まず強要されるのはストリップだった。
エクシアは当然、想定している。
モスティマの写真や動画は、既にいくらでも撮られてしまっているはずだと。そんな弱みもさることながら、何か薬でも使ってはいないかと疑惑を抱いていた。
(だって、いくらなんでも……)
確かに怪物的なテクニックの持ち主に見えた。
中年の愛撫が恐ろしく上手なことは、まず間違いないだろう。
ただ、本当にそれだけなのか。
例えば今こうして漂っているアロマポットの香りの中に、何かおかしな成分は含まれていないか。使用していたオイルはどうか。あるいは飲み物……店員の案内を受ける前、エクシアはドリンクを受け取ってしまっている。
(もし何か飲まされているなら、薬の正体を突き止めないと……)
そういった計算は頭にあった。
だが、何よりもエクシアをこの状況に立たせているのは、香りの成分が脳に達することで起こった思考力の低下である。頭が鈍り、普段よりも判断力が低下して、言ってしまえば騙されやすく流されやすい状態に陥っている。
勝負に乗らずにモスティマを救う手段など、考えようとすらしていない。
モスティマの解放という言葉に乗せられて、まんまと勝負の場に立たされていた。
(モスティマ……きっと、何とか…………)
エクシアはグローブを取り外す。
足下はつい先ほどまで尿で汚れていた。
雑巾で掃除をして、洗剤で綺麗に磨き上げたのは、お仕置きと称して尻を叩かれたモスティマだ。失禁を目の当たりにしたのもショックだったが、重ねてスパンキングを受ける姿まで見せられた上、自分のお漏らしを自分で掃除している姿まで見てしまった。
そこまでみっともないところを見られれば、きっと平気ではいられない。
今頃、どんな惨めな思いをしていることか。
「へへっ、エクシアのストリップショーか」
「そーいや、エクシアには一度ボコられたことあったっけなー」
客の一人がこれみよがしに自分の頬をさすり始める。
「へー? 悪いけど覚えてないなー」
エクシアはポーチのベルトを取り外す。
「そうか。だが俺はよーく覚えてるぜ?」
「そいつは俺もだ」
「ってこたぁ、モスティマといいエクシアといい、拝めるはずのなかったもんを拝めちまうってわけだ」
「とんでもなくツイてるじゃねーか」
笑いが込み上げて止まらないような、存分にニヤけきった顔が客席に並んでいる。
そんな客達の前でブーツを脱ぎ、スカートの内側からタイツを脱ぐ。最初のうちは露出を避け、どうにか肌を見せずにいたが、もうこの次には胸元からジッパーを下げざるしかなくなっていた。
脱げば脱ぐほど選択肢はなくなって、次に脱ぐものといったら半袖のジャケットしか思いつかない。ペンギン急便の仕事ではいつも着ているジャケットを左右に広げ、袖の内側から腕を一本ずつ引き抜くと、残るはグレーのシャツとスカートだけだ。
ここまで選択肢が狭まって、次からは何を選んでも下着を露出してしまう。
(参ったよ……これは……)
正直、どちらも脱ぎたくない。
しかし、モスティマのためにも、今は下手を働けない。
(次は、シャツ……かな……)
グレーのシャツをたくし上げようとした時、手が躊躇っていた。腹をチラリと出すだけで、すぐさまエクシアの手は止まり、持ち上げた裾を沈めてしまう。肌を少しでも露出して、その内側にある下着を見せようとした瞬間、明らかに視線の圧は強まったのだ。
エクシアの下着が見える。
その瞬間に対する期待感で、誰も彼もが前のめりに、楽しみそうに見てくるのだ。そんな視線の圧力に、まるで押し負けでもしたように裾を沈める。このままストリップから逃げ出したい、それどころか銃を乱射して目に物見せてやりたい思いに駆られ、しかし馬鹿な考えは頭の中から振り払う。
(今は……やらないと……)
エクシアは改めてたくし上げ、まずはヘソから露出する。
「お? お?」
「何色なんだろうな」
「楽しみだぜぇ?」
目つきのいやらしさはどんどん露骨になっていき、その分だけ脱衣への躊躇いも強まっていく。たくし上げていく最中の手は、抵抗感から今にも止まりそうなものだった。
「グレー!」
「シャツと同じ色か!」
下着がほんの少しでも見えた瞬間から、男達は嬉々として色を声に出し、大喜びで指摘してくる。
「まったく、何が楽しいやら……」
呆れてみせるエクシアだが、その頬は薄らと赤らんでいた。
シャツを脱ぎ、上半身は灰色のスポーツブラジャー一枚となる。
乳首が浮き出ていた。
エクシアはまだ、自分が媚薬の効果を受け、性感帯のスイッチが入っていることを自覚していない。そもそも、アロマの香りやオイルにドリンク、それらに混ざった成分を疑いはしていても、具体的にどんな薬が混ざっているかまで、何も確信を抱いていない。
ただただ怪しんでいるに過ぎないエクシアには、媚薬という考えが浮かんですらいない。
それ故、本当に無自覚に突起させ、スポーツブラジャーの無地な生地に形を浮かせている。やや薄らかな、浅めの茶碗といった具合の膨らみ具合の頂点は、ぽつりとした影を浮かべていた。
次にエクシアが脱ぐのはスカートだ。
「おお?」
「いよいよ下着姿になっちまうなぁ?」
脱ごうと手をかけた瞬間から、今度は下半身への圧が強まる。ショーツを見よう見ようとする思いが向けられ、視線がスカートばかりに殺到する。たった今までブラジャーを視姦して楽しんでいたくせに、もう次の楽しみに気持ちを向け、ショーツの見える瞬間を今か今かと待ち侘びている。
「パンツぐらい、どうせ珍しくもないでしょ……」
それなのに熱意を向けて来る。
熱の籠もった目で視姦されると、何も気にせずあっさり脱いでみせるつもりだったのが、やっぱり恥ずかしくなってくる。頬が染まっていくのをどうにもできない。ケロっとしていようと意識しても、どんなに強く念じても赤らみを食い止められない。
「恥ずかしそうだなー」
「エクシアってウブだったのか?」
「そいつは意外だ」
下着姿のエクシアの、男達は表情ばかりを眺めていた。
いつもマッサージショーを鑑賞している常連にとって、たかが下着姿など何ら刺激的なものではない。もっと激しいものを見慣れているが、それだけにウブな恥じらいの浮かんだ顔というのは彼らにとって貴重なものだ。
ここの魔力に囚われた女は、すぐにでも快楽漬けになってしまう。
まだ染まっていない花だからこそ、初々しい恥じらいの様子を窺うことができて、それが男達には面白い。
一体、そんな羞恥心の強さで下着を脱いだら、顔はどこまで赤くなるのか。
エクシアはスポーツブラジャーをたくし上げ、するとゴムの締め付けが内側の乳房もろともずり上げる。衣類の上昇に引きずられ、少しのあいだ角度を上向きに変えた乳房だが、脱げる頃にはぷるんと飛び出て、男達の視線を一身に浴びることとなる。
「ひゅー!」
一人の男が口笛を吹く。
「可愛いおっぱいじゃねーか」
「へへっ、いいサイズ感よ」
品定めのような視線を送りつけ、他の何人もの男が満足そうに視姦する。
(これくらい……なんてこと……)
モスティマに比べれば、自分はまだまだ何も大したものを晒していない。
そう思うことで心を保ち、エクシアは最後の一枚を脱ぎにかかった。
かぁぁぁぁ……!
その瞬間、アソコや尻を視姦してくる男達の顔という顔が脳裏によぎり、ワレメや陰毛さえも見られる未来に対して、ますます顔は赤らんでいく。せいぜいピンク色に留まっていた頬は、一気に赤へと濃度を上げ、その色は顔全体にまんべんなく広がりつつあった。
ショーツを下げる。
するすると、ゴムの締め付けの感触が下へ下へと、尻たぶの上を通過していく。客席とは正面から向かい合い、誰もいない後ろに向かって腰を突き出しながら、だんだんとくの字になる形で脱いでいるので、ショーツが下がったからといい、直ちにアソコが見えるわけではない。
だが、ワレメを外気に晒しただけでも、エクシアの頬は熱を増していた。
(ああもう、恥ずかしい!)
耳まで染まる勢いだった。
前屈のような姿勢となって、ショーツを足首まで到達させると、穴から片足ずつをどかして脱ぎ終わる。
こうしてエクシアは全裸となった。
「ひゅー!」
「いい体してんなー!」
「スタイル最高!」
男達は口々にエクシアの体を称え、好きなだけ鑑賞してくる。
その恥ずかしさに胸やアソコを手で隠し、肝心な部分を視線から守るのだが、そんな初々しい動作でさえ、男達にとっては興奮のエッセンスだった。恥部を直接見るまでもなく、その行為自体に興奮して、鼻息を荒くしていた。
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