一通りの撮影が終わった後、次に凛を待っているのは肛門への指挿入だ。
「ひぃ……!」
体がビクッと反応した。
まず、最初にジェルを塗られていた。指の上に乗せた透明な固まりが、肛門の皺に置かれて塗り伸ばされる。皺の一本一本をなぞらんばかりに、ぐにぐにと揉むようにして塗り込んでくる指により、穴の滑りを良くしたのだ。
そして、次は挿入である。
ずにゅぅぅぅ………………!
入って来た。
指が真っ直ぐ突き進み、その際に起きる指と穴との摩擦が生む刺激は、凛にとっては十分な性的刺激となっていた。
中身が調べられている。
こんな屈辱なポーズを取らされて、肛門に指が入った上、残る二人にはこの辱めを受ける様子を見られている。その興奮に息を荒くしていきながら、凛は耳まで赤くしていた。身体の恥部を調査されている感覚は、たまらなく興奮を煽るものだった。
ほじくられていることで、直腸の内側にまで快楽が走る気がする。
もうアナルセックスすら覚えている肛門なので、十分に感じやすい。油断すれば声が出そうなほどに快感はせり上がり、アソコもムズムズしてきていた。もしかしたら、もう既に表面まで愛液は出て来ていて、見られてしまえばバレバレではないかと、期待と不安の入り交じった気持ちが湧いてきていた。
アソコの状態はバレたくない。
気づかれてしまっては恥ずかしい。言葉で指摘されようものなら屈辱でならない。だからこそ、秘密にしていたいものを暴かれて、辱めを受ける瞬間の興奮といったらなく、不安があればこその期待感という心境にもなってきていた。
しばらくはほじられていた。
埋まってくる指がピストンしたり、探らんばかりに回転して、ありとあらゆる角度を指腹でなぞるなどして、中身に隠れた何かを探していた。言うまでもなく、凛の肛門には何も隠したものなどなく、警官にもそれがわかってきたのだろう。
やがて指が抜かれた。
「あ……」
すっぽり抜かれ、今まであった感覚が急に消失しての、何か寂しいような気持ちが湧く。
「肛門検査は済んだそうだよ」
通訳の言葉で、もう終わってしまったのかと、一瞬ながら思ってしまった。
(いいや、悦んでる場合じゃないから……)
早く終わるに越したことはない。
それが本来のはずだ。
「で、次は尿検査だね」
「…………」
凛は唇を引き締めた。
(そっか、まだ終わってない)
恥辱の時間に続きが残っていたことへの安堵に、自分はどこまで変態になっているのかと、凛は我ながら自嘲する。
警官が尿瓶を突きつけてくる。
「薬物検査の一環だね。そこに放尿してもらうことになるよ」
「わ、わかりました……でも、あの……」
人前で放尿など出来ないのが普通である。
今頃になってポーズ取りかと、やはり我ながら思うのだが、トイレでしてもいいのに自分から人前で用を足しては、本当におかしな人間になってしまう。心の底ではおかしな実態に期待しながら、凛はトイレの許可を目で求めた。
「ここでするんだ。他人の尿と入れ替えたケースが過去にあるから、本人の尿であることを目視で確認できるようにするっていうのが、ここではルール化しているんだ」
通訳は理由を述べつつそう語る。
凛は恥辱感に顔を歪めて、しかしほんのりと浮かぶ悦びは隠すため、前髪を垂らして深々と俯いていた。
(人前で……オシッコ……)
「さあ、そのテーブルに上がって、しっかりと足を開いて? よく見えるようにね」
通訳の指示に従い、凛はテーブルの上でM字開脚を披露していた。
三人もの男の前で、陰部をあけっぴろげにしたポーズを取り、当然のように恥部に視線は集中してくる。自ら手にした尿瓶を股に宛がい、尿を出そうと意識はするが、果たしてそんな尿意があるのかどうか、今頃になって心配になっていた。
指示に従う意思はあっても、尿意がなければ何も出せない。
しかし、しばらく意識していると、やがてワレメの表面には、一滴の黄色い滴が浮かび上がった。それは密林の中に隠れて、外からは目視できない。男の視点からしてみれば、透明とはいえ尿瓶を介し、それを握る手も挟むため、たった一滴の滴など見えようがない。
だが、凛自身には確かな感覚があった。
ぷっくりと膨らむ滴の玉は、その直後に毛根に吸い込まれ、水気によって何本かの陰毛を束ねてしまう。それが尿道口を塞いでしまい、そこに出て来る次の滴は滴とならず、陰毛の束に直接吸水されていた。
尿道口にフタをされ、そのフタが吸水を行う形であった。
だが、次の瞬間である。
ジョロォォォォォォォ………………。
勢いがフタを中から突き破り、黄色い一本の放尿線が尿瓶の内側を叩いていた。じょうろにも似た形状の、口の部分から容器へ繋がる筒の中を黄色い線が通っている。上下左右の壁に触れることなく、真っ直ぐに真ん中を通った直線は、そのまま線を延ばし続けた先に着弾して、容器の内側で飛沫を散らす。
ガラスの壁に尿が当たっての水音が静かに響いた。
ジョォォォォォォォォォ…………。
凛は左手で口元を覆い隠し、羞恥に歪んだ表情を少しでも隠しながら、尿意の続く限りの放尿を行っていた。
恥ずかしさで頭が煮え立ち、脳から湯気が出そうである。
それに、この屈辱感。
……たまらない。
放尿している姿を視姦され、鑑賞物として消費される感覚は、むしろ凛の興奮を煽っている。せっかくなら、もっと尿意があればいいのにと、そんなことさえ思う凛だが、しかし永遠に続くはずなどない。
ジョォォォォォ…………。
その勢いは緩み始めた。
真っ直ぐな直線が少したるんで、微妙なカーブを成した下降線へと移り変わった。
やがて、チョロチョロと淡い勢いでしか出なくなり、そのまま尿が途切れたところで、警官が前に出て来る。手を突き出し、何かを求めて来る意図は、言葉などなくとも伝わった。
凛は警官に尿瓶を手渡す。
学校の尿検査では、容器に入ったものを袋の中に集めるだけで、気にしなければそれまでの話だったが、出したての尿を自らの手で直接手渡すのは、それなりの抵抗感があるのだった。
*
その後、渋谷凛は取調室の中で待たされていた。
服も毛布も用意されず、裸で一人ぽつんと座り、凛は部屋の中に残されている。外から鍵がかかっており、下着の一枚も無しに監禁されている状況は、やはり不安を煽ってならない。
(大丈夫、なのかな……)
凛は表情を暗くして俯いていた。
もちろん、麻薬などやった覚えはなく、枕営業さえ除けば何の問題もなく生きている。麻薬など縁がなく、どこでどう入手するかも想像がつかないのだ。
尿検査の結果も、問題はないはずだ。
頭ではそうとわかっていても、実際に無実とされるまで安心できない。
(もし、変な結果が出たら……)
出るはずがない。
そう、わかってはいるのだ。
わかっているのに、急にホテルに突入されて、今の今までにかけての、一連の流れが凛の中に不安を積み上げ、悪い想像を生み出している。出るはずのない反応が出て、薬物使用の容疑がかかったらどうしようと、何の心当たりもないのに思ってしまう。
(大丈夫……絶対、平気なはずだから……)
ここは自分を信じて結果を待とうと、凛は自分に言い聞かせる。
言い聞かせてはみるものの、胸中に漂うどんよりとしたものは、ただ思い込もうとしてみるだけでは払拭できない。悪い想像は根強く残り、麻薬容疑で捕まる未来はどうしても頭の片隅をチラつき続ける。
そして、やがて鍵の音が鳴り、ドアが開いた。
通訳の男は入って来るなりテーブルにつき、凛の目の前に座って重苦しい表情を浮かべていた。
「え……」
それだけで、凛は絶望していた。
そんな、おかしい。
だって、そんなはずはない。
しかし、通訳の顔付きは、どこからどう見たところで、言いにくい結果を伝えなくてはならない直前の、重苦しさを背負ったものだった。
「渋谷凛さん。あなたは……」
名前を呼ばれ、それだけで緊張が走る。
これから、一体何を宣告されるのか。まるで刑罰の内容を事前に知った罪人が、処刑を言い渡される瞬間を待つしかないような心境で、凛は通訳の言葉を待つ。
「このままではまずいですね」
この瞬間ほど、表情が凍りついたことはない。
「ま、まずいって、何を言ってるんですか……」
もはや笑うしかないような顔をしながら、眼差しには確かな絶望感を滲ませていた。
「あのね。彼ら、どうも手柄を欲しがっているみたいだ。どうにか君と二人きりで話せる隙を見つけて、実はここにはタイミングよくやって来たわけなんだけど、まあ単刀直入に言うと、君から薬物反応が出たことにしようとしているみたいだ」
「出たことにって……それって……」
心が冷え切っていく。
先ほどの悪い想像は、不安なあまり、つい浮かべてしまうものだった。言ってみれば暗い妄想だったのが、こうして現実味を帯びたことにより、胸に膨らむ感情は不安を通り越した絶望だった。
「でもね。まだ、手はあるよ」
何か可能性があるような言い方に、凛は瞬間的に食らいつく。
「どうすれば! どうすればいいですか!」
椅子が後ろに倒れる勢いで立ち上がり、凛はテーブルに身を乗り出していた。
「ま、落ち着いて」
「すみません。でも、そんな……私は薬物なんて……」
取り乱した自分に気づき、落ち着こうとしてみるが、胸は騒がしく鼓動を上げ、心もざわついたまま鎮まらない。何か手があるというのなら、それを一刻も早く聞きたくて、気持ちが逸るばかりである。
「普通はそうだね。誰だって、入手方法すら知らないんだ。しかし、この国では君くらいの歳で逮捕される子もいて、肝心の警察がそう思ってない。日本ではどうかなんて、心の中では考慮してないんだね」
「それで、一体どうすれば……」
「でっちあげを食い止めれば、偽りの罪を着せられることはない。僕がそのための手を打てば、君を救える。つまるところ、君が無事にここを出られるかどうかは、僕にかかっているってわけだ」
通訳の口ぶりを聞くうちに、あらぬ方向に話が読めた。
まだ決定的な言い方はしておらず、ただ単に状況からなる事実を述べただけではあるが、凛にはその微細な空気感が掴めていた。
つまり、この男は……。
その一つの未来が読めた時、凛は腹の底で覚悟を決める。
他に、道はない。
「僕が君を助けよう。その代わり、僕は君にちょっとした見返りを求めたい」
「……別に、はっきり言ってもいいですよ」
「そうかい? ああ、枕営業なんてしているくらいだもんね。では遠慮なく、君には今ここで奉仕をしてもらいたい」
心に薄暗い雲が差し掛かる。
しかし、まるで牢屋の中で人生が閉じていくかのような、今まで積み上げたものが消え去る絶望感に比べれば、今の胸中に漂う雲は、むしろ先ほどよりも薄らいでいた。
「わかりました」
「そうそう。言っておくけど、君の未来は僕にかかっている。そのことを強く肝に銘じて、一生懸命やるんだね」
通訳がにやりと笑う。
その吊り上がった口角から、凛は密かに感じ取る。
(もしかして……)
薄らいだはずの絶望感は、かすかな色で蘇る。
ひょっとして、凛を見捨てるという選択肢も、この人の頭の中にはあるのでは?
絶対的に救おうという気持ちがない。
曲がったことを許せない正義感や、いくら何でも見過ごせない気持ちから動いてくれているわけではなく、この男は女の弱みに付け込むチャンスを狙いに来ただけなのだ。
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