円香と透、二人はゲームに挑戦させられていた。
迷宮、お湯渡り、ジャングルジム。
ギミックのあるゲームを通して、延々と辱めを受け続ける二人の結末は・・・・・・
第1話 迷宮の中第2話 スライムの脅威第3話 次のゲームへ第4話 お湯渡りゲーム第5話 ジャングルジムを登れ!第6話 恥辱のギミック第7話 ローション弾第8話 ペニス畑最終話 ゲームの結末
四つん這いで迷路に入り、すぐさまT字路に行き当たる。
右か、左か。
じっくり迷う暇もなく、適当に右にでもしておいて、二人は早めに進んでいく。ゴールの検討などつかないが、まずはスライムから距離を取りたい。
どれくらい離れただろうか。
そして、どれくらい呑気にしていれば、後から追いついて来るのか。あんなモンスターに丸呑みにされ、内側で衣服を奪われる展開など真っ平だ。
今はスライムから逃げることを優先して、T字路や十字路など、曲がり道を見るたび見るたび、深く考えることなく道を選んで突き進む。
考えてもみれば、スライムの移動速度もわからない。
それに、こちらの居場所をわかったように正確に追って来るのか、それともスライム自身も迷路を迷いながら進むのか。円香と透には何ら情報もなく、きちんと引き離せているのだろうかという不安ばかりが胸を占めていた。
『はーい。迷宮突入から一分が経ちましたので、サービスとして二人にお助けオプションを用意しちゃうよぉ!』
愛野の放送音声が聞こえた瞬間、二人して顔を歪めた。
純粋に役立つものなど、二人は何も期待していなかった。
「どうせ……」
と、透はそんな風にぼやきもしていた。
『まあまあ、見てごらんよ』
その時である。
円香と透の前に、それぞれホロウインドウが浮かび上がった。
SF映画など、近未来を舞台にした世界観で見た覚えがある。
モニターの液晶画面を介することなく、空中に直接画面が浮き出て、そこに映像やプログラムの操作メニューが表示される。大抵は向こうの景色が透過していたり、投影機材の中から浮き出て来たりといった演出になっている。
二人の前にある画面は、投影機材が見当たらない。
向こうが透けて見えることもなく、まるでタブレットからフレームを取り外し、液晶パネルだけを宙に浮かせてあるように、それは二人の前に浮かんでいる。円香用と透用で、それぞれに出現しているが、試しに左右に首を動かすと、ホロウィンドウもそれに合わせて動いていた。
顔の高さや方向に合わせ、座標を設定してあるのだ。
壁に顔を近づければ、それに合わせて動くホロウィンドウは壁の向こう側に消えてしまう。何もない方向へ向け直せば、壁の中から戻って来る。
そして、そこにはマップ表示がされていた。
迷宮のごく一部だけがマッピングされ、円香や透の居場所は赤い点で示されている。
『それは手で触れば自由に位置を変えられるからねぇ?』
「どうも、ご親切に」
ちっとも感謝していない顔で円香は答える。
スライムのことを思い出し、改めて進んでいくが、どうやらる迷宮の構造は、二人が進んだ分だけ明らかになるらしい。マップ上には二人が歩いた分だけマッピングが進んでいき、残りは黒塗りになっている。
しかし、気になることがあった。
迷宮で地図を渡されるのは、ありがたいことではあるが、文房具の下敷きやタブレットほどのサイズになるホロウィンドウの、マップ部分が締めているのは、画面全体でも一部だけなのだ。
画面の右側、その四分の一ほどの領域に、縦長の帯状の表示がかかっている。災害があった時、テレビ番組がL字放送になったりするが、ならばこれは右にI字を入れた形だ。
そのI字部分に地図があり、地図の真上には制限時間の残りがカウントダウン形式で表示されている。
左側の広い面積の中は、今のところ何も表示されずに真っ黒だ。
「なんなんだか……」
左側には何を表示するつもりでいるのか。
「……っ!」
「やだ……」
不意に表示され、円香と透は頬を歪めた。
そこに映ったものは、二人の尻をそれぞれ後ろから中継する映像だった。真後ろからカメラがついて来ているかのように、前に進めばそれに合わせて映像の中の脚も動いて、その四つん這い歩行の動きに合わせてスカート丈も前後する。
幸い、まだ中身は見えない。
仮に際どくなっても、内側にスパッツを穿いてはいるが、だからといって見えずに済む方がいいに決まっている。
「これでゲームやらせようって、いい趣味しすぎだね」
円香は露骨に不快感をあらわにしていた。
「ほんと、最悪……」
透の横顔には、何か暗いものが浮かんでいた。
先ほどまでの恐怖がぶりかえしてか、どことなく青ざめていた。
「とにかく、進もう」
「……だね」
ひとまず、ゲームとしては一時間もの時間が用意され、マッピングまでされるなら、よほど理不尽な広さでもない限り、クリア可能な設計というわけだ。深く頭を使ったり、難しい戦略を立てるまでもなく、マッピングを進めればいつかは終わる。
ただし、迷宮内には先ほどのスライムがいるはずだ。
円香や透の位置は示してあっても、スライムの位置表示はなく、あれがどこにいるかはわからない。
会わずに済むことを願って進むしかない。
そのうち、多少は広いスペースに出た。今まで通った通路は全て、二人並べば肩が触れ合うような幅だったが、部屋に着いたとでも言うべきか。面積だけは余裕があり、しかし四つん這いでなくてはならない天井の高さは相変わらずだ。
そんな広めの空間には、いくつもの通路があった。
壁一面に対して二つずつの穴がある。
たった今通ってきた通路だけが、後ろの壁だけが一つ限りの穴を空け、残る三つの壁には幅の狭い通路が並んでいる。ここから先、合計六本もある道の中から選ぶのは、選択肢の多さのせいで迷わされる。
「……っていうか」
円香はすぐに気づいた。
「狭いね」
透も気づき、そう呟く。
今までの通路と違い、一人分の幅しかない。元来た道を引き返すのでなければ、円香と透はここで一度別れることになる。
『はーい! ラッキールーム到達! 今お二人がいるような、ちょっと広い空間の出るたびに、ゲームを有利にしてくれる追加ギミックや、お役立ちの情報を与えるよ?』
愛野の声が聞こえてくる。
「へー」
『信じてないね? 大丈夫大丈夫、ラッキールームの場合はエッチなことも起きないから、心配はいらないよ?』
場合は、という微妙な言い回しを聞くと、ならばアンラッキールームもあるのかという不安に駆られる。
「で、なら何を用意してくれるの?」
円香は訝しげな顔で尋ねる。
『では情報を伝えよう! 二人が別れて行動する場合でも、マッピング情報は共有される。手分けして迷宮を探索すれば、それだけ早くマップが完成に近づくわけだ』
だとしたら、ゲーム性の点においては別行動の価値はある。
もっとも、透と一緒の方が落ち着く。一人になるのは不安が大きく、効率を重視した別行動には躊躇いがあった。
『それともう一つ。今から君達の画面に通信ボタンを用意しよう』
二人の画面右側には、そのI字部分には、地図の真下にボタンが表示されていた。上部にカウントダウン表示がある以外、下の方は空白だったのが、受話器のマークを記したボタンが付けられていた。
『別行動を取った後、合流の合図なんかができるわけだね? これでますます、別行動を取る利点が増えたわけだけど、実際にどうするかは君達の判断しだいだ』
そこで愛野の声は途切れた。
「どうする?」
と、透に尋ねてみる。
「んー……なんか、怪しいけど……」
「だよね」
一人でしか通れない通路を用意して、その上で別行動の利点を出す。露骨な誘導に思えてくるので、一人になる不安だけでなく、何か裏がありそうだという疑念も重なり、躊躇いはますます強まっていた。
「ただ、こういう一人じゃないと通れない道があるってことは……」
透の言葉で円香は察する。
「地図、完成できないね」
別行動をしなければ、マップ全域の網羅は不可能だ。
運良くゴールを発見できれば、完成などさせずともさっさと外に出るのだが、円香と透の現在地点は、迷路全体の中でも中央に近い。マッピングの状況は、内側のルートばかりが表示され、壁沿いの部分はちっとも完成していない。
ゴールの場所は、壁沿いのどこかだろう。
その壁沿い部分に限って未完成では、ゴールを狙ったアタリを付け、ここらへんを探ってみようといった動きも取れない。
円香は改めて通路を見やる。
一人ずつ入っていき、前後に列を作って進んで行けば、一応別行動はせずに済む。
「列で、並んで進んでみる?」
円香はそう提案した。
「それがいいかな。なんか、引き返すのは怖いし」
透はすぐに頷いた。
その視線は一瞬だけ地図を向き、後ろ側にあるまだ探っていないルートの方を意識こそしていたが、かといってスライムの存在がある。もし順当に同じ道のりを辿って来ていたら、引き返せばそのまま鉢合わせることになる。
「じゃあ、どれか適当に選んで……」
どの道が一番良いかなど、所詮は運だ。
直感的にこれと思った道に決め、円香は先に通路の穴へ入って行く。後から続く形で透も後ろに着いてきて、しかし透の視線なら気にならない。気にするも何も、人の尻をいちいち殊更に眺めはしないとわかりきっていた。
後ろにいるのが異性であったら、なかなかに落ち着かない状況と言えるだろう。透を後ろにして気になるのは、透の目よりも画面に映る自分自身の尻である。
振り向いてもカメラはない。
しかし、絶えず尻を狙い続けるかのようなアングルで、画面の中では確かに中継が続いている。こんな密閉空間では風も吹かず、そして丈の長さからしても中身は隠しきれているものの、中身を狙われ続ける状況は実に深いなものである。
普通では考えられない、様々な現象を体験している。
そんな今なら、目には見えずとも、透明なカメラが浮遊していて、それが後ろから着いてきているのだろうか、という発想も浮かんでくる。
その時だった。
「ひ、樋口……!」
透が急に慌てたような声を上げ、円香に訴えかけて来る。
「なに、どうしたの」
「来てる……遅いけど、後ろから来てる……」
「急ごう」
全ての説明を聞くまでもなく、円香はすぐにペースを上げた。
――スライムだ。
今まで追いつかれる気配はなかったのに、急に姿を見せてきたらしい。円香の位置から振り向いても、透の身体に阻まれそれ以上の奥は見えないだろうが、透が視認できる場所までは、もうやって来ているらしい。
「あんなキモいの、触りたくもない!」
ペースを上げれば、当然のようにスカートの揺れも大きくなる。
絶えず目の前に浮かび続ける画面では、嫌がらせのように中継映像の方を大きくして、マップはそれより小さく表示している。尻を狙ったアングルは、嫌でも視界に加えざるを得ず、そのせいで丈の揺れ具合が気になるのだ。
あまり激しく動きすぎれば、スパッツがあるとはいえ、中身を撮られるかもしれない。
かといって、スライムに捕まれば全裸にされる。
スカートの中身を守ろうと意識して、それで衣服を溶かされてしまっては仕方がない。不快感をぐっと堪え、歯を噛み締めながら円香はペースを維持した。見えそうなのが気になるあまり、今にも緩めたくなるのを我慢していた。
透もぴったりと着いて来ている。
マップ上の点滅表示で、後ろの透が距離を離すことなく、きちんと同じペースで進んでいるのが確認できる。
「あれは……!」
出口、というわけではない。
しかし、この道は先ほどのような大部屋に繋がっていたらしい。似たような構造をしていれば、大部屋に出るなり、すぐさま道を選んで飛び込めば、きっとスライムを振り切れる。素早く動けば動くほど、スライムがこちらを見失い、二人が選んだ道とは違うルートへ進んで行く可能性があると信じて、透は命からがらのような思いで飛び出した。
続けて透も飛び出して隣に並ぶ。
やはり、四つん這いでしかいられない天井の高さは変わらないが、畳数枚分に至る部屋面積の空間になっていた。
「え……」
「や、やだ……!」
だが、円香は、透は、その瞬間に戦慄していた。
――行き止まりだった。
ここから先に続く道がない。
後ろからはスライムが追って来ている。
これでは、このままでは、スライムに捕まりゲームオーバーにされてしまう。全ての服を溶かされるだけでなく、ゲームをクリアできなかった場合の、二人を性奴隷にする旨の発言も脳裏に蘇り、焦燥の汗を噴き出していた。
*
『はーい! ラッキールームだよーん!』
途端、愛野の声が聞こえてくる。
「何があるの! 早く言って!」
円香は声を荒げた。
悠長にしていては、後ろのスライムが入ってくる。
『焦らない焦らない』
「いいから早く!」
『ここでは衣服と引き換えにアイテムを獲得できまーす!』
「衣服って……!」
『あ、靴と靴下は無しね? 交換対象として認められるのは、シャツ、スカート、下着、スパッツのどれかのみ。一体どんなアイテムに替えられるかというと?』
愛野が説明しているうちに、奇怪な水音が迫って来る。ジェルの固まりを叩きつけ、地面に引きずっているせいで起きる粘性の水音は、粘液と床のあいだの摩擦からなるものだ。その、にじゅる、じゅるり、となる音が耳を騒がせ、肌中に悪寒を走らせる。
『一つはマップ拡大アイテム! 使用した時、周囲五メートルまでのマッピングをしてくれるよ!』
「他には!」
円香は怒鳴った。
そんなもの、今貰ってもゲームオーバーは免れない。
『二つ目は溶解ガードバリア! スライムに捕まったり、粘液を浴びせられても、一回だけ服が溶けるのを無効にできるよ?』
欲しいのはそれだろうか。
衣類を差し出すのは屈辱だが、全裸になるのと一枚だけを渡すのなら、スパッツを与える代わりに無効化できた方がマシである。
だが、無効にできるのは一回だけだ。
この行き止まりでスライムに捕まっては、一回分の無効化だけで足りるのだろうか。
『最後はモンスター撃退ボタン! モンスターがいる時にボタンを押すと、一体まで消滅させてくれるよ? もっとも、使うと数が一体増えて、広い迷宮のどこかに再配置されるんだけどね』
数が増える上での再配置。
嫌なデメリットだが、そもそもゲームオーバーの危機にある今、背に腹は変えられない。
「それ! 撃退ボタン!」
『お急ぎのようだけど、欲しかったら差し出す衣服を選んで、脱いじゃってね』
「な……!」
円香は絶句した。
この状況で、そんな悠長なことをさせようとする呑気な言葉に、信じられないものを見るような顔をしながら、しかし振り向けば青いスライムがもうそこまで迫っていた。
確かに、移動が遅い。
しかし、ジェル状の固まりがナメクジのように這い進み、この空間に出てこようと迫っている。
時間がない。
もうこうなったら――円香は身を切る思いでスカートに手を伸ばす。その中身に指をかけ、スパッツを下ろしていくと、その脱げていく映像を円香は自分自身で確認する羽目になっていた。
「こんなの……!」
スカート丈と膝のあいだに、片手だけでどうにか脱いでいるスパッツが下がり出て、生中継の中に映り込む。これで下着を守るものはなくなって、ここから先は下手を打つとショーツが見えることになる。
心許なくなることにも、今は構っていられなかった。
全裸の危機という、より重い事態が迫る今、死ぬよりは四肢のどれかを切り落とす方がマシであるような気持ちになって、本当に身を切る思いで脱いでいる。画面にショーツは映さなかったが、それでも人を脱衣に追い込んで、見事に一枚脱がせた喜びで、向こうはさぞかし盛り上がるのだろう。
愛野しか顔を見せてはいないが、きっと残りの三人も一緒になって喜ぶのだ。
その悔しさに歯噛みしながら、スパッツを膝まで下げた時、それは急に消滅した。パっと突然、ものの一瞬にして消え去ったのはどういうわけか。
『はーい! 撃退ボタンプレゼント!』
今はそれより、すぐにボタンを押していた。
画面を貫く勢いで指をやり、力強く押した瞬間、背後から気配は消える。実際に振り向いて確認しても、そこには這い跡を残したのみで、スライムそのものは影も形もなかった。
しかし、代償としてスパッツを失った。
今まではスパッツで下着は守られ、万が一にもスカートが捲れても、少なくともショーツは見えない安心があった。その安心感を失って、円香は落ち着きも失った。あるべきものが消えてしまった喪失感と、これからは捲れれば見えてしまう危機感とで、全身がそわそわし始めていた。
いいや、とにかく目前の危機は脱した。
それで良しとしなければ、やってなどいられない。
「樋口……」
透が気にかけてくるが、どちらが脱ぐかの相談など、やっていられる状況ではなかった。先に決断して、先に脱いでしまった方がアイテムを貰うのが、一番早いはずだった。
「気にしないで」
「……うん」
明らかに気に病みながら、透は頷く。
「はあっ、でも再配置ね」
数を増やした上での再配置で、しかもスライムの位置はマップに表示されないのだ。あれがどこにいるかもわからずに、会わずに済むかどうかを運に任せてマッピングを進めるのはリスクが高い。
かといって、アイテムを一つ手に入れるのに、服を一枚要求される。
靴下が有りなら、迷わずアイテムと交換してもらうが、シャツかスカート、さもなくば下着しか認められないのなら、屈辱を堪え、身を切る思いの取引をしなくてはならない。
裸は避けつつ、内側の下着だけを差し出すのも、思いつきはする。
しかし、連中に脱ぎたてを与えてやるなど、寒気が走ることこの上ない。かといって、シャツやスカートを手放して、下着を晒した姿になるのは論外だ。となっては、もうアイテムの入手はできない。
「あー。あの、他にもアイテムってあるの?」
透がそんな声を出した時だ。
『はいはーい。あるよ?』
「全部、教えて」
「……いいの?」
何かを、入手する気らしい。
使えるものを手に入れて、スライムと遭遇した際のリスクを少しでも減らしたいのだ。
「よくはないけど、まあスパッツだけなら、我慢しようかな」
「……そう」
本当ならそれすら止めたいが、ゲームオーバーになった場合、スライムに捕まった場合の結末が重い。それをスパッツだけで回避できるなら、という計算にどうしてもなってしまう。
『[バリア防壁]――バリアで道を塞いで、モンスターの行き来を阻止する代わりに、君達自身も道が通れなくなってしまう。それに、ゴールを塞ぐような使い方をしたら、ゲームがクリア不能になっちゃうんだね。
[入れ替わりボタン]――別行動を取っている時、ボタンを押すことで二人の位置が一瞬にして入れ替わるよ。
[味方ゴブリン]――君達には一切の危害を加えず、別にエッチなこともしてこない。マップの中を徘徊して、スライムを見つけることがあったら撃退してくれる。ただし、ランダム徘徊だから、役に立つかどうかは完全に運次第」』
愛野は他にも様々なアイテムを紹介するが、後に紹介されるものほど微妙であった。失った衣服を回復というのもあるが、それを衣服と引き換えに手に入れても仕方がない。スライムに溶かされた分を復活させる使い方なのだろうが、それにしても微妙である。
結局、透が選ぶのはバリア防壁であった。
『じゃあ、好きなものを一枚脱いでね?』
楽しげな声が腹立たしい。
好きで脱ぐものなど、一枚もない。
透がスカートの中に手を入れて、歯を食い縛りながら下げ始める。下着が見えないように気をつけているのも、たとえスパッツだけでも屈辱を感じているのも、その全てが体中から放出されるひしひしとした空気感で全て伝わる。
(浅倉……)
心配そうに、円香は横目で透を見る。
『はい、ぼっしゅー!』
膝まで下げたところで、スパッツは消失したのだろう。
その代わりに、透の画面にはボタンが現れ、いつでもバリア防壁を貼れるようになっていた。
『ボタンを押すと、前方に貼るか、後方に貼るかの選択画面が出るから、咄嗟のタイミングで使う時は気をつけてね。ああ、捕捉として伝えるけど、行き止まりで自分自身を閉じ込めたら、それもゲームオーバーだからね』
マップ内のスライムは二体だが、これでいつでも身を守れる。
もっとも、行き止まりの付近で使う場合は、気をつける必要がありそうだった。
それから、二人は順調にマッピングを広げていく。
画面に映る地図は半分近くまで完成しており、その上で残り時間は四十分と、時間的にはかなりの余裕がある。スライムにも運良く出くわさずに済んでおり、何も余計なことが起きなければ、このまま順調にクリアできそうだった。
順調にいけば、いいのだが……。
(気持ち悪い……)
透は嫌そうな顔をしながら、それでも画面から目を背けることができずにいた。
浮遊モニターの構成は、肝心の地図よりも、スカートを後ろから狙った中継映像の方が大きいのだ。迷宮を突破するには、どうしても地図を確かめる必要があるのに、その地図よりも大きいものが横にくっついているせいで、それを視界から追い出すことができないのだ。
その趣味の悪さに顔を顰め、嫌悪感を抱いていた。
びゅぅぅ!
それはあまりにも唐突だった。
今まで、そんな事態は考えてすらいなかった。
突如、床から強烈な風が噴き上がり、透のスカートを捲り上げていた。
まるでパイプ口でも存在して、そこから噴き出たかのような風の威力で、ものの一瞬にして捲れ上がったスカートは、丈の先が天井に触れんばかりであった。
「な……!」
驚愕していた。
出来事は全て一瞬で、捲れ上がったスカートは一秒と経つことなく元に戻っていた。何事もなかったように、きちんと丈は尻にかかって、中身を隠しているのだが、今の出来事は決して気のせいではない。
透の覗く画面の中、一連の出来事がスロー再生されていた。
それを嫌でも見てしまう。
最悪な出来事からは目を逸らしたいはずなのに、人間には不思議と矛盾した性質がある。見たくない気持ちでいっぱいであればこそ、逆に釘付けになってしまった。
スロー再生によって徐々に持ち上がるスカートから、下着の三角形が少しずつ、少しずつ見えてくる。手前には柄はあっても、後ろ側は無地のショーツは、その白色をゆっくりと広げていた。
徐々に面積を広げていき、全てを露出しきった時、スロー再生であるスカートはなおも角度を上げていた。レバーの上下であるように、丈の先っぽを天井に近づけて、こんな低い天井だからこそぶつかっていた。
「な……な……な……な……!」
透はショックを受けていた。
こんなにも、急に前触れもなくショーツが見えてしまうなど、想像すらしていなかった。こうして透本人にも見せつけられた映像は、もちろん愛野や仲間達の手に渡り、今頃は楽しまれているに違いない。
ぞわぁぁぁ……!
全身に寒気が走った。
顔を赤らめ、熱っぽくしている一方で、背筋には悪寒が走っていた。
「どうした? 浅倉」
「い、いや……」
前方から声をかけられ、透は口を噤んでしまう。
今の通路は狭いため、円香が前、透が後ろの、縦列の形で進んでいる。円香には細かな様子は伝わっていないようで、それを詳しく説明するのは、一瞬躊躇われていた。
しかし、言った方がいいだろうか。
円香も同じ目に遭うかもしれない以上、伝えておこう。
同じ性被害に遭った者同士、普通の人には打ち明けにくいことであっても、きちんと話そうと考えたわけだった。
「樋口、今さ。下から風が……」
と、いざそこまで口にした瞬間である。
ぱかりと、床が開いていた。
何の継ぎ目の線もなく、開閉などしそうにもなかった石の床は、急に内側から跳ね上げ式のように持ち上がり、パイプ口をにょきりと伸ばす。
「や、やば……!」
透は咄嗟に注意しかけた。
その警告が間に合うこともなく、すぐに風が噴き出たかと思いきや、透の目の前には下着の三角形が映っていた。それはほんの一瞬の出来事で、たった数秒でも目を横に逸らしていたなら、そのラベンダー色が見えることはなかっただろう。
白に近い、薄らとしたパープルだ。
それが透の見たものだったが、円香の様子ですぐにわかった。
「……きもい」
憤りを帯びた声が、全てを物語っていた。
円香の方にも、わざわざスロー映像を流している。ゆっくりと持ち上がり、やがて元のように戻るまでの映像が、数十秒にわたって再生されているはずだった。
人のスカートをただ捲るに飽き足らず、その映像を本人に見せつける。
その趣味の悪さは実に肌寒く、真冬を半袖で過ごすような寒さに鳥肌が立ってくる。
しかも、継ぎ目のない石床が開いたのだ。
だとしたら、周りにある壁も天井も、いつどのタイミングで開いてきて、どんなギミックで嫌がらせをしてくるかもわからない。何もなさそうな単なる壁に、床にまで警戒心が湧いてきて、その上にスライムの位置はマップに出ない。
最悪のゲームだった。
いつ辱めを受けるかもわからない、ストレスと不快感しかないゲームは、それを鑑賞しているあの四人こそがもっとも楽しんでいるに違いなかった。
*
マッピングはさらに進んで、おおよそでも四分の三までは完成している。二体は徘徊しているはずのスライムに、一度も遭遇せずに済んでいるのは幸運だろう。おかげでバリア防壁を温存したまま、ゴールの位置も目処が付いていた。
四角形の辺のうち、どのラインにゴールがあるか、ほとんど判明している。
下辺の入り口に始まって、左右の辺には壁しかなく、残る上辺をなぞれば必ずゴールにぶつかるわけだった。
しかし、道を進んでいるうちに、あのパイプ口から噴き出すような風に何度かやられ、そのたびにスカートの捲れ上がる様を見せつけられた。しかも、それを本人に見せつける悪趣味さが肌寒い。
やがて、まだ一度も通っていない、新たな一本道に差し掛かった。
T字路の形のうち、二本の道はマッピングが済んでいる中、これから進む一本道は、マップを見てもまだ黒塗りになっている。
ここを進めば、さらに地図は完成に近づくだろう。
残り時間に余裕がある中、クリアは時間の問題だと思っていた。
だが、その時だ。
「スライム……!」
円香の前に、数メートル先にスライムの姿があった。
まずい、あれに捕まれば服を溶かされる。
しかし、さっさと曲がり道に飛び込んで、透の持つバリア防壁を使ってしまえば、あのスライムの動きは阻止できる。
「急ごう!」
そう言って道を曲がり、新たなマッピングを始めようとした時だ。
下から上への風が吹いていた。
まるで床に扇風機を埋め込んで、上向きにしているように、床から天井に向かっての風が吹いている。その風速はスカートを持ち上げうるものに思えて、円香は踏み込むことを躊躇った。
かといって、うかうかすればスライムが来る。
引き返すという選択肢も頭に浮かび、進むか戻るかの迷いで円香は判断を遅らせていた。
そんな円香を急かすかのようにである。
「こっちも! 私の後ろも!」
後ろの透から、焦った声が聞こえてきた。
「最悪! 進むしかない!」
円香はキッと鋭く何かを睨む顔をして、歯を食い縛りながら道へと進む。最悪の末路を避けるには、スカートを持ち上げる風の中に飛び込むより他はなかった。
しかも、急ぐ必要があった。
本当ならスカートを手で押さえ、見えないように気をつけながら進みたかったが、今はそれよりもスライムから逃げる方を優先する必要があった。
風でスカートが上下に騒ぐ。
円香のショーツが見えては隠れ、見えては隠れ、しかし速度を緩められない。止まっていては透が道に入って来られず、後ろをバリアで塞ぐこともできないのだ。
透の入るスペースを確保するため、急いで進む円香なのだが、おかげで最悪の中継映像が視界に入り続けていた。
ラベンダー色が激しく見え隠れを繰り返す。
まるで扇風機を並べた隙間が存在するように、噴き上がる強風と強風のあいだには、微風の空間が挟まっている。強風の箇所では大きく捲れ、微風の箇所ではやや落ちての、上下のはためきでショーツは映る。
「なんなのっ、こんな……!」
円香は歯軋りしながら進んでいた。
歩行の尻が映っている分、ショーツの見え隠れだけでは済まない。脚の動きに合わせて尻の筋肉も前後して、フリフリと動いている光景さえもが目について、円香は不快感に表情を歪め切っていた。
当然、後ろでは透も同じことになっているだろう。
わざわざ確認などしないので、透の下着の色はわからないが、何色であれ画面の中にはスカートのはためきと共に映っている。ある意味ではショーツだけを替えた色違いの映像など、そんなものの何が楽しいのか、円香にはまるでわからない。
こんな目に遭っている状況で、男のフェチシズムなど知りたくない。
「樋口! 塞ぐよ!」
後ろから、透の声。
「お願い! 早く!」
肩越しに振り向くと、顔を顰めきった表情がそこにはあった。画面を見るため、見たくもない映像から視線を逸らさず、強制視聴させられながら、タッチ操作で押せるボタンに指をやり、ぽちりと触れる。
すぐさま、透は自分の後ろを確認していた。
「どう? 浅倉」
「……止まった。よかった」
「そっか。とりあえずは、よかったけど……」
そう、スライムの阻止だけはよかった。
その一方で、こんな風のエリアに入ったのは、ちっとも良いことなどではない。円香はようやく、今になって後ろを手で押さえ、四つん這いというより三本足で前へ進んだ。手で押さえてなお、スカートはバサバサと騒がしい。
右の尻たぶに手を置けば、左側がおろそかになり、左の方に手を伸ばしても、右が捲れやすくなる。手の平の大きさに対して、スカートを全面的にカバーするのは無理だった。手のサイズが及ぶ箇所だけを完全に抑える一方で、重しを乗せきれない箇所ははためき続けた。
*
マッピングにおいて、ラッキールームとやらに入ったのは、何もあの一回限りの話だけではない。それからも何度か広い部屋は見つかって、アイテムを入手する機会はあったが、その代わりに愛野が要求してくるのは脱衣である。
靴や靴下は認めずに、シャツやスカート、下着類のみを交換に認めるルールのおかげで、欲しいアイテムがあったところで、二人はことごとく諦めてきた。アイテムが欲しい気持ちより、誰がお前なんかに服など渡すか、といった気持ちの方が遥かに上だった。
しかし、ようやく風の通路を通り抜け、その先へ辿り着いた時である。
「行き止まり……?」
円香は絶望していた。
ラッキールームのように広々と、一つの壁の面に二つの通路の穴が空くほどの面積こそしていたが、今回の大部屋には何もない。この先へと進む通路がなく、マップを見てもここで道は閉ざされていた。
思い出すのはバリア防壁の際に聞かされた注意である。
行き止まりに入った状態でバリアを貼り、自分自身を閉じ込めたら、その時点でゲームオーバーになってしまう。
そのルールが頭を掠めた時、これで終わりなのかと不安にまみれ、その先にある未来を思って目が光りを失いそうだった。
透にも同じ絶望が浮かんでいる。
『アンラッキールームでーす!』
二人してこの世の終わりのような顔をしている時に、聞こえてくる愛野の声は、あまりにも気楽で楽しそうなものだった。
『安心してね? 単なる行き止まりじゃなくて、ギミック搭載ルームなんだ。だからまだゲームオーバーってわけじゃなくて、二人にはチャンスが残っているよ?』
その言葉にホッとはするが、よりにもよって、愛野なんかの言葉で安心するなど、それはそれで複雑だった。
(そもそもアンタが……)
こんなゲームさえやらされなければ、そもそも愛野を含めた四人さえ存在しなければ、アイドルをやめることも、今この迷宮で辱めを受けることもなかったのだ。途端に憎らしさが蘇り、できることなら殴ってやりたい気持ちがいっぱいに膨らんでいた。
だいたい、今度は別の不安が湧いてくる。
ギミック搭載ルームということは、また何らかの方法で二人を辱め、四人でそれを楽しもうというわけである。
実に腹の立つ話だ。
「今度はなんだっていうの」
敵意を隠しもせず、円香は尋ねた。
『この場所に入った場合、迷宮のどこかにランダムでワープするよ? 本当にランダムに設定してあるから、よっぽど運が良ければゴールの前に出られるけど、運が悪いと入り口まで戻ったりするわけだね』
本当に単なるワープで、現在の居場所が変わるだけで済むのだろうかと、真っ先に円香は疑う。それをわざわざ口にして、「なら恥ずかしい目に遭いたいかな?」などと返されても不愉快なので、ひとまず何も言わずにいるが。
『そういうわけで、三秒後にワープするからね』
愛野が言うなり、すぐさまカウントは始まった。
『三……二……一……!』
その数字を愛野が言い終わった瞬間から、円香の周りの景色が切り替わる。
今さっきまでいた空間の広さから、急に壁と壁のあいだに挟まれて、どこか別の通路に移されたことを円香は確かめる。直ちにマップ画面の点滅を確認して、地図上の自分の居場所を見ながら声をかけた。
「浅倉、平気?」
透の安否を気にかけるが、しかしその返事がない。
「……あれ?」
不安になり、振り向くが、前にも後ろにも透はいない。
もしやと思い、恐る恐るマップを見てみると、自分とは遥か離れた位置が点滅していた。円香と透はそれぞれ別々の場所に転送され、こんなにも距離を離されてしまったのだ。
しかも、それだけではない。
にじゅりっ、
粘液の摩擦が生み出す水音に、再び振り向いてみた瞬間、そこには青いスライムの固まりが迫っていた。
――逃げなきゃ!
そう思った瞬間に、スライムはすぐさま飛びついてきた。
「!」
心臓が凍りつき、円香は戦慄に染まり上がった。
逃げる間もなく一瞬にして、円香の下半身は飲まれてしまった。腰から下だけを水面の中に浸したように、冷たい水の感触に包まれていた。飛びかかってきたのはスライムの方だが、急に水に飛び込んだようにして、下半身が丸ごと囚われていた。
そして、それは純粋な水の感触とは異なっている。
スライム状の粘り気ある触感は、それ自体はプニプニと心地が良く、柔らかすぎるグミのようではあるのだが、今の円香に触れ心地について考える余裕はない。
まずい! 裸にされる!
その危機感から、円香は必死になって前に進んだ。
幸いなことに、一度飲まれた下半身も、スライムの内側で動かすことができるらしい。てっきり身動きを封じられ、脱出できないものと思っていたが、不幸中の幸いだった。水中を歩くよりも動きは重く、引っ張り出すには苦心したが、前へ前へと無我夢中で進もうとしているうちに、気づけば抜け出すことが出来ていた。
「ぬ、抜けた……!」
しかし、追っては来ないか。
それが怖くて振り向いて、スライムの様子を咄嗟に窺うと、どうもその場に留まって、そこから動く様子がない。
円香は気づいた。
追ってこないのでなく、追う必要がないのだ。
エサを抱えた獣がそのまま食事に夢中になるように、他の獲物には目も暮れず、その場で貪り始めている。円香から剥ぎ取ったスカートを体内で咀嚼して、少しずつ溶かしていくことに夢中なスライムは、今ならそこに置いてきぼりにできるはずだった。
かぁぁぁ……!
と、円香は激しく赤らむ。
全裸にならずに済んだはいいが、その代わりにスカートを失ったのだ。
円香の画面に映っているのは、ぐっしょりと水気を吸ったショーツの、薄らとしたパープルから、暗めの紫に変化したものだった。水分によって皮膚に貼りつき、割れ目に深く食い込んだショーツには、ぬるりとした粘液の痕跡が残されていた。
*
浅倉透もまったく同じ状況にあった。
しばらく迷宮を散策して、円香との合流を目指していると、後ろから追って来る気配に気づいて逃げようとした。咄嗟に速度を上げかけたが、それよりも速く飛びかかって来たスライムに下半身を飲み込まれ、慌てふためき脱出したはいいものの、その時にはスカートを奪われていた。
「最悪……!」
スライムからは逃げ切った。
だが、下半身にはべっとりと、粘液に浸った痕跡がまんべんなく残っている。ゼリーの風呂にでも浸かった直後のように、いたるところに細かな固まりが付着して、ショーツもぐっしょりと濡らされていた。
画面を見れば、自分自身の尻が大きく映し出されている。
尻を追跡してくるアングルで、歩けば歩くだけ、太ももの前後運動に合わせた尻肉の可動を観察できてしまう。
顔中が赤らんでいた。
羞恥のあまり、頭に熱があるかのように染まり上がって、表情を歪めきっていた。
「もうやだ……」
バイト先の先輩には犯されかけ、その先輩の正体は愛野であり、しかも宇宙人の力で異星に連れて来られるなど、突拍子もない展開が続いている。それさえ受け入れがたいのに、こんな迷路の中でスカートを失って、びしょ濡れのショーツのまま、天井の高さのせいで四つん這いの姿勢も変えられない。
そして、地図を確認するためにも、浮遊画面からは目を離せない。
見ないわけにはいかないものに、透自身の尻がリアルタイムで映されている。こんな辱めをいつまで受けていればいいのか。一刻も早く迷宮を脱出して、せめてこのゲームだけでも終わらせたい。
円香と離れ離れになったことで、自分の現在位置を示す点滅の他に、円香の位置を示す点滅表示も動いている。お互いにまだマッピングの進んでいなかったエリアに飛び、おかげで地図が広がっていることだけは、良かったと言えるのだろうか。
不幸中の幸いではあるのだろうが、それ以上にショーツ丸出しのまま動かなくてはならない状況が惨めでならない。
「透けてる……」
目を逸らしたくてたまらなかった。
透の穿いている白いショーツは、尻側は無地の一方で、フロント側には青い花のプリントが入っている。もっぱら尻が中心に映っているので、柄はほとんど見えないものの、股の隙間の影からは、わずかに青色が覗けていた。
そして、白く透けやすい色であることで、それがぐっしょりと濡れた結果として、肌色が微妙に見えているのだ。白が灰色になったようでいて、透明度を得たかのようにわずかな生尻が浮かび上がって、それが透の心をより一層のこと刺激している。
こんなもの、見ていたくない。
最初からそうだったが、ますます見ていたくなくなった。
しかし、画面の右端にあるマップを見ていれば、どうしても中継は視界に入る。その一点だけに集中して、余計なものは意識の外へ追い出そうともしてみるが、それがかえって尻への意識を強めてしまう。
追い出そう、考えないようにしよう。
そうやって、心の中から締め出す対象として定めることで、ある意味では逆に照準を定めてしまい、上手く意識外まで出せないのだ。
おかげで尻の様子が気になって気になって、本当に嫌で仕方のない状態が続くまま、透は迷宮を歩み続けた。
クリアは時間の問題だった。
スライムとの遭遇さえなければ、制限時間もたっぷりと、余裕をもってクリア可能なゲーム設計ではあった。
マップ上の点滅が近づいている。
黒塗りの通路を明らかにしていきながら、透自身の点滅と、円香の位置を示す点滅が近づいている。これだけ距離が縮まれば、向こうも合流を意識しているはずで、あとはそのための通路さえ見つかれば再開できるに違いなかった。
点滅と点滅が、画面上で一直線に、これから正面衝突でもするかのように、お互いに迫り合う。このまま会えるかと思いきや、目の前に現れる壁で再開は阻まれて、仕方ないのでそのままお互い壁沿いに進みだす。
二つの点滅が平行していた。
すぐ壁の向こうに円香はいた。
そのことを意識しながら歩いていくと、やっとのことで外に通じる出口が見えた。そこはちょうどU字路とでも呼ぶべき形の、そのままUターンが可能な通路になっていた。今まで二人を隔てた壁が途切れて、その途切れた先にこそ出口はあり、二人はクリア直前に再開できたわけだった。
「浅倉!」
「樋口!」
お互いの顔が見えるなり、すぐさま名前を呼び合った。
別れていたのはそう長い時間ではないのに、状況が状況だったおかげか、妙に寂しく心細く、だからこうして会えた瞬間、まるで数年ぶりの再開であるように、いっそ感動までしてしまっていた。
こんな四つん這いの体勢でなかったなら、今すぐ抱き締め合ったかもしれない勢いだ。
「とにかく、出よう。浅倉」
「うん!」
二人して出口を出る。
こうして、迷宮脱出ゲームはクリアするものの、二人にはまだ次のゲームが待っているのだ。
脱出した先で、二人を待っていたのは、あの時の四人であった。
愛野だけでなく、津馬も、土良井も、火亜も揃った四人組は、二人にとってトラウマを掘り返す顔ぶれだ。愛野一人がいても思い出すのに、勢揃いとあってはますます鮮明に記憶は蘇り、ただ向き合っているだけで恥辱感が湧いてくる。
きっと、普通の格好をしていても、その気持ちは同じだろう。
それを二人は、スカートを失った下着丸出しの格好で、シャツを必死に下へ引き下げ、隠そう隠そうとしながら立っている。その恥じらいを見ることで、四人は嬉しそうにニヤニヤする。そんな喜ばしそうな表情は、追撃のように二人の心を打ちのめす。
「やあ! お久しぶり!」
土良井が元気に挨拶してくる。
「元気そうで何よりだよ」
津馬がそんなことを言ってくる。
「で、なんで引退なんかしたんだ?」
原因を作っておきながら、その火亜が引退について触れてくるのは、信じられない気持ちと共に怒りが湧いた。
「誰のせいで……!」
円香はすぐに憤る。
「……」
透も言葉こそないが、同じ気持ちで四人のことを睨んでいた。
この部屋は近代的だ。
岩を刳り抜くことで作った迷宮は、何も機械的な気配を感じさせるものがない。ただ似たような質感の壁や床が延々と続いているだけの場所だったが、出口から出て来た瞬間に、二人はモニタールームのような部屋に入っていた。
ワープでも転移でも何でもいいが、一歩踏み込んだ瞬間から、景色をぱっと切り替えたようにして、二人して気づけばここにいた。
四人が横並びになった背後には、学校の黒板ほどはありそうな、大きなモニターが壁に埋め込まれていた。その一台だけでなく、左右にも壁に直接モニターが生えている。サイズのまちまちなものが複数にわたって取り付けられ、いずれも電源を落として画面を暗くしてあるものの、二人は見るに顔を歪めていた。
今は消してあるだけで、どうせこれらの画面で迷宮の様子を見ていたのだ。
スライムに下半身を飲み込まれ、慌てふためきながら脱出する様子も、ゲラゲラ笑うなりして楽しんでいたに違いない。
人をダンジョンに放り込み、その攻略を必死に行う姿を見て、それを娯楽として消費する。
最悪の行いに、性暴力のことに限った話でなく、目の前の四人は本当に最悪な性格をしているに違いなかった。
「で、楽しかったかい?」
しゃあしゃあと、愛野はそんなことを尋ねてくる。
「そんなわけない!」
円香は即答した。
「あらー。でも、君達には第二ゲームが待っている。第三ゲームまでクリアしないと、地球には帰してあげないからね」
「……最低」
相手は到底太刀打ちできない存在だ。
SF映画の世界にしかないような、信じられないワープ技術で異星に拉致された。警察の捜査で発見してもらえるはずはなく、元の世界に帰るには、愛野の言うゲームクリアを果たした上、約束を守ってもらえるように祈る以外にない。
「ところで、パンツ見せてくれる?」
「は?」
円香は敵意を隠さない。
愛野の突拍子もない言葉に、むしろ二人揃って腰をくの字気味にやや折り曲げ、見せるどころか隠す姿勢を強めていた。シャツをますます下に引っ張り、少しでも見えないように意識してていた。
四人揃って前にいるから、無意識のうちに後ろへの警戒心が薄れていた。
だが、次の瞬間には二人揃って引き攣っていた。
背後の巨大モニターに、画面を左右二等分する形で、二人の尻が急に映し出されていた。
迷宮の中では始終カメラに尻を追われ続けていたことを思い出し、片方の手を咄嗟に後ろに回したものの、今度のそれは中継映像ではなかった。
画像だ。
だから映像に円香や透の手が映り込むことはなく、微動だにすることのない尻がじっと静かに映し出されていた。
これでは隠す意味などない。
そもそも、手の平の面積だけでは、たとえ両手を使っても尻を完全には覆いきれない。シャツを下げるにしても、前か後ろのどちらか一方しか守れない状況で、二人は片手だけでも尻に上に乗せていた。
無意味とはわかっていても、手がそのように動いていた。
「いやぁ! 傑作だったねぇ!?」
愛野は大仰な身振り手振りを披露する。
その瞬間から、彼らは口々に感想を語り始めた。
「あのね! 風の通路でスカートがぶわーって上がるでしょ? あの道でのねぇ! 後ろからスライムが迫っているから、気にしている場合じゃない感じが見物だったよ!」
津馬が大喜びでスカートの捲れに触れる。
「ああ、あれはよかった。必死こいてスライムから距離取って、そのあいだはスカートを気にしちゃいられない。バリア出して、やっと気にする余裕が出来た瞬間の、早速みてーに手を後ろにやる瞬間がたまんなかったぜ?」
火亜も頷きながら語り出す。
「いやはや、ヌルヌルになっちゃったパンツも素敵でしてね? 濡れちゃったせいで微妙に肌色が透けるでしょ? あの色が変わった感じと、肌への張りつきが強くなった感じがなんとも好きでして、あのシーンのキャプチャ画像だけでも百枚以上は確保しましたよォ!」
土良井も自分の好きな場面を口にした。
わざとやっているのだ。
人が嫌がることをわかって、わざと感想を聞かせてくる。
それらの言葉全てが二人の心を蝕んでいた。
自分達はたくさん嫌な思いをしたり、屈辱や羞恥を感じてきたのに、人の苦しむ様子が四人にとってはエンターテインメントに過ぎないのだ。
最低、最低、最低――。
呪わしい思いがふつふつと湧き上がり、円香の胸にも、透の胸にも、そんな力さえあったなら、この四人を今すぐにどうにかしてやりたい気持ちが膨れ上がった。
「で、パンツ見せてくれる?」
どうせ画面に映っていたり、他にも大量に撮っているくせに、愛野は改めて要求してきた。
「……なんで」
敵意たっぷりに声を低めて、円香は問う。
「なんでって、見たいからだけど?」
「キモ」
「見せてくれなきゃ、第二ゲームには参加させませーん! あ、ってことは? 第三ゲームまでクリアしないと地球に帰れないのに、そのゲームへの挑戦自体ができなくなるね?」
(こいつ……こいつは……!)
殺意さえ湧きそうだった。
呪いがあったら、今すぐにかけてやりたかった。
「ほーら、どうする?」
他にどうしようもない。
見せる以外に選択肢がないように追い込んで、そうせざるを得ないようにしてからの、わざとらしい質問だった。実質的に強要しながら、形だけは拒否権を与える性格の悪さに、もはや顔が真っ赤な理由は怒りの方になりそうだった。
だが、怒りの赤面は、シャツをたくし上げる時には、恥ずかしさによる赤面へと立ち戻る。
すっ、
と、二人してシャツをたくし上げていた。
軽く、ヘソのすぐ下が見えるあたりまで、円香と透はシャツを持ち上げ、せめて目だけは瞑ってショーツを見せる。視界を闇に閉ざすことで、気に入らない四人の喜ぶ姿を、視覚からだけでも締め出していた。
それと同時に、巨大モニターの映像は切り替わった。
四人並びの背後に映るのは、画面サイズに合わせて実物以上の大きさとなった二人のショーツだ。一瞬前まで後ろ側の画像を出していたのが、たくし上げた瞬間から前側の中継映像に変わっていた。
「……最悪」
円香は顔を顰める。
「もうやだ……」
いつまでこんな目に遭い続ければいいのかと、透は泣きたいような顔で目を背けた。
二人のショーツは、それぞれスライムに絡まれた際の粘液が残っており、まるでオイルに付け込んだ直後のように、表面がどことなくぬるりとしている。
円香のショーツは薄いパープルのはずだった。
白に近い色合いの、爽やかな紫色だったのが、濡れ込むことで色を濃くして、しかも微妙に中身が透けている。濡れたせいもあり、スライムの服を溶かす力で繊維が薄くなっているせいもあり、肌の色合いも混ざることで、ショーツ本来の色から見栄えはすっかり変化していた。
布自体に柄はなく、無地といえば無地でありつつ、しかし上端には白い布が帯状に飾り付けてある。
その帯状の部分にこそ、黒いフロントリボンは付いていた。
透のショーツは白だった。
やはり、スライムのせいで薄らと微妙に溶けて、繊維がわずかに薄れている。そのおかげで肌や陰毛の色が見えそうな、しかし薔薇のプリントが辛うじて隠しているようでもある。プリントされている青い花は、青といっても色合いはそれぞれで、ほとんど白に近いものからダークブルーまで、その全てに光や陰影の具合まで表現されている。
蝶ネクタイのようなフロントリボンには、米粒のように小さな鈴が吊されていた。
二人のショーツが視姦されていた。
目の前から刺さる視線もさることながら、自分自身のショーツを強制的に見せつけて、恥辱を煽るモニターの中身に、二人は屈辱で心を震わせていた。
第二ゲームが始まった。
ひとしきりショーツを視姦して、四人が満足したところで、またしてもワープによって場所が移し替えられての、ルール説明を介した後に始めるゲームに、二人して取りかかっていた。
一言で言えば、お湯の真上を歩くゲームだ。
歩くといっても、立って歩くわけではない。
愛野が用意したルールにより、上向きの四足歩行で進む必要があった。ブリッヂというわけではないが、上を向いた上での四つん這いで、地面を背にして進む形で、二人はそれぞれのルートを進んでいた。
綱渡りに近いといえば近い。
お湯が入っているのは、実に長々とした透明なボックスだ。何十メートルとある長さの、少女の肩幅より多少は広い程度の幅の広さで、お湯が延々と続いている。こうなれば、湯船にお湯を溜めたというより、川とでも表現したいが、それほどの長さであっても、特に水流があるわけでもない、あくまで箱の中に入ったお湯なのだ。
つまり、両手両足を使い、縁の部分を伝って歩いている。
箱の両端の部分に手足を置き、ブリッジ型の四つ足歩行で落ちないように進んでいく。途中で落下したらゲームオーバーというルールで、二人分のコースを用意されていた。
「なんなの……これ……」
円香は顔を顰めている。
「お、落ちそう……」
透も表情を歪め尽くして、苦悶めいた顔付きを赤く染め上げていた。
平行して進んでいる二人だが、この歩行は決して簡単なものではない。慣れない姿勢もあるが、何よりもゲームの難易度を上げているのは、縁の部分が大きめで滑りやすい点にある。
テニスボールよりも大きな幅で、微妙に掴みにくい。
しかも、丸く綺麗に磨き上げ、ほとんど球面のようになった両縁は、表面にローションまでまとっているのだ。滑りやすくなっており、じっとしていれば自身の体重でだんだんと沈んでいくかのように、手足がずり落ちそうになる。
落ちないためには、ずり下がった手足をその都度置き直す必要があるものの、歩行するにはそのたびに手足のどれかを浮かせなくてはならない。その瞬間のたび、バランスが怖くなり、常に冷や冷やし続けている。
「最低……なんなのこれ……」
こんなゲームを思いつく愛野達への怒りもある。
だが、円香が憤りを感じる点はまだあった。
二人は制服を着せられていた。
薄らとチェック模様の入ったスカートに、上は真っ白なワイシャツと、高校時代そのままの服装を二人はしていた。
衣服も転送で切り替えるのか、何なのか。
この空間に送り込まれたその時から、気づけば服装が変えられており、ショーツのじめっとした感触も消えている。自分で着替えただけならば、乾いた下着に替えられて、すっきりした気持ちになれただろう。それを勝手に替えられて、きっと連中好みの下着を着けさせられたに違いないと思ったら、気持ち悪くてたまらない。
「マジでない……本当に最悪……」
その上で、滑稽な歩き方を強要されていた。
がに股のように脚を開き、ブリッジのように胴を持ち上げ、胴体の向きを上下反転させた形での四つん這い歩行である。
これでお湯の上を進んでいるのだ。
落ちたら火傷する温度なのか、といった怖さもさることながら、落ちる落ちないに関わらず、絶えず湯気が上がってくる。蒸気をワイシャツが吸い込むことで、徐々に透けてくるのではないかと不安があって、心理的にも落ち着かない。
だいたい、スカートは垂れ下がっていた。
上から見れば、もちろん中身は見えないが、水中にでもカメラを入れて、真上を見上げる形にすれば、お尻は丸見えのはずである。
誰にも見える余地のない状況なら、スカート丈の角度による恥ずかしさも、それほどのものではなかっただろう。
だが、迷宮での尻の追跡といい、先ほどのモニターといい、目には見えない透明なカメラが浮遊でもしているように、どこからか撮られ続けた。そのことを考えれば、姿勢のせいでお尻側の丈が垂れ下がり、尻が出ている状態は、あまりにも落ち着かないものだった。
しかも、腹が疲れてくる。
姿勢を楽にするためには、腰を沈めてしまえばいい。横から見ればM字に近い、尻が地面に近づく形でいた方が、身体にかかる負荷は少ない。それをしっかり上にして、胴体を地面と平行にしているのは、中身の見える具合を減らしたいためだった。
腰を低めようと低めまいと、どちらにしてもスカートは垂れ下がる。お湯に当たって濡れることも気になるが、何よりもショーツの方だ。腰が低いと、前から見ても開脚具合がM字に近づき、スカートの中身は見えやすいはずなのだ。
円香はそれを気にして胴体を上げていた。
透も同じく、筋力的な負荷を減らすことより、見えにくくする方を優先していた。
そうまでショーツを意識したところで、どうせ結局は見えないカメラに映されて、確認されているのだろうかと思ったら、いたたまれない気持ちになってくる。
ギミックはさらにある。
天井にはシャワーノズルが生えていた。
頭上からのシャワーと言えば、プールに入る前後のものを思い出すが、今は円香が見上げる天井の先から、こちらに向かって生えている。
まだ、水も何も出していない。
しかし、あれが何も出さずに終わるとは思えない。
その時、またしても浮遊モニターが出現した。
二人が天井へ向けた視線の先に、ちょうど見せつけるような位置に急に現れ、流れ始める映像は、やはりスカートの中身を中継したものだった。
「き、キモイから……!」
円香は声を荒げた。
「なんで……なんでこんなことばっかり……!」
透はいっぱいいっぱいになっていた。
二人して微妙に色合いの異なるピンク色で、円香の方が桃に近く、透の方が白に近い具合の色だった。それが湯気に当てられて、僅かながらに湿った結果、まださほど濡れてはいないが、湿り気の気配がいずれ強まってきそうであった。
二人の胴体は地面と平行であるものの、カメラの方は下からそれを見上げている。
結果として、さも正面から撮ったかのようなアングルでショーツは映り、揺れるスカートがチラチラと、画面上端から見え隠れしていた。
「またこれっ、なんなの!」
円香は正面から目を背け、顔を歪めながら進んで行く。
「もうやだ……助けて……」
透も切実な声を絞り出し、目を逸らしながら進んでいた。
どちらも、画面を見ないように意識していた。
そんな時である。
ぴちゃ、
と、何かの滴が落ちてきて、それが円香の頬に当たっていた。少しだけ熱っぽい、しかし雨粒でも当たったかのような感触に、円香はまるでおぞましいものを見たような顔をしていた。
「樋口……!」
透の悲鳴のような声がした。
「い、急がないと……!」
シャワーだ。
天井から生えたシャワーノズルは、ついにお湯を降らせようとしているのだ。
こんな白いワイシャツでびしょ濡れになれば、一体どんなに透けてしまうかは言うまでもない。その事態を回避しようと、慌ててペースを上げようとするのだが、その途端に危うくバランスを崩しかけ、心臓が凍りつきそうだった。
「だ、駄目だ……樋口、急いだりしたら……」
「私も、無理かも……」
お互い、声が震えていた。
ローションのまぶされた丸い縁は、ただでさえ滑りやすい。手足の置き方をちょうどよくしていなければ、体重によってだんだん下へと、ずるずると滑っていき、やがてはお湯に落ちることになる。
微妙なバランス感覚を保っていないと、いつ落ちるかも怖い状況だ。
下手にペースを上げようものなら、二人は簡単に落下して、ゲームオーバーになるだろう。
しかし、かといって急がなければ、とうとうシャワーから降り注いでくるお湯は、小雨のように少しずつ、着実に二人のワイシャツを濡らし始めた。
「や、やだ……!」
透が悲痛な声を上げていた。
「浅倉! あ、慌てたら、落ちちゃう!」
「わかってる! わかってるけど……!」
ワイシャツが濡れるとわかっていて、なのに急ぐわけにはいかなかった。濡れれば濡れるほど透けていき、中身の色は時間と共にいつかくっきりとしてしまうのに、それがわかっていながら急げない。
本当は慌てふためきながらペースを上げ、焦って進みたい状況でそれが出来ない。
体では慎重さを維持しつつ、心理的には焦燥感たっぷりに、何かに追われたような緊張に満ちた二人の顔は、心なしか汗をかいて見えてくる。実際にはシャワーの水滴で濡れ始めているだけなのだが、赤い顔と焦った様子が、さも汗であるように見せていた。
その小雨は画面を通過していた。
そんなものは幻に過ぎないように、真上に浮かぶ中継映像は、決して水滴を受け止めることがない。モニターやタブレットが浮遊しているわけでなく、映像が直接大気中に投影されてのものは、実態など持たなかった。
二人の進行状況は、ようやく半分を超えようというところだ。
「う……!」
円香が顔を顰めた。
「やぁ……!」
透が悲鳴を上げた。
画面はいつの間に二分割になり、左半分には尻を映した一方で、右半分には胸が映し出されていた。自分の胸がどこまで濡れ、一体どの程度透けているのか。それをリアルタイムに確認しやすくされてしまい、二人して顔を背けた。
必死になって壁だけに視線を注ぎ、映像を見ないようにしながら進み始める。
すると、画面は移動してきた。
「やだ……! 来ないで!」
透の悲鳴は、もはや不審者に追われて怖がる瞬間じみていた。
「キモイ! 本当にキモイ!」
円香の口からは、あの四人に対する罵声が出ていた。
目を逸らしたり、顔を横向きにしても、視線の先に回り込んで来るようになったのだ。壁を見ていればその方向に、円香と透で視線を重ね合わせれば、それを遮る位置に、視線の角度に合わせて移動してくる。
こうなったら、中継映像を見ないためには、目を瞑ったまま進むしかない。
しかし、いざそれをやってみて、すぐにバランスが怖くなる。
「最悪……最悪……!」
もうどうやっても、あの映像を視界に入れずに進むことは不可能だ。
嫌でも強制的に見せつけられる。
しかも、濡れた感触がだいぶ広がり、ブラジャーのピンク色が薄らと、今にも見えそうになってきている。色そのものは、既に判別可能になってしまい、これがさらに濡れてしまえば、よりくっきりと柄まで見えかねない。
二人はますます焦る。
実際には慌てて進むことができないせいで、心だけに焦燥感は膨らんでいく。
急ぎたいのに急げない、そのもどかしさで心が焼き切れそうになり、やり場のない感情をどこかにぶつけたくなってくる。
二人の距離は進んでいる。
ゴールが近づいてはいるが、シャワーの雨足も徐々に強まり、ワイシャツが濡れる勢いも早まっていた。ブラジャーのピンク色がみるみるうちにくっきりと浮かび上がっていた。
円香の腹が、透の腹が、ワイシャツ越しに透けてくる。
ついにはっきりと色が出て、肌まで透けたワイシャツからは、観察さえすれば柄の判別まで可能になっていた。
透のブラジャーは薄ピンクだ。
白に近い色合いで、カップにはそれよりも濃い色の糸を使った刺繍がある。その多くは花を縫い込んだものだったが、左右のカップの頂点には、きっと乳首の位置であろう箇所には、それぞれリボンがあった。れっきとしたリボンでなく、刺繍によって作られたリボンであった。
カップ同士の中心には、センターリボンとしてれっきとしたものも添えられている。
それがワイシャツの布を介して、ぐっしょりと透けた中から如実に浮き出て、中継映像の中に周囲の肌色もろとも映っていた。
円香のブラジャーは白に見えた。
ワイシャツが重なっていることもあり、薄ピンクというよりも、純粋な白色のように映ってしまうが、よく見れば柄までわかる。ピンクの生地を覆い拡散ばかりにして、無数の白いラインを引き、格子上のチェック模様を成していた。
大量に引かれた線により、ピンクよりも白の面積が遥かに上回り、結果として遠目にはパっと見れば純白と映ってしまう。
そんなチェック模様の上には、さらに花のアーチの刺繍が、やはり白い糸によって縫い込まれ、ブラジャーをよりオシャレに飾っていた。
こうなる頃には、尻も透けてきていた。
どちらのショーツも、下から立ち上る湯気を吸い込み、とうとうぐっしょり、尻の肌色を透かしていた。乾いていた時までは、決して見えることのなかった割れ目の溝が明確に浮かび上がっていた。
だが、透かされただけでは終わらない。
「やぁ……!」
「あ……!」
円香が驚き、透が悲しげな顔をした。
二人とも、何かに遠くへ行って欲しくないかのような、待って欲しい顔をしていたが、とはいえ物を手放したわけではない。
それ自体は身に着けたままだった。
スカートが捲れたのだ。
急に風が吹き、突如としてスカート丈が持ち上がる。
前触れもなく、急にショーツを丸見えにされてしまい、二人の柄が明らかとなってしまった。
円香のショーツはブラジャー同様、白に見えなくもない。
ピンク色の生地をベースしており、お尻側や腰の両側などは、特に白を使った要素はない。フロント側にある三角形のエリアだけに、ブラジャーと同じ白いラインを引いてのチェック模様が刻まれていた。
そこにフロントリボンを添えつつ、上端の両サイドはカットワークの花を張り付けていた。
六角形のエリアをチェック模様に、その上端左右にポイントを足すことで、白い三角エリアを形成していた。
透のショーツは元々のピンクが薄く、初めから白に近い。
薄らとした色合いの生地に、もっと普通の濃さをしたピンクを使い、プリント柄によっての花とリボンを並べている。四つ並びのリボンを大きめに、それよりも小さな花をリボンの周囲に散らした柄で、やはりフロントリボンの箇所には、きちんとした本当のリボンがあった。
二人はスカートを元に戻そうと意識した。
スカートが捲れた原因よりも、まず先にショーツを隠そうと意識したが、手をスカートに伸ばせばバランスが崩れそうでやりにくい。お湯の雨が降っていても、縁をぬめらせるローションが流れ落ちてくれるわけではなく、相変わらずいつ滑り落ちるかもわからない状況で、下手にスカートは触れない。
捲られる原因は扇風機だ。
そのためだけにコースに向け、複数台に渡って設置された大型のサーキューレターは、腕を広げたほどの直径で、成人男性の腰ほどまでの高さがある。そんなサイズのプロペラが回転すれば、スカートを捲るなど容易かった。
「やっ、やだ……やだ……!」
透がしきりに悲鳴を上げる。
ゴール手前には、まるでマラソンゴールを見守る観客の集まりのようにして、何台ものサーキュレーターが並んでいる。風がスカートを捲るコースが形成され、それを通過しない限り、決してゴールはできないようにされていた。
「最低っ! なんでこんなこと思いつくの!」
円香も声を荒げる。
本当に最悪だった。
せめてさっさとゴールして、この地獄から最速で抜け出したいと思いはするが、ヌルヌルとツルツルと滑る以上、やはり急ぎたくても急げない。
二人は結局、スカートを騒がせながら残りの距離を進んでいった。
水分で重みを増したスカート丈の、風にバサバサと鳴らされる音に合わせて、映像の中ではショーツが見え隠れを繰り返す。風の当たり具合によって、数秒以上は丸出しになったショーツが、もう数歩進んだ先では一瞬ずつチラチラとしか見えないなど、捲れ方にもバリエーションが出るように、風速もあえてバラバラにしてあった。
二人はやっとゴールに辿り着き、床の上に素足を下ろす。
扇風機からも、シャワーからも、少しでも早く離れたいように小走りして、逃げるように駆け去っていた。
そして、第三ゲームの現場に出る時、やはりワープによって居場所が変わるが、同時に服装も変えられる。衣類どころか、濡れていた肌も乾いて、しかし仕組みを不思議がる余裕も気分もしなかった。
二人はアイドルの衣装を着せられていた。
現役時代、かつて着た覚えのあるものだった。
「またこんな……」
円香が真っ先に悪態をつく。
よりにもよって、引退の元凶達によって当時の衣装が用意され、本人の意思とは無関係に着せられる。着せ替え人形の扱いも不愉快だが、下着まで替えられているのだろう気持ち悪さにも、肌中寒気が走りそうである。
衣装は白を基調にしたものだ。
肩出しの衣装であるが、その構造はスーツやブレザーを元にしている。ボタンを留める箇所で襟を返して、その襟の部分が肩の向こうへ続く。タスキをかけるようにして、片方の襟だけをそんな作りにしてある衣装は、右肩は完全に剥き出しだった。
胴体はほとんど白だが、装飾やボタンの色によるアクセントも入り、スカートは青い。
その衣装を着た二人の前に、彼ら四人は並んでいた。
四人揃って、それぞれショーツを握っていた。
一体、誰がどの下着を持っているか、もはやそんなことはどうでもいい。
そんな細かな話より、まず真っ先に悪寒が走った。
ぞわぁぁぁぁ……!
全身に寒気が走った。
愛野が、津馬が、土良井が、火亜が、みんなしてショーツを握り締め、それをわざわざ鼻に近づけている。これみよがしに香りを楽しみ、お前の下着を嗅いでやっているぞと言わんばかりにニヤけてくる。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い――円香と透の心が完全に一致している。
「さぁて、じゃあ最後のゲームだね」
ニヤニヤとした愛野の声は、聞くだけで粘ついたものが付着してくるかのような、耳に嫌な余韻の残るねっとりとしたものになっていた。
「キモイ……」
あまりの感覚に、そう呟かずにはいられない。
「まあまあ、ルールは簡単だから。ジャングルジムを登り切る。制限時間は特になし。ゴールさえできればいいけど、途中で落ちたり、何かの理由で続行不能に陥ったらゲームオーバーになるからね」
四人の背後には、それは大きなジャングルジムがあった。
公園で見かける一般的なものとはスケールが遥かに異なり、大きくなった透から見てでさえ、建物でも見上げたような気持ちになる。
二階建てや三階建てほどの高さはあるだろうか。
そんな高所へ命綱もなしに上がっていくのは、辱めの件を無しにしても怖い話だ。
しかし、やるしかない。
決して前向き気持ちで挑戦するわけでなく、ただ挑まざるを得ない状況を作られての、他にどうしようもない結果としてのものではあるが、ここまで来たらクリアして、約束通りに地球に帰して欲しい。
――二人はまだ、この時は気づいていなかった。
シャワーとして降り注いだお湯に、コースの中から上がった湯気にも、宇宙人が人間の肉体に合わせて開発した媚薬成分が含まれており、やがてその効果は発揮されていく。
四人はそのことにほくそ笑み、しかし二人はまだ何の自覚もしていなかった。
*
ジャングルジムを形成している銀色の鉄を握った。
金属の表面をメタリックに塗装して、見栄えを良くしたジャングルジムの、その頂点を目指して登り始める。
当然、スカートが気になった。
四人が下から見上げており、これではカメラを介することなく、肉眼で直接中身を見られかねない。
もっとも、スパッツを穿かされている。
スカートの丈に隠れて、黒いスパッツのぴっちりとした感触は、肌に軽く食い込んでいる。ショーツを見られるよりはマシなのだが、これをわざわざ穿かせてあるということは、あの連中はスパッツでも興奮することを意味している。
興奮でなくとも、いきなり見えるよりは段階を挟んだ方が面白い。
といった、向こうにとっては楽しくても、二人にとってはたまったものでない趣味趣向に違いない。
登っているうち、円香の股は疼き始めた。
(え……!)
その驚きに、円香はぴたりと手を止める。
「どうしたの? 樋口」
「い、いや……」
アソコに妙な感覚がしたとは、親友とはいえ咄嗟に打ち明けられることでもなく、つい反射的に誤魔化した。
しかし、決して気のせいではない。
改めて手を動かし、上へ上へと進んでいくが、その最中にまたヒクッと、アソコの奥で引き締まる感じがした。
(な、なに……ありえない……)
アソコが熱っぽく興奮を始める一方で、逆に表情は冷え切っていた。
シャワーや湯気に媚薬成分があったことなど、円香が知っているはずもない。愛野達もそんな事実は明かしておらず、だから本人にもわからないのだ。自分がどうして性的に興奮して、アソコを濡らそうとする気配など醸し出しているのか、ちっとも理解できなかった。
(どういう……こと……)
だからこその動揺だ。
こういう目に遭って、何も嬉しいはずがない。よほどのマゾヒズムがあれば、痴漢やレイプを喜ぶ女が世界のどこかにならいるのだろうが、円香自身には性的被害を喜ぶ趣味はない。思い悩んで、引退まで決め、アイドルをやめてもなお、トラウマの影は心の中に差し込み続け、異性に対する苦手意識さえ芽生えていた。
その自分が興奮して、たった一瞬でもアソコをひくりと疼かせるなど、あっていいことではない。
(ありえない……本当にありえない……)
自分が異常な反応をしたのではないかと、そう悩みかねない勢いだった。
「んぅ……」
しかし、隣で透も様子がおかしい。
「どうしたの? 浅倉」
「い、いや……」
覚えのある誤魔化し方に、円香は何かピンとくる。
もしかして、透も?
だとしたら、二人同時にそうなっているとでもいうのだろうか。ただでさえ、これで興奮などおかしいはずなのに、円香ばかりか透もなどあるというのか。
考え過ぎ、だろうか。
その時、またしても浮遊画面が出現した。
急だった。
頂上を目指して、上を見上げて進んでいた時、その視線を遮らんばかりにして、円香と透のそれぞれに画面は浮かび上がっていた。
それは今までのゲームを撮った映像だった。
『はーい! ここで色々と振り返ってみましょう!』
と、愛野の声。
『せっかくだからね? 名場面集を作ってみたよ!』
今度は津馬の声が画面から聞こえて来る。
「ふざけてるの!?」
円香はすぐさま声を荒げた。
見たくない、視界から消えて欲しい。
目を背けたり、顔の向きを変えてみて、浮遊画面を視界から締め出そうとして見ても、その逸らした先にやって来る。嫌でも視界に入り込み、邪魔な正面の位置に漂ってくる映像は、主に迷宮の中での出来事だった。
二人の画面に、同一の映像が流れていた。
『いやぁぁぁ……!』
透の悲鳴だった。
やはり、尻を後ろから追跡したアングルだが、映像はスライム越しのものだった。水色のゼリー状を通しているが、スカートを奪われていく状況は鮮明に流れている。画面の中の透が足をじたばたさせながら、もがきながら必死に前に進もうとしているのが、後ろから見ていても伝わって来た。
『傑作だなぁ』
火亜の声だ。
『いやもう、笑えますよぉ!』
土良井の愉快そうな顔まで目に浮かぶ。
四人とも、楽しそうにしているのだ。
人があんな目に遭って、悲鳴まで上げる姿を肴にゲラゲラと笑っている。その信じられない神経に、もはやこの世のものでない何かを見る目を浮かべ、円香は心の底から連中を軽蔑していた。
(ありえない……本当にあり得ない……)
円香も同じ目に遭っている。
画面の中では、まるで水中のバタ足を後ろ側から見ているように、両足が必死に上下している。そのさらに向こうには、下半身を引きずり出そうと苦心している両手の動きも映り込む。
それとまったく同じ動きを、きっと円香もしていたはずだ。
わざわざ、見ていたくなどない。
「やだ……」
隣から、本人の悲痛な声が届いてくる。
見れば心を打ちのめされ、今にも泣き出しそうな横顔がそこにはある。自分自身の嫌な思い出も蘇れば、透に悪い気持ちもあり、二重の意味で見たくない映像だった。
(……本当に……何が楽しいっていうの?)
映像ではスカートが脱がされていた。
ゼリーの固まりにしか見えずとも、生物であるためなのか、きっとジェル状の水分を器用に流動させている。まさに全身を駆使してホックを外し、チャックまで引き下げて、透からスカートを奪い撮る。
トカゲは尻尾を切って天敵から逃げ切ると聞いたことがある。
映像の中の透も、傍からの視点で見れば、スカートと引き換えに逃げきって見えなくもない。脱皮した皮を残して逃げ去るように、スライムの体内にスカートだけを残して下半身を引きずり出す。
もちろん、好きで脱いだわけがない。
ただ、映像にしてみれば、そう見える気がすることに、こうしてみて初めて気づいた。
『可愛かったよ? 透ちゃん』
『この後の濡れ透けパンツがたまらないんだよねぇ?』
『うんうん! エロいエロい!』
『まだあるぜ? さっきのゲームじゃあ、ブラがだんだん見えてくるシーンが傑作だったもんなァ?』
口々に語られる感想は、全てが透への追い打ちだった。
『まだあるよ?』
次の映像は先ほどのお湯渡りゲームのものだ。
またしても透を映し、そのワイシャツがだんだんと濡れていく。既にある程度は濡れているところから始まって、下着の色だけはこの時点で判別できた。それから、まだ濡れていない乾いた箇所にも、少しずつ水滴が降り注ぐ。
見る間に乾いた部分はなくなって、濡れによる変色がまんべんなく広がり尽くすと、白い生地の下から肌の色がくっきりと、さらにはブラジャーの柄まで判別可能になっていた。
それだけではない。
今にも滑り落ちそうな、危ういお湯渡りの最中の、足の動きを映した映像も用意され、そちらにはショーツがチラチラと見え隠れしていた。サーキュレーターのエリアに入る前から、がに股めいて開いた足から、歩行に合わせてスカートは上下して、微妙に見えてはいたのだった。
『チラリズムだねぇ?』
『この見え方も興奮するよォ!』
『丸出しもいいけどね? こういうのも味がありましてね?』
『そうそう。いいものを鑑賞させてもらったぜ?』
最低の趣向であった。
人の破廉恥な映像を用意して、それを本人に見せつけながら、わざとらしく感想を語って聞かせてくる。
聞きたくない、両手で耳を塞ぎたい思いだろう。
だが、このジャングルジムの上では、常に両手が塞がっている。片手だけなら空けられるが、両手を使って耳を塞げる状態にはなかった。
耳を閉ざすことすら許されない。
「いい加減にして! もういいでしょ!?」
円香が声を荒くして、怒りをあらわにした時だ。
「うっ、うぁぁ……! あぁぁ……!」
透が泣き出していた。
思えば、この星に来る前から、バイトの先輩――の、はずだった人物にレイプされかけ、性暴力の恐怖を体験した直後に、この一連のゲームの数々である。
これほどの仕打ちがあるだろうか。
円香もそうだが、こんな目に遭わなければいけないような、非道な行いをしたことなど、透には一度もない。
「なんで!?」
こんな目に遭う理由が何一つ理解できない。
何もかも、一つも起こっていいことなどなかったはずだ。
「負けないで! 負けちゃ駄目! 浅倉、頑張ろう!?」
凝った言葉など思いつかない。
ただ口を突いて出て来る言葉を吐き出し、必死に元気づけようとしていた。
『円香ちゃーん?』
『君の映像もありますからねー?』
『見て下さいよォ!』
『お前も必死こいてたよなァ?』
次に映像が切り替わる時、とうとう円香の姿が映ってきた。
スライムの時の映像だった。
自分自身の、下半身を飲まれた際の必死になった表情が、正面から映されていた。あの時は服を溶かされ全裸にされる危機だと思っていたので、それこそ命懸けのような思いで、無我夢中で這い出ようと必死であった。
自分がどんな顔付きをして、それを何も知らない人間が傍から見れば、滑稽な表情に見えるかなど、考えている余裕がなかった。
『おっかしー顔だねぇ?』
だが、今はそれを見せつけられていた。
喘がんばかりに口を開け、狼狽しながら両手を動かし、そうしなければ死ぬかのように這い出ようともがいている。みっともなく髪を振り乱した自分の顔もショックだが、何よりも辛いのはケラケラと笑われていることだった。
『はっはっはっはっは!』
『いい顔いい顔!』
『傑作過ぎますねェ? 本当にいい表情でしたねェ?』
『で、感想はどうだ? いい映像だっただろ?』
何がいいものか。
楽しんでいるのは自分達だけで、円香にとっては何一つ面白いことなどない。
その後も、円香を中心にした映像は流される。
お湯渡りの際の透けブラに、濡れ透けで尻の割れ目が見えたショーツなど、見たくもないものを見せつけられ、その恥ずかしさを円香は必死に堪えていた。
『じゃあ、セレクションはこれくらいにするけど、頑張ってねぇぇぇ?』
心の底から愉快そうにした愛野の声を最後にして、セレクションとやらは終了するも、直ちに中継映像が流れ始めた。
またしても、スカートの中身を撮ろうとして、後ろから追跡してくるアングルだった。
リアルタイムの映像で、円香や透が動けばそれに応じて画面の中身もそのまま動き、スカートの揺れから黒いスパッツが見え隠れを繰り返す。
(いつまで耐えればいいの!?)
円香も限界を超えそうだった。
小さな子供のようにして、いっそ大声で泣き喚いてしまいたかった。
画面は四分割されている。
目には見えずとも、浮遊でもしながら追って来ているのだろうカメラは四台あり、それぞれの角度が映したものを全て同時に流すため、一つの画面が四等分され、それぞれの箇所に各カメラのものが流れている。
一つは当然、まるでスカートにスマートフォンを差し込もうとしているような、それをもう少し下から映したアングルのだ。顔の周りにもカメラはあるはずで、だから自分自身の表情も絶えず確認できる状態で、さらには胸のアップもある。
乳房を狙われても、今はまだ服の上からだ。
しかし、そこをじっくり映されては、決していい気持ちはしない。わざわざアップにしているからには、途中で胸が見えかねないような、何かのギミックが出てくるのではないかと怖くもあった。
そして、最後に真上から見下ろすアングルの、やや遠くから映した映像が流れている。
それら四つの映像が視界の中心に置かれ続けて、そんな状態で二人はジャングルジムを上がっていく。上の鉄棒を掴むために手を伸ばし、着実に上へと進むのだが、そのたびに揺れ動くスカートが気になって仕方がない。
極力、動きを小さくゆっくりにしていた。
どうせ時間制限はないのだから、動きに勢いを付けすぎないことで、スカートの揺れを少しでも抑えようとしていた。
それでも、カメラの方が動いてくる。
二人の動きに合わせ、カメラの方が勝手に位置を調整して、上手いこと覗き込もうとしてきている。
ジャングルジムを上がっていくには、手を上に伸ばすのはもちろんのこと、足もその都度上げることになる。段差に足を置くようにして持ち上げて、その際の股の可動がスカート丈を揺らしていた。
その揺れを極力減らそうとしているが、きっちり手で隠してしまうのでなければ、どう足掻いても限界があった、
そもそも、この衣装のスカートはラッパの口のように開いたタイプで、内側にドロワーズなどを入れておくのが普通である。そのドロワーズも何もなく、あるのはスパッツのみという心許なさは、本当にたまったものではない。
がっつりと中身を映されずに済んでいるのは、もっぱら角度のおかげである。
二人して意識してもいるのだが、ジャングルジムを登る態勢は、さながら壁に向かって四つん這いになるような形に近い。その上で胴体を駆使して気を遣い、少しでも見えにくい角度を維持していた。
それでも、見える時は見える。
どうしたところで、限界というものはあり、丸見えのタイミングは何度かあった。
お尻の形は出てしまっている。
パッツは肌のラインに沿い合わさり、しかも縦にゴムが入っている。尻の割れ目に食い込む構造をわざわざしており、ただ丸出しでないだけで、体格そのものは如実に浮き出ていた。
「くっ……!」
顔が赤らむ。
つい、手を後ろにやって、スカートを押さえたくなる。
かといって、両手を使っていなければ、ジャングルジムを登る動作は片手だけでやれるものではない。たとえ出来たとしても、高くなればなるほど落下が怖く、リスクの高い真似はやりにくくなってくる。
とにかく、頂上に着くしかない。
果たして約束を守る気はあるのか、疑わしさはあるものの、二人が地球に帰る道など、それを信じる以外にない。
びゅうぅぅ……!
強風の音が聞こえたのは突然だった。
「や……!」
そして、透が悲鳴を上げた。
『一定の高さに達すると、風が吹くようになるからねー』
楽しそうな愛野の声で、この風は自然なものではなく、吹かせる仕掛けがどこかに存在してのものと理解した。
「どこまでも……!」
しかも、媚薬の効果も出て来ている。
今にもアソコに汁が染み出し、うずうずと股のヨダレが出て来そうな感覚が、自分自身で信じられない。
(冗談じゃない! なんで!? ありえない!)
己に対する叱責は激しかった。
この状況で体が悦ぶなど、完全にどうかしている。
それとも、おかしな体験をしすぎたせいで、本当にどうかしてきたとでもいうのだろうか。
(ありえない……あっちゃいけない……)
あの四人のおかげで悦ぶなど、断じてあっていいことではない。
風のある中、二人は進んだ。
「もうやだ……帰りたい……帰りたいよ……」
透が完全に参っている。
見ていて辛い。休ませてやりたい。
「浅倉、頑張ろう……」
「うん…………」
本当は頑張りたくなんかない。
好きでやっているゲームでもないのに、どうして頑張らなくてはいけないのか。そう思う気持ちは大いにあるが、嫌でも頑張らざるを得ないのだ。
風が吹いてくる。
微弱な風でかすかに揺らされただけでさえ、ついスカートを意識して、全身がひどく強張っていた。吹くたび吹くたび、警戒心が膨れ上がって、手が下へ伸びそうになる。スカートを押さえつけ、確実に見えないようにしたくなる。
だが、弱風のうちは登ることに集中して、なるべく上だけを意識した。
嫌でも視界に入る映像は、努めて意識から逸らしていた。
びゅぅぅぅぅ…………!
強風が吹いた時ばかりは、咄嗟に片手を後ろにやり、スカートを押さえずにはいられない。二人して一旦止まり、風がやむまで押さえることだけに集中するが、その瞬間にアングルが切り替わる。
四分割した画面の中で、スカート狙いのアングルが正面狙いに変化して、前から見た場合のショーツのチラつきが流された。
「や……!」
円香は頬に熱を弾けさせる。
「やだ……!」
透が悲痛な声を上げる。
スカートの中身はむしろ、風のおかげで隠れてさえいる状態だ。ラッパ型の形状が横風で折れ込んで、サイドの丈が胴に張りつく。しかし、バサバサとはためくおかげで、スパッツの端が見え隠れを繰り返す。
「浅倉! こうしよう!」
こうなったら、手でお尻を押さえつつ、気をつけのように全身を真っ直ぐ伸ばす。鉄の棒に股を押しつけ、そうすることで棒と脚のあいだにスカートを挟み込み、無理にでも押さえ込んでいた。
そして、風はやむ。
「……平気、かな」
透のいかにも不安そうな声に、円香はあまり頷けない。
平気ではないに決まっている。
また進み始めれば、しばらくすると風が吹くのだろう。見えるたび見えるたび、同じ方法で隠すしか道はない。
二人はまた、進み始める。
いつ吹くとも知れない風を警戒して、まるで命でも狙われているかのように、全方位に意識を費やしていた。
そうして、数分ほど登った時だ。
『さーて、鉄棒にさ! 赤いラインがあるのわかる?』
またしても、愛野の声が聞こえてくる。
同時に二人で手を止めて、赤い塗装の入った棒に目を留めた。
『一定の高さごとに赤いラインがあって、風が吹くようになったみたいに、ラインの突破ごとに面白いことが起きるからね!』
「面白くない……」
愛野のことが呪わしい。
面白いのは自分達だけで、円香と透にとっての面白いことなど、何一つありはしない。
『ほーら、どうしたの? 上がらないの? ギブアップ?』
上擦った声で煽ってくる。
円香はそれに大いに苛立ち、歯軋りしながら画面を睨む。
「どこまでも……!」
何かの辱めがあるとわかって、おいそれと進めるわけがない。引き返したい思いでいっぱいだったが、ふと下を見てみれば、もう随分と高いところまでやって来ていた。落下すれば怪我は免れず、さらに上から落ちれば死亡や骨折もありえるだろう。
命綱もなしに、高すぎる場所にいることでの緊張感まで湧いてきた。
ますます、上には行きにくい。
『ほらほら』
本当に、愛野がうざい。
「……行こう。浅倉」
「う、うん……」
「行きたく、ないけどね」
「うん」
どの道、ギブアップというわけにもいかず、嫌で嫌でたまらないが上に進んだ。透に元気がないのも当然だ。もしも透がいない、円香一人の状態だったら、円香の方がもっと暗くなっていたかもしれない。
状況が状況だけに、一緒にいてくれてありがとう――とは、とても言えたものではないが。
進んだ時、スパッツが消失した。
急に、パッと切り替えるようにして、スイッチのオン・オフ感覚も同然に、突如として下半身を包むぴっちりとした締め付けが失われた。
そして、次の瞬間には画面に映る。
「やだ……!」
円香の悲痛な顔。
「いやぁ……!」
透の悲鳴。
二人のショーツの色がしっかりと映り込み、下着の尻が見えてしまっていた。・
*
それからも、ショーツが少しでも見えにくいように意識して進んでいくが、たまに吹いてくる風にスカートを揺らされる。吹くたびにビクっとして、しかし弱風の時はまだしもホっとしている。
強風となると、一度止まって押さえ込む必要があった。
そうしなければ、丸見えの状態を風がやむまで維持することになりかねない。
どちらも白。
両方のショーツには、お尻のゴムに沿う形で、アーチを連ねたようなレースがある。それが風や脚の動きに伴って、限られた面積だけが何度もチラつき、見え隠れを繰り返していた。
やがて、また強風が来る。
激しく揺らされ、スカートからバサバサと音が鳴る。それを片手で押さえながら、やはり股を棒に押しつけることで、無理にでも丈を押さえ込んでいた。
それから、風がやむ。
無風になっても、警戒心は決して引かない。動き出した直後にまた、ということはないかと怖くなり、身が竦んで動けない。
だが、延々と止まっているわけにもいかず、やがては進み始めるが、その瞬間だった。
「やっ!」
「やだ!」
二人同時の悲鳴が上がった。
次に吹く風は、下から上へと、まるでスカート捲りのためだけのような角度で吹いてきたのだ。スカートも大胆に捲り上がって、丈が背中に張りつく勢いになった時、当然のようにどちらの尻も丸見えになった。
「最悪! 最悪!」
円香は叫びながら手を回す。
「いやぁぁ……!」
透も必死だ。
二人とも、背中とスカート丈のあいだに何とか指を入れようと苦心して、やっとのことで入った瞬間、素早く手を尻に叩きつけ、力強く隠していた。とっくに見えてしまったのもは、どうせ記録に撮られているとわかっていても、二人はしばしそのまま力を込め、もう二度と見せたくないかのように守りを固め続けていた。
「もうやだ……本当にやだ……」
透がますます参っている。
(私も、無理……!)
円香の精神も、だいぶやられていた。
一体、いつまでこんなことを続ければいいのだろうと、心から思い悩んで、二人して泣きたい心境にかられていた。
……うずっ、
それでも、アソコは疼いている。
媚薬が使われているとは知らない二人にとって、どうして自分が興奮して、アソコを濡らそうとしなくてはならないのか、本当に理解できずにいるのだった。
*
まただ。
またしても、赤いラインが見えてきた。
このジャングルジムには、いくつかのポイントごとに赤い塗装が施され、レッドラインを越えるたびに何かが起こる。まずは急に風が吹くようになり、次にラインを越えた時にはスパッツが消えた。
では、一体次は何があるのか。
「…………」
無言で睨む。
円香はそこで止まったまま、透も躊躇いを感じたまま、それ以上進むことなく、ただ無意味に赤い塗装と睨めっこを行っている。
越えたくないのだ。
進むしかない、後戻りはできない。
それはわかっているのだが、罠が仕掛けてあるとわかって踏み込むことはできないように、体が抵抗感を示すのだ。そうするしかないにせよ、動くに動けず身が竦み、ただ無意味に固まるだけの時間を過ごしていた。
そして、そうしているあいだにも、二人の中で媚薬成分の循環は進んでいる。
じわぁ……。
と、汗が滲み出るように、膣壁の狭間からはだんだんと、性的興奮によって分泌される体液が染み出そうとしているのだ。
心なしか、どちらの呼吸も荒くなっていた。
だが、進む。
抵抗感に浸って無意味に固まる時間を過ごした末、結局は進むしかない以上、やがては上に手を伸ばし、その赤い棒を掴むのだった。
そして、レッドラインを越えた時である。
スパッ!
と、刃で切り裂いたかのように、突如として衣服が裂けた。
「え!?」
透の方だった。
何が起きたか理解できずに、ただ驚愕で目を丸めて、唖然とした顔で硬直していた。突然すぎて、かえって何も反応出来ずに固まっていた。
裂けたのは胸元だった。
肌には何の傷もないものの、そこにナイフを一閃させたようにして、乳房と乳房のあいだに切れ込みが入っていた。その切れ目から、ミリ単位で肌が覗けて見える。
その現象が今度は円香にも起こっていた。
「なに……これ……!?」
戦慄した。
衣装の上端が切り取られ、数センチにわたる布切れがひらひらと舞い落ちる。片側をチューブトップのようにしてある衣装の、丁度乳房の真上の布面積が減ることで、今にも零れ出そうな危うさに、円香の戦慄はますますのものとなっていた。
『かまいたちだ』
火亜の音声だった。
『見えない風の刃ってやつだ。ま、肌や髪は傷つけない。衣類だけが切れるから危険はないぞ?』
体中から冷や汗が噴き出る。
怪我の危険はないと言われても、二人にとっては衣服の切断も立派な危険の一種である。ちっとも安心できずに恐怖して、透の瞳が震えていた。円香も動揺に目を見開き、そして画面の様子に気づいて目を背けた。
本当に乳房が零れ出そうだ。
右側の布面積を削られて、ただでさえノーブラで着るタイプの衣装から、乳房が微妙にはみ出している。透の控え目な胸は、今のところまだ綺麗に収まっているが、円香の方がいくらか大きく、その分だけはみ出そうだ。
最初の頃から、僅かながらのハミ乳で、ぷにりとした感じはあったのだ。
それがますます顕著になり、また同じ箇所が切断されれば、今度こそ乳首が見えかねない危険がある。
『時間制限はないし、何なら全裸になってもゲームオーバーではない』
『ゆっくりしていいんですよォ!?』
そんなことを言われても、ゆっくりなど――。
いや、風がある。
動きを激しくすれば、風の有無に関係なくスカートの動きも激しくなる。そこに風が加われば、スパッツを失った下半身はますます見えやすくなってくる。
冗談じゃない。
かといってゆっくりすれば、かまいたちでの切断が続いてしまう。どんな頻度で発生するかは不明だが、いつかは全裸になるのだろう。
急ぐわけにも、急がないわけにもいかない。
ギミックや恥ずかしさのことがなくとも、こんな高いところで慌てるのは、落下の危険性からそもそも怖い。
「し、慎重に……でも、さっきよりは早く行こう……」
というのが、最終的な結論だった。
「それしか、ないよね……」
他にどうしようもないことへの悲しさが、痛いほどに伝わって来る。
(浅倉……)
とにかく、進もう。
二人はさらに上へ上へと、今までのペースと比べる分には急ぎ気味に、かといって本当に慌てすぎたスピードでは進まない。ゆっくりすぎず、慎重さを欠かない程度の微妙な急ぎ方といった具合に鉄の棒を掴んで上がる。
びゅぅぅ……!
強風だった。
手と棒を駆使して、前後を同時に押さえる必要のある風に、構わず進むか、今までのように隠すかの、咄嗟の判断ができなかった。止まっていれば、その分だけかまいたちを浴びる回数が増えかねず、風がやむまでその場に留まることへの躊躇いも、それはそれであったのだ。
選択に迷うおかげで、即座の判断が下せずに、おかげで手で押さえることすらできずにスカートは捲れ上がった。
「やっ!」
「やぁ……!」
結局は片手で押さえ、その場に留まる。
だが、押さえる直前までは、風圧によって存分に持ち上がり、数秒感は丸見えになっていた。
しかも、この状況になってのこと。
スパッ、スパッ、
と、さらにかまいたちが発生する。
「嘘っ!」
円香が驚愕する。
「やめてぇ!」
透が叫ぶ。
風がやむまで待つ体勢に入ってしまい、そのチャンスを狙ったようにスカートの前側に亀裂が走る。股を棒に押しつけて、そうして押さえ込む方法にも関わらず、鉄棒を無視してその内側が直接裂けた。
縦に、綺麗な切れ込みが走っていた。
布面積そのものは減らないが、縦二等分であるような切れ込みで、いつそこからショーツの前側が見えてもおかしくはなくなった。
二人の戦慄は言うまでもない。
これで次に風が吹いたら、次は前も見えてしまう不安に駆られ、もう本当の本当に嫌になっていた。全てを投げ出し、何でもいいからどこかへ消えたい。こんなクリアの義務など、もう背負いたくない気持ちでいっぱいだった。
円香の目尻にも涙が浮かぶ。
透にいたっては、またしても頬に涙の筋が通った。
なのに、やはり諦めることすらできない。
敗北すれば性奴隷という条件下では、投げ出すことすらできない。
「い、行こう……」
円香の声が震えている。
進み出せば、やはり切れ込みが気になって仕方がない。円香の場合は乳房の状態も気にかかり、こうして動いているうちに、身体の動きに合わせて布がずれ、いつかは見えてしまわないかの恐怖があった。
べちゃっ、
粘液を叩きつけたような音だった。
その音と同時に、円香と透はそれぞれ胸に軽い衝撃を受けた。ゴムボールのように柔らかい、痛いわけではないものが、しかし強くぶつけられた感覚に、二人して自身の胸を確かめる。
すると、濡れていた。
「なに……これ……」
レッドラインは越えている。
つまり、新しいギミックとして、何か液体の固まりが飛んで来たのだ。
しかも透けている。
思いっきり乳房に当たり、白い生地がその水分を吸い込むことで、その中の肌色が今に浮かび上がろうとしていた。
「やだ……! やだ……!」
透が叫ぶ。
このままでは乳首が見えかねない危機感に、もう急ぐしかないと速度を上げるが、その瞬間に強風が吹いてきた。
ビュゥゥゥゥゥ…………!
激しい風音だった。
髪が激しく暴れ出し、自分自身の髪に頬を打たれる。横から殴りつけてくる突風で、スカート丈の片側はむしろ脚に張りつくが、その反対側は捲れていた。横から見れば、ショーツのサイドが丸見えのはずだった。
しかし、それだけでは済まされない。
先ほどの切れ込みもあり、ついにショーツの前側があらわになっていた。スカートのはためきで、多少の見え隠れはありながら、二人の前に浮かぶ画面上には、フロント側が映されていた。
透の白いショーツには、薄らとしたラメ光沢の刺繍があった。
白に溶け込みそうな薄色の刺繍は、糸そのものにグラデーションを施しているのか。それとも、複数の種類の糸を使ってか。多色の刺繍は薄水色から薄ピンク、薄黄緑と移り変わって、それが花の形を成している。
円香の白は、薄水色のフロントリボン付きだった。
白い生地に白い刺繍で、色の溶け込んでしまいそうな花柄は、上端部から花びらをはみ出していた。ゴムの外までアーチを届かせ、周囲のラインだけをピンク色に、花弁には透けた布が使われていた。
それらどちらのショーツにも、怪しい染みが浮かんでいた。
アソコには今の粘液を浴びてはいない。
つまり、二人が純粋の興奮しての、媚薬効果の現れだった。
『あれあれ?』
『愛液かなぁ?』
『どうして濡れてるんですかァ?』
『興奮してんのか?』
口々に煽り、からかってくる音声に苛まれた。
「ちがう……!」
「ちがう! ちがう!」
二人は必死に否定した。
媚薬の存在など知らない二人と、わかっていて煽る四人とで、当然のようにその認識は異なっている。自分で自然と興奮して、こんなことで性的に高揚してはいないかと恐れる二人の心理と、そんな状態に陥る姿を面白がる男達で、見世物と鑑賞側に分かれていた。
『ほらほら! ローションが飛んできますよォ?』
その瞬間――
べちゃ!
今度は尻だった。
スカートの上とはいえ、ローションの固まりらしい透明な液体に濡らされて、映像の中ではその箇所の生地が薄れる。繊維をかすかに溶かす作用があり、その上で水分が染み込めば、透けやすくなるのも当然だった。
どこから飛んで来るのかもわからない。
まるで目には見えない砲身に包囲され、何もないはずの空間から、突如として現れてくるかのように、ローションの弾は飛んでくる。
狙いは必ずしも正確ではない。
むしろ無造作に乱射して、二人のいない箇所にも当たり、鉄棒の表面がローションにまぶされていた。
そして、風が吹く。
「や……!」
透のスカートが捲れ、尻が丸出しになったところへ――。
べちゃ!
尻に直撃していた。
ローションがショーツに染み込み、瞬く間に肌色が浮かび上がった。布が肌に張りついて、白い分だけ透け具合はわかりやすく、尻の割れ目の溝まで見えていた。
それを透自身が映像で見てしまい、透は浮遊画面から目を背ける。
スパッ!
今度はかまいたちが、円香の胸を切り裂いた。
V字に近い、細長い切れ込みの、その隙間から飛び出るように乳首が露出し、円香はみるみるうちに赤らんでいく。羞恥の熱で頭が火照り、恥じらっているあいだにも媚薬効果は強まって、興奮で息遣いはすっかり荒くなっていた。
「はぁ……あっ、あふぁ………………」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒っぽく熱の籠もった呼吸は、全て媚薬のせいだった。
「なんで……」
「おかしい……」
浮かぶのは悲痛な顔だ。
どうして、自分はこれで興奮するのか。自分はおかしくなってしまったのか。異常者にでもなったのかと、本気で思い悩む悲しげな表情に、興奮とは裏腹の涙がにじみ出ていた。
『乳首が硬くなってるね!』
指摘してくる声に、円香は深く歯を食い縛る。
実際に画面の中では、その胸をアップにしている箇所では、切れ込みの隙間から見える乳首には極限まで血流が集まって、触れればいつでも快感を走らせる準備を整えていた。
「ちがう! こんなのちがう!」
自分で自分の興奮を否定して、円香は必死に頭を振る。
『急げ急げ、進まないとどんどん悪化するぞ?』
その指摘の直後にローションが直撃した。
背中が透ける。腹部が透ける。スカートの生地が薄れて、透の乳首も白い布越しに薄らと見えてくる。
かまいたちがさらに服を切り刻み、いたるところに切れ込みが増え始めた。
ただの切れ込みなら、それ自体は布面積を変えることなく、指で広げるなりして初めて中身が見えてくる。しかし、その目には見えない斬撃は、必ずしも縦筋の形でなく、三角形の斬撃も存在していた。
三連続で切る結果、あたかも三角形に刳り抜くように、その部分の布が取れ、ひらひらと宙を待っては消えていく。スカートに穴が空き、ついには捲れるまでもなく、小さな三角形から常に尻が見えっぱなしの状態が出来上がる。
「や……!」
透が足を滑らせた。
幸い、落下はしないのだが、無造作なローション弾のせいで鉄棒が滑りやすくなっている。ヌルヌルとした棒に足を乗せ、その瞬間にバランスを崩しかけたのだった。
やがて、ついにはただ裸でないだけの状態に陥っていた。
切れ込みの数々と、いたるとこがローションの濡れで薄れた二人の姿は、実に無惨なものと言えるだろう。
円香の場合は切れ込みから、透の場合は透けた布から、それぞれ乳首が完全に見えている。スカートもズタズタに、もはや細長い布をいくつもまとめ、一箇所に束ねただけのような状態で、隙間から見え放題だ。
脱いでもいないのに、透け具合だけで背中は剥き出しに、切れ込みからヘソも出ている。
「あ……!」
「そんな……!」
円香が、透が、驚愕と悲しみを織り交ぜた眼差しで、待って欲しいかのように手を伸ばし、落ちていくそれを見送った。
ついにスカートが脱げたのだ。
切られるだけ切られ尽くして、もはや着用の限界を迎えるのは時間の問題だったスカートに、とうとう腰の部分が切断された。腰を締め付け、身体に維持するための機能が断ち切られ、自然と脱げ落ちる。縦長の切れ込みがおびただしく走っていたせいもあり、太ももにかかって落下が止まることもなく、宙へと消え去ってしまったのだ。
下半身はショーツ丸出しとなってしまった。
そんな二人に、なおもギミックは容赦しない。
ローションが飛び続け、かまいたちに残る上半身の衣服も刻まれ、もはや裸になるのは時間の問題なのだった。
次の赤いラインの先には、無数のディルドが生えていた。
そのリアルな造形と色合いは、生きた男性器をそのまま生やした奇怪な光景でさえある。身体の一部を切り取って、どこかに飾っておくというのは、ホラーやサスペンスにおける猟奇表現の一種である。二人がディルド畑に感じたのは、そういった種類の不気味さだった。
しかし、次の瞬間に二人は思う。
そこへ進んでいかなくてはならないのだ。
まるで壁から棒が生えているかのように、ジャングルジムの鉄棒部分から、肉棒という肉棒が玉袋をぶら下げ生えている。よく見れば、生えるというより、洗濯バサミの原理で挟み、向きや角度を固定していた。
本当に数え切れないほどの男性器が並んでいる。
そして、そんなおぞましい光景に引き攣る頃には、二人はショーツ一枚にまでなっていた。
衣服を失った身体には、なおもローションがぶつかり続け、背中や肩がしだいにぬるぬるにされていく。乳房の表面を透明なコーティングが覆い尽くして、体中のあらゆる箇所が光沢を放つようになっていた。
『エッチだねぇ?』
『全身テカテカじゃない!』
男達の興奮した声が届いてくる。
『ヌルヌルに輝く乳房!』
『スケスケで丸出し同然の尻!』
思い思いに良いと思う箇所について声を上げ、彼らはそれがいかに官能的であるかを語り始める。
『ローションでヌルっと光った感じの体って、本当にエロいんだよねぇ! 腰とか太ももでも十分にエロいのに、それがオッパイだったりした時には、もう鼻息がこう、すっごく荒くなっちゃうわけぇ!』
お手本を示さんばかりに、わざとらしい鼻息を聞かせてくる。それが過剰になるあまり、もはや豚の鳴き真似だった。
『それにアソコも濡れてるねぇ? ほら、ローションが当たる前から、最初から濡れてたもんねぇ? 興奮してるんだねぇ? 二人とも!』
「し、してない!」
「違う!」
即座に否定する声は、いかにも悲痛なものである。
『違うって言っても、そのハァハァした息遣い、エロくてトロっとした表情! 興奮してないわけがないでしょ?』
愛野による指摘に、二人は思わず自分の顔を確かめていた。
四分割の画面の一つに、表情を映し続けているものがある。その顔付きを見ることで、自分がいかに悩ましげに、快楽にうっとりしたかのように目を細め、気持ち良くなっていたかを痛感した。
もちろん、本気で快楽に浸っていたわけではない。
悲劇に苦悩する顔付きではあったのだが、そこに不純物が混ざるかのように、愛野が言うような表情の気配が見え隠れしていた。
「ち、ちがう……」
円香の声が弱くなる。
否定しきれない自分がいて、泣きたくなった。
『さあ、早く進まないと、パンツもなくなっちゃうよ?』
そう言われ、二人は進む。
もうこんな格好にまでなってしまった恥ずかしさに、穴があったら入りたい気持ちを本当に味わっていた。どこかに本当に穴があり、飛び込むことができたなら、すぐにでも裸を隠せるのに、などと切実な願望を胸にしていた。
頭に羞恥の熱が溜まっている。
脳が沸騰するのは時間の問題であるように、その表情は羞恥に歪む。
二人はペニス畑の領域に突入した。
「うぅ……」
「気持ち悪い……」
二人は完全に引き攣っていた。
セックス未経験の二人であるが、人間の皮膚に触れた感触くらいはわかる。生温かい、生きた男性の一部のような感触は作り物による再現だ。触感もさることながら、内臓したバッテリーが体温まで再現して、その表面には血管を浮かせている。
よく見れば、形状や大きさに個人差はなく、全て同一の規格のものだ。
生きた人間の一部にしか見えないそれだが、見た目が同じであることに、辛うじて製品らしさを感じられた。
ペニスの生えていない箇所などない。
当然、避けて進みたいが、触れずに済むだけのスペースがどこにもない。存在する四角形の辺の全てに必ず二本は生えている。場所によっては三本以上も同時に生え、角の部分に生えていることもあり、接触を避けることは不可能だった。
少なくとも、手で触ることはないように、気をつけながら手を伸ばす。
まずは眼前を通り過ぎた。
鼻先に亀頭が触れてきそうなギリギリを通過していき、さらにその下にある胸や腹に擦れていく。接触は避けきれず、生肌に亀頭のぷにりとした感触は当たってしまい、ぞわりと鳥肌が立っていた。
そして、一本のペニスを通り過ぎても、またすぐに次のペニスが、それを通り過ぎてもまた次が、いくらでも控えている。
最悪なのは、接触を避けようと気をつけるあまり、ジャングルジムと胴体を離しすぎれば落ちそうな点だった。手足だけを棒に残して、胴体だけを遠ざけるようにしすぎると、ヌルヌルとした感触で滑りそうになるために、どうしても怖くて距離を離しきれなかった。
もはやローション弾の発射や着弾に関係無く、棒の表面は初めからヌルヌルだった。
その滑りの良さのおかげで、しっかりと握力を込めていなければ、もはや脱力さえ怖くてできない。
あまりの不快感に、背中に氷でも当たっているような寒気で震えながら、心の底から嫌そうな、泣きそうな顔をしながら上がっていく。
赤いラインを通過しきって、足までその上に行った時、もはや靴さえ消滅した。
そこから先は、裸足で上がっていくことになり、足の指にまで棒のヌルヌルが付着してきた。
「キモイ……キモイよ……」
こんなの無理だと言わんばかりの、透の悲痛な叫びが聞こえる。
配置も実に嫌らしい。
例えば、二本生えた箇所を通る時、真ん中に頭を通せば、ひとまず顔には触れてこない。ところが、そうやって通過した先には、中央配置のペニスが控えている。避けきるルートができないように計算され、どう足掻いても身体のどこかにペニスは当たる。
登っていく動きに合わせ、まずはペニスが両肩に乗せられた。
円香も、透も、まったく同じ状況となり、接触した部分に肌の泡立つ感覚を覚えていた。そのまま上に進んでいけば、まるでレバーを持ち上げるようにして、両肩がペニスの角度を上げていく。
身体の通過に合わせ、皮膚の上を擦れていく肉棒は、脇下で元の角度に向き直る。
そして、せっかく中央に顔を通して、顔への接触は避けたところで、中央配置のペニスが頭上に控えているわけだった。それをまた避けたければ、身体の位置を変え、サイドにコーズをずらす必要があるのだが、すると今度は横から頬に当たりかねない位置にもペニスがある。
腹や肩に当たるのさえ、心の底から我慢していた。
それこそ、腐敗した生ゴミに手を突っ込むことにでもなったかのような、最高に嫌そうな表情が止まらない。
嫌なあまりに泣きそうな、なのに媚薬が効いて肉体的には興奮した状況は、体と心が完全に相反していた。
他のギミックはいつの間になくなっていた。
二人の裸は十分にローションまみれで、ぐっしょりと濡れたショーツはとっくに尻を透かせている。まんべんなく光沢を帯びた状態で、かまいたちがショーツを狙うこともなく、スカートを捲る意味のないのに風も吹かない。
その代わりのようにして、また次の赤いラインが見えてきた。
そして、それより上は壁だった。
ジャングルジムに板を張り付け、今度は壁をよじ登らなくてはいけないエリアが迫ってきたのだ。
「む、無理……!」
円香は完全に引き攣っていた。
もちろん、単なる壁では指を引っかける場所もなく、上り下りなど不可能である。手で掴める突起の用意はあるが、その突起とは全てペニスだ。
信じられなかった。
「本当に……無理なんじゃ……」
透の意見も当然だ。
クライミング競技の壁なら岩の突起を用意してあるが、ペニスを掴んだり、足をかけて登っていくなど、それは可能なのかと純粋な疑問も湧く。とても人間の体重を支えるものには見えず、触りたくない上に、成立するのかさえ怖かった。
『大丈夫だよー。その先は握っても角度が変わったりしない。人間がぶら下がっても平気な設定にしてあるし、そもそも落ちたところでワープ機能で助けるからさ』
と、愛野が言う。
『そうだよ! 落下死亡した死体ってグロいでしょ!?』
『二人の可愛い体を楽しむためには、安全は保障しませんとね!』
『そういうわけだ。安心しろ』
冗談じゃなかった。
そんな言葉を信じて、おいそれと上がっていく気にはなれない。宇宙人の持つテクノロジーが優れているのは、もう十分にわかっているが、それがペニスということもあり、心理的な抵抗感は猛烈なものだった。
『ま、そのまま力尽きるまで、永遠に嫌がっていても構わないけど?』
愛野はそんなことを言い出した。
「なにそれ……」
円香は画面を睨む。
そこに四人の顔は映らないが、その向こうにいるかのように鋭い視線を送っていた。
『時間制限無しって約束だからね。ずーっとそこにいて、もう指に力が入らなくなって、落っこちるしかなくなるまでいても構わないよ? どうせワープで怪我はさせないからね』
だから、嫌なら好きにしろとばかりに言ってくる。
きっと、愛野は本気だ。
二人でこうして止まっていれば、本当に力尽きるまで放置して、落下直前になってやっと助けに入るのだ。
もちろん、その時はゲームオーバーの扱いなのだろう。
進むしかない。
「うっ、うぅぅぅぅ………………」
極限まで引き攣りながら手を伸ばし、円香は肉棒を手掴みした。
ぞわぁぁぁ…………!
掴んだ箇所の、皮膚の接触部分から、まるで腐敗が広がるかのようなおぞましさに、これ以上は引き攣りようのない表情が、なおも歪みを増そうとした。
鉄棒に足を乗せ、手足の力で身体を持ち上げる。
足で押し上げる一方で、ペニスを掴んだ手によっても引っ張り上げると、それは本当に角度が折れず、人間の体重を支えるだけの屈強さを発揮した。
「ほ、本当に……平気だなんて……」
こんな辱めの状況でなく、もっと違ったタイミングで屈強さを拝んでいれば、それこそ物でも吊したプロモーション映像でも見てのことなら、まだ素直に感心したかもしれない。
だが、今はむしろ、平気であって欲しくなかった。
構造に欠陥があるという理由ができて、このエリアが無しになれば、などという期待が腹の底にはあったのだ。
しかし、もう進むしかない。
「浅倉……本当にさ、本当にきついけど……実際気持ち悪いけど……他にないよ……」
言っていて、自分で悲しくなった。
心の底から嫌でたまらないことなのに、それをやらざるを得ない気持ちで、どんどん泣きじゃくりたくなってくる。
「はあっ、はぁ……はぁ……」
「はふぁ……あぁ……」
それとは矛盾した興奮の息遣い。
それが円香にも、透にもある。
ショーツの股の部分も、もっぱらローション弾を浴び尽くした結果としてぐっしょりなのだが、内側には間違いなく愛液が出てきている。興奮によっての濡れを帯びながら、透もまた壁のエリアへ入っていく。
始終、鳥肌が立った。
皮膚が何かに侵食され、蝕まれていく感覚を覚えながらも、ペニスを掴みながら上がっていく。ペニスの上に足を置き、次に掴むべきペニスはどれか、足を置くべき先もどれかと選びながら上がっていく。
――ペニスクライミング。
ジャングルジムだったはずが、そう呼称すべきものへの挑戦に移り変わった。
そして、その時。
ドピュン!
「やぁぁぁ!」
「なにこれ! なにこれ!」
二人の絶叫が響き渡る。
まさか、作り物のペニスから、精液が出て来るとは想像もしていなかったのだ。
*
『それは本物の精液だよー!』
愛野の元気な解説に、それこそ全身くまなく鳥肌が広がった。
もはや目玉が飛び出そうなほどまでに、極限まで見開いた眼差しが瞳を震わせ、肌中が余すことなく泡立っていた。
『数年分のオナニーで溜め込んだ我々の精液でね? ほら、鮮度を保つ技術くらいあるからさぁ! 出したてのような温かさでしょ!? 作り物は作り物でも、人工筋肉とか人口神経が使われていて、刺激に反応するようになっているんだ。で、出やすいように設定を変えたから、みんなの精液が貯蔵庫から転送されて、射精のように飛び出すんだ!』
細かな解説など、何も頭に入らない。
本物の精液だと聞いた時点で、今こうして頬に付着しているもののおぞましさが、必要以上のものになっていた。
「き、キモすぎる…………」
信じられないものに対する眼差しで、頬を伝って流れ落ちる白濁を感じ取る。
これが、あの四人のうちの誰かのもの……あるいは、四人の精液をかき混ぜた全員分のものかもしれない。
青臭い香りがツンと鼻孔を突いてくる。
「やだ……やだ……!」
透も限界直前だった。
見ればまた、泣き出していた。
あまりの地獄である。
こうして手で握ったり、裸足で触れているだけでさえ、一体どれほど我慢していることか。その上、射精までしてくるなど、どこまで尊厳を傷つけて、嘲笑えば気が済むのか。
円香も涙を流していた。
白濁の付着に涙の筋を通していき、その滴が顎から垂れる。
目の周りを泣き腫らし、涙と共に二人は進む。
ドピュウ! ドピュン!
透のショーツにかかってきた。
円香の胸にもかかっていた。
ドピュッ! ドピュッ!
上がれば上がるほど、どれかのペニスから精液が飛び出てくる。手足で触れたペニスとは限らずに、身体が亀頭に擦れる時や、眼前にペニスのあるタイミングに射精され、時間が経つほどに体が白濁にまみれていく。
二人の顔中に精液がまぶされていた。
今までローション塗れになってきた身体の、未だ輝かしい光沢を帯びた肉体は、胸にもショーツにも白濁を浴びていた。
そして、そんな自分自身の穢れようは、画面に意識を向ければいつでも確認できてしまう。
それでも、ゴールが見えてきた。
やっと、地獄に終わりが見えてきた。
「もうすぐ……もうすぐだよ……浅倉……」
「うん……!」
汚らわしくおぞましい、最悪の世界からの出口を見つけたように、ようやく顔に希望を浮かべてペースを上げる。
だが、その時だった。
ブィィィィィィ…………!
振動、していた。
「んっ、んぅぅ……!」
媚薬で火照った肉体は、その振動に悶えてしまった。
「樋口!?」
「平気! とにかく、早く終わらせよう?」
「そうだね。早く……帰りたい……」
隣の透が進み出し、しかし円香はその場に留まる。
股のあいだに、ちょうどペニスが挟まっていた。
ペニスの群れを避けきれずに、接触やむなしだったうちの一本は、いつしかアソコの真下に入っていた。まるで股を下から持ち上げるフックのようにして、浮遊画面を見れば尻と接した亀頭が映されていた。
それが振動してきたのだ。
そんな機能があるとは知りもせず、今初めて発揮されていた。
………………。
振動が、止まる。
秘所に振動を送り込み、刺激してきた感覚が中断され、快感も打ち止めになった時、円香は気を取り直して透を追う。
いつの間に、見上げれば透の尻を直接見てしまうまでに距離が開いていた。
「……樋口?」
自分だけが先に進んでいることを気にして、透は円香を振り向いていた。
「大丈夫っ、今ちょっと……すぐ追いつくから、先にゴールしてて」
「……わ、わかった……すぐだよ」
ちょうど、透の手は頂上に近づいていた。
あと数センチの距離に、その手は届いていた。
その僅かな距離を進むのに、何の妨害があるでもなく、透は無事に頂上へ到着する。円香の視界から足が消え、透のゴールを確信すると、自分も早く追いつこうとペースを上げる。
ブィィィン!
それを邪魔するような刺激が乳首に触れていた。
「んっ、んぁぁ……!」
両方の乳首に亀頭が当たり、それが激しく振動する。その震えに乳房を揺らされ、円香は悲鳴のような喘ぎ声を上げてしまっていた。
「あっ、あぁぁぁ……! あぁぁぁぁ………………!」
理解できない快感があった。
どうしてここまで気持ちいいのか、本人にはまるでわからなかった。喘ぎながら天を見上げて、自分も進まなければと頭の片隅では思うのだが、そのように体が動かない。
「ひうん!」
その時、にょきりと伸びた肉棒がワレメに当たり、ちょうどクリトリスの位置に押し込まれていた。それがやはり振動すると、敏感な箇所への刺激に円香はますます激しく喘ぐ。
「あっ! んぁっ、あ! あぁっ、あぁん!」
そればかりか、ショーツがずり下がっていた。
まるで透明人間がそこにいて、後ろから脱がせたように、誰もいないのに勝手に下がる。剥き出しになった尻目掛けて、貫くように押し当たるのは、壁から生えていたはずのペニスの一本だ。
物体を宙に浮かせて操作するなど、トゥーサッツ星人の母星にある技術では、そう難しい技術ではない。
それを駆使して、亀頭をアナルに押し当てた上、射精しながら振動していた。
「んぁああああ! あぁぁぁぁ………………!」
雄叫びのような喘ぎ声となっていた。
肛門に直接精液をかけられていることなど、快感のあまりに構っていられず、円香はただひたすらに喘ぐことだけに夢中になった。
「樋口!? どうしたの!? 樋口!?」
頂上で聞きつけて、必死になって心配そうに見下ろす透の声も、その表情さえも、円香は気づいていなかった。
「あっ、あぁぁ! やっ、やっ、やぁ…………!」
気づく余裕もなく快感に翻弄され、のたうち回る勢いで激しく髪を振り乱す。
そして、ついに……。
円香の手がペニスを離れた。
力を込めていられずに、腕が脱力してしまった結果、不意にバランスを崩した次の瞬間には、急速に透の顔が遠ざかる。
「浅倉……!」
ようやく、手を伸ばそうと必死な透に気づき、円香も夢中で手を伸ばすが、二人の距離はそもそもから足りていない。初めから届くはずのない二人の手は、落下で遠ざかる一方だった。
透の顔が小さくなり、見えなくなるまで時間などかからなかった。
…………
……
もちろん、愛野も言っていたように、決して転落死することはない。
落ちた際には直ちにワープ機能が作動して、救出するためのシステムが空間には組まれている。
それに救われた円香は、まるで今まで見ていた全てが夢だったかのように、きちんと服を着た状態で床に転がり、天井を見上げていた。
透の手を掴もうと、必死に伸ばした右腕だけがそのままに、気づけばどこか建物の部屋の中、円香は寝転がっていた。
「え…………」
円香は呆然とする。
夢オチというものを実際に体験して、急に現実に戻って来た感覚に他ならない。
「夢、だった……?」
あまりの急さに、本気でそう信じそうな自分がいた。
だが、円香を取り巻く現実はどこまでも非情である。
「夢じゃないんだよねぇ? オジサン、迎えに来ちゃったよ?」
愛野の声に、円香は絶望を顔に浮かべた。
夢で終わってなどくれなかった。
*
浅倉透が見ているものは、顔面がすっかり青白くなるような恐怖の映像だった。
円香の落下を見送って、親友が死んでしまったような絶望で、魂が消えてしまったように呆然としていたところで、透はワープ機能で転送されてここにいる。
例によって、勝手に着替えさせられて、シャツと短パンを穿いた格好で椅子に座っているのだが、ちょうどそのテーブルにはモニターが置かれていた。
『ゲーム中に言ったでしょう?』
通信音声が聞こえてくる。
『死なせないし、怪我もさせないって。大丈夫、生きているよ。きちんと無事な姿を見せてあげるから、そこで大人しくしていてね?』
安心で、ホッとしたため息をつく。
「よかった……」
確かにゲーム中にその説明はあったが、いざ円香が落ちていく姿を見て、冷静ではいられなかった。ともすればパニックに陥って、正気を失っていたかもしれない自分がいる。
ただ、暗い想像が頭を掠める。
円香はゲームオーバー扱いなのではないか、という薄暗い考えだ。
「樋口!」
暗かったモニターが点灯するなり、すぐに見えた円香の姿に、透は顔を画面に押し込む勢いで近づけて、前のめりになって無事な姿を確認していた。
だが、そんな透の表情は固まった。
「え……」
良かった。無事でいてくれた。
そんな希望の浮かんだ明るい顔そのままに氷付き、透はその非情な光景に固まっていた。
確かに円香は映っている。
無事な姿がそこにはあるが、果たして本当の意味で無事な姿と言ってもいいのだろうか。最初に映った顔のアップは、その一瞬だけでは本来の状況などわからず、まず真っ先に安心したt透の表情は、その真の状況に氷結していた。
円香が四人に乱暴されている。
その光景に透は絶句していた。
モニターの中、追われる円香は必死になって駆け回り、飛びつく勢いでドアノブを握り締めていた。必死になってドアを開けようと、がむしゃらに力任せに引っ張っていた。引いても空かないなら押して開けるのかと、今度は逆に叩き壊そうとする勢いで、肩でタックルまで始めている。
必死になって、無我夢中で部屋から脱出しようとしているのだ。
そして、ドアの開かないところへじりじりと、わざとらしく一歩ずつ迫っていき、しだいに包囲の円を縮めているのは、あの四人組だった。
愛野が、津馬が、土良井が、火亜が映っている。
『見えちゃったよ?』
『ピンク色だね?』
スカートが捲れた際の、見えたらしい色を声にだしてからかっている。
『来ないで! やめて!』
親友の透にして、聞いたこともない金切り声が鼓膜を貫く。
「樋口……! そんな……樋口……!」
どうにもならず、見ていることしかできなかった。
四人が迫れば迫るほど、ドアを開けようとする必死さは増していく。ビクともしないドアを殴りつけ、泣きながら死に物狂いになっていると、一人がスカートに手を伸ばし、大胆に捲り上げていた。
『はーい! やっぱりピンク!』
『可愛いねぇ?』
『やめて! やめてってば!』
円香の喉が裂けそうなほどの金切り声など、四人にとっては楽しみの一環でしかない。
四人がかりで羽交い締めに、強引に服を引っ張った。悪戯を楽しむようなスカート捲りをかましたり、ハサミでチョキチョキと音を鳴らして、凶器の存在まで見せびらかす。
狩りを娯楽として楽しむ光景と言えた。
背中を掴まれた円香は、服が裂けても構わない勢いで、死に物狂いで前に進もうともがいていた。男の力に敵うことなく、決して前には進めないのに、それでも逃げよう逃げようと必死になる。
服を掴んでいるのは火亜だった。
『ほら』
今まで掴んでいた服を手放し、急に後ろからの力が抜けたことにより、円香は前のめりによろけていた。
『さあさあ』
『出口はあっちにもありますよォ?』
円香は言われるままの方向に飛びついて、またしても必死にドアノブを回している。ドアを押したり引っ張ったり、そんな音がおぞましい騒音となるほどに、円香は激しく必死に逃げようとしているのだ。
決して開かないドアと格闘していると、またしても背中を掴まれ、円香は必死に身悶えする。がむしゃらに手足を暴れさせ、周りを乱雑に蹴って殴っての抵抗まで始めていた。誰もいない空中にまで拳は伸びて、そのうち土良井や津馬の顔に当たるが、彼は物ともせずにニヤニヤと笑っている。
壮絶な光景だった。
強姦が行われる犯行現場は、こんなにも恐ろしい光景になるのかと、透はますます凍りついていた。最初の表情で固まったまま、首から背骨にかけてまで氷が広がっていくように、全身に寒気まで感じていた。
やがて、円香は押し倒される。
人数をいいことに、仰向けに寝かせた上で、二人がかりで両手を封じる。その胴体に馬乗りに、愛野が衣服にハサミを入れて切り裂き始めた。
そんなことをしなくても、ワープ機能の応用で好きに人を着替えさせられるはずである。
つまり、わざとやっているのだ。
楽しむために、わざと暴力で追い詰めて、狩りを楽しむ獣のようにじわじわと嬲っているのだ。
円香はなおも暴れようとする。
手足が駄目なら、必死に首を振り回した。嫌だ嫌だとばかりに頭を振る行為に、何の意味もありはしないと、冷静であればわかるだろう。今の円香に、きっとそんな正常な判断力はなく、恐怖に対する反射でパニックのままに体を動かし続けている。
その結果として、ただの髪を振り乱す行為に必死になっていた。
「樋口……樋口……」
もう何度目かもわからない涙を流し、透は泣きながら映像を見た。
「こんな……こんなことって……」
何もできない。
そこがどこかもわからないのに、四人の男を相手に円香を救いに行けるはずもなく、透はただひたすらに無力感に打ちのめされていた。
*
円香の頬に刺激が走る。
ビンタ、されたのだ。
パニックに陥りながら、必死に髪を振り乱していた円香は、そのビンタで何故だか我に返った後、しかし恐怖と絶望が薄れるわけもなく、今度は涙を流し始めた。
「やめて……本当にやめて……」
悲痛な声で訴える。
「やめませーん」
胴に体重を乗せてくる愛野の、実に楽しそうな笑顔と共に、ハサミによる衣服の切断が進んでいく。両手はバンザイの形となって、頭上の火亜と土良井に押さえ込まれ、伸びきった両足の足首も、それぞれ手で握られている。
三人がかりで体重をかけられて、四肢の全てが床に封印されたまま、円香は為す術もなく服を切られ続けていた。
その切断作業が進めば進むほど、切れ込みにまみれた服はボロボロに、無惨に繊維の糸を晒し、ついには下着姿にまでなっていた。邪魔な自分自身の体をどかし、愛野はスカートまで切り裂くと、ついに円香の服を剥ききったのだ。
円香のピンク色の下着は、小さな猫のシルエットが入っていた。
細かな花々を散らしつつ、上端に沿った部分には、何かに飛びつこうとしているような、立とうとしたような猫の姿が、刺繍によるシルエットとして縫い込まれている。その同一のマークが五つ並びに、ゴムのラインからはレースをあえてはみ出すデザインで、アーチの連なりが走っていた。
「じゃあ、いよいよ全裸になってみようか!」
ブラジャーの下へとハサミが入る。
皮膚に触れた冷たい金属に、神経を凍りつかせた円香は、恐怖しきった表情で泣き腫らし、必死に何かを喚いていた。何を叫んでいるのかは、もう本人にもわからない。ただ助かりたいと、必死であった。
ブラジャーが中央から二つに分かれ、乳房が剥き出しとなる。
媚薬の力で突起しきった敏感な乳首を見て、四人の口角がそれぞれ吊り上がる。さらにショーツにもハサミをいれ、ついに秘所まで曝け出すと、四人で全身を舐めまわした。
「いやぁぁ! いやぁああああ!」
獣が餌に群がる光景そっくりに、みんなで乳首をチュパチュパと吸い上げたり、ヘソやアソコを舌でなぞって、文字通りに円香のことを味わっていた。
地獄のような愛撫に円香は絶叫していた。
「あああ! やだ! やだ! やだ!」
いつ喉が壊れるかもわからない大声で、これだけ必死に嫌がっていながらも、媚薬の力は残酷なまでに刺激を生み出す。
「んぁ! ああ! あっ、あぁぁぁ……!」
喘ぎ声すら上がっていた。
乳首を舐められた快感で、甘い電流が激しく弾けて拡散する。ワレメの中でクリトリスが突起して、それを舌先にくすぐられると、頭が弾け飛びそうなほどの快楽に見舞われていた。
「おあああ! あっ、あぁ! やっ、やめて! やだ! やだ!」
喘ぎ混じりに必死に叫ぶ。
だが、どれだけ叫んだところで、この性暴力の手を止める者はいない。助けが来ることも決してない。
やがて、ついには愛野がズボンを脱ぐ。
作り物ではない、実物のペニスを曝け出すと、それを合図にみんなして足を持ち上げ、円香のポーズを力尽くで変えていた。無理にでもM字開脚の体勢を取らせた上、やはり両手も封じられたまま、円香にできることといったら、やはり必死に髪を振り乱し、意味のない抵抗モドキに死に物狂いになることだけだった。
そんな円香のワレメが割り開かれ、ついに愛野のペニスが埋まる。
「あぁぁぁ…………!」
生まれて初めての挿入にも関わらず、雷が全身を貫くような快楽に白目まで剥きそうだった。
「あっ! あああ! あっ、おあっ、おっ、あっ、あぁぁぁ……!」
一瞬にして、恐怖や抵抗による絶叫は掻き消され、その全てが喘ぎ声へと変わっていた。
「いやぁぁ! 気持ちいいぃぃぃ……!」
愛野は実に幸せそうな顔をして、満足そうに円香の肉体を眺めて腰を振る。その揺すり動かすグラインドで、樋口円香というものをゆっくりと、じっくりと味わいながら、目を細めた顔で楽しんでいた。
「あああっ! あっ、あああああ!」
喘ぎ声を上げる顔は、快楽に飲まれた気持ちよさそうなものでありながら、涙だけは流れ続けていた。
愛野は本当に幸せそうに、満たされた顔をしていた。
「さぁて、中に出しちゃおっかなー!」
射精に向けてペースを上げ、ピストンを激しくする。
すると、今まで溢れ出ていた愛液が激しくかき混ぜられることにより、グチュグチュと水音が混ざり始めた。加速していくピストンの摩擦を受けて、肉棒の表面にまとわりついた愛液はみるみるうちに泡立って、白い固まりと化していく。
しかし、いくらでも溢れ続ける愛液で、その固まりは溶かされていた。
「あっ! あぁぁぁ…………!」
円香の背中が浮き上がる。
アーチのように反り上がり、背中と床のあいだに隙間を作ったままに痙攣して、そのビクビクした腰の震えが落ち着くと、急に脱力でぐったりと、全身をだらけさせていた。
円香は絶頂したのだ。
その絶頂に合わせて愛野は射精し、遠慮なく中出しした直後の肉棒を引き抜くと、白濁と愛液の混ざったものがこっぽりと溢れ出す。
円香の目がうつろとなっていた。
心が壊れてしまったように、魂の抜けきった顔をしていた。
「あらあら、中に出しちゃって」
「次の順番のことも考えて欲しいもんだ」
「すまんねぇ?」
そんな壊れた円香を足元に、四人はまるで青春でも謳歌しているような、爽やかな顔さえ浮かべて快感を楽しんでいた。
もう、彼らの中で、円香の存在は自分達の玩具と決まっていた。
樋口円香は性処理用の人形であり、楽しく可愛がるためのペットである。
それが四人の中での位置づけとなり、次は火亜の順番に決まって二度目の挿入が始まった。
その二度目の挿入でも、雄叫びのような喘ぎ声を上げた円香は、いつしか再び背中を反り上げ絶頂していた。
…………
……
そして、浅倉透はそれを見ていることしかできなかった。
呆然とした顔で、モニターが切れた後の透はただ、無気力に天井を見上げていた。
第1話 迷宮の中
第2話 スライムの脅威
第3話 次のゲームへ
第4話 お湯渡りゲーム
第5話 ジャングルジムを登れ!
第6話 恥辱のギミック
第7話 ローション弾
第8話 ペニス畑
最終話 ゲームの結末
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