目の前の光景が信じられない。
裸で横たわるモスティマへと、中年が横からマッサージを施している。腕を両手で包んで指圧している様子だが、それは手首から肩まで移っていき、やがて乳房の周辺をさすり始める。それらのタッチにモスティマは明らかに恍惚していた。
荒っぽくも熱い息を吐き出して、うっとりと目を細めたかと思ったら、急に我に返ったように表情を引き締める。その締まった顔は徐々に緩み、しだいに恍惚し直したかと思いきや、少し立てば引き締まる。
快感に流されそうになり、そのたびに気を確かに保とうとしている様子がありありと伝わって来た。
エクシアは客席に座らされていた。
「モスティマ……」
真後ろからはボウガンを向けられて、おかしな動きを見せればすぐに打たれる。それにエクシア自身だけでなく、こうなってはモスティマも何か弱みを握られている可能性があるように思えてきて、今は下手な身動きが取れずにいた。
「んぅ……んぅぅ…………」
モスティマから悩ましげな声が漏れ聞こえる。
中年の動きは本当にマッサージでしかない。
手の平にオイルを乗せ、それを塗り伸ばしていきながら、鎖骨や肋骨のラインに指を這わせて指圧している。手の平全体を駆使した圧を加えつつ、皮膚を震わすように揉みもして、乳房はほとんど触れていない。
だが、その半球ドームの頂上には、硬く突起しきったものが聳え立ち、体もどこかくねくねと動いている。いかに快感に浸ってるか、様子を見ているだけでひしひし伝わる。
(そ、そんなに気持ちいいの?)
と、つい思ってしまう。
(いやいや、なに考えてるの……あたしは……)
武器で脅され、強制的に見学させられている状況で、間違っても気持ちよさそうなど思うものではない。そんなことはわかっているが、やはり気持ちよさそうなのだ。背中がかすかに浮き上がり、小さく反り上がっている。手足がしきりにモゾモゾ動き、乱れきった呼吸がここまで聞こえる。
それに何か、良い香りが漂っている。
(なに? この香りは)
施術用ベッドの近くには、アロマポットを置いた台がある。
そこから漂う香りが鼻孔に流れ込み、エクシアの頭をくらくらとさせる。ふとすれば意識が朦朧としてしまいそうな、徐々に思考の鈍る感覚は、全てその香りに含まれる成分の作用である。
そして、それを使用している店員に、客席に座る男性客は、その思考低下の作用は及んでいない。エクシアだけが影響を受け、媚薬成分さえもが入り込んでいる。まだ自覚はしていないが、知らず知らずのうちに感度が上がりつつあった。
「んぅぅ……」
ヘソの辺りを揉まれているだけなのに、首が反り上がっていた。
「あぁ……」
顔を左右に動かして、そこには悩ましげな表情が浮かんでいた。
見れば見るほど気持ちよさそうで、エクシアは自分で気づかないうちに太ももを擦り合わせる。息を少しずつ、本当に少しずつ荒くして、かすかに頬を紅潮させていた。
「あっ、んぅ……んぅぅ…………!」
内股に手が入り、その瞬間にモスティマは明らかに強張っていた。
そして、次の瞬間だ。
「あぁああああ……………………!」
これまで以上にビクっと、勢いよく背中が弾み上がり、モスティマはいとも簡単にイカされていた。
「モスティマ……!」
衝撃だった。
モスティマのこんな姿を見てしまったことはもちろんだが、中年は始終モスティマのことを弄び、思い通りに追い詰めていた。
イクのを我慢できたらエクシアには手を出さない。
その条件で、モスティマは絶頂していた。
「ま、待って……もう一回…………」
エクシアを思ってなのか、モスティマは二回戦目を申し込む。
「おや、勝負はついたはずですが」
「そこを何とか、お願いできないものかな」
「でしたら、次からは所持品を賭けて頂くというのはどうでしょう。お金、衣服、まあ何でも構いませんが、一回イクごとに何かを失って頂きます」
「わかった。それでいいよ」
モスティマはあっさり引き受ける。
だが、傍から見ていてよくわかった。
……無茶だ。
中年のテクニックの前では、きっとどんな女だろうと関係無い。嫌でも性感帯にスイッチを入れ、肉体から興奮を引き出すのだ。中年がいかに手加減していて、わざとらしくじわじわと追い詰めていたか。その気になればイカせることは簡単だったか。
「や、やめて……モスティマ……」
声が震えた。
自分のためにそんな目に遭う必要はない。
それは……いくらなんでも……。
「では続けますよ?」
中年が愛撫を再開する。
やはり、乳房もアソコも避けたマッサージで、リンパを流したり、ツボを押し込むことしか考えない手つきに見える。性的な愛撫など微塵も考えてすらいない、実に健全な手つきでありながら、裸のモスティマに対して効果は抜群だった。
先ほどのように、手足がしきりにモゾモゾと動いている。荒っぽい吐息の音がここまで聞こえ、ビンビンに硬くなった乳首から、いかにも触って欲しそうな、切ない気持ちがひしひしと伝わって来る。
中年にとってモスティマなど玩具にすぎない。
アーツの扱いや戦闘能力など関係ない。ベッドの上では玩具同然に扱われ、いつでも好きなようにイカされる。
「さあ、イってください」
その証拠のようにして、中年が不意打ちでワレメをなぞった瞬間、背中がびくっと大きく弾み上がっていた。ベッドから浮き上がったアーチは、そのまましばし痙攣して、急に脱力してシーツに伸びる。
香ってくる女の匂いで、一体どれほどの愛液が出てきているか想像ができてしまった。
「アーツユニットは没収します」
「だ、だったら……次は…………」
まだ無謀な戦いを続けようとしている。
続ければ続けるだけ、毟り取られていくに決まっているのに、モスティマは今度こそ耐えて見せるかのように言っている。
勝負を繰り返せば繰り返すだけ、モスティマの絶頂回数が増えるだけだった。
そのたびに賭けに出した所持品が中年の手に渡り、ジャケットも短パンも、所持金さえも、彼の持ち物ということになってしまう。
イクたびに笑いものにされていた。
「あーあー」
「イっちまったなぁ?」
「次は何を賭けるんだ?」
「今度負けたら、俺とセックスするとかどうよ」
「そいつはいいぜ?」
「あのモスティマを抱けるなら、俺ァいくらでも出すぜ?」
モスティマの有様を見世物として楽しむ男達は、感じている様子をその都度冷やかし、イった時には盛り上がる。そんな言葉の責め苦さえ、今はモスティマの興奮を煽るプレイの材料となっているのか。
「んぅぅぅ…………!」
「息がエロいぞー?」
「んぁぁぁぁ……!」
「お? イクのか? イクのか?」
煽らんばかりの声がかかると、モスティマの横顔には悩ましげなものが見え隠れする。苦悶のような、恍惚のような、苦しむようで喜んでも見えるその顔は、きっとマゾヒズムを刺激された興奮によるものだ。
「んあああああ!」
そして、やはりイってしまう。
「おお! 潮噴いた!」
「派手にプシャっていったなぁ?」
「そんなに良かったのか?」
「色々と剥奪されて興奮してるんだろ?」
男達の言うように、モスティマのアソコからは滴が舞い上がっていた。アソコに直接触れることはなく、ただ近くに指やっているだけなのに、それでも絶頂したワレメから、スプレー噴射のように飛び散っていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………」
息遣いが荒れている。
疲弊しきったかのように、呼吸に応じて乳房が大きく上下している。大きく聞こえる呼吸の音には、未だ興奮の色が織り交ざり、快感の余韻から覚めていない。目がとろけ、唇の端からヨダレを垂らすほどにだらけていた。
そんな状態になってまで、まだ諦めていなかった。
「まったく……今度こそ…………」
(モスティマ!? もうそれ以上は……!)
見ていられない。
勝負を行えば行うだけ、敗北が刻まれ続けるだけである。
「もう賭けるものなんてないかと思いますが?」
「だけど……はぁっ、はぁ…………」
「うーむ。それではモスティマ様の人権でどうでしょう。あなたの存在そのものを賭け、今度負けたら店の所有物になって頂きます」
奴隷になれという宣言に、さすがのエクシアも席を立ちかける。
「おっと、動かない方がいいぜ?」
「いくらアンタでも、この状態はさすがに不利だろう?」
後ろを取られてさえいなければ、好きなだけ抵抗できただろう。
しかし、二人がかりでボウガンを向けられて、振り向けば撃つと言われている。下手な身動きさえ取れず、浮かせた腰を椅子の上に置き直した。
モスティマが体を起こす。
ベッドから両足を下ろして座った姿勢で、客席を向かい合わせに、中年はその背後に組み付いていた。それまでマッサージに徹していた中年の、急に踏み込んだ行動に、エクシアは見ていて身構える。
(モスティマ……もう……やめて……)
目で訴える。
だが、思い届かず愛撫が始まり、中年は胸を揉み始めたいた。
「んんんんんんんんん!」
激しいよがりようだった。
下乳を持ち上げただけで、エクシアは大きく仰け反っていた。首までも反り上がり、顔が天井を向くことで、中年の肩に頭を乗せてしまっていた。
(なっ、な…………)
エクシアはより一層の衝撃を受けていた。
恥部に触れることなくモスティマをイカせていた中年だが、では胸やアソコへの愛撫が始まれば、一体どれだけ凄いのか。天井を貫かんばかりの大きな喘ぎ声は、それを存分に示していた。
中年は後ろから脚を持ち上げ、モスティマにM字開脚まで強いている。
客席からアソコが丸見えに、男達は前のめりになって鼻息を荒げている。血走った目で鋭く視姦している。
中年の手がモスティマのアソコへ向かう。
……ごくり、
と、エクシアは生唾を飲んでいた。
自分が愛撫されるわけではないのに、一体どれほどの刺激が走り、どこまで連れて行かれてしまうのか。それが気になって仕方がなくなっていた。
擦り合わせる太もものあいだで、エクシアは無自覚に股を濡らす。
それは皮膚の表面がかすかに汗ばみ、微妙にしっとりとして思える程度の、自覚しようのないわずかな量にすぎない。しかし、エクシアは着実に媚薬成分を吸い込んで、さらにはモスティマの感じる様子に当てられて、肉体にスイッチが入りつつあった。
「あああああ!」
絶叫に近い喘ぎ声だった。
びくっと弾け、ただワレメをなぞっただけでスプレー噴射のように汁が飛ぶ。モスティマに勝ち目はないと、確かにそう感じていたが、だからといってあまりにも呆気ない。ここまで一瞬でイカされるなど、いくらなんでも思わなかった。
勝負はついた。
だが、中年はモスティマの肩越しに、ニヤりと含みある笑みをエクシアに向ける。
そして次の瞬間、再びアソコへ手を伸ばし、存分に愛撫を始めていた。ワレメをなぞり、クリトリスを集中的にくすぐるタッチにより、モスティマの全身を震わせていた。
もはや快楽を与えるというよりも、電流を流し込んでさえ見えた。
アソコに触れる指先から流し込み、その電気がモスティマの全身をビクビクと震わせる。手足を痙攣させながら、声にならない声を上げ、二度も三度も潮を吹き、挙げ句の果てには失禁まで披露していた。
ジョォォォォォォォ………………。
黄金のアーチが噴き出して、床が尿で濡らされていく。着弾地点で弾ける水滴が放射状に広がりながら、水溜まりは徐々に広がる。
ジョロロロッ、
それが途切れる頃には、エクシアはもう何の言葉も思い浮かべることすらできず、ただただショックで固まっていた。人の失禁する姿など、見てはいけないものを見てしまった衝撃で心が延々と震え続けていた。
「おいおいおい!」
「お漏らしだぜ? お漏らし!」
「一体いくつでちゅかー?」
「鼠王とやり合える奴でも、お漏らしなんてするんでちゅねぇ?」
男達は大喜びで馬鹿にして、モスティマのことを煽っている。
失禁という名の大イベントを前に盛り上がり、ニヤニヤと言葉を投げつけることで楽しんでいる。それら全ての言葉がエクシアの耳には入っていない。ショックで揺れ続けている心には、周りのどんな言葉も入っていない。
やがて、気づけば小さく声を吐き出していた。
「やめて……」
それを契機にエクシアは叫ぶ。
「もうやめて! 十分でしょ!」
叫んだ瞬間、無意識のうちに席を立ち上がってしまっていた。
後ろからボウガンを向けられていることなど、勢いのあまりに忘れていた。それ以上に放尿まで見てしまった衝撃が、エクシアに叫びを上げさせていた。
「ふむ、ではエクシア様」
そんなエクシアに向かって中年は提案する。
「あなたが次の勝負を受けるのはどうでしょう?」
持ちかけられた瞬間、エクシアは臆した。
モスティマがああなったのだ。
いいや、何もモスティマでなくとも、一人の女がああまで玩具のように遊ばれて、思い通りにイカされる光景を見たのでは、それに耐えきる自分を想像できない。スイッチを入れたり切ったりして遊ぶ感覚で、好きにイカせて失禁に追い込むテクニックを前にしては、自分など相手になりそうもない。
「もしもあなたが勝てば、モスティマ様が賭けに差し出した物は、何一つ取り上げることは致しません。モスティマ様をこの店の所有物にするという話も無しにして、全てを元に戻して差し上げましょう」
全てが元に?
店員の女性は言っていた。
中年の技術には魔力があり、一度でもセックスすれば、二度とその快感を忘れられなくなってしまう。その言葉通りの力でもない限り、モスティマが自ら店に行き来して、自分から犯されに来るなど考えられない。
繰り返し犯され続ける女性がいたら、何か弱みでも握られているのか。
そう考える方が普通なのかもしれないが、モスティマのあそこまで感じる姿を見てしまっては、もう心のどこかで中年の魔力を信じずにはいられなくなる。
自分もああなる。
その可能性が十分にある。
しかし、ここでエクシアが勝負に逃げれば、一体モスティマはどうなるだろう。あれほどの魔力を持つ中年に、二度と逆らえないのではないだろうか。
空恐ろしい話である。
魔法や超能力で操ったり、洗脳しているわけではないはずだ。
ただただ、技術的に染め上げている。
そんな相手に…………。
「……わかった。やるよ」
逃げるべきかとも思ったが、口を突いて出て来たのは、勝負を受ける宣言の言葉であった。
負けられない。
絶対に、絶対に負けられない。
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