前の話 目次




 美樹は裸になっていた。
 顔をまんべんなく赤らめながら、脱いだシャツとズボンをテーブルに置き、ブラジャーさえも外している。パンツを脱ぐことにはどうしても抵抗があり、最後の白い一枚だけは残してあるが、他は脱ぎきった姿で腕をだらりと垂らしていた。
 腕で隠せば注意され、しきりに圧をかけてくるため、乳房もきっちりと曝け出し、乳房を中心に視姦されている最中だ。
「可愛いねぇ? 美樹ちゃん」
 それを視姦してくるオジサンの眼差しは、明らかに性的である。
 身体測定の時、先生達の視線には、大した好奇心は宿っていない。積極的には見ようとせず、視界にありさえすれば目の保養にしなくもない、というのがせいぜいだった。それすらなく、よりまるっきり興味を持たない先生も多かった。
 やたらに見たがってくるのは、もっぱら男子達の方であり、大人からの性的な視線を浴びた覚えはほとんどなかった。
 だが、今目の前にいる中年は、美樹の裸をニヤニヤと楽しんでいる。
「恥ずかしいかい? 美樹ちゃん」
 オジサンは馴れ馴れしく名前を呼ぶ。
「はい……」
「顔が真っ赤だもんね。トマトみたいだ」
 いかに赤らんでいるかも言葉で評され、それがますます恥辱を煽る。
 オジサンの顔は乳房に近づき、至近距離からこれでもかというほどの視線を注ぐ、皮膚をじりじりと焦がされるかのような感覚に、より一層の羞恥心が込み上げ、頬の内側では火の粉が弾け続けていた。
「じゃあ、パンツも脱ごうか」
 オジサンは美樹の目の前にしゃがみ込む。
 下着のすぐ前に顔が来て、パンツをじっくりと視姦されるのも、美樹の羞恥を存分に煽ってくる。
 そして、オジサンは手を伸ばしていた。
「ひっ」
 美樹は一瞬怯え、固まる。
 腰の両側に手を触れられ、パンツのゴムに指をねじ込まれ、脱がされる直前となるものの、美樹は決して動けなかった。エッチなものを拾い読みしていた負い目はあり、さらには映像を握っての脅迫で、大人の言葉で言いくるめられてしまっては、その呪縛で抵抗しようとする気持ちすら湧いてこない。
 美樹が抱くのは、ただただ心理的な抵抗感だけだった。
 下着が下ろされていく。
 わざとらしく、ゆっくりと下げ、陰毛は徐々に徐々に見えてくる。本当に少しずつ露出したであろう茂みは、言うまでもなくオジサンの視線を浴びていた。
 陰毛を見られた恥ずかしさで、美樹はさらに赤らみを強めていた。
 下着はさらに下がっていき、ついにはワレメが見え始める。
 そして、肝心なものが全て露出しきった時には、もやはゆっくり楽しむことはせず、オジサンは一気に足首まで下げていた。

 かぁぁぁぁ…………!

 顔中が真っ赤に燃える。
 声にこそ出なくても、浮かび上がった表情が、まるで悲鳴を上げるかのようだった。
「さあて、脱ぎたてのパンツだね」
 オジサンは美樹の目の前で、美樹から脱がせたパンツを持ち上げ、これみよがしにわざとらしく弄ぶ。ピンと伸ばして引っ張って、クロッチの部分を裏返したり、ただ布切れを好きにされているだけのことが、美樹にとっては想像以上に屈辱だった。
 獲物にありつく獣として、オジサンは下着を堪能している。
 その姿を見ることが、本当に屈辱で屈辱でならなかった。
 自分はこんなオジサンなんかのために生まれたわけではない。こんな風に見ず知らずの誰かを楽しませ、堪能してもらうための体なんかじゃない。
 身体測定のような時は除くとしても、裸を見せる相手は好きな相手だけだと思っていた美樹には、この状況はショックが大きい。心を打ちのめされた挙げ句、こんな人が自分のことを楽しんでくることが、美樹のプライドを刺激していた。
「さて」
 ひとしきり楽しんで満足してか、オジサンはテーブルにショーツを置く。
「触らせてもらうよ」
 胸に手が伸びてきた。
「や……!」
 反射的に逃げそうになり、美樹は一歩後ずさるが、密室で男女二人きりの状況である。下手に逆らい、暴力を使われたらどうしよう、といった恐怖が頭を掠め、その呪縛でほとんど身動きは取れなかった。
 オジサンの両手が食らいつく。
 乳房が揉みしだかれた。
 一心不乱に踊り狂う指遣いは、触診や担任によるチェックとはまるで違い、まさしく楽しもうとしてくるものだ。エサに食らいつき、がむしゃらにむしゃぶりつく獣のように、指は活発に蠢いていた。
「うっ、うぅ……!」
 美樹は顔を歪める。
 オジサンに胸を揉まれるのは、まるでミミズの固まりでもくっついてきたかのような、たまらない嫌悪感を膨らませるものだった。
「いいねぇ? 美樹ちゃんのオッパイは。君くらいの歳なら、これで大きい方かな? うんうん、とってもいい胸だ。年頃らしい揉み心地で素晴らしい」
 称えるようなことを言いながら、オジサンはヨダレまで垂らして頬を緩める。
「さあ、あっちを向いて? お尻も見せてごらん?」
 一旦両手は離れるが、今度は尻を視姦されることになる。

 じぃぃぃぃ…………。

 と、激しい視線を感じた。
 実際に後ろを見て、オジサンの目つきを確認しているわけでもないのに、尻肌を炙ってくる熱が感じられ、恥ずかしくてならなかった。
 やがて、尻に手が置かれる。
「やっ……」
 小さく悲鳴を上げた。
 それでオジサンの手が止まるはずもなく、すりすりと可愛がらんばかりに撫で回され、美樹は肌中を戦慄させた。体中の細胞がぞわぞわして、神経が慌ただしく落ち着かない。目にはとっくに涙が溜まり、いつ頬に流れ出してもおかしくなかった。
「おや?」
 その時、オジサンの手が尻から離れる。
 まるで何かに気づき、そちらに意識を向けたかのような声だったが、この状況で何があったというのか想像がつかない。
 何もわからないまま、一度は止まった辱めの時間は再開され、美樹はまだまだ嬲られ続けることになる。

     *

 高木竜司は驚愕していた。
 竜司が再び河川敷を訪れ、管理小屋の前までやって来たのは、アダルト雑誌の一冊や二冊くらい、勝手に持っていってしまおうと思ってのことだった。わざわざ段ボールに詰めてまで外に放置している以上、ゴミに出す予定に違いない。
 そういった目論見で来たはいいが、既に段ボールは消えており、残念ながら一冊たりとも手に入れることはできなかった。
「ちぇっ」
 きちんとゴミに出されるなりしたのだろう。
 消えてしまったものはどうにもならない。
 段ボールのあった場所を未練たらたらに見つめながらも、そっと立ち去ろうとした竜司は、次の瞬間になってふと気づく。
 戸に数センチの隙間がある。
 そこにある光景が視界に飛び込んだのは、たまたま隙間に気づいたせいでの、ほとんど偶然だったのだが、しかし気づいたからには唖然として目を奪われていた。

 ――先導美樹が裸になっている。

 何故、どうしてそうなっているのか。
 状況はわからないが、隙間の向こうに見えるのは、どう見ても美樹の後ろ姿だ。剥き出しの背中をこちらに向け、そしてちょうど尻を隠さんばかりの位置に、大人の禿げ気味の後頭部があるのだった。
 つまり、オジサンが美樹を裸にして、尻を近くから凝視している。
(う、羨ましい……!)
 まず真っ先に、そんなことを思ってしまった。
(いや! いやいや! これはさすがに、助けるとか警察を呼ぶとか、そういったことを考えるべき状況であるからして、いやしかしだね……)
 竜司の心の中で、良識と欲望がぶつかり合う。
 美樹は立派な友達であり、恋愛的に惚れてはいないが、身内が可哀想な目に遭うというのは見過ごせない。
 なんて正義感がないでもないが、竜司のそれはさほど強いものではない。
(そうだ! まずは状況の観察を!)
 などと、あっさり欲望に負ける程度のものだった。
 竜司は隙間に目を近づけ、今度はきちんとわざわざ覗き始めていた。
「おや?」
 その時、オジサンが急に何かに気づいたようにこちらを振り向き、それと目が合うことでぎょっとする。バレたと思い、心臓が弾み上がったが、次の瞬間にはオジサンはニヤニヤと頷きながら、口だけを動かし何かを伝えてきていた。
 それが何を言っているのか、竜司にはわからない。
 ただ、オジサンの同士を見るかのような熱い眼差しと、優しげな表情から察するに、快く覗かせてくれる心意気だけは伝わって来た。
(……いや……い、いいのか? しかしだね。状況の観察をしなくてはならないからして、つまりこのまま様子を見るべきであり、ここは大人しく覗いておくとしよう)
 本人ですら意味のよくわかっていない、妙にグダグダな自己弁護の末、竜司はそのまま覗きに徹していた。
「さぁて、今度はどうしようかなぁ?」
 わざとらしい声をかけながら、オジサンは美樹の向こう側へと回り込む。
 今度は美樹の身体が手前側に、オジサンの身体の方が隠れて見えない。そうなることで、今まで見えなかった剥き出しの尻が目に飛び込み、竜司はそれに目を奪われた。
(うおぉっ、なかなか!)
 美樹の尻はぷりっとしていた。
 剥きたてのゆで卵のようにツヤツヤと輝かしく、それでいて肉厚で綺麗なカーブを成している。大きくなったら、将来はもっと良い尻になるのだろう。
「ちょっと向こうへ行こうね」
 親切なことに、オジサンは美樹の位置を竜司に近づけてくれた。
 後ろへ数歩下がるようにさせ、竜司にとっては尻が手前に近づいてくる形となり、魅惑のカーブがより良く見えるようになっていた。
 そして、次の瞬間だった。
「ひゃあっ! な、なにを……!」
 美樹は悲鳴を上げていた。
 オジサンは美樹に目の前にしゃがみ込み、何やら顔を近づけていた。そして上がった悲鳴から察するに、あれは間違いなくクンニである。
「あっ、あぁ…………!」
 美樹の尻がくねくねと動き始めた。
 逃げたいように左右に振られ、しかしオジサンはそれを両手でがっしり捕らえ、腕力で押さえ込む。動かないようにさせた直後に、じゅるじゅると、ベロベロと、たっぷりと唾液を使って汚らしく舐め回す音が聞こえ、やはりクンニが始まっていることは確かであった。
「あっんっ、んぅ……んぅぅ…………!」
 その刺激に美樹の身体は反応している。
(感じてますなぁ! エロスですなぁ!)
 美樹は腰をくの字に引っ込めて、太ももを引き締めてもいた。そんな身体の反応は、竜司にしてみれば尻がくいっと突き出てきたも同然で、見るに素晴らしい景色となる。
「んっ、んぁぁ……! んぁああ…………!」
 わざとらしいまでの舌使いの音に、心なしか美樹の喘ぎ声のトーンが上がっている。
「んぅぅぅ…………んぅ……んぁぁ…………!」
 色気ある声を聞いているうち、興奮で鼻息を荒げていく竜司は、その内股の様子に気づいていた。しきりに引き締めたり、モゾモゾと動かしている太ももには、薄らとした愛液の痕跡が輝いていた。
 美樹は今、どれだけ感じているのだろう。
「んはっ、んふぁぁ……!」
 淫らな声を出しながら、一体どんな表情をしているのか。

「んぅぅ…………くあぁぁぁ………………!」

 その時、美樹は全身をぶるっと震わせていた。
 一瞬だけ身を屈め、くの字に縮こまったかと思いきや、その次の瞬間には大きく仰け反り、顔まで天に上向けていた。
 天井を見上げながら、痙攣のようにしばらく震える。
 やがて、すっと落ち着きながら、ぐったりと肩を垂らして脱力している様子から、美樹が絶頂したのは一目瞭然だった。
(凄い! 絶頂とは! ファンタジーではなかったんだ!)
 興奮しきってズボンの内側を硬くしているのはもちろんだが、竜司は加えて好奇心に目を輝かせ、大発見でもしたように歓喜していた。
 絶頂の存在は知っていたが、それが現実にありえるものか否かは、竜司にはあまりよくわかっていなかった。
 だが、目の前にあった美樹の反応からして間違いない。
 あれを絶頂と言わずして、一体なんと言うのだろう。
「疲れちゃったねぇ? テーブルに上がってごらん?」
 オジサンは美樹に優しく語りかける。
 まるでベッドに寝かせてやるように、美樹をテーブルに上げて仰向けにさせたわけだが、なんと嬉しいことか、テーブルはやや低い。しゃがみながら覗いている竜司にとって、少し姿勢を高めるだけで、横向きになった美樹の裸を見放題なのだ。
 こちらに気づく様子のない美樹は、一体どんな顔をしてか、おそらく天井ばかりを眺めている。乳房の膨らみに目をやると、横乳のカーブが観察できて、美樹の詳しい形状がわかってしまった。
 仰向けの姿勢なら、自重で潰れているのかもしれないが、あの薄らとした茶碗未満の膨らみなら、そう変形の量もないだろう。きっと、普段からああいった曲線を成しているのだ。
 竜司は美樹の乳房を脳に焼き込み、しっかりと記憶する。
「んぁぁ……あぁ…………!」
 美樹はまた喘いだ。
 じゅるじゅるというヨダレの音から、クンニが再開されたことが耳に伝わる。見れば股の方ではオジサンが顔を埋め、アソコを一心不乱に舐め回しているのだった。

     *

 美樹はアソコを舐められていた。
 最初に舌が触れてきた時、まずは嫌悪感からぞくりとして、背中に氷でも詰まったように寒気まで走ったはずなのに、ベロベロとやられるうちに気持ち良くなっていたのだ。
 気持ち悪かった。
 見知らぬオジサンなんかに唾液を塗られ、それが皮膚に浸透してくるおぞましさといったらない。ナメクジの体液でも塗られるくらいの拒否感に、壮絶なまでに顔が引き攣り、それだけの生理的な拒否反応にも関わらず、性感帯は機能していた。
 おまけに美樹は絶頂まで味わったのだ。
 刺激を感じるうちに、だんだんと下腹部の奥で何かが膨らみ、いつか弾けてしまいそうな予感に駆られた。目には見えない風船が膨らみ続け、破裂の瞬間を待っているかのような、怖いような感覚に晒されて、ついに本当に弾けた瞬間、美樹の頭は真っ白になっていた。
 仰け反りながら、全身を震わせていた。
 体中に激しい快楽の電流が流れていた。
 それから、ぐったりと力が抜けた時、美樹は自分の股の有様に気づいていた。水気を吸った皮膚に空気が当たれば、その部分がひんやりする。その感覚から、内股がいかに愛液で濡れているかを悟った時、もう悲しいやら悔しいやらで、何の言葉さえも出なかった。
 オジサンの唾液だけでは、ここまで濡れるはずがなかった。
 そして、その後はテーブルに上げられて、オジサンはクンニを再開している。
「疲れただろう? 休むといい」
 とでも言わんばかりに招き、その通りに横たわると、オジサンは美樹の両足を持ち上げてきた。肩に太ももを乗せる形で、股のあいだに顔を入れ、改めてワレメを上下にベロベロとなぞり回してくるのだった。
「あっ、あふぁっ、あぁ…………!」
 そして、感じてしまった。
 気持ち悪いはずなのに、しかしオジサンの舌によって生まれる刺激は、確かな甘い電流を生み出していた。
「美樹ちゃん? 気持ちいいんだね?」
 オジサンは語りかけてくる。
「んぅ……んあぁ…………!」
「いけないね。こんな知らない人に色々されて」
「んっ、んっ、んっ」
「感じちゃうだなんて、それは君がエッチでいけない女の子だからだ」
 クンニのあいまに口を離して、その都度吐き出されるオジサンの言葉は、美樹を悪い子として扱うものだった。見知らぬ人から愛撫を受けているのに、それで気持ち良くなる方にも落ち度はあるように言ってくる。
 美樹はそれを真に受けてしまう。
 元々、見咎められた負い目から、強くものが言えない状態に陥ったまま、裸にされて追い詰められ、そんな今の弱った美樹にはどんな言葉も効きやすい。
 冷静に考えれば、脅迫で子供を脱がせ、こんなことをしてくるオジサンこそ、立派な犯罪者であるとわかるだろう。
 だが、感じさせられている最中の、恐怖や羞恥に駆られた美樹には、そんな冷静さを兼ね備える余裕はなかった。
「ところで」
 クンニのあいま、オジサンは言う。
「あれは誰だろうね」
 あからさまな視線を送り、それに合わせて美樹も自然と目を向ける。オジサンが見ていた方向は、ほんの数センチの隙間が空いた出口であった。
 真っ先に頭を掠めるのは、担任にチェックを受けた際、誰かに覗かれた出来事である。
 そして、今回もまた、何者かの目があった。
 誰かはわからない。
 知っている人なのか、まったく見知らぬ人なのか、小さな隙間から目だけが覗いているせいで、顔の判別もまともにつかない。
 しかし、一体いつからか。
 今までの痴態を確かに見られていたことがわかって、美樹の心に羞恥心が蘇る。絶頂で頭が真っ白に、その後に再開されたクンニでも、快楽に翻弄されることの方に忙しくて、他になんの心理も働く余地はなかった。
 それが今、小さな隙間をこじ開けんばかりにして、急に膨らむ恥ずかしさで、瞬く間に頭が沸騰しそうになっていた。
「いやぁぁぁ…………!」
 その悲鳴は快感による喘ぎでもあり、覗かれていることへの絶叫でもあった。

 プシャァ!

 美樹は潮を噴いた。
 人生二度目の絶頂は、一発きりの噴水として噴き上がる飛沫であった。

     *

 ようやく全てが済む頃には、美樹はぐったりと疲れ果てていた。
 クンニに飽き足らず、全身を何十分もかけて撫で回された後だった。乳房に吸いついたり、アソコや肛門を視姦したり、尻を揉みしだいたりと、飽きずに続けるタッチに体中を余すことなく穢されて、オジサンの手垢まみれになった体を今すぐシャワーで洗い流したくて仕方がない。
 しかも、最後には写真を撮られた。
 カメラを向けられ、撮られるという恐怖にまず強張り、逃げたり隠したりする反応ができないうちに、パシャリとシャッターを押されてしまった。
 そのまま何十枚と撮られ続けて、ようやく帰っても良いとの許しを得られた後、暗い顔で俯きながら服を着て出て行った。
 言うまでもなく、覗いていた何者かはとっくに姿を消していて、戸を開いた外には誰一人の気配もない。遠くの方から、まだ子供の遊んでいる声が聞こえてくるだけで、同じ河川敷でも管理小屋周辺は無人であった。

 この体験は美樹のトラウマとなり、何週間も、あるいは何年も先まで尾を引くこととなる。
 だが、こうした性被害に、この時代の世間は無頓着だ。
 もしもオジサンの起こした事件が発覚して、彼が法的な処罰を受けることがあったとしても、新聞やニュースではこうのように言われることになる。

 性的なイタズラ――。

 虐待や暴力でなく、イタズラと称される。
 それも、美樹が勇気を出して打ち明けて、警察への相談を行った上、オジサンが実際に逮捕された場合の話となる。
 美樹が口を閉ざしていれば、この事件は発覚などしない。
 そして、性被害を打ち明ける勇気は、誰にでもあるものではないのだった。



 
 
 

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