呪い、幽霊。
そういった与太話がもしも真実としてあり得るなら、もはやゼノヴィアの怨念によってホロヌィエは長生きできないだろう。
彼が売国奴となってカバリヌに取り入る真似さえしなければ、マーデンが討ち滅ぼされることはなかった。ゼノヴィアが捕らわれて、こんな目に遭うコトもなかった。
「さて、ゼノヴィア殿? このホロヌィエ、あなたの美しい肉体を見ているうちに、どうやら年甲斐もなく興奮してきてしまったようだ」
次の瞬間、ゼノヴィアは絶句した。
ホロヌィエはなんと、自らのズボンを下ろし始めた。履き物を下げ、下着まで下ろした内側から出て来るものは言うまでもない。枯れ木のように痩せた男でありながら、そこだけが元気に隆々と太ましかった。
「なっ! 何を考えてるの!」
「もちろん、あなたに奉仕をして頂こうと考えています」
「奉仕って――」
「フェラチオはご存じですかな? まあ、ご存じなければ今この場で覚えて頂くまでの話ですがね」
全身が総毛立った。
ここまで辱めを与え、羞恥のどん底に叩き込むに飽き足らず、奉仕までさせようというのだ。
(こいつに? こんな売国奴なんかに奉仕を?)
冗談じゃない、ありえない。
誰がそんなことをするものか。
「愛国者達の命を握っていることをお忘れなく」
「こいつ……!」
ゼノヴィアはホロヌィエを憎んだ。
「どうなさいました? 奉仕ですよ? 奉仕。ああ、やはりご存じないと? 舌でペロペロと舐め回したり、唇を付けたり、何よりも咥えることで快感を与えるのです」
(こんな……ホロヌィエのものなんて……)
「できませんか? ま、拒否なさっても構いませんが、その場合については既に散々お伝えしてあります。ご判断はお任せしますが、どうなさいますか?」
ただの強制だった。
形ばかりの選択権を与え、結局は脅迫によって無理矢理やらせようとしているのだ。
そして、周囲には市民の視線がある。すぐ横には尿で濡らしたばかりの樹木がある。犬のポーズで放尿して、その上に奉仕など、一体どこまでゼノヴィアのことを堕とせば気が済むのか。
(絶対にこのままじゃ終わらないわ)
ゼノヴィアは唇を近づける。
地面に膝をつき、首輪の付いたままの有様で、ゼノヴィアは亀頭に口づけする。
その瞬間から鳥肌が広がった。
唇から頬にかけ、顔全体にかけ、うなじから全身に至るまで、隅々にまで怖気は走り、悪寒でぶるっと震えてしまう。
ペロペロと舐め始めた。
こんな男に奉仕しなくてはならない屈辱は、頭が内側から割れそうなほどに途方もない。おぞましい逸物を舐めるのも、まるで汚物に口を付けさせられているような、巨大な不快感に飲み込まれる。
触れた先から腐食が広がり、全身がどうにかなってしまいそうだ。
ホロヌィエなど、本当なら手を握ることさえしたくはない。
そんな相手の亀頭をたどたどしく舐め込んで、先端だけに唾液を塗り続ける。舌先から根元まで、口内にまで鳥肌のような何かが広がる。舌の根が腐り落ちそうな感覚で、これほど耐えがたいことはない感じていた。
「ゼノヴィア殿? 初々しいのも良いですが、もっと色んな部分を舐めて頂かないと」
(こいつ……!)
「それにきちんと咥えて、口の中に収めることも必要ですぞ?」
「こ、これでご満足なの?」
ゼノヴィアは呪わんばかりの目つきで睨め上げた。
怒りと恥辱に震えた声で、竿の側面を舐め始める。下から上へと唾液を滑らせ、するとホロヌィエの表情には満足そうな色が浮かんで、それがますますゼノヴィアを刺激する。
(……噛み切るわよ)
本気でそんなことを考えた。
いっそ肉食の獣にでもなりきって、ホロヌィエの全身の肉という肉を食い千切ってやりたい衝動さえ抱えていた。
そんな衝動を感じ取ってのことだろう。
「人質」
ホロヌィエが一言口にしただけで、ゼノヴィアは怒りを抑え、やり場のない衝動をただひたすら胸の奥底にしまいこむ。大暴れするものを閉じ込めても、内側から破って出て来かねないように、衝動は今にも外側へ出そうであった。
だが、背後には兵士が目を光らせている。
人質に限らず、蛮行に走れば取り押さえられるのは目に見えていた。
「あむぅ……」
ゼノヴィアは逸物を咥え、頭を前後に動かし始める。
(殺す……殺すわ……ホロヌィエ……)
睨め上げながら、この恨みは忘れないと目で訴え、形ばかりの奉仕を行う。ホロヌィエに感じて欲しい、気持ち良くなって欲しい感情など欠片もなく、むしろ地獄の苦痛を与えたい。これに奉仕するのでなく、噛み切ってやれたなら、一体どれほど溜飲が下がるだろう。
「はずぅ……じゅぅぅ……じゅむっ、ずぅ……ずぅ…………」
生まれて初めて行うフェラチオが上手なはずもない。
しかし、技巧など問われていない。
ホロヌィエにとって、自分の優越感を満たした上、市民にも王族の惨めな姿を見せつけることができたなら、それで十分というわけだろう。
「ずぅ……ずずぅ……じゅずぅ…………」
気分が悪い。
おぞましいものを口に咥え、今にも吐きそうなだけでなく、こんな初めての奉仕であっても快感はあるらしい。睨め上げているうち、ホロヌィエの顔には気持ちよさそうにしている様子が浮かび、それがますます怒りと憎しみの炎を強めていた。
(こいつが……! くっ!)
ホロヌィエの満足そうな表情など見たくない。
ゼノヴィアは目を瞑り、何も考えないようにした。これがホロヌィエの逸物であることを忘れ、ただただ何かの物体が出入りしているだけなのだと、必死でそう思おうとしていた。
そうすることで気を保とうとしていると、その時だった。
ドクゥゥ……!
口内で肉棒が震えた。
射精が始まったのだ。
ドクッ! ビュクゥゥゥ!
ゼノヴィアは目を丸めていた。
急に口内へ放出され、舌の上には青臭い味が広がった。
(気持ち悪い!)
すぐに吐き出した。
唾と共に地面に吐き捨て、何度も何度も執拗に噴き出し続けた。それに飽き足らず指で舌の表面を拭ってまで、ホロヌィエの汚液を掻き出そうとしていた。
「これは失敬、あまりにも気持ちが良かったものでな」
「こっ、こんな……! 一体どこまで私を……!」
「そうですなぁ? ではそろそろ、もっとそれらしい辱めを与えるとしましょうか」
ホロヌィエはズボンを穿き直す。
そして周囲の兵士に目配せすると、彼らは一斉に逸物を取り出し始めていた。
「え? いや……! ま、まさか!」
次の瞬間、一体何が自分の身に降りかかるか。
ゼノヴィアはその危機を前に戦慄していた。
◆◇◆
幾人もの兵士が乱暴に組み伏せる。
地べたで仰向けにさせられて、ゼノヴィアは必死にもがいて身を捩るが、男の力の前では為す術もない。
「そ、そんな……!」
「あれってまさか……!」
目の前で行われようとしている蛮行に、市民達の目にも戦慄が浮かんでいた。
「いやっ! やめて! それだけは!」
ゼノヴィアは必死で叫ぶ。
「こんなに! こんなに耐えてきたのに!」
たとえ今の叫びが市民の誰かの胸をうち、何かに目覚めさせたとしても、この場にいる誰一人としてゼノヴィアを助けに入ることはない。狼藉を働こうとするカバリヌ兵をさらに囲って、周囲に目を光らせる兵士も並んでいるのだ。
誰も手出しはできない。
ゼノヴィアは体重をかけられていた。
上から押し込むように手首を掴まれ、地面に押さえ込まれた上、脚も強引に開かされる。兵士の指が秘所に来て、ワレメの愛撫が始まるなり、こんな状況でも生まれる刺激にゼノヴィアは喘いでいた。
「あぁ……! やっ、やだ! やだぁ……!」
「大人しくすることですね」
「暴れたって駄目ですよ?」
カバリヌ兵は容赦しない。
脚で暴れるせいで愛撫がやりにくいと見るや、周りの兵士は脚を押さえにかかってきて、ゼノヴィアはどんどん身動きが取れなくなっていく。身体を固定され、それでも動こうとすれば握力を込められて、指が皮膚に食い込んでくる。
「あぁ……! あぁぁ……!」
乱暴に押さえ込んでいるのに対し、ワレメへのタッチは繊細だ。
軽やかになぞる指先によって快感は引き出され、ゼノヴィアのワレメは徐々に湿り気を帯びていく。やがて指とのあいだに人が引くようになってきて、クリトリスまで突起していた。
指で開けば、赤い肉ヒダから肉芽が尖っている。
かすかな水気が付着するようになり、続けるうちに指で粘液を塗り込んでいるかのようになっていく。
「いやっ! いやぁ……!」
さらに指が挿入された。
十分に濡れた後での挿入は、指がしっかりと愛液を纏うため、膣壁との滑りが良くて負荷もない。ヌルヌルとよく滑るおかげで刺激は生まれやすくなり、それがますます愛液の量を増やしていく。
「あぁぁ……! あぁっ! いやぁぁ……!」
「はははっ、嫌がる声なのか気持ちいい声なのか。どういう喘ぎ声なのか、だんだんわからなくなってきましたねぇ?」
形ばかりの敬語で、形ばかりの敬意を表しながら、その指を膣に出入りさせている。
ゼノヴィアは髪を振り乱した。
嫌だ嫌だと思う気持ちをいっぱいに、ゼノヴィアは無我夢中で声を出す。そのほとんどは嫌がるあまりの声ばかりで、兵士が思うような快感のせいで出て来る喘ぎは、今のところはまだ出ていない。
しかし、それも時間の問題だ。
「ああっ! あぁっ、あぁ……!」
兵士がおもむろに指を抜き、クリトリスを弄った時、ゼノヴィアの声には甘い何かが混じっていた。全身がビクっと縮むような激しい電流が迸り、それを契機により一層の量が膣の中から染み出てくる。
「んぅ……いやっ、いやぁ……!」
指先がクリトリスをくすぐり抜く。
その刺激は電流となって全身を駆け巡り、手足でさえも弾ませる。
「んぁぁ……! やめてぇ……!」
最初は嫌がっての喘ぎ方だったが、だんだんと甘い声が混ざるようになり、しまいには快感での喘ぎに嫌がる声が交ざった形になってくる。
頃合いと見て、兵士は肉棒の挿入を試みた。
「けっ、お前が一番乗りかよ」
「まあいいぜ。せいぜい楽しめよ」
他の兵士は軽い悪態をつく。
「ま、そうさせてもらうぜ」
一番乗りの兵士は肉棒を押し当てて、切っ先でワレメを割いていく。
「それだけは……あぁぁ…………!」
ゼノヴィアの訴えなど届かない。
兵士は何ら意に介さず、そうして当然であるように肉棒をねじ込んでいた。
力ずくで押しつけた切っ先は、ワレメを丸く開いて埋まっていき、たちまち根元までが膣へと収まる。
「そんなぁ……あぁ……!」
生まれて初めて男を受け入れた衝撃で、ゼノヴィアは心を打ちのめされた。
とうとう名前すらわからない男の一物が入っていた。
王族だったはずの自分が、こんな形で貞操を奪われてしまった。
その無念に放心していると、兵士は構わず腰を振り、ゼノヴィアのことを味わってくる。
「んぅぅ……! んぁぁ……!」
そして、太いものが出入りしてくる苦しさに喘いでいた。
「あぁっ、あぁ! あっ、やぁっ、いっ、いやぁぁ……!」
快楽で兵士の目は血走っていく。
獣のような獰猛さで腰を振り、打ちつける衝撃で豊満な乳房を揺らす。ぷるぷると揺れ動く有様を見ているうちに、兵士はピストンに加えて乳揉みまで開始して、存分に指を食い込ませるのだった。
「あぁぁ……いやぁぁ…………!」
射精感は高まっていく。
「あぁ……やっ、やだぁぁ……!」
苦しさに喘ぐゼノヴィアへと、兵士は射精直前で引き抜いた。白濁が降りかかり、それがゼノヴィアの腹や胸を穢していく。
「次は俺だぜ?」
「俺はその次だったな。けっ、順番が楽しみだぜ」
兵士同士で入れ替わり、今まで挿入していた男は押さえ込む方に回っていく。新たに次の兵士が挿入にかかってきて、肉棒の抜けたばかりの穴へと再びそれはねじ込まれた。
「やぁぁ……!」
ゼノヴィアは苦悶する。
(こんな形で……私は……あぁ…………)
あまりにも大きな無念であった。
ストリップショーで大衆に裸を見られ、さらに全裸のまま市中を徘徊し、人前でのオシッコまでさせられた。それほどの屈辱に耐えてきて、最後に行われるのが陵辱など、あまりにも救いがない。
悲劇ばかりで泣けてくる。
「あぁ……くっ、くぅぅぅ…………!」
しかし、ゼノヴィアは不意に唇を引き結ぶ。
無駄に喘いでたまるかと、急に心持ちを変えた。
(まだ……まだきっと……!)
残党軍からの接触を思い出したのだ。
あの場では単なる市民を装っている必要があり、会話が出来る状態ではなかった。メッセージを伝えようにも、裸のゼノヴィアでは物品を受け取るわけにもいかなかった。残党軍はただ自分達の存在をゼノヴィアに伝え、それだけで姿を消したが、現状を放ってはいかないという意思表示としては十分だ。
(きっと、きっと必ず残党軍と合流して……マーデン解放のために……)
逆転の未来をそれでも胸に、ゼノヴィアは歯を食い縛った。
やがて二人目の精液が降りかかり、身体がますます汚れたところで次の男と入れ替わる。肉棒の抜けた膣口には、休む暇もなく新しい肉棒が入って来て、ゼノヴィアは延々と苦悶を浮かべ続けた。
三人目が射精すれば四人目に、また射精すれば五人目に、一体終わりはいつになるのか。この地獄はいつまで続くか。まるで永遠のように思えてくるが、ゼノヴィアはそれでも辛抱強く心を保つ。
いつしか肉棒の挿入はなくなった。
もう人数などどうでもよくなってくるほど、何人にも挿入され、体に精液をかけられ続けた果てのゼノヴィアは、胸と腹を白濁まみれに、なおも責められ続けていく。
「んんんんんんんん!」
クリトリスをやられ、唇を結んだ内側から大きな声を漏らしていた。
「んぅ! んぅぅぅぅ!」
耐えがたい並みに襲われ、何かが弾ける。
絶頂したのだ。
お漏らしのように溢れる愛液で、土に円形の染みは広がる。疲弊しきったかのように肩を上下に息を吐き、ゼノヴィアは事実疲れ切っていた。
それでも、なお喘がされる。
(あぁぁ……! もう無理! 無理ぃぃぃぃ!)
体力の限界を無視して、それでも快楽を与えられることにより、しだいに意識は朦朧としてきていた。
そして、その時だった。
ジョォォォォォ――――――。
ゼノヴィアは失禁していた。
「うわっ、きたねぇ!」
「あーあー」
「王女様がこの有様とは」
「まったく、王族も堕ちたもんだぜ」
自分達で穢しておきながら、カバリヌ兵の言い草はそんなものだった。
(あぁ……私は…………)
仰向けに倒れたまま、ぼんやりとした頭で空を眺め、またしてもオシッコを漏らした自分に気づいて赤くなる。まだ恥じらう心が残っていたのかと、自分で意外に思いながら、地面に広がる尿の円が尻の下にまで染みてくるのを感じていた。
本当に、もう消えたい。
そんなことをぼんやりと思った時だ。
(あっ、あぁぁ……!)
急に正気に返ったように目が光りを取り戻し、しかし浮かべる表情は絶望だった。
「おいおいおいおい!」
「この臭いって!」
「マジかよ! そっちまで漏らすか?」
「くっせぇぇぇ!」
さしものゼノヴィアも泣かずにはいられなかった。
あまりの無念に放心しきり、そして後々になって壁に頭を打ちつけた。このまま頭の強打で死んでしまおうかと、本気で悩むほどの地獄の思い出となるのだった。
◆◇◆
それは牢屋の中でのこと。
「ほうほう。彼女が噂のゼノヴィアですか」
「いかがでしょう」
「ふむ、確かに素晴らしい。さぞかし抱き心地は良いのでしょうな」
「ええ、もちろんですとも。ゼノヴィア殿はかなりの評判ですぞ?」
鉄格子の外に目を向けると、どこかの貴族を連れたホロヌィエが取引を行っていた。政治的な便宜を図ってもらう見返りとして、ゼノヴィアの肉体を提供しようとしている。元王族を何の気兼ねもなく抱けるのは、さぞかし面白いことなのだろう。
その後、ゼノヴィアはこうした方針のために生かされていた。
裸で市中を引き回し、放尿までしたという伝聞は国境の外にまで広がって、もはや嫁がせるという使い道は潰れている。醜聞にまみれた女を妻にするなど、面子や外聞に関わるだろう。結婚に政略が絡むのに、もう誰もゼノヴィアを妻になどしたくはないだろう。
ホロヌィエこそがゼノヴィアの価値を貶めたのだ。
たとえカバリヌを打ち倒し、マーデン再興の未来を勝ち取っても、そこに残るのは大衆の前で汚物を漏らした汚い過去の持ち主だ。
だが、そんな汚い少女でも、きちんと綺麗に洗っておけば、身なりのよい美女としての最低限の需要はある。
ゼノヴィアはホロヌィエの政略道具に成り下がっていた。
カバリヌの兵力に対し、残党軍の数は乏しいだろう。
いずれ本格的に残党狩りが始まれば、一体どれほどが生き残っていられるか。娼婦まがいの日々を送るうち、そんな暗い想像ばかりをするようになっていた。
(それでも……)
ゼノヴィアは牢屋の外に思いを馳せる。
(それでも、ここを脱出する機会があったなら……)
自分はきっと、ここを飛び出す。
そして、必ずやホロヌィエを……。
ホロヌィエは知らない。
ゼノヴィアの心の中には、まだ鋭い牙が残されていることを。
だが、その牙が憎き売国奴の喉笛を食い千切る日は果たして来るのか、それはまだ誰にもわからない。
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