そんな災難の憂さ晴らしであるように、アリッサは大量の食事を出させ、その全てを平らげるなどした翌日である。
「……まあいいわ」
起きてパジャマから着替えるなり、外出用のコートを羽織りながら、アリッサは勝ち気な表情を浮かべていた。
「せっかくの観光地よ? 色々と見て回りましょう? さあ、行くわよ! マリーサ!」
意気揚々と部屋を出るアリッサと、それに続くマリーサの二人組は、宿を出て町中を歩き始めた。
雪を踏み固めた滑りやすい地面に合わせ、滑りにくいブーツを履く二人は、観光客向けの出店を見て回る。この土地のモンスターを捌いた肉、湖の魚、山菜などの料理を食べ歩きに適した形で提供しており、アリッサはあれもここれもと腹に収めていた。
食べ歩きを楽しんだ後は、別の商店街を見て回り、この土地に出回る武器と防具を眺めに行った。工芸品を見て回ると、名工ゴーランの作品が幾つもあった。他にも絵画や装飾品の店があり、故郷では見かけないそれらを鑑賞して回った末、やがて温泉街に足は向く。
長々と歩いたので、二人は足湯で足を休め始めていた。
サークル上のベンチで囲む形で、足を浸けるためだけにある温泉に金貨を払い、アリッサとマリーサはゆっくりとくつろいでいるわけだった。
「なかなかのものね。絵画の方は、異国の作者のものが多く見受けられたから、国内にはない作風が多かったし、金属加工も国外の技術を使ったものが色々とあったわね」
「ええ、何か買われてもよかったのでは?」
「持ち帰るのが面倒よ。ま、どうしても欲しいものがあった時には、馬車でも雇って運ばせようかしらね」
といったところで、すぐに会話が途切れてしまい、その隙を突くようにマリーサが唐突に言い出した。
「ところで、個人湯というものが気になります」
「個人湯?」
「ええ、先ほど見かけたのですが、お一人限定の小さな温泉を囲った小屋がこの当たりにはあるようで、どうも興味があるのです」
「二人じゃ入れないの?」
「探せばあるかもしれませんが、私が見かけたのは個人湯でした。どういう趣向なのか、詳しく見てみたい気がしまして」
「そうね。なら、次は個人湯でも探しましょう」
アリッサは疑うことを知らない顔で足湯を出て、ブーツを穿き直すなり温泉街の散策を開始する。
マリーサの計画は既に始まっていた。
アリッサの知らないところで下調べを済ませ、良い温泉がないかを突き止めた上、話まで付けてある。
マリーサの読み通りなら、よからぬ性癖の芽生えているアリッサは、必ずそれに興味を持つ。マリーサと別れた上、一人になる機会が訪れれば、きっと密かに入り込み、楽しもうとするはずだ。
そんなマリーサの計画は、いつもながらに成功することとなる。
*
覗き湯、というものがある。
それは裸を見られたり、視姦されることで喜ぶ露出性癖向けなのだが、あるいは金銭と引き換えに裸を見せる娼婦まがいの取引にも利用されている。
いくつもの個人湯の小屋が並んだ道のりで、マリーサはいかにも一つの小屋に入ったように見せかけて、密かに外の様子を窺った。思った通りに、アリッサは覗き湯の看板と睨めっこを始め、迷った末にに覗き湯の中へ入って行く。
その様子を小屋の窓から確かめて、計画は順調であると見たマリーサは、ここで待ち合わせていた三人の男に目配せをした。
「成功か?」
三人の男のうち、一人はケビンであった。
「ええ、予想通りよ」
マリーサはさらりと言う。
「けど、いいんですか? 妹さんなのでは?」
ジョージには良心の呵責があるる様子であったが、とんでもない。身体検査で性器や肛門をほじくられ、全裸土下座までこなした経験がありながら、なおも我の強い性格を保つアリッサである。
「問題ないわ。言ったはずよ? 妹の性癖は私が知り尽くしている。だから自分から覗き湯に入ったのよ。望み通り、覗き部屋へ行ってあげましょう?」
これこそがマリーサの計画だ。
アリッサを覗き湯に誘導して、入ったところで男達にアリッサを売る。マリーサ自身も覗きに行き、男に視姦されて喜ぶ姿――というものを覗き見る。その男性陣を自分の手で用意してやれば、また味わいも違ってくるはずだ。
「人には色々とあるんだろう。変わった性癖があるというなら、俺達はアリッサの求める需要に対して、視線を供給してやろう」
傭兵部隊隊長のゴルディは乗り気である。
「そうこなくっちゃ、オッサン」
「そうですな。お姉さんが言っているなら、きっと間違いない。覗いて差し上げましょう」
ジョージも乗り気になって立ち上がり、アリッサが入って行った覗き湯の、その覗き部屋へと四人揃って向かって行く。
かくして、アリッサは覗き湯に浸かる。
覗かれていることを知りながら、その上で温泉に入るという楽しみを味わうのだ。
*
アリッサは期待と不安に身を包み、個人湯の小屋へと足を踏み入れていた。
個人湯――と、便宜上は分類されているものの、覗き湯の場合は覗き部屋に男が入らなければ成立しない。アリッサが入店して、受付への支払いを済ませても、覗き部屋への客が来るまでには数分かかり、つい先ほど満室になったという。
マリーサは今、マッサージサービス付きの個人湯にいるはずだ。出てくるまでには時間がかかる。合流場所は決めてあるので、アリッサもアリッサで、好きなだけ楽しんでから出てくることに決めていた。
脱衣所で服を脱ぎ、裸になる。
いざ覗いてもらう直前になって、体毛の処理が甘いことを今頃になって気にかけた。剃ってある方が見栄えが良いことだろうが、こうして肌を晒す機会もなかったため、アソコや尻毛はおろか、脇毛の処理すらしていない。
長い髪を浸さないため、後ろをゴムで縛りつつ、タオルをターバン状に巻いたところで、準備の済んだアリッサは浴室へ足を踏み入れる。
この土地は水の魔力が豊富に流れ、効能に満ちた水が発生しやすいという。加熱用の魔石を埋め込むことで、それをお湯に変えているのが温泉街の特徴だ。
そうした水は土から染み出るように湧いてくるため、基本的には地面を掘り返し、木材や石材を使った板張りで湯船を作る。大地から湧き出る水が流れ込むように、経路工事を行って、ようやく一つの温泉が完成する。
両手を広げるよりも少しばかり広い程度の、部屋と呼ぶにはいささか窮屈な空間で、まずは軽くシャワーを浴びる。身体をお湯で濡らして、軽く温まったところでお湯に足を浸けてみて、さながら足湯のように爪先からふくらはぎにかけてを沈めていった。
(……視線、あるわね)
出入り口を背にしつつ、右の壁、左の壁、真正面の壁を見ていると、向こう側にある気配が読めてくる。板の隙間や小さな穴から覗く形で、既に視姦は始まっているのだが、どうやら正面の覗き部屋には二人同時に入っているらしい。
合計四人の視線がある。
(ちょっと、興奮してきたわ)
乳房はあえて隠していない。
さも自分はお湯を楽しみに来ただけで、ここが覗き湯であるなど知らないかのように、あからさまにのんびりと過ごしてみる。伸びをしてみたり、わざわざ立って、アソコや尻が見えやすいようにしてみたりとしてみるうちに、肌が疼いてアソコもざわつく。
(毛はどう思われているかしら)
湯船を中心に立ち上がり、気まぐれに身体の向きを変えていき、順々に尻を見せていくのだが、きっと尻毛がはみ出て見えるだろう。アソコの毛も伸び放題で、濃い金色がワレメを覆い隠さんばかりである。
おまけに脇毛を生やしたままとあっては、覗きに来た男達も幻滅してしまうだろうか。
(そんなこと……ないといいけど……)
こんな風に思うなら、剃っておけば良かったと公開しつつ、とはいえ視姦の圧が弱まる感じはない。
どうやら、毛が理由で出て行く男はいないらしい。
(まあ、そうよね。毛ぐらいで霞むほど、私の美貌は安くないもの)
不安から自尊心を取り戻し、一気に機嫌の良くなったアリッサは、ここはサービスをしてやろうとばかりに床へ腰を下ろした後、秘所を触り始めた。
――じぃ!
と、視姦の目が大きく見開く気配を肌で感じた。
(……見られてる。すっごく)
ひとまずは椅子に座るのと同じ姿勢で、しかし足は広げつつ、アソコに置いた指をモゾモゾ動かす。陰毛を掻き分けて、隠れたワレメをくすぐって、自らを屈辱の状況に貶めた。
アリッサの場合、色気で男を誘惑して、ベッドの上に絡め取る性格をしていない。肌を男の視線に晒すのは、むしろ先天的なマゾ気質によるところが大きい。
人前でオナニーをするなど、そんな屈辱的なことがあるだろうか。
それを自ら始めることで、周りから感じる心の声を楽しむのだ。決して本当に聞こえているわけではない。そう思われているに違いないといった妄想だが、アリッサの主観的には様々な声を感じ取っていた。
――おいおい! こんなの痴女だろ!
――見られてんのわかってオナってんだよな!?
――見て欲しいってことだろ?
――こんな小屋に入るくらいだもんなァ?
きっと壁の向こうには下品にニヤけた表情が揃っている。ヨダレでも垂らして、食いつかんばかりの勢いで壁に顔を押しつけて、血走った目と荒い鼻息でアリッサのことを必死になって視姦している。
きっと、ズボンも雑に脱ぎ散らかし、肉棒を握り始めているはずだ。
(そうよ。ネタにされているに違いないわ)
このオナニー姿に興奮して、男達もまたオナニーをしていることを想像すると、ますます胸に恥辱が膨らんだ。体中がいいように視姦の目で蝕まれ、楽しまれていく感覚に興奮して、溢れる愛液が指や陰毛に絡みつくようになってくる。
「んぁ……あぁ……あぁぁ…………」
こうして楽しみ始めたアリッサだが、やはり肝心なところは気づいていない。
四人に視姦されている。
気配に敏感な気質から、そこまでは読めているものの、その中には一人だけ女が混じっていることまでは気づいていない。誰かの隠れた気配は読めても、性別や体格まで察知できるわけではないのだった。
*
男三人がマリーサに計画を持ちかけられ、覗き部屋に入ることになったのは思わぬ幸いだった。
露天風呂で偶然にも居合わせた際、上がる直前にこっそりと、夜にロビーで話がしたいと伝えてきた。いざ集まれば、マリーサは自分の性癖を告白して、アリッサを覗き湯に誘導するから視姦して欲しいと頼んで来たのだ。
妹を売る真似に思えたが、アリッサには露出性癖があるらしい。
見せたがる女に対して、望み通り視姦をするのは、決して悪いことではないと、三人揃ってマリーサの話に乗せられた。
しかし、部屋というのは四角形だ。
四つの壁のうち、一つは出入り口のために消費され、つまりは覗き部屋を隣接できる箇所が三つしかないことになる。それに対して人数は四人であり、誰かがマリーサと同室になるわけだった。
「マジでラッキーだぜ」
ケビンは歓喜に満ちていた。
穴や隙間の多い壁に向かって、ベンチに座りながら顔を近づけ、二人揃ってアリッサを覗いている。壁の向こうにある金髪美女の、大きな乳房を拝むのも最高だが、隣のマリーサも服を脱ぎ、股のあいだに手をやり、何やらモゾモゾとやっているのだ。
「最っ高」
穴に瞳の位置を合わせると、あちらでもオナニーが始まっていた。
隣でも、正面でも、女が自らの膣をほじくり、快感に浸っている状況など、こんなものは二度と体験できないだろう。
(つっても、男には興味ないっぽいんだよな)
せっかくマリーサも裸になり、美女に手を伸ばせる状況にありながら、襲ってきなら抵抗すると、事前に強く言われている。仮にも相手の実力を感じ取る程度には、きちんと腕のあるケビンなので、そこらの小娘を襲うようにはいかないとわかっている。
本番に持ち込むのは諦めるしかない。生殺しも良いところだが、ひとまずはケビンも服を脱ぎ、肉棒を握って二人の様子を楽しんだ。
(ま、多少は触って良いって言ってたし)
なので隣に手を伸ばし、試しに太ももに手を置くが、一瞬ピクっと反応を示しただけで、マリーサは何も言ってこない。気にせずオナニーを続行して、視線がアリッサから外れる様子さえもない。
(ガチだな。この女)
ケビンは確信していた。
本人が同性愛を語っていたのもそうだが、ケビンの顔立ちは美形の部類で、ジョージやゴルディもヒゲの似合ったダンディチックなルックスだ。鍛え込んだ肉体美やスタイルの良さもあり、つまるところ三人とも良い男だ。
アリッサであれば、多少は反応があった。
ところが、マリーサの方は気持ちの良いほどに無反応でだ。彼女は本当にアリッサに執着していて、当のアリッサが姉の同性愛には気づいていないわけである。
「おっと」
覗き穴の向こうでは、アリッサがポーズを変え、尻をこちらにして指遣いを激しくしていた。尻毛の生えた肛門は、お湯に濡らされしっとりと、毛が皮膚に張りついている。活発に指が出入りすることで、皺がヒクヒクと蠢いていた。
マリーサがますます前のめりに、壁に顔を埋め込む勢いで、ベンチから尻が浮き上がり、滑稽なくの字の姿勢で同じくオナニーを激しくしている。クチュリ、クチュリといった水音が隣からよく聞こえ、二人分の光景にケビンは大いに興奮する。
右手では肉棒を握りつつ、左手はマリーサの尻へ伸ばした。
真っ白な尻のカーブを上下に撫で、触感を楽しむが、マリーサは何も気づかないかのようにアリッサだけに集中している。
「はぁ……アリッサ……あぁ……アリッサぁ…………」
耳をすませば、小さな声で何度も名前を口にしていた。
そんなマリーサを見ているうちに、とある口実を思いつき、ケビンは黒髪から覗く耳へと顔を近づけ囁いた。
「アンタのオナニー。俺が手伝ってやろうか?」
あわよくば挿入まで持ち込みたい。
「指までよ。それ以上は怒るわ」
「オッケー」
最後までは無理そうかと、そこは残念に思いつつ、ケビンはマリーサの後ろ側に回り込む。くの字に突き出た尻を拝むと、こちらも毛の処理はしておらず、黒い陰毛が伸び放題に、尻毛が放射状に広がり倒れていた。
(うーん。ま、いっか)
ケビンはワレメを指で撫で、愛液の具合を確かめる。しっかりとヌルヌルに、よく滑る状態になっているのを確かめて、穴に差し込んでいった。
ピクピクと、尻が小刻みに震えている。
マリーサに見えているのは、あくまでもアリッサだけなのだろう。男には目も暮れず、ケビンに指挿入を許したのも、生きたオナニー道具を使おうと思っただけの話である。
(とはいえ、遊ばせてもらうぜ?)
もう片方の手をクリトリスにも設置して、指でくすぐり抜きながら、穴に活発なピストンを施した。膣壁の蠢きは激しいもので、ヒクヒクとした脈打ちのような締め付けをよく感じる。見れば肛門も収縮を繰り返し、腰はかすかながらに左右にモゾつく。
クリトリスを責める方の手は、手の平を上向きに、まるで手を器代わりにしたような形を作っているが、ちょうどその中に愛液は滴り落ちる。手の平の中央に、ねっとりとした水滴がポタポタと、何滴も何滴も落ちてくるのだ。
「んぅぅぅ………………!」
小さく軽い悲鳴と共に、マリーサの尻がブルっと震える。
イったらしい。
指を抜き、クリトリスからも手を離すと、ぐったりとしたようにベンチに尻を置いていたが、顔は相変わらず壁に張りつき、アリッサからは一秒たりとも目を離さない。
「さて、あっちはどうだ?」
ケビンは改めてアリッサを覗く。
「おいおい、マジか」
アナルパールを使っていた。
魔法で動かしているのだろう。数珠繋ぎの棒は、見えない力で勝手に肛門に出入りして、そのピストンがアリッサを責め立てている。指は変わらず膣に出入りし、激しく乱れた息遣いがここまで聞こえた。
より興奮してきたケビンは、マリーサの肩に腕を回して、横から密着しながら手首を掴む。肉棒を握らせようと引っ張ると、白い手は少しのあいだ抵抗したが、すぐに諦めたように力が抜けいく。
指が肉棒に絡みつき、上下に動き始めていた。
「へへっ、まあ十分得したぜ」
ケビンは手コキを味わいながら、それでいてアリッサのオナニーを拝み倒した。
指とアナルパールで足腰をよがり狂わせ、何度も尻を震わせて、絶頂してもなお続くオナニーに飲み込まれる。いつしかケビンも壁に顔を貼りつけて、跡が残るのも厭わず血走った目で視姦していた。
やがてアリッサは床で仰向けに果て、お漏らしのように愛液を広げたまま、ぼんやりと天井を見つめていた。
気づけばケビンは射精していた。
白濁がマリーサの手を汚し、それでもなおマリーサはアリッサばかりに夢中である。アリッサが起き上がり、ようやく浴室を出ていくまで、手の汚れを気にも留めていなかった。
「やってくれたわね」
咎める目を向けて来たのは、あとは着替えて帰ろうといった段でようやくだった。
「あーほら、手ぐらい使ってくれないと、俺も暴走したかもしれないしさ」
「それもそうね」
ため息をつきながら許してくれたが、やはり男の相手は本意ではなかったらしい。
マリーサとしては、自分の計画通りに配置した男というのがポイントで、同室を狙ったケビンについては、ほとんど仕方なく受け入れた形だったという。
「ちなみにさ。あの子が誰かとセックスする場面への興味は?」
「今のところないわ」
是非とも画策したいところだったが、ケビンの目論見はばっさりと切り捨てられた。
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