目次 次の話




 ミイラ症というものがある。
 その名の通り、発症すれば体中がみるみるうちに干からびて、ミイラのようになって死ぬことから、ミイラ症との呼び名が広まっている。
 その歴史を辿れば、隕石の衝突という荒唐無稽な始まりに行き着く。
 地球上にそれまで存在しなかったウイルスが隕石によって運び込まれて、瞬く間に世界中に拡散した。あらゆる動植物、無機物の表面、遥か深海から雲の中まで、どんな場所でも繁殖して、風に流れて大気中を漂う時も長期間生存する。
 大気中からどんな場所に付着したとて、そこに少しでも雑菌や水分があれば、それを栄養に繁殖する。感染者の体内は言うまでもなく、発症した死体に至っては、まるで無数の産卵のようにおびただしい数を外界に解き放つ。
 アルコールや石鹸でも簡単には死滅しない。
  生涯、ミイラ症から無縁でいるためには、出生してから死ぬまでの全てを無菌室の中で過ごすより他はないとさえ言われている。
 それほどの恐ろしいウイルスは、一度は人類滅亡の危機さえ招いていた。
 当時の世界人口八〇億人が半減して、日本の人口も四千万を下回る事態であった。
 しかし、ある時から急激に死亡者が減っていく。
 何故だか、男性だけに免疫が蓄積され、世代を経るごとに感染率は低下していき、現代に至っては誰一人として発症することはなくなった。
 その一方で、女性の発症は続いていく。
 どうして男性だけが免疫を獲得して、女性には免疫が遺伝しないのか。それは全くの謎であるものの、研究を進めるうちに女性にも免疫を獲得させる方法が発見された。

 男性との性交、そして妊娠である。

 男性の中には極稀に『アタリ』が存在し、アタリが三十歳を超えると『ワクチン体質』というものを獲得する。このワクチン体質が女性の膣に射精を行い、妊娠させることにより、どういうわけか女性にも完全な免疫を与えることができるのだ。
 ただし、女性が獲得する免疫は一代限りだ。
 生んだ子供が女の子だった場合、女性には決して遺伝しない。男性の精子に宿る遺伝子情報は、子供が男の子だった場合にのみ引き継がれる。女の子である限り、ワクチン体質相手の妊娠をしない限り、いつかは必ず発症の時が来る。
 どういう原理や仕組みから、そうした現象が起きるのか。
 それは未だ解明されてはいないものの、そうしなければ必ず発症して死亡する以上、たとえ人権を無視してでも、そのための制度が確立して整っていくこととなる。
 性交による人命救済の仕組みが法律として整備され、世界中の全ての女の子は、十代半ばで必ず三十歳以上の男性と交わっている。
 それが今の時代であった。

 梓川夢音もまた、時代の中で制度による性交を言い渡され、中学校の教師と交わる日々を送っていた。

 この学校の保健室には地下へ続く扉がある。
 処置を行う女子生徒は、その秘密の階段を降りていき、長い廊下に並ぶいくつものドアから、自分が入るべき部屋番号を選んで入室する。
 その部屋には性行為のための設備が整っており、ベッドやシャワーは言うまでもなく、ソーププレイに使用するマットまでもが浴室には置かれている。
 夢音はソーププレイを強要されていた。
 相手の身体を素手で洗い、少しのあいだ一緒に湯船に浸かった後、洗面器の中でボディーローションをかき混ぜる。お湯で薄めたものを自分の体に塗り込み、まるで自分の全身をスポンジ代わりにして磨いてやるかのように、夢音は相手の身体にしがみつくのだった。
 相手の名は稲田源一、教師である。
 授業や学校生活の中でも顔を合わせるような相手と、夢音はもう何度も体を重ね、快感を教え込まれている。奉仕もとっくに学ばされ、フェラチオやパイズリが嫌でも上達してしまっている。
 そんな夢音が今はソープ嬢の真似をさせられ、新しいプレイを学んでいるのだ。
「あー。極楽極楽。まったく良い気分だよ」
 仰向けとなった先生へと、夢音はローションまみれの肢体を押しつける。
 お互いのあいだにヌルヌルとした液体を挟み、ローション越しに密着することで、まるで粘着液でくっつくような密着感が広がっている。
(一体、いくつ覚えればいいんだろう……)
 夢音の心は悲しみに満ち溢れていた。
 想い合う彼がいながら、一体何度先生と交わって、どれほどのことを覚えさせられるのだろう。本当なら恋人と共に覚えていきたかった事柄が、前もって項目を潰すように埋められている。
 夢音は身体をスライドさせた。
 ローションのおかげで驚くほど滑りがよく、少しの力で身体はあっさりと上下に動く。下へずれれば、両足に抱きつくかのようになり、そそり立つ肉棒がちょうど眼前にやってくる。上へ動けば顔と顔で見つめ合う。
 こうしたスライドを何度となく繰り返し、次に夢音が行うのは、乳首に吸いつく行為であった。
「ちゅぅ……ちゅぅぅ…………」
「そうだ。男も乳首が気持ちいいからな。彼氏のためにも覚えておけよ?」
 心がちくりと痛む。
 先生はたまに彼氏のことを口にして、是非覚えておけ、いずれやってやれと、そんな風なことを言ってくる。
 物凄く嫌だった。
 無論、大好きな彼への奉仕自体は、いずれはしてあげたい。好き合っているのだから、いつの日か体を求められ、胸や口を使って欲しいと頼まれても受け入れる。
 さも予習させてやっているかのように、覚えておけだのやってやれだの、そういったことを言われるのが嫌なのだ。
 項目が潰されている気にしかならないのに、性的な冷やかしの言葉は不快に決まっていた。
 そういったことを言われれば言われるほど、自分が今奉仕している相手は、そういう人間なんだと実感が湧いてくる。ただでさえ、本当はしたくない相手としているのに、その人間性にまで疑問があるなど泣きたくなる。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ」
 それでも、夢音は先生の乳首を吸う。
 両腕が背中に回って来て、そのまま身体を撫で回されても、夢音は構わずそれを続けて、もう片方の乳首も口に含んだ。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ、れろれろぉ……」
 少しでも心を殺し、今は悪い夢を見ている最中だと自分に言い聞かせ、夢音は乳首を舐めまわす。
「ようし、いいぞ? 次はキスをしてくれ」
「………………」
 夢音は黙って静かに先生の顔を見た。
 してもらって当然とばかりの、実にいい気になった顔に、腹が立ったり不快になったり、もう何度も心が荒んできた。
 だが、この処置室での出来事には、全て法的な強制力がある。
 自分の命を救ってくれる相手なのだから、その射精のために協力し、奉仕を惜しまない精神を大切にするような文言は、法律の内容にすら書かれている。
 法がそうなっている以上、先生は当然の要求をしていることになる。
(……道具じゃないのに)
 浮かんで来る気持ちは、しかし次の瞬間には押し殺す。
(悪い夢。そのうち覚める悪夢だから……)
 夢音は大切な唇を先生の元へ近づけて、恋人のものとは違う分厚い部分へ重ね合わせる。
「ちゅっ、ちゅっ」
 触れ合わせるだけのキスを何度か行い、続けて夢音は頬張った。先生の唇に食らいつき、貪らんばかりの激しいキスを繰り広げた。
「じゅるぅぅ……! ちゅっ、ちゅぶぅ……! ちゅっ、じゅるるっ……!」
 先生の舌も伸びてきて、夢音はそこに自らの舌を絡め合わせる。
(夢、悪い夢――みんな、本当は起きてない出来事…………)
 頭の中ではわかっているのだ。
 いくら思い込もうとしてみたところで、先生に処女を捧げて、奉仕まで学んだ事実は全てが現実である。
 それでも夢だと思い込み、現実とは切り離して考える姿勢を取れば、この状況が少しくらいは楽になるのだ。
「じゅぅぅ……じゅっ、ちゅるぅぅぅっ、じゅぅぅぅ…………!」
 だから、夢音は無心になって唾液を注ぐ。
 後頭部を掴まれて、逃がさないようにされた途端、下から持ち上がろうとしてくる顔に貪られる。獣に喰われるかのように、唇をいいように頬張られ、舌までねじ込まれる激しさに、夢音は同じ激しさで応えていた。
(今日はあと、何時間くらいかな……)
 獣の勢いで頬張り返し、それに対して先生がまた頬張り返す。
(悪夢から覚めるまで、どれくらい……早く現実に戻って、俊樹の顔が見たいな……)
 激しく求め合うキスそのものでありながら、夢音の心の中はそういったものだった。熱くときめく心は欠片もなく、ただただ形だけは情熱的に貪り合った。
「そろそろ、注いでやる」
「……はい」
 意識すれば、尻に肉棒が当たっているのがわかる。
 ローションでつるっと滑り、スライドしやすい身体をフックで止めるかのように、夢音の尻には長大な逸物が挟まっている。
 夢音は股を少しばかり持ち上げて、自らのアソコに手を伸ばす。
 その付近にある肉棒に指を絡め、自分のワレメに位置を合わせて、切っ先が少しだけ膣口に入る感覚をきっかけに、夢音はそのまま腰を沈めた。
 肉棒を飲み込みながら、持ち上げていた尻を再び沈めると、下腹部に収まってくる感覚に意識が強く引きずられる。
 体内に性器があると、その太さや形状ばかりが頭を占め、他の事柄の全てがどこか遠くへ流されそうになる。
「動け」
 命じられ、夢音は尻をバウンドさせ始めた。
「あぁぁ……! あっ、あん! あん! あぁん! あぁん!」
 体はすでに仕上がっていた。
 膣内への出入りが始まると、肉体がすぐさま悦び始め、快楽電流によって歓喜に震える。激しい快感が脳を満たして、何も考えられなくなるうちに、夢音はいつしか無我夢中で肉棒を味わっていた。
「あぁん! あん! あん! あん! あぁん! あっ、きっ、気持ちいい! 気持ちいいです! あぁっ、んはっ、あぁん! あぁん! あぁぁん!」
 こうなると、自分を呪うのは後々になってからの話である。
 先生の手で開発され、激しく感じるようになった肉体は、スイッチが入ればこの通りだ。理性のネジが外れて快楽を求めるようになり、恥も外聞もなくよがり狂う。
「あぁん! あん! あん! あん! あぁん! あぁん!」
 持ち上げた尻を打ちつけて、バウンドさせ続ける際の、先生の腰に自分の身体をぶつける音は浴室に大きく響く。

 パン! パン! パン! パン! パン! パン!

 性交の激しさが天井さえも貫いていた。
「あぁぁん! あっ、あん! あぁぁん! あぁぁん!」
 ここまでスイッチが入ってしまうと、もうイクのも時間の問題だ。
「よーし、出すぞ? 今度こそ孕むといいなァ!」
 先生も興奮して、肉棒から精子を吐き出す。

「――――あっ! あぁぁぁぁぁ!」

 夢音はビクビクと全身を震わせて、首で仰け反りながら絶頂した。
 アソコからは、プシャっと大量の愛液を吐き出しながら、ぬるま湯のように温かい白濁も垂れ流す。愛液と精液の混ざったものが肉棒にまとわりつき、先生の陰毛にも染み込んでいた。
「掃除しろ」
「は、はい……! 先生……!」
 夢音は素早くスライドして、太ももに乳房を押しつけるようなポジションから、汚れまみれの肉棒を頬張った。
「はじゅぅぅ――じゅるぅぅ……!」
 激しい奉仕を開始する。
(なにやってるんだろう……私……)
 自分自身の行為を見つめ、こんな先生なんかに尽くすいやらしさを思って目を伏せる。こんな自分であってはいけないと思いながらも、自分に快楽を与えてくれる肉棒には、できうる限りの奉仕を披露していた。
「ずじゅるぅ……! じゅっ、ずむっ、じゅっ、じゅっ、じゅっぅ……!」
 顔が素早く前後する。
 ピンとそそり立った肉棒の軸に合わせて、綺麗にぶれることなく動き続けて、夢音の視界には毛むくじゃらの根元が迫っては遠ざかり、迫っては遠ざかる。
 竿の周りを一生懸命になって舐め回し、玉袋を愛することも忘れない。
(私………………)
 夢音は自分の変化に気づいていた。
 先生に体中を開発され、快楽を教え込まれているうちに、セックスを楽しみに思う自分を自覚していた。



 
 
 

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