入り込み、鳩尾に向かって先端を伸ばしていた。
 そして、アソコである。
 濡れていると言われたアソコは、水色のショーツに薄らと染みを作って、肉貝の形を如実に浮き出していた。水分による吸着で、布が皮膚に張りついてしまったせいで、ワレメのラインがくっきりと、その染みの部分には現れていた。
「確かに濡れてるなぁ? アニエスちゃん」
 情報屋の男は大喜びで濡れ具合を指摘する。
「薬のせいです。こんなの……」
 アニエスは顔を背ける。
「だが気持ちいんだろう?」
「薬の……せいです…………」
 本来なら感じるはずがないとでも言いたげに、アニエスは媚薬のことを繰り返す。
「チンポが欲しかったりはしないか?」
 からかい混じりに尋ねてみて、その瞬間にアニエスは面白いほどビクっと肩を跳ね上げていた。
「い、嫌です! 他のことだけでお願いします!」
 かなりの即答だった。
 心の底から嫌そうな顔をして、引き攣った表情を見ていると、もっともっと虐めてやりたくなるのだった。



 
 
 

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