それら一連の出来事から、翌朝がオフになっているのは不幸中の幸いだった。
あのまま無実の罪で逮捕され、法的な処罰まで受けるかもしれなかった渋谷凛には、心に受けたショックと向き合い、整理をつける時間が必要だった。さらに言うなら、散々にセックスをする羽目にもなり、体力的にいってもライブという気分ではない。
仕事である以上、気分がどうといった問題では済まされない。
その日がライブ当日だったなら、疲れやショックを抱えていようと、歌もダンスも全てを練習通りにこなし抜き、成功に導かなくてはならなかった。そんなハードなライブを迎えずに済み、少しでも余裕を取り戻してから本番に臨めたのは、本当に良かったと思っている。
数日間の日程を終え、最後にまたオフを挟むと、その次の日が帰国となる。
あの有力者が捕まったことで、オフの日の予定は空き、自由に過ごすことにはなった翌日には、荷物を整えホテルを出た。
空港が見えてきた時、あの通訳のことを思い出す。
あの後、やっとのことで凛の衣服が戻ってくると、着替えた矢先に握手やサインを求められた。大急ぎで家に戻って、わざわざCDジャケットを持ってくることで、そこに書いて欲しいと頼まれたのだ。
別れ際は普通のファンとアイドルのようなやり取りになったが、肉体を交わした故の気持ちは何となくあった。自分はこの人に従わされ、体を楽しまれてしまったのだという感覚と、それを喜んでしまった自分への思いが大いにあった。
単なるファンとアイドルの間柄でなく、後ろめたい秘密を抱えてしまったような、一種のわだかまりがあった。
その後は職務の一環として、車でホテルまで送ってもらったが、後から聞いた話によれば、凛が相手をしていた有力者は、やはりその手の人物だったらしい。もしあの場で警察が来ていなければ、それはそれで、どこかのタイミングで凛は薬を盛られていたかもしれない。
とはいえ、全裸で歩かされたり、セックスをすることにもなり、あまり良かったこととは言い切れないわけだった。
どうあれ、あとは飛行機に乗って帰国するだけである。
プロデューサーと共に空港を訪れ、荷物を預けて次の便を待っている時、突如として数人の職員達がぞろぞろと、二人の前に現れていた。
一体、どういうわけなのか。
何の理由で急に職員達はやって来たのか。
既に嫌な予感はしているが、何よりも凛が驚くのは、その職員達の傍らに控える一人の日本人の姿であった。きっと日本語を話せないので、会話を訳してくれる誰かが必要だったわけなのだろうと、咄嗟に理解はするものの、それと同時に目を丸め、凛はそちらに視線を奪われていた。
あの通訳だった。
警察署で出会い、取調室で散々に乱れ交わしたあの通訳だった。
「申し訳ありませんが、そちらの渋谷凛さんには、一度麻薬容疑がかかったそうですね」
彼の方も目を丸め、いくらか驚いてはいたものの、すぐさま表情を切り替えて、いたって事務的に職務にあたる。
「警察により厳戒態勢が敷かれており、所定の人物には出国審査を行うように指示を受けているそうです」
職員達の言葉を訳しながら語って来る。
「そういったわけなので、渋谷凛さんにはこちらで定められた審査を受けて頂き、問題ないことを確認した上での出国をお願いしています」
「しかし、飛行機の時間が……」
「もちろん、それには間に合わせます。万が一遅れた場合も、こちらで振り替えのチケットを用意致しますので、飛行機に乗り損なうことはありません」
「なら、いいんですが。無実ははっきりしたはずでは?」
「無論です。が、警察としては万が一の想定をしなくてはいけないそうで、何もないとは思いますが、どうかご協力を」
「うーん……。まあ、仕方ないか……」
プロデューサーと通訳のやり取りで、凛の命運は決定された。
(これって、たぶん……)
過去の経験が予感させてくる。
きっと、そういう展開であると。
プロデューサーはどこまで気づいているだろう。枕営業については、既に暗黙の了解のような状態だと思うが、今まで受けた身体検査や健康診断での辱めは、果たして承知しているのだろうか。
そもそも、動画の存在に気づいているだろうか。
ネットで評判を調べるくらいはするだろう。
そうなれば、もう知られていてもおかしくなさそうな予感がした。
「行っておいで」
と、しかし何も気づいてなさそうに、プロデューサーは凛のことを送り出す。
そうして、凛は職員達に連れられる形で別室へ向かっていき、そこへ着くなりすぐに下された指示はこうだった。
「では服を脱いで下さい」
通訳を介しての指示で、真っ先に脱衣を求められた。
(やっぱり……)
予感通りであることに、凛は一種の悦びを覚えていた。
また、検査を受けられる。
そんな風に考えてしまっている。
だから構わず脱ぎ始め、下着まで外して全裸になると、やはり体毛を処理していない、生え放題のままのアソコや脇を晒していた。
「さて、また会うとは思わなかったけど」
「そうですね。私もです」
「ま、何かの縁だ。ひとまず、彼らの指示を伝えていくので、君にはその通りに検査を受けてもらいたい」
職員達は現地語で逐一通訳に指示を伝え、それが日本語に変換されて凛に伝わる。
どうやら、麻薬の所持はもちろんのこと、どこかに注射痕がないかのチェックもあるという。眠っているあいだに恋人に打たれたり、合意無しに無理矢理刺された事例があり、不本意に薬をやった可能性も含めての捜査になるため、凛は必ずしも疑われているわけではないという。
そのフォローは安心するが、それよりも凛は待ち侘びていた。
(早くアソコに指を入れたり、お尻の穴も調べて欲しい)
何を考えているんだろうと、自分でも思いはする。
だが、もうこういうことで悦ぶ性癖はすっかり根付き、凛はそれを自覚している。自らの変態性を認め、こうなったら機会さえあれば楽しみたい気持ちさえ、心の底には湧いてきているのだった。
(はあ、私ってもう、どうしようもないね)
職員達が凛の身体を取り囲む。
一人の男は正面から、さらに一人の男は背面から、二人がかりで前後を調べ、注射痕の有無を目視で確かめている。後ろには長い髪がかかっているが、それを手でどかした上、背中にもぐっと顔が近づいていた。
ドキドキする。
乳房の前まで視線が迫り、顔が表皮の表面をスライドする形で、下へ下へと動いていく。やがてアソコに到達して、毛むくじゃらの陰部を観察される頃には、後ろからは尻への視線が突き刺さっていた。
アソコとお尻が前後から、同時に凝視されていた。
(や、やば……!)
羞恥を煽る状況に立たされて、凛はすぐさま興奮していた。
早くも体にスイッチが入り、アソコがうずうずと脈動を始めていた。ヒクつきながら愛液を漏らしていき、陰毛の根元にはさっそく汁が染み込み始めていた。
(もう濡れてきちゃった……バレたら、どうしよう……)
いいや、気づかれてしまいたい。
しかし、この段階では足の隙間を広げたり、足の裏側まで細かく見たりするだけで、膣口や肛門への調査は入らなかった。恥ずかしい部分も、そうでない部分も含めて、あらゆる箇所をくまなく調べ尽くされる感覚はたまらなかったが、肝心の辱めはまだこれからのようだった。
*
しかし、すぐに職員はビニール手袋を嵌め始める。
その気配だけで何かを察して、内心で期待感を高めた凛は、顔の赤らみを徐々に強めていきながら、緊張もしてきていた。
(そろそろ、だよね)
職員同士が何かを現地語で言い交わす。
言っている内容はさっぱりだが、それを直ちに通訳が訳してくれた。
「形式上、所持品検査をすることになっている。彼らの次の指示は、穴を調べるからポーズを変えてくれっていうものだ――前屈して、自分の足首を掴むポーズをね」
「それは、恥ずかしい……ですね……」
赤らんでみせながら、内心では悦んでいた。
それを待っていたのだ。
期待に満ちた体で指示に従い、凛はすぐにでも身体を折り曲げる。途端に背後に迫る気配に、ぐっと強張り緊張しながら待ち構えると、まず手始めのように尻にべったりと手を置かれた。
「******(現地語)」
「尻毛を処理していないのか、だそうだよ」
「す、すみません……」
「彼らは君の赤裸々な事情まで知らないからね。単にだらしないと思われているようだ」
「そんなこと……わざわざ伝えないで下さいよ……」
蔑まれていると思うと余計に興奮するあたり、自分は随分とマゾになってきている。
すぐに穴に指が入ると思った。
凛はそのつもりで待ち構えていたが、次に来るのは顔が接近する気配であった。下腹部の真後ろまで迫った顔が、息のかかってくる距離感で呼吸をしている。鼻先が皮膚をくすぐり、それにぴくりと反応した凛は、ますます愛液を流していた。
「******(現地語)」
「どうして濡れているか、だそうだよ」
「えっ、私、そんなに……!?」
凛は自分で驚いていた。
濡れている自覚はあったが、まだそこまでではなく、人が目で見ても陰毛に隠れてわからない程度だと思っていた。
「******(現地語)」
「毛が明らかに湿っているそうだ」
「すみません……はしたなくて……」
凛は恥じらいで消えたくなる。
こんな形でアソコを濡らし、性的に興奮していると知れたら、自分は一体どんな目で見られることになるだろう。職員達にも、ファンである通訳にも、馬鹿にした顔をされ、とんだエロ女だと後で噂までされるのだ。
(この感覚……余計に、来る……!)
じわりと、妄想でより分泌してしまい、毛の湿り気は強まっていた。
「******(現地語)」
「随分興奮しているじゃないか、だそうだよ」
「えっと、その……本当に、はしたなくてすみません……」
実はこの状況で興奮しています。
などと、堂々と明かせるわけがない。
謝って誤魔化すのがせいぜいだったが、凛は少しずつ呼吸を乱し、息遣いさえも荒くしていた。
「************(現地語)」
「麻薬の種類について言っているね。こうも興奮しやすいのは、ある種の薬物の副作用ではないかと疑っている。君が単にエロいだけなら、きちんとそう告白した方が良いというわけだ」
通訳が状況を説明してくる。
だからといって、もちろん言いにくい。
たとえ明かすべき事情が出来たとしても、やはり羞恥心はある。どんなに性の経験を積み、裸を見せ慣れても、自分はエッチな女であり、こういう状況で濡れる人間であると宣言するのは、なかなかにハードルが高かった。
「あのっ、なんとかなりませんか?」
言いにくいあまり、凛は通訳に助けを求めた。
しかし、彼は味方をしてくれない。
「無理かな。僕に与えられているのは、単に言葉を訳すだけの立場だ。僕が彼らに何を言っても、疑惑をなくすことなんてできないよ」
「そう……ですよね……。なら、わかりました」
いよいよ、言うしかない。
ドクン、ドクン、
と、心臓が激しく高鳴っている。
言ったが最後、どんな反応をしてくるか。どんな風に思われるか。彼らは後々まで凛について語ったり、思い出してオナニーのネタにするのではないか。先々にかけての想像まで膨らんで、余計に体が熱くなってくる。
(もしかして、イクかも――)
そんな予感さえしてきていた。
いいや、それはいくらなんでも……。
「わ、私は……こういう身体検査を過去にも受けていて、一種の性癖が芽生えた女です。審査を受けると聞いた時から、全裸検査を期待していました……」
凛はとうとう宣言した。
(い、言ってしまった……もう取り返しなんてつかない……)
顔から火が出る思いがした。
「それ、そのまま訳すからね?」
「構いません。どうぞ、伝えて下さい」
通訳の確認に、凛はきっぱりそう答える。
そして、通訳が現地語を駆使して説明する。凛が口にした内容の全てをこの国の言葉に置き換えて、いかに変態チックな性癖を持ち、そのせいで濡れてしまったのかについて、長々と語っていた。
通訳は随分長く喋っていた。
日本語から現地語に変換すると、それだけ字数や単語が増えるせいなのか。
とにかく、長らく語った後、ようやく職員達は納得したらしく、伝えた結果についての報告がもたらされることになる。
「どうやら、信じたみたいだ。君が随分なエロ女で、アイドルなのにこういう状況で濡れるらしいってことをね」
「うっ、うぅ……!」
凛は顔を歪めた。
言葉はわからずとも、通訳が語り終わった直後から、周囲の空気が変わっていた。急に笑い声が聞こえるようになり、馬鹿にした風な上擦った声で何かを言い合う雰囲気は、きっと凛を蔑む内容に違いなかった。
「うん、馬鹿にされてるね。なんてエロいんだ。淫乱なんじゃないかって」
「や、やだ……うぅぅ……!」
ますます興奮が増してくる。
「さて、いよいよ指が入るそうだよ。君の性癖なら、むしろ楽しめるんだろうね」
しかも、ただ指が入るだけではない。
この時、凛は気づいていなかった。
自らの足首を掴み、頭を床に向けた体勢で、周りの様子は気配でしかわからない。目に写るのは、自分の股を通して見える職員達の足だけで、具体的にどんな道具を持っていたり、何を使おうとしているかまで、細かく把握することは不可能だった。
ビデオカメラによる撮影に、だから気づいていなかった。
凛のこの時の映像は、撮られた上に流出することにまでなってしまう。
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