通訳の男がズボンを脱ぐ。
そのベルトの金具が擦れ合い、衣擦れと共に徐々に裸になる音に、渋谷凛は緊張感を膨らませていた。枕営業の経験から、数人以上との関係を結んだり、過去の健康診断で何度も裸を晒した身だ。
今更、相手が一人増えるだけなら大したことはない。
しかし、今の凛には釈放の未来がかかっている。
きちんと満足させなければ、やっぱり先ほどの話は無しにしようと言い出してくるかもしれない。そんな可能性を感じる凛には、これから結ぶ通訳との関係は、運命の重大な別れ道に感じられた。
この男の機嫌しだいで、無罪か有罪かが決まってしまう。
その緊張感から、まるで初めてのセックスを前にしているような、どこか新鮮な様子を凛は知らず知らずに醸し出している。
「こっちへ来て、咥えてもらおうか」
通訳は椅子の向きを変え、深々と座り込む。
裸になった彼の前へと回り込み、凛は床に膝をつくことで、その立派な逸物を見上げていた。大きく立派に膨らんだものが血管を浮き立たせ、ひくひくとしながら淫気を放つ。早く快楽が欲しいと待ち構えているような、欲望を纏った空気感に当てられて、凛は早速奉仕を始める。
「れろぉぉぉぉ……」
下から上へと、まず手始めに舐め上げた。
通訳の太ももに両手を起き、竿と玉袋の境目に舌先を突き刺すことで、その出発点から顔を上へと上げていく。舌先が頂点に達したところで元の出発点に位置を戻して、凛は何度でも裏側を舐め上げていた。
れろぉぉぉ…………れろぉぉぉぉ…………。
しかし、このやり方だけでは満足しないはず。
(どういうのが好みなの?)
激しく唾液の音を立てて欲しいのか、ゆっくり回りを舐めて欲しいのか。
その答えを求めて上目遣いで見てみるが、通訳はただニヤニヤとしているだけで、具体的なことは言ってこない。
(……これで、どうだろう)
不安ながらに、次は玉袋を咥えた。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ」
玉を口内に吸い込んで、それを吐き出す。そんな風に出入りさせ、途中でペロペロと舐め込む方法に切り替えながら、もう片方の玉もチュパチュパと弄ぶ。
(お願い、楽しんで――)
凛にとって、まさに死活問題だ。
仕事どころか、人生そのものに関わるような状況に、しかし通訳がどのくらい満足しているのか。それとも本当は不満があって、もっとこんな風にして欲しいような希望があるのか。そういったことが読めないせいで、不安が募ってならなかった。
(お願い――お願い――)
どうか、どうか助けて欲しい。
その願いを込めての奉仕は、徐々に必死なものになっていく。
レロォ……れじゅぅ――。
舐めるペースは活発に、凛は懸命に唾液を塗る。
「そうそう。頑張らないとねぇ?」
通訳の手が伸びて、凛は頭を撫でられた。
(優越感に浸ってるんだ……)
相手の命運を握り、願いを叶えて欲しければ従えと、そう言って奉仕をさせるのは、きっとかなりの気持ち良さなのだろう。
(だったら、早く約束してよ)
凛の胸中には、一抹の恨めしさが芽生えた。
自分は人生が闇に閉じるか否かの不安を抱えているのに、対する通訳が満足そうにしているのは、凛としてはいい気がしない。せめて早めに約束して、確かに不正を食い止めると宣言をしてくれれば、それだけで気持ちわ変わって来る。
それなのに、通訳は己の立場を存分に味わっていた。
「僕の気が変わったら、牢屋に入れられちゃうもんねぇ?」
見上げた先には、人の足元を見て凛のことを見下しきり、蔑みながら微笑む邪悪極まりない表情が浮かんでいた。
(この人は……!)
憤りを胸に抱え、しかし凛は奉仕に励む。
「ところで、今になって言うんだけど、僕って実は君のファンでね」
突然の言葉に軽く驚く。
今の今まで、凛がアイドルである点には、最低限しか触れていない。向こうはこちらの素性を調べているので、仕事を知られていても当然、とは思っていた。
しかし、緊迫した状況で、この人は自分を知っているだろうか。ファンだったりするだろうかなど、考えている余裕はなかった。
「そうだったんですか?」
意外そうな顔で、凛は通訳を見上げた。
「うん。だから、今の状況は凄く嬉しくてね」
「あ、ありがとうございます。あの、一生懸命やりますので……」
だから、きちんと助けて欲しい。
そんな気持ちを滲ませつつ、凛はフェラチオを続けていった。
「はじゅるぅぅ……じゅるずぅ……!」
少しでも激しく活発に、凛はいよいよ奥まで咥え、思いを込めて奉仕する。唇の力を駆使して締め上げながら、舌も大きく蠢かせ、唾液でたっぷりと音を鳴らしたフェラチオで、少しでも気持ち良くなってもらおうと必死になった。
「はずぅ……! じゅずっ、ずぅぅ……! ずずずぅぅ……!」
吸い上げるようにもして、凛はカウパーを味わった。
「いっぱい、感じて下さい――じゅぅぅ……!」
笑顔まで作っていた。
ファンでいてくれて嬉しいように笑いかけ、ベロベロと舐め回す。とっくに唾液まみれになった肉棒は、少し触れただけでも糸が引くほどになっていた。凛の唾液だけで皮膚をふやけさせる勢いで、丹念に塗りつけながらまた咥え、頭をさらに上下する。
「ずぅぅっ、ずぅっ、じゅっ、じゅっ、じゅっ」
活発に振りたくった。
(お願い! 助けて!)
切実な願いを込め、そうすれば叶うかのように必死であった。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅぅ……」
そして、カウパーを吸い上げるため、先端にキスして吸引する。ストローでものを飲むような息遣いで、喉の奥まで透明汁を受け入れて、さらに丹念に舐め回す。口内に分泌される唾液の全てを塗りつけて、皮膚をふやけさせようとする勢いだった。
「ちゅうぅぅぅ……じゅむっ、ちゅるぅ……! じゅっ、じゅずぅぅ……!」
また頬張り、一心不乱に奉仕する。
無実の証明のためにはなりふり構わず、相手に満足感を与えることだけに心を費やす。
「どうですか? ちゅっ、気持ちいいですか?」
そして、通訳を見上げた瞬間、凛は軽く凍りついていた。
それを見るなり、放心しそうになっていた。
「これ、君だよね」
いつから、スマートフォンを弄っていたのだろう。
その画面を見せつけられて、ひどく衝撃を受けた。
「そ、それって……!」
凛は完全に固まっていた。
媚びるための作り笑いを浮かべたまま、それが微妙に引き攣り苦笑気味になった顔付きで、時間でも止まったように表情が固定されきっていた。
「君なんだねぇ?」
それは凛のアダルト動画であった。
今まで流出してきた映像の、黒い修正線で目だけを隠した裸の少女は、ネット上でも渋谷凛に激似であると話題になっていた。
もちろん、全ての人間が凛本人の動画だと信じているわけではない。
まさか、本人であるはずがない。仮に凛が非処女だったとして、本物が流出すればもっと大きな騒ぎになっているはず。そういった先入観に助けられ、紛れもない本人であると断ずる声は意外にも限られているが、いずれにしても、渋谷凛だと思いながら鑑賞するにはちょうどいい動画と見做されている。
もっとも、ただ全員でないだけで、本気で信じている人間も中にはいる。
「君だよね?」
通訳は繰り返し尋ねてくる。
こんなことは初めてだった。
「それはその……あの……」
面と向かって動画を突きつけ、凛本人に向かって本物かどうかを尋ねてくる人間など、常識で考えればデリカシーの欠如では済まない。
まともな人間なら、まず考える。
いざ確認してみて、動画と本人が別人だったら、その名誉と尊厳を傷つける行為は一体どれだけ非難されるか。あなたはエロ動画に出ていましたね、などと普通は聞きにくいはずだ。
聞かれる機会など、なくて当然だった。
「明らかに君そっくりだよね? 瓜二つだ」
だが、今は聞かれている。
「あの…………」
認めるのはまずい。
認めるはわけにはいかない。
だが、相手は捜査関係の人間であり、ここで嘘をついたら後で不利になるのではないかと、取調室の中だから思ってしまう。では正直に答えるべきかといえば、認めるような言質を取られることで、それはそれで今後の活動に支障をきたす結果に繋がらないか、それが怖くてたまらない。
否定にも、肯定にも、どちらにも抵抗があった。
どちらの選択にも取り返しのつかないリスクがつきまとい、どんな泣きを見るかもわからないような怖さを感じて、選ぶに選べなかった。
「どうなのかな?」
通訳の男は何度でも同じ質問を繰り返す。
決して、待ってなどくれない。
あくまでも答えを求めてくる。
「その……」
簡単に答えられることではなかった。
しかし、何かを答えない限り、通訳は引く気がなさそうだった。
*
凛は床に正座をしていた。
礼儀作法にでも則るように、しっかりと両膝を合わせた姿勢で、膝の上には粛々と両手を置き、真っ直ぐに背筋を伸ばしている。綺麗な姿勢を保つ凛なのだが、ところが顔はうつむけて、不安の陰りを浮かべていた。
自分自身の膝を見ながら、凛は前髪を垂らしていた。
(……こんなことって)
結論から言えば、凛は折れた。
結局のところ、嘘をつくことで後々不利になるのが怖くなり、正直に答える方を凛は選んだ。どちらの道も地獄に続いている気がしながら、嫌でもどちらかを選ばざるを得なかった。
そして、動画に映る激似が本当に渋谷凛本人であると認めれば、今度はそれを世間にバラすバラさないといった話に発展する。
つまり、脅されていた。
「僕はね? 無実で捕まるかもしれない君を思ってこそ、警察の不正を食い止め、何とか助けようと考えていたんだ」
それなのにエロ動画なんかに出ているとは、一体どういうことかという論調で、凛は散々に説教をされていた。
その惨めさに泣けてくる。
「……すみません」
自分は何を謝っているのだろう。
しかし、何か反論が浮かんだとしても、それを口に出すわけにはいかない。この男の機嫌を取らなければ、凛は無実の罪で牢屋に入りかねないのだ。
「あーあー。枕営業はしてるし、エロ動画は流出してるし、よくアイドルとして終わらずに済んでいるね」
言われれば言われるだけ、頭が下がる一方だ。
「でもね。まあ、今まで応援してきた上に、奉仕までしてもらっている。きちんと助けてあげるっていうのが人情だろうけど、それにはもう少しね? あと少し、色々とこちらの要求を呑んでもらわないと、見返りってものが足りない気がしてね」
「じゃあ、どうすれば……」
「そうだね。まずはきちんとお願いをしてみよう」
「お願いって……」
言われてみて凛は気づく。
説教のためか、わざわざ正座で床に座らされていたわけだったが、通訳の意図はただそれだけではない。全裸の少女を足元に置き、土下座までさせようというのが、きっとこの男の考えなのだ。
「…………」
一瞬、息を呑む。
脳裏を掠めていくのは、過去にも同じことをしてきた記憶の数々である。
「土下座とか、してみない?」
予感した言葉が実際に向けられた。
「わかりました。それでは……」
凛は頭の中に言葉をまとめ、上半身を前に倒した。
身体の角度が下へ向かっていくにつれ、前髪はさらに下へと垂れ下がり、視界には床が迫って来る。膝の向こうに両手を置き、床に額を当てんばかりにすると、それを満足そうに見下ろす視線を感じた。
凛自身は床の素材しか見ていない。
しかし、きっと優越感に浸っているはずの、これ以上なくニヤけた顔が頭に浮かび、見ればそんな表情があるに違いない予感に心は占められていた。
屈辱感が吹き荒れる。
無実の罪で取り調べを受けた上、全裸土下座までしているなど、あまりの惨めさに気がおかしくなりそうだ。
それなのに……。
(やっぱり、興奮してる……)
アソコがうずうずと、熱を溜め込んで疼いている。
今にも肉棒が欲しいかのように、膣壁を鳴動させて、その隙間から徐々に愛液を滲ませている。汗ばんだ皮膚の水気が気になるように、愛液の出て来たアソコの表面は、陰毛の根元が蒸れてきていた。
「お願いします」
凛は今、この場で頼むべきことを一つ一つ述べていく。
どうか、どうかお願いしますと、必死な思いを込めながら――。
「動画は確かに私のものです。そのことは決して、誰にも言わないで下さい。
そして、あんな動画が出回っているような、こんな私かもしれませんが……。
お願いします。助けて下さい。
今はあなただけが頼りなんです」
自分の立場が低まっていくのを実感した。
ただでさえ、全裸で過ごしている中、周りの男はみんな服を着ている状態が続いた上、さらに土下座までさせられて、自分の立ち位置が地の底に埋まったような気持ちがした。もはや自分にはいかなる拒否権も存在せず、どんな命令をされても従わなければいけないような、従属意識まで植えつけられそうだった。
「じゃあ、セックスさせてくれるね?」
この流れで、それだ。
今の凛に、断ることはできない。
「はい。どうか、私の体をお使い下さい」
「いい心がけだね。では奉仕の続きをしてもらおうか」
「わかりました。どうか……お楽しみ下さい……」
凛は身体を起こしてすぐ、改めて通訳の股座へ向かい、長大な逸物を頬張り直す。懸命なフェラチオで、少しでも満足してもらおうと激しい唾液の音を立て、一心不乱に逸物を味わうのだった。
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