前の話 目次




 伊藤拓也は胸をドキドキさせっぱなしだった。
 体育館は女子の嬌声に包まれて、他クラスの喘ぎも聞こえて来る。愛液の香りが充満し、この匂いは何だろうと、しきりに鼻をヒクヒクさせ、本能で肉棒を固くする。
(美樹も、有香も、アソコを調べられて……変な声とか出して……)
 その事実にごくりと息を呑んでいた。
 隣には有香が座っている。
 今はパンツを返してもらい、穿いているが、検査中は担任の手に渡り、丸裸になっていたのだ。その様子を覗いていたが、オナニーとは一体何だろう。性器を触られているあいだ、何か気持ちよさそうな声を出していたが、アソコに触ると快感があるのだろうか。
 聞こえてくる声の具合は人それぞれだった。
 涙ぐんだ声が聞こえてきたこともあり、女子のは本当に辛くて恥ずかしいのだと伝わるが、その一方で煽られるのは好奇心だ。
 M字開脚など初めて見た。
 アソコと肛門が同時に見える体勢ほど恥ずかしいものはないだろう。
 一体、みんなどれほどの羞恥心を味わって、今はどんな思いで男子列の隣に座っているのだろう。クラスの男子はみんなそれぞれ声を聞き、オナニーをしているかいないか、という情報まで握っている。
(オナニーって何だろう。どういうものなんだ?)
 拓也はそれを理解していない。
 ただ、それが性器にまつわる何かだということだけはわかっていた。
(美樹はしていないっていうけど、有香はしてるって、何なんだろう。アソコで一体何をするんだ?)
 聞こえて来た喘ぎ声は、快感を帯びた声に思えた。
 ということは、アソコは気持ちいいのだろうか。
 指で触るなり何なりして、快感が発生するのだろうか。それを楽しむことが、オナニーということなのだろうか。
(わかんない。わかんないけど……)
 隣に座る有香の横顔に、拓也は密かにドキリと心臓を弾ませる。
(オナニー……有香の、オナニーって……)
 一人密かに自分の性器を弄り、気持ち良くなろうとする。そんな有香の姿を想像してしまい、拓也は気まずいような居心地の悪いような、妙な気持ちを抱き、有香とは反対側の、衝立の方向だけに顔をやる。
(オナニーか。調べてみよっかな……)
 これら性器検査は男子の目覚めにも一役買っていた。
 性的好奇心を煽り、性の熟達を推し進める狙いの通り、拓也はその後オナニーというものについて調べ、有香がそれをしている事実に鼻息を荒げることとなる。
 拓也の精通は近い。
 性への好奇心自体があまり芽生えていなかったのに、やがてセックスに興味を持つようになっていくのだ。



 
 
 

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