作品一覧



 前編


 妹が唐突に倒れた時、さしもの司波達也も動揺しかけたが、直後に頭を冷却して、冷静かつ迅速な対応を行った。
 速やかに原因を探り、何者かによる攻撃ではないかを確認する。
 幸い、他者による干渉のせいではないらしい。
 すると、次に考えられるのは過労や病気の類いであり、今回深雪が倒れた原因は後者であった。達也は直ちに妹を連れ帰り、部屋のベッドに寝かせるが、ここで厄介になるのは、深雪のかかった病気が過去判例のない新種の病気という点だ。
 無論、早急な解析を行ったのは言うまでもない。
 魔法師の肉体に干渉して、四肢の神経伝達を阻害する――つまるところ、体が動かなくなる病気であることを突き止め、その治療方法にも大体の当りはつけたが、残念ながら完治するまでは数日かかる。
 それまで、学校は休まざるを得ない。
 身動きもままならない妹を一人にするなど、兄としてできることではないので、なし崩し的に達也もそれまで休むことになる。
 ひとまず、ここまではいい。
 病人の世話をできるように、いつでも様子を見てやれる状態を作ったのは、深雪への対応として当然のものと言える。
 しかし、体が動かないのだ。
 既に治療は行っており、時間経過によって少しずつ元に戻っていくとはいえ、今の深雪はまだ自由に起き上がったり、着替えを行うこともできない。
「お兄様……」
 妹の様子を見ると、とても申し訳なさそうな表情をしていた。
「具合はどうだ? 深雪」
「はい。どうにか……。
 ですが、お風呂も、着替えもできないなんて……」
 自分で自分の面倒を見られないほど、歯がゆいことはないだろう。
「深雪、それは仕方ない。
 今はどれくらい動ける?」
「そうですね。手足は少し、上がります。
 ですが、立ったり、体を起こしたりは、まだ……」
「そうか。明日も歩けるかどうかはわからないな」
「……すみません」
「謝ることはない。妹の面倒を見るのは当然だろう?」
「ですが、そのためにお兄様までお休みされて。
 風紀委員の仕事も溜まってしまうのでは……」
「なに、深雪の方が大事さ」
「お兄様……」
 深雪は顔を赤らめる。
 ところが、急に唇を尖らせて、ぷいっと顔を背けてしまう。
 何が何だかわからない。
「お兄様、それはかえってわたしに気を遣わせています」
「そうはいっても、深雪。
 その症状は……」
「わかっています。ですが……」
 ですが、何なのか。
 その先を深雪はなかなか言わない。
 しかし、言おう言おうと、しきりに口を開閉させているので、達也は深雪の言葉を待つ。すると深雪の口から出てくるのは、驚くべきものだった。
「着替え、させて頂けませんか?」
「着替えって……!」
 もちろん、状況はわかる。
 手足は少し持ち上がるくらいがせいぜいで、着替えなど一人ではできないだろう。他人に世話をしてもらう必要があるのは当然だが、達也は男であり、深雪は年頃の少女だ。
 思うところがあり、気軽には手が出せない。
 人並みの躊躇というものがある。
「お兄様? お兄様が学校をお休みしてまで気遣って下さるのは嬉しいです。
 深雪はとてもとても嬉しく思います。
 ですが、半端な優しさだけではかえって気苦労を背負うものです」
 深雪の指摘ももっともか。
 誰しも、自分のせいで人に迷惑がかかったら、大なり小なり気に病むものだ。症状からして当然だから、といった合理性ばかりでものを考えていたが、どうやら心情を汲み取ることを忘れすぎていたらしい。
「けどな、深雪。
 それで着替えというのは、余計に……」
 かえって、人に手を焼かせる。
 いや、わかる。
 深雪は今、着替えも身体の清掃も、何もかもを人に頼まざるを得ない状態だ。遅かれ早かれ、着替えについての相談はするに決まっている。
「いっそ、着替えの世話までさせてしまう方が、かえって清々しいと言いますか。
 申し訳のない気持ちばかりを感じずに済むと思うのです」
「そうだろうか」
 いささか疑問はある。
 本当にそういうものだろうか、と。
「ええ、きっとそうです。それに、お風呂にも入れませんから。
 タオルで拭くだけでもいいので、お願いします……」
 恥ずかしそうに、赤らみながら頼んでくる。
 本人がそこまで言ってくるのであれば、兄として徹底的に面倒を見るしかあるまい。
「なら、やるぞ。深雪」
 妹の上から布団をどかす。
 学校から連れ帰った後、深雪はまだ制服から着替えていない。帰宅直後に行ったのが様々な解析と治療法の考案だったので、この数時間のあいだ、着替えや食事といった基本的な問題について頭は回っていなかった。
「背中、浮かせるか?」
「はい。少しなら」
 背中とベッドのあいだに隙間を作るくらいできるらしい。
 深雪の上半身が少し上がって、達也はその下に手を差し込む。深雪の背中に手の平を押し込み、上半身を起こしてやると、まずは緑色のブレザーから脱がせてやる。
 ノースリーブのワンピース型から、二の腕が剥き出しになった。
 次はネクタイか。
 深雪の首に手をやって、結目を引っ張りほどいてやると、いよいよ素肌を曝け出す時がやってくる。
 スカートと上下一体の、このワンピース型を脱がせたら、ストッキングはあれども下着姿になってしまう。下着自体はいつも見ている。CADの調整の際、検査着に着替えた上、その検査着も脱いで下着を晒す。
 だが、その時の達也はいつも感情を差し挟むことなく、あるがままの事象を認識する。観察し、分析し、記録するためだけの存在として、達也は調整作業にあたる。
 しかし、今はCADの調整の時ではない。
「まあ、薬のこともあるからな」
 などと独り言を言う。
「……お薬、ですか?」
「ああ、実はさっき、効果的な成分に検討がついたんだ。
 それをどうやって吸収すれば効率がいいのかも……」
 きっと妹は、錠剤を水で飲むことを想像しているだろう。
 残念だが、そうではない。
 症状を少しでも早く良くするには、別の方法で吸収してもらう必要がある。
「効率って、何か特別な方法があるのですか?」
「まあ、そうなんだが。
 その話はまた後にしよう」
「は、はい。
 まずは服、ですよね……」
 脱衣に話が戻った途端、深雪は恥ずかしそうに俯いてしまう。これから起こることを思ってか、既にどことなく目を潤ませ、頬を赤らめながら前髪を垂らしている。
 ワンピースといっても、首にはネクタイを通す部分があり、そこはワイシャツと同じような構造となっている。着脱用のボタンもあり、達也はそこへ手を伸ばす。うっかり乳房に触れないように気をつけながら、上から順に外し始めた。
 ボタンを外しやすいため、いつしか達也はベッドに上がり、深雪の真正面に座っていた。
「お、お兄様……」
 深雪の恥じらった顔は、横へと背けられてしまう。
 ボタンを外すにつれ、純白の下着が見えて来た。
 深雪らしい清楚な純白が胸元にちらつき、ボタンを外すところまで外して左右に広げると、ブラジャーは完全にあらわとなる。
 達也は深雪をゆっくりと押し倒し、ワンピースを下へと引っ張った。この方が脱がしやすいと思ってのことだったが、押し倒す直前の深雪の顔は、ますます赤らんでいた。
 上から少しずつ、肌の露出が増していく。
 深雪自身も、背中を少し浮かせたり、尻を微妙に持ち上げるなどして、達也が脱がしやすいように意識している。しかし、その顔は始終横に背けられたままであり、決して達也を向くことがない。
 脱がせきり、いよいよ下着姿となった。
 上下どちらも真新しく、生地がよれてもいなければ、糸のほつれも見当たらない。光って見えるほどの白さには、水色のフロントリボンが付いていた。一つはブラジャーのカップのあいだに、もう一つはショーツの真ん中に、ささやかに行われた飾り付けは、豪奢になりすぎないことでかえって気品を醸し出す。
 この先は、CADの調整でも、脱いでもらったことはない。
「……深雪」
「はい。覚悟は、できています……」
 乳房を出すことになるのだ。
 恥ずかしさの覚悟は、当然しているというわけか。
「もう一度起こすぞ」
 先ほどのように背中に手を入れ、腕力で押し上げる形で、一度上半身だけ起こしてもらう。達也はその背に回り、艶やかな髪をどかしつつ、ブラジャーのホックを外す。
 いきなり見てしまわないよう、後ろから脱がせているのは、達也なりの気遣いのつもりである。
 肩紐に触れ、それを片方ずつ下げてやる。
 引っ張り抜くようにして、ブラジャーを取り去った。
 その瞬間に、深雪の肩はぴくりと動く。腕が持ち上がろうとする気配を見せるも、思うようには上がらないらしい。もしも自由に動いたら、反射的に胸を覆い隠したのだろう。もっとも、その時はそもそも妹を裸にする真似などしていないが。
「深雪」
 名前を呼びながら、改めて押し倒す。
 頬が歪んでいた。
 恥ずかしさのあまり、達也の方を直視できずに、横顔だけを向けている状態で、真っ赤に染まった頬が固く強張り歪んでいる。頬の内側ではきっと歯をきつく食い縛っており、耳さえほんのりと染まりかけになっていた。
 そして、見れば美しい乳房がある。
 さしもの達也も、その芸術的な美乳に目を奪われ、一度は視姦してしまう。
 きめ細やかな肌がふっくらと、可愛い山のように膨らんで、いかにも柔らかそうに見えるのだ。指を押し込めば、一体どれほど柔らかく潰れてしまうのか。見るに想像を掻き立てられるだけでなく、ツンと突起している桃色の乳首も、鮮やかな彩りが上品だった。
 性的な興奮を抜きにしても、芸術として魅入りそうだ。
 しかも、この後はショーツまで脱がせることになる。
「こっちも、脱がすからな」
 達也はショーツに手を触れる。
「……はい。お願い、します」
 声が震えていた。
 そこに恐怖や不安といったものは感じられない。
 達也に伝わって来た感情は、ひたすらに緊張、そして羞恥である。乳房を見られているだけでなく、秘所まで視線に曝け出されようとする状況に、全身が硬くなっているわけだった。
 指をゴムの内側に忍ばせると、達也はそのまま下げ始める。
 妹の下着を脱がせている状況に、心臓がどくりと鳴り、股間にも血流が集まっていく。そして脳裏にチラつく想像は、頭から振り払うべきものだった。
 深雪の秘所が見えてくる。
 陰毛の三角形は薄らとしていて、毛の一本一本が細かった。てっきり、深雪だろうと剛毛の可能性があると思っていたが、こんなところさえ美しい。艶やかな毛並みで指通りが良いことは、触れるまでもなく見てわかる。
 ヘラで彫り込んだような一本筋も芸術的だ。
 達筆な書道家は『一』という漢字さえ美しく書いてみせるが、ならば深雪の持つ『一』も、芸術家が手がけたようなフォルムである。
 心から魅入ってしまった達也は、ふと我に返ってやるべきことを思い出す。
「お、お兄様……。
 その……」
「あ、ああ。早めに済ませよう」
 せめて速やかに済ませるのが深雪のためと、すぐさまタオルを手に取った時、達也は己の迂闊に気がついた。
 ショーツを、始終握りっぱなしにしていた。
 脱がせてから今の今まで、こともあろうに深雪の視界に入る位置にショーツを握り、その上で性器や乳房に見惚れていたのだ。
「すまない。深雪」
 達也は慌ててショーツを置く。
 我ながら、らしくない。
「いえ、深雪は嬉しく思います」
「嬉しい?」
「その、ですね。ただ嬉しいというのは語弊があって。
 お兄様でも、少しは動揺して頂けるようなので……」
「そ、そうか。深雪は綺麗だからな」
 紛れもない本心を口にする。
「お兄様……」
 そこで深雪に浮かんだ朱色から、恥じらいとはまた少し違うものが感じられた。いや、ただでさえ赤面しきっているのに、これ以上どこが赤くなったのか、それは達也にもわからない。何となく、少し違った感情が見え隠れしたような気がしたのだ。
「体は拭くが、髪は我慢してくれ」
「はい。今日は、仕方ありません」
「拭くからな」
「……はい」
 深雪が目を瞑る。
 そこへ達也は濡らしたタオルでまずは末端から拭き始め、指の一本ずつを丁寧に済ませていく。爪のあいだも意識して、水かきのような部分も擦り、表裏もまんべんなく拭いてやり、手首から肘へかけてもやっていく。
「どうだ? 痛くないか?」
 強い摩擦を与えれば、皮膚に負荷を与えるはずだ。
「そうですね。もう少し加減を……」
「すまない。このくらいか?」
「はい。ちょうどいいです」
 深雪に様子を尋ねることで、加減を調整していって、両腕とも済ませたところで、肩周りや鎖骨を拭く。しかし、急に乳房に触れることは避け、達也は腹部を拭き始めた。
 理性を弾けさせてはいけない。
 ヘソの穴まで拭き取ると、続けて足へ移っていく。先ほどのように指の一本ずつにかけて丁寧に、表裏やかかとの部分も余すことなく磨き抜き、足首からふくらはぎにかけて進めていく。すねを拭き、膝を拭き、太ももに触り始めたところで、達也は己の興奮を自覚した。
 性的魅力のある部位に触れていれば、股間が反応しないはずもない。
 達也は己の暴走をぐっと堪え、さも平然とした風を装いながら、鼠径部のラインでさえも拭いていき、いよいよ乳房に目を移す。
 理性や良識の観点から、触れるのが躊躇われる部位である。
 かといって、ここまでしておきながら、乳房を無視するというのも一貫性に欠ける話だ。より強い理性を持つ必要が生じてくるが、やるからには隅々まで、余すことなくやっていかなくてはならない。
 達也は新しいタオルに取り替えて、乳房を拭き始めた。
「んぅ……んっ……」
 深雪の口から声が出る。
「痛かったか?」
「いえ、痛いというのではなく……」
「?」
 なら、何だろう。
 しかし、深く追求することはせず、達也は清掃に専念する。タオル越しに感じる乳房の感触は、実に柔らかく心地が良い。触れれば触れるほど指の細胞が解けていき、いつしか根元から先がなくなってしまいそうなほど、深雪の胸は魅惑的な感触だ。
 綿かマシュマロを揉んだように柔らかい。
 それでいて、少しでも力を抜けば、すんなりと元の形状に戻っている。
 乳首を擦った時だ。
「ひゃ……!」
「どうした?」
 痛かったのかを心配して達也は尋ねる。
「き、聞かないで下さい!」
「あ、ああ……」
 怒るものなので聞かずにおくが、タオル越しの指先を駆使して乳輪をぐるぐるなぞり、乳首を拭いていると、深雪は妙に悩ましげな顔をしていた。苦しそう、というのは少し違うが、苦しむ表情に似ている気もする。
 深雪は顔をしきりに動かしていた。
 右を向き、左を向き、呼吸を荒っぽく乱していた。
「深雪……?」
「大丈夫です……」
「次は後ろだ。自分でうつ伏せになれるか?」
「どうでしょう。やってみます……」
 深雪は身体を捻り、姿勢を変えようとしてみるが、肩が持ち上がったと思いきや沈んでしまう。どうやら、仰向けからうつ伏せに変わることはできないようで、よって達也が補助することで後ろ向きになってもらう。
 背中にかかった綺麗な髪をどかしてやり、背中を拭く。
 無論、うなじから骨盤にかけ、余すところなく丁寧にやっていくが、そのあいだも絶えず達也の視線を吸い取って、釘付けにし続けているのは、深雪の魅惑的な尻だった。白雪のように美しい肌が織り成す曲線が光って見えるのは、決して色白のせいだけではないだろう。
 優れたものは光って見える。
 いわば錯覚や例えであり、本物の光などないが、あたかもスポットライトが当たっているように、達也はどうしてもそこに注目してしまう。
 やがては尻を拭く瞬間がやって来る。
 乳房と同様、理性を総動員した。
 お尻もまた柔らかい。
 努めて精神の均衡を保ち、単なる皮膚に接触しているだけだと、欲望を切り捨てようとしているが、これが中々上手くいかない。感触を味わおうとする気持ちはどうしても抑えきれず、指がいささか必要以上に食い込んでしまっている。
 堅牢な精神の内側に、それでも侵食してくるかのように、お尻を触れば触るほど、心の中身が蝕まれる。
 これ以上はまずい。
 達也はそこで清掃を切り上げるが、しかし性器と肛門が残っているのだ。
 さて、深雪の手の可動しだいでは、本人に任せることも可能なのだが。
「最後まで……お願いします……」
「いいんだな」
「むしろ、お兄様以外の人には、こんな面倒を見てもらいたくありません」
「そうか。なら、まだまだ我慢してもらうからな」
「我慢だなんて……。いえ、我慢ですけど……」
 その微妙な言い回しの意図は掴みかねたが、ここから先は胸や尻よりも恥ずかしくなるはずだ。
 ぐっと緊張の高まる気配が伝わって来た。
 深雪は今にも覚悟を決め、羞恥に耐え抜くために心を固めている。きっと防壁を固めるような気持ちで、恥ずかしさの炎に備えて心の準備を整えている。
 そんな深雪の下半身も、達也は拭き始めるのだった。





 中編


 深雪は四つん這いになっていた。
 手足を大きくは動かせないので、うつ伏せから四つん這いになるにも補助が必要で、姿勢を変えるだけで手伝ってもらうのは、何とも言えない気恥ずかしさがあった。
 もちろん、裸の恥ずかしさが一番だ。
 まさに顔から火の出るような思いを味わっているが、ちょっとしたことで人の手を借りなくてはいけないのは、きっと普通に服を着た状態であっても、何とも言えない無念のようなものがありそうだ。
 しかし、こうしてポーズを取ってみたなら、もうそのような気持ちは忘れていた。
「お兄様……っ」
 やはり、恥ずかしさの方で気が逸る。
 喋れば震えた声が出てしまうので、実はなるべく口数を減らしていた深雪だったが、ここまで来ると訴えかけずにはいられない。
「恥ずかしい……です…………」
 心の底からの気持ちを伝え、深雪はそのままシーツを噛み締めた。
 尻を高らかにしているのだ。
 一度ポーズを取ってしまえば、姿勢の維持はできるらしい。
 だが、今はそんなことはどうでもよく、アソコや肛門が丸見えの状態であることの方がよほど重大だ。
 ベッドシーツに顔を押し込み、シーツを食い千切らんばかりにしている深雪の下半身は、達也の指示でなるべく高く反り上がっている。
 膝は肩幅ほどに開いていた。
 この上、達也はベッドに上がっており、お尻のすぐ真後ろに陣取っている。
「我慢してくれ、深雪」
「わかっています……! わかっていますけど……!」
 元はといえば、自分で言い出したことなのもわかっていた。
 着替えさせて欲しい、体も拭いて欲しい。
 面倒を見て欲しいと申し出たのは深雪の方だ。
 達也はそれに従っているだけ。
 わかっている。わかっているが。
 深雪自身でも思ってみなかったほどに羞恥心は膨らんで、頭の内側が驚くほどに熱くなっている。頭部が今にも発火しそうな、火災でも起きそうな、大事件の起きる直前に立たされたような感覚に見舞われて、それを訴えたくてたまらないのだ。
「恥ずかしい……です……!」
 どんな重大事件が起きている真っ最中か、伝えたくてたまらない。
 わかって欲しくてたまらない。
「拭くぞ。深雪」
「ひぁぁ……!」
 タオル越しの指に撫でられ、深雪はますます深くシーツに顔を埋め、食い縛る力を強めていた。
 ワレメをなぞられている。
 達也の指がアソコに来ている。
 もはや、それ自体が大事件のようなもので、頭が燃え盛る感覚に加え、さらに事件が重なって、深雪はパニックに陥りそうだった。
 肉貝が丁寧に拭かれている。
 恥部を見られる恥ずかしさ、触られる恥ずかしさに加え、さらに人に下の世話をしてもらう気恥ずかしさまで重なっている。
 しばらく擦り付けられたタオルは、やがて離れていくが、余韻がいつまでも残る。
 明日になっても、明後日になっても、兄に拭いてもらった感触を如実に思い出せそうだ。
「次で最後だ」
「は、はい……最後って……!」
 あとは一箇所しか残っていない。
 その部位を拭かれるとわかった時、深雪は先んじて顔も耳も加熱させ、頭から蒸気を噴き出さんばかりに恥じらっていた。
 ぐにりと、肝心の部位に指が来る。
 タオル越しの指は、肛門の皺の窄まりをぐにぐにと、くにくにと揉みしだいていた。
「やぁ……あっ、あぁ…………!」
 脳の加熱は激しさを増す一方で、羞恥心の伝達だけで、神経が焼き切れそうな勢いだ。
 おまけに妙な感覚もある。
 アソコを撫でられてもそうだったが――。

 ――気持ちいい。

 達也に、恥部を触られて気持ちいい。
「あぁ……あぅぅ…………」
 感じてしまっている。
 性的興奮をしていると、達也にバレたらどうしよう。
 そうなったら、ただでさえ死ぬほどの恥ずかしさを味わっているのに、魂までどうにかなってしまいそうだ。
 深雪は必死に歯を噛み締め、シーツに歯形を作っていた。
 これ以上、いくら強く押しつけようと、もうベッドシーツにはこれ以上深く顔が埋まることはない。
 それでも、深雪はなおも力を込める。
 もちろん、体が動かない症状で、身体の可動に限界があるとはいえ、顔の型でも取ろうとする勢いで、全力で押しつけようとしていた。
 濡れタオルの水気を帯び、ざらついた感触が、指と共に押し込まれる。
 皺の一本一本をなぞるように、丁寧に拭かれていく。
「ん……んぅ…………」
 人に尻を拭いてもらうなど、思えば赤ん坊のようである。
 赤ちゃんみたいなことをしてもらっている。
 そう気づくと、ただでさえ熱い頭がより熱され、脳の代わりにマグマが詰まっているような赤面に至っていた。
「んぅぅ……んぅぅ…………」
 シーツを噛み、食い縛った歯の隙間から、それでも声が漏れてしまう。
 聞かれたら恥ずかしい種類の声が、どうしても出てしまう。
「終わったぞ。深雪」
 肛門から指が離れた。
 やっと、終わった。
 長い長い時間のあいだ、頭を熱湯に浸し続けていたかのようだ。
 そんな高熱が直ちに引いていくはずもなく、冷めるまで何時間かかるかもわからないほどの温度に達した深雪の脳は、まるで落ち着くことを知らない。
 まだ恥ずかしい時間が続いているかのように、顔の赤らみも一切引くことがなかった。
「着替えだったな。下着はどうすればいい」
「着せて……下さい……」
「俺が選んだもので大丈夫か?」
「お兄様が選んだ……はい、是非選んで下さい……」
 兄の選んだ下着を身に着ける。
 そのことを思うと、深雪は少し興奮する。
 それから、着替えの世話さえしてもらった。
 ショーツを穿かせてもらい、ブラジャーを着けてもらう瞬間は、何か特殊なプレイでもしているかのような気持ちすら湧いてくる。
 着替えの世話など、普通は幼児期で卒業する。
 それをこの歳になり、兄の手で持ち上がってくるショーツに下腹部が収まった時、気恥ずかしさの中に何とも言えない高揚感があった。
 屈辱のような感覚も、確かにあった。
 だが、兄から受ける仕打ちと思えば、それは少しばかり興奮に変わった。
 パジャマズボンを穿かせてもらい、最後にはシャツのボタンも留めてもらうと、これでひとしきりの世話は終了する。
 一言、二言の会話の末、部屋を出て行く兄の背中を見送って、深雪はそれまでの余韻に浸った。
「お兄様に……全てを……」
 胸も、アソコも、お尻の穴も……。
 思い出すだけで、せっかく薄らいだ赤らみが再び増す。
 指の感触、羞恥心。
 あらゆるものがフラッシュバックのように蘇る。
 深雪は悶絶していた。
 手足の可動はまだおぼつかないが、動く限りの範囲でのたうちまわり、深雪は一人髪を振り回し、枕に強く顔を埋める。
 しかし、まだ終わっていない。
 あと一つだけ、恥ずかしい時間が残っている。
 先ほどの、兄が出て行く直前の言葉。
 それは深雪が摂取するべき薬についての話であり、達也はさらりと、とんでもないことを口にしていた。
 あの言葉は、つまりまだ次があるという意味だ。
 まだ、深雪には恥ずかしい時間が残っている。
 やがてドアがノックされ、入って来た兄が手にしていたのは、深雪のために用意してくれた錠剤である。
 新種の病気ということで、専用の治療薬は存在しない。
 ただ、特効成分を含む都合の良い錠剤に調べをつけ、それを今から深雪に摂取させるというわけである。
 座薬を持って来ると、先ほど達也は言っていた。
「深雪。自分では入れられないだろう」
 ここで強く主張すれば、自分で入れてみる道も出てくるだろう。
 しかし、深雪は答えた。
「……はい。お願い、します」
 屈辱感は確かにある。
 同時に、それを味わってみたい気持ちもまた、心のどこかに浮かんでいた。
「また尻を向けてもらうぞ」
「は、はい……よろしく、お願いします……」
 せっかく服を着たばかりで、また尻を差し出すことへの思いを胸に、深雪は再び四つん這いのポーズとなる。
 もちろん、達也の補助の上である。
 その両手で腰を持ち上げてもらいつつ、深雪はベッドシーツに顔を埋め込み、尻を高らかにしていた。
 パジャマズボンのゴムに指が入り込む。
 下ろされる直前、深雪の全身が緊張で凝り固まった。
 そして、あっさり膝まで下げられてしまった時、肛門まで拭かれておきながら、下着を見られただけでも羞恥心が湧いてきていた。
 クローゼットの中から達也が選び、達也の手で穿かせてもらった下着である。
 どんな色で、どんな柄か。
 そんなことは始めから知られているとはわかっていても、実際に視線を浴びると恥ずかしくてならなかった。
 ショーツのゴムにも、指が入り込む。
 するりと、膝まで下がっていった。
 一瞬にして尻が剥き出しになり、肛門まで丸見えになった時、脳の代わりにマグマが詰まったような、あの激しいくも狂おしい羞恥が蘇る。
 兄は何も言わなかった。
 言葉もなく、深雪の尻たぶに手を置いた。
「んぅ……」
 深雪はやはり、シーツを噛む。
 羞恥心が湧けば湧くほど力が入り、シーツには歯で穴が空いているかもしれない。
 左の尻たぶに置かれた左手は、深雪の脳裏に如実なイメージを作り出す。
 そして、肛門の中央へと、錠剤の先端が押し当てられた。
「あぁ……!」
 声が、出てしまった。
 シーツを口から離してしまっていた。
「深雪?」
「へ、平気……です……」
 本当は平気ではない。
 恥ずかしさで、今にも頭が弾け飛びそうだ。
「このまま、入れるからな」
「はい……深雪は、平気ですから……あぁ……!」
 カプセルの先端が穴に埋まった。
 皺の窄まりに、先っぽの数ミリほどを加えたことで、深雪の肛門に錠剤は自立する。指を離しても、一瞬では落ちることがない。
 かといって、達也が指を離すでもなく、錠剤はそのまま押し込まれる。
「んぁ……あっ、あぁぁ…………」
 そう太いわけではない。
 五ミリもないであろう直径は、その太さの分だけ深雪の肛門を広げている。
 深雪はその埋まってくる感覚を味わっていた。
 恥ずかしさから目を瞑り、全力でまぶたに力を込めてしまっている。そんな深雪は、自らの視界を閉ざした分だけ、かえって触覚というものに意識がいき、異物が押し入ってくる感覚を嫌というほど如実に感じていた。
「あぁぁ……!」
 とうとう全て入りきり、最後は指が触れてくる。
 今度はタオル越しではない。
 清潔にしたばかりとはいえ、不浄な部分に指が直接当たっている。
「あぁっ、んぅ…………!」
 深雪は悶絶していた。
 シーツに顔を埋めたまま、ひたすら左右に振りたくる。鼻や額を擦り付けているかのように、顔でのたうち回っていた。
 そして、全てが終わった頃には疲れ果てていた。
 恥じらい疲れる。
 などという体験は、そうそうできるものではない。
 こんな思いをわざしたいかというと、したくはないような気はするが……。
 やはり少しだけ、深雪は興奮しているのだった。

     *

 二日目になるも、深雪の体はまだ万全ではなかった。
 検査によって回復には向かっているとわかるが、治療速度が思ったほど芳しくない。
 実践で理論通りの結果が出ないのは、こうしたことに限った話ではない。焦って薬の量を増やしたり、方法が間違っていたと嘆くのは早計だ。

 一刻も早く治してやりたい。
 気持ちやは山々だが、だからこそ焦ってはいけない。
「今晩もやるぞ。深雪」
 深雪の部屋で、達也はベッドの隣に立つ。
「また、なんですね」
 微妙に緊張した顔だ。
「ああ、まただ。すまない」
「いいえ、深雪は昨日も言いました。
 あんな世話をお兄様以外の人からされるだなんて、その方が耐えきれません」
 深雪はきっぱりとそう言った。
 現在の容態は、手足の可動は昨日よりはマシだ。上半身を起こしたり、仰向けやうつ伏せなど、姿勢を変えることもできるようになっている。
 ただし、立って歩くのはまだ危険だ。
 トイレの行き来は、肩を貸したり、抱っこで連れて行く方法を取っている。
 本人は一人で歩けると言ってはいたが、達也の見立てではまだそうさせるわけにはいかなかった。
 可動阻害の要因は、深雪の肉体にまだ多く残っている。
 それがいつ、どの程度の頻度で発作的に勢いを強め、指一本動かない状態になるかもわからないのだ。
 特に運動でもしようものなら、その最中に可動阻害の症状が出て、怪我の原因になりかねない。
 最悪のケースを想定すると、それが心臓に作用することも考えておかなくてはならない。
 その阻害要素は薬によって減少するが、その減少ペースが芳しくない。
 それが焦りを招いてしまう。
 だが、駄目だ。
 回復に向かっているのは確かであり、深雪のためを思うなら、かえって焦りは禁物だ。
「始めるぞ」
「……はい。よろしくお願いします」
 大和撫子のように、慎ましく正座で頭を下げそうな雰囲気だったが、ベッドから身を起こした深雪が行うのは脱衣であった。
 どくりと、心臓が弾む。
 深雪が、目の前で、恥ずかしそうにパジャマズボンを脱いでいる。
 体育座りに近い姿勢で、やや足は投げ出し気味の形となって、深雪はベッドの上に座っている。その姿勢から手を動かし、まずはズボンの方から下げていく。下着が見え、太ももの露出度合いが上がるにつれて、深雪の赤らみは強まる。
 次にショーツを脱いだ後、深雪は躊躇いがちに四つん這いとなっていた。
 丸出しの尻から見える二つの恥部に視線をやる。
 まず、肛門が真っ先に目に飛び込む。
 まるで黒ずみがない、薄桃色の皺の窄まりだ。
「恥ずかしいか?」
 何を当たり前のことを聞いているのだろう。
 答えはわかりきっている。
「はい……こんなこと……慣れそうにありません…………」
 座薬の投与が続くということは、それだけ症状が長引くということだ。
 慣れずに済むに越したことはない。
「深雪はとても可愛いが、こんなところまで綺麗なんだな。
 とても清潔になっていて、この皺の形を見ていると、花でも眺めている気持ちになる」
 言葉責め、というやつか。
 虐めてみたい衝動が湧いていた。
「そ、そんな……こんなところ、褒めないでください……」
「なら、性器の方はどうだ?
 ぴったりと閉じ合わさった一本筋じゃないか。
 まるでこの世の穢れを何も知らない、無垢で可憐な美少女のようだ」
 性器の品評まで聞かせてしまう。
「いやぁぁ…………!」
 表情が目に浮かんだ。
 四つん這いの深雪である。達也からは顔など見えないが、シーツに力強く押しつけているのが伝わってくる。心情が電波になって飛んでくるかのように、尻を見ているだけで感じ取れるものがあった。
 それに、シーツに噛み跡があったことも知っている。
 羞恥心を堪える時、深雪がどれほど壮絶な表情をしていたか、シーツに残った小さな穴が物語っている。
 今の深雪の表情も、それ相応に歪んだものだろう。
 髪から覗く耳を見てみれば、真っ赤に染まっていた。
 顔から火を噴き出しかねないほどの、激しい恥じらいを今の深雪は抱えている。
 嗜虐心というものなのか。
 深雪の状態を思うと、何かがそそられる。
 しかし、達也は心を切り替えて、極めて冷静に座薬を差し込む。カプセルの先端を皺の中心に押しつけて、少し刺さったところで人差し指で押し込んだ。
「ひあっ」
 カプセルが埋まっていく。
「あっ、んぅぅぅ……! んぅぅぅ……!」
 苦しむかのような声が色っぽい。
 いや、むしろ喘ぎ声か。
「んぅ……んぁ……! あぁ……!」
 肛門も性感帯となり得ることは知っている。
 ひょっとすれば、感じているのか。
 しかし、達也は処置に心を注ぎ、間違いを犯してみたい衝動は抑え込む。
 指だけに意識をやった。
「あぁぁ……!」
 力を抜けば、肛門が異物を押し返す。肉体の条件反射的な作用よりなお強く、人差し指に力を込めれば、いとも簡単に沈んでいく。
 ついには指を肛門の上に乗せ、皺を揉んでいる状態にまで至っていた。
 達也はここで、しばらく指を置いておく。
 もちろん、薬を馴染ませるためだ。
 決して、邪悪な悪戯心ではないはずだ。
 すぐに指を離してしまえば、異物を拒もうとする動きにより、せっかく押し込んだ座薬が外に飛び出して来かねない。
 それを阻止しているに過ぎない。
 数分ほど、達也はそうしていた。
 涼しい表情を保ちながら、可能な限り理性的にそうしていた。
 もっとも、どの程度の視姦をしていたかと問われれば、きっと答えに詰まってしまう。暴走して間違いを犯さないようにこそしているものの、目で楽しむ欲求までコントロールしきれるものではない。
 いいや、したくないのだ。
 妹の尻であれ、見ていたいと思ってしまっていた。





 後編

 三度目の座薬挿入を行う時、達也は思わず苦笑した。
「今夜も、よろしくお願いします」
 恥ずかしそうな様子は変わらない。
 ただ、今回ばかりは事前に下半身裸となっており、ベッドの上で綺麗な正座の姿勢で達也を待っていたらしい。
 おまけにズボンは隣に綺麗に畳んであり、わざわざその上にショーツが置いてある。
 下地は純白だが、その上にあるフロントリボンやレースの数々が水色の、いつもよりも豪奢な下着であった。
「準備がいいな」
「はい。また昨日よりは動けるようになりましたので。
 お兄様の手を患わせないよう、深雪はこのように待っていました」
 ベッドへ迫ると、深雪は仰向けとなる。
 なんと、足を開いた。M字開脚というものだ。
 嫌でも性行為を彷彿させる卑猥なポーズを、慎ましくも赤らんだ顔で晒している。自ら膝を持ち上げて、アソコを目立たせた姿など目にすれば、さすがに視姦せずにはいられない。
 達也はしばし、綺麗な秘所に目を奪われる。
「お兄様が褒めて下さったところです。
 見ても……構いません……」
 そんなことを言いながら、よほど恥ずかしいのか、顔は背けられたまま、決してこちらを向こうとしない。
「み、深雪……。
 いいから、やるぞ」
 達也は速やかに座薬を用意して、深雪の肛門に押し込んだ。
「あぁ……!」
 入れれば必ず、深雪は喘ぐ。
 わざと、だろうか。
 いいや、声を上げるたび、どこか恥じ入ったような様子を見せる。わざととは限らない。やはり肛門でも感じるということなのか。
 だとすると、深雪の性感帯を知ってしまったことになる。
 いけない、処置に集中だ。
 邪な気持ちを切り捨てることは出来ないが、理性で薄めることならできる。
 達也は極力冷静さを保ちながら、今日も指で押し込むのだった。

     *

 ところで、病気について調べうち、とある事実が判明した。
 肉体の可動阻害を起こす症状には、まだ何の病名も付けていない――名付け親になる気もないが、ともかく調べてわかったのは、この症状は疲労の溜まった肉体に発生するということだ。
 深雪は生徒会に入っている。
 様々な書類に目を通し、雑務をこなすことも多いだろう。
 もちろん、日々の勉学と両立してだ。
 そのうち疲れが溜まっていて、無理が祟ったらしい。
「つまりだ。深雪」
 今、達也はその説明をしている最中だった。
 タオルによる清掃、座薬の挿入を数日続け、家の中なら立って歩くことを許可できるまでに回復した深雪に、ここまで判明した内容について話していた。
 ソファに招き、隣に座らせてある深雪は、達也の説明を聞きながら、しきりにコクコクと頷いている。
「さすがはお兄様です。
 もうそこまで解明してしまわれたのですね?」
「深雪、今はお前の無茶について話している。
 疲れが溜まっていたのに、黙っていたんじゃないか?」
「それは……その……」
 深雪は急にしゅんとして、叱られる最中の子供のように俯いた。
「多少の無茶は誰だってするが、一番の問題は症状だ。
 少なくとも、倒れるよりも数日は前から、何か兆候があったんじゃないか?」
 生徒会と学校生活を両立しての疲れなど、高校生なら誰でも抱える。
 症状を隠し、黙っていた可能性こそが問題だ。
「大ごとになったらまずいだろう。
 現に倒れたんだ。
 正直に言ってくれ、隠していなかったか?」
 責めれば責めるほど、深雪の顔には申し訳なさそうな色が浮かんで、俯いたまま自身の膝だけに視線を落とす。
「すみません…………」
 その謝罪は白状と同義であった。
 本人に自覚症状がなかったケースも、あるいはあるだろう。
 そのための確認だったが、もっとも深雪の反応は予想通りだ。
「どうして隠した?」
 もっとも、ただ責めて説教するだけが目的ではない。
 正直なところ、今の達也には邪悪な目的がある。
 この数日間、深雪に多大な恥じらいを与え続けて、それを面白いと感じる己の心理を自覚した時、達也にはやってみたいことが出来てしまった。
 その内容は、普通は許されることではない。
 しかし、今回限りであれば。
「お兄様の手を患わせるほどのことではないと。
 てっきり、油断してしまって……」
「おかげで、かえって心配したぞ?
 これは落とし前をつけてもらわないとな」
 その瞬間、深雪はごくりと生唾を飲んでいた。
 ワンピースの膝に置かれた二つの手は、握り拳へと形を変え、そこにはぎゅっと力が籠もる。俯くことで垂れた髪で、表情は隠れて見えないが、白かった耳が桃色になっていることから、深雪がどんな予感を胸にしているかは手に取るようにわかった。
 無論、達也の頭の中を覗き見てなどいないだろう。
 とはいえ、羞恥心を伴う何かが待っているのだと、深雪は既に覚悟を始めている。
「お仕置き、ということでしょうか」
 深雪はそっと、恐る恐る訪ねてくる。
「そうなるな」
「……わかりました。
 お兄様のご命令であれば、深雪は何でも受け入れます」
「お仕置きの内容は、お尻ペンペンだ」
「お、お尻……」
「立ってくれ、深雪」
「…………はい」
 深雪は達也の隣から立ち上がる。
 真正面に直立すると、どこかいじらしい表情で、チラチラとした視線を達也に寄越すが、しかしこちらを直視できないらしい。人の顔を見るたび見るたび、即座に背け続けている。
「まずはスカートを上げるんだ」
 命じれば、深雪はその通りにワンピースを握り、上げようとする素振りを見せる。
 だが、少しでも持ち上がった直後、深雪の手は数秒止まった。
 性器を見せたり、肛門を見せたりしてきたのに、未だに下着で恥じらう感覚を残しているらしい。
 もっとも、多少は慣れているのか。
 いかにも躊躇う数秒間の停止の後、やはりきちんと持ち上がり、深雪の今日の下着が見えてくる。
 もう着替えは一人でやらせている。
 だから、達也は今この瞬間まで、今日はどんなものを穿いているのか知らなかった。
「白か。とても可愛いじゃないか」
「お兄様……」
 深雪の赤らみが強まった。
 清楚な純白ではあるが、飾り付けはピンクに統一されている。フロントリボンもピンクなら、縫い込まれた小さな花々もピンク色だ。
 そして、腰の両側がリボン結びになっている。
 なるほど、紐ショーツか。
 達也はそれに手を伸ばし、するすると下ろしていく。すぐにでもアソコのワレメが見え、ショーツは膝を通過していくが、深雪は決して逆らわない。なすがまま、されるがまま、ただ赤らみを強める以外のことはしない。
 足首に到達すると、深雪は自ら両足をどかしていく。
 そして、達也はショーツを持ち上げた。
 本人に見せつけるようにして、両側をピンと引っ張り、わざとらしく目の前で眺めてやると、深雪の表情はますます歪む。
「意地悪です……お兄様……」
 そう言いながら、深雪はスカートを下げようとしない。
 達也が下げる許可を出していないから、たくし上げたままにしているのだ。
「今から、もっと意地悪なことをされるんだぞ?」
「わかっていますけど……」
 それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいと言わんばかりに、深雪は唇を尖らせる。
「ここに腹を乗せるんだ」
 達也は床に場所を変え、片膝を立てていた。
 深雪はそんな達也の右膝で腹這いに、四つん這いに近いポーズを取る。太ももに乗ってくる深雪の体重を感じると、達也は床にショーツを置いた。
 置いたのは、深雪の目と鼻の先だ。
 深雪はこれから、自分自身の脱ぎたてのショーツを前にしながら、尻を叩かれることになる。
「準備はいいな?」
 改めてスカートを捲り上げ、尻を剥き出しにした。
「……はい。いつでも、構いません」
「いくぞ」
 達也は腕を振り上げる。
 深雪もぐっと、体中に力を込めていた。
 全身で緊張感を高めているのが、膝に乗った背中を見下ろすだけで、これでもかというほど伝わってきた。
 そんな深雪の尻に平手打ちをかました時、ほどよい打音が鳴り響く。
「あぁ……!」
 深雪は小さく悲鳴を上げる。
 まさか、痛くはないだろう。加減はしている。
 だが、肛門で感じる深雪にとって、平手打ちから来る微妙な刺激は、良い具合に皺に絡んで気持ち良かったのかもしれない。
 達也は平手打ちを繰り返す。

 ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

 何度も叩いた。
 時間も回数も決めていない。
 終わりなどないように延々と、達也は尻を打ち続ける。片方の尻たぶだけでなく、左右の尻たぶを一回一回、交互に分けて叩いていき、できるだけ音も鳴らしている。

 ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

 繰り返すうち、すぐにコツを掴んだ。
 音の出やすいコツだ。
 肌で感じる衝撃だけでなく、音も聞かせてやるために、達也は少しでも高く鳴り響く手の形を意識していた。

 ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

 深雪は耐え忍んでいる。
 何を言うでもなく、ただ静かに叩かれ続け、達也の平手打ちを甘んじて受け入れている。

 ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!

 もう、このくらいだろうか。
 力を入れすぎてはいないのだが、深雪の尻は微妙に赤みがかってきた。
 ここで切り上げと決めたものの、名残惜しさに手を置いて、達也は尻を撫で回す。散々叩き続けた後、今度は逆に労るように可愛がり、優しくさすっていた。
「んぅ……んぁ…………」
「深雪?」
 また声が色っぽい。
「わたし……わたしは……」
 一体、何だろう。
 深雪はますます俯いていた。
 今でも十分恥ずかしいことになっているはずだが、もっと恥ずかしい目に遭ったかのように、顔の赤らみを強めた気配があった。
「どうしたんだ? 深雪」
「言えません……」
「言えない?」
 口には出来ない何かがあったらしい。
 お仕置きの手前、体調に関係のあることなら、この期に及んで隠しはしないだろう。では他に何が考えられるのか。色っぽい声から連鎖的に想像を膨らませ、やがて辿り着いた答えを確かめるべく、達也は深雪にこう命じた。
「深雪、一度立て。
 それから、俺の前で前屈して足首を掴むんだ」
 つまり、尻を丸め立ちさせるポーズである。
「だ、駄目です……!
 今だけは……わたしの恥ずかしいところが見たいなら……。
 また後で見せますから、どうか今は……」
 後ならいいのか。
 治療やお仕置きの名目もなく、ただ見たいから見せろなど、言えるはずはないのだが。
 しかし、ここまで来れば今更だ。
 妹を散々欲望の対象にしてしまったが、一線だけは越えていない。確かめるべきを確かめた後も、越えるつもりはない。
 一線を守りさえすれば、もういいだろう。
 我ながら、基準が大幅に緩んだものではあるが。
「深雪、見せろ」
 強く命じた。
「はい…………お兄様…………」
 すると、深雪はひどく悲しそうに、かつ恥ずかしそうに立ち上がる。
 立ったことでスカートの丈は落ちるが、深雪はすぐさまそれを持ち上げ、尻を丸出しにして前屈する。自らの足首を掴むポーズにより、二つの恥部が丸見えになった時、達也は深雪の秘密を知った。
 濡れているではないか。
 閉じ合わさった綺麗なワレメから、ほのかな愛液が滲んでいる。薄らとした水気であるが、間違いなかった。
「お尻を叩かれて興奮したんだな?」
「申し訳ありません……わたしは悪い子です……」
 許しを乞うかのようである。
 悪いことではないが、虐めたくなる理由ではある。
「悪い子には、まだお仕置きが必要だな。
 深雪、また明日もお尻ペンペンだ」
「はい……」
 悲しい運命を飲み込むようでいて、どこか期待感を帯びている。
 心の底では楽しみにしているが、そんな自分を恥じてもいるのが、達也にははっきりと伝わって来た。
「座薬は今夜で最後の予定だ」
 あくまで経過を見て決めることなので、予定通りになるとは限らないが。
 今までの調子でいけば、もうじき学校に復帰できるだろう。

     *

 そして、その晩もまた、深雪は下半身裸で待っていた。
 パジャマズボンを綺麗に折り畳み、どういうつもりか、その上にショーツを置いている。下着をわざわざ見える位置にして、自分で自分を辱め、M字開脚か四つん這いを披露するのが、深雪の毎晩の日課と化していた。
 残念ながら予定通りとはいかず、あと数日は座薬投与を続けることになる。
 それから、アソコを濡らした悪い子へのお仕置きも行ったが、それを済ませた直後の深雪は、泣き出しそうな顔で達也を見ていた。
 泣きそうなのに、期待の眼差しを浮かべているようでもある。
 そんな目を見て、達也はまた考えてしまう。
 何か、新しいお仕置きの口実はないだろうかと。 




 
 
 

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