裁判所でマリーサが必死に声を上げ、アリッサのことを庇おうと血眼になっている。
 こんなマリーサを見たのは初めてだった。
 家柄の関係でマリーサを使用人と決められて、小さい頃から一緒に育ってきたマリーサのことは、心のどこかで姉のように慕っていた。姉であり、メイドでもあるマリーサは、アリッサにとって欠かせない存在だ。
 家族同然の長い時間を共にてきたが、アリッサが日頃見て来たマリーサの顔は、クールであったり淡々としていたり、騒がしさや熱意とは程遠い顔ばかりであった。何かに熱を燃やす暑苦しい表情など、マリーサには存在しないかのようにさえ思っていた。
 それがあんなにも力強く訴えて、アリッサの罪を少しでも軽くしようと必死であった。

 ……なのに、自分は一体、何をした?

 言い逃れできない証拠がある。
 アリッサが行った行為は水晶の中にばっちりと記録されている。
 あの夜闇の中でアリッサがしでかした行為は、なかったことになどできはしない。マリーサはせめて情状酌量の余地を訴え、涙ながらに許しを請うている。あんな奇行を働いてしまったばかりに、マリーサをこんなことで必死にさせてしまっている。
 裁判の中で明らかになる痴態の数々は、本当ならもっと赤面してもいいところだ。裸マントで出歩く真似を暴かれ、恥ずかしいことこの上ない。しかし、その罪を問う裁判にマリーサがいることで、アリッサは始終青ざめていた。
 判決が下される。
 殺人や窃盗に比べれば、元より重罪ではなかったこともあり、マリーサの働きで一ヶ月前後の懲役がものの数日まで縮んでいた。あの必死な叫びと命懸けのような弁護がなければ、ここまで縮むことはなかっただろう。
 それなのに、マリーサは必死に謝ってきた。
「申し訳ございません! 本当に申し訳ございません!」
 ……違う。
 謝るのはアリッサだ。
 本当に泣きながら謝らなくてはいけないのは、アリッサの方に決まっていた。自分のせいでマリーサにこんな顔をしまった事実を、世界の終わりのように重く受け止めていた。

     *

 あの鉱山での出来事で、本格的に変態性癖が目覚めてしまったアリッサは、とうとう自分の意思で裸マントの格好で出歩いて、通行人に見せつける行為までしてしまった。理性とのせめぎ合いで、躊躇う気持ちはもちろんあったが、芽生えた性癖を満たしたい思いで気持ちは傾き、結局は変質行為に走ったのだ。
 そして、マントに隠した裸を見せびらかし、その数秒後には駆け去った。
 夜の暗さでお互いの顔などまともに見えず、人間など黒い影の塊のようにしか見えない中での行為である。相手の視力によっては、そもそも女の裸すら見えてえはおらず、ただ人の気配が急に自分の前から駆け去ったように映っただけ、ということもあり得ただろう。
 その後、アリッサが行ったのはオナニーだ。

「あっ、んぅぅ……んっ、ぬっ、ぬぁ……あっ、あぁ……!」

 ベンチで大股開きのM字を作り、夢中になって快感を貪っていた。
 アソコの穴には右手の指を、肛門には左の指を、それぞれ挿入しての活発なピストンで、脳天にせり上がる快感で全身をビクビクと震わせた。大胆に潮を撒き散らし、一度だけではイキたりないとばかりに、数秒も休めばオナニーを続行した。
「あぁ……! あぅっ、んぅぅ……! んあっ、んあぁ……!」
 雷に打たれたように痙攣して、まもなく二度目の潮を吹く。
 こうして夢中になった痕跡をベンチとその下の地面に残し、数十分後には満足した顔で裸体をマントに包んで宿へと戻る。

 その翌朝のことだった。

 宿に衛兵が現れて、アリッサは露出変態行為の罪で引き立てられた。
 あの時のマリーサが浮かべた衝撃の顔といったらない。自分の仕えるご主人様が、それも長年連れ添ってきた相手が、まさかこんな奇行を働くなどとは想像もしないだろう。罪を問われるのは辛かったが、マリーサのショックを受けた顔はもっと辛かった。
 何よりも辛かったのは、その後の必死な弁護と、無罪を勝ち取ることができずに泣いて謝ってきた姿である。
 アリッサが裸を見せびらかした相手というのが、なんと実は鉱山長だった。アリッサよりも夜目が効いていたため、アリッサからは相手の顔が見えずとも、鉱山長はきちんと顔の判別を付けていた。
 その時点で目撃証言は成立するが、何よりも大きいのは水晶による記録である。
 鉱山長はそれからアリッサを密かに尾行して、アリッサが行う公園でのオナニーを記録していた。夢中だったアリッサは、生まれて初めてやってしまった行為に動揺していたこともあり、そんな気配になど気づかなかった。
 かくして、それが裁判所で映像として再生され、マリーサにも見られてしまった時の気持ちといったらない。

 そして、アリッサは今……。

 鉱山でツルハシを振り上げて、淡々と作業を行っていた。
 判決が決まった後、ボロ布一枚を纏った格好で連行され、三日間にわたる強制労働を言い渡された。生涯を鉱山に縛られた他の罪人に比べれば、驚くほど軽いかもしれないが、アリッサはまるでここで一生を終えるような顔をしていた。
(貴族の私が何をやっているのかしら……)
 暗い顔でツルハシを振り上げ、金蔵の鋭い先端を岩盤にぶつけている。
 この鉱山は魔力経路が血管のように張り巡らされており、それが循環しているうちに、岩の構成成分を魔力で凝縮した塊が生まれるらしい。そうしてできるのが魔石であり、ここでは色とりどりの魔石が採れる。
 火、水、土、風、雷――あらゆる属性の魔力が循環しているため、だから様々な色合いをしているのだ。
(こんなことになって、マリーサはどうしているのかしら……)
 どんよりとした空気を纏い、アリッサは日がな一日マリーサのことばかりを思っていた。マリーサにあんな思いをさせ、マリーサを一人残し、今頃はどこで何をしているのか。
 裁判中、マリーサは最後まで身分を明かさなかった。
 高貴な家名を背負ってこんな罪を犯したのでは、たとえ金や権力で無罪になっても、よからぬところに今までの事実が発覚して、今度は別の地獄が待っていることだろう。三日で終わる地獄と、生涯にわたって影響が色濃く残るかもしれないやり方なら、残念ながら真面目に作業に打ち込む方が賢い。
 淡々とツルハシを振り上げている最中、隣からの視線が痛かった。
 こんな場所に女がいるのは、さぞかし珍しいことだろう。しかもボロボロのシャツを一枚着ているだけで、ズボンやスカートすら穿いていない。シャツの丈の長さに任せ、どうにか尻は隠れているが、前屈すればあっという間に丸出しだ。
 はしたない格好の美女が隣にいて、集中できない様子の男は、朝から昼までチラチラと、何時間にもわたってアリッサのことを盗み見て、胸や尻を気にしてくる。
 依頼で鉱山を冒険した際、マリーサと共に行き来したルートとは、今回は現場が異なっている。おかげで見覚えのある女がいるとは騒ぎにならず、とはいえ女がいること自体の物珍しさで注目は集まっている。
 削り出した岩や石のゴミを台車に積み上げ、どこかへと運んで行く往復仕事の男からも、しきりに視線をやられている。
 見張りさえいなければ、もっとセクハラに溢れたことだろう。見張りの男が鞭を握って、少しでもサボれば虐待してくる環境下では、怖くて手出しできないらしい。アリッサが一度覗いた時の現場と、今いるこの現場では、労働者の質が異なっていた。
 あちらの現場であれば、たとえ鞭打ちを受ける羽目になっても、怪我をしてでも女の尻に触りたい馬鹿で溢れていた。
 ここにそんな様子はない。
 マリーサの訴えで日数が縮んだ上、もしかしたら回される現場も考慮がされたのかもしれない。
 きっと、そうだ。
 これもマリーサのおかげだと、アリッサは心のどこかで思っていた。

     *

 その晩、アリッサは女ということで、男とは別に寝床を用意され、本来は事務所用にしか使われない小屋の片隅で、ボロボロの毛布と藁敷きを渡された。
 こんな惨めな睡眠を取るなどと、アリッサは今まで夢にも思ったことがなかったが、罪の意識から素直に眠りにつこうとする。
 固い床でなかなか眠れず、アリッサは朝までのことを思い出していた。

「どうか……どうかお元気で……!」

 まるでもう一生会えなくなるかのような、壮絶なまでに悲しむ顔をして、マリーサは泣きながらアリッサのことを見送っていた。
 そんなマリーサを背に、後ろ手に手錠をかけられたアリッサは、二人の衛兵にそれぞれ両腕を掴まれながら、前へ前へと歩かされたのだ。歩けば胸がたぷたぷ揺れ、乳房が誰もの視線を集める体をして、アリッサは鉱山へと進んでいった。
 労働に就かされるまで、しばらくは周囲の道や現場の中をひたすらに歩かされ、衛兵によって延々と宣伝された。
「こいつは変態の罪に問われたしょーもない女だ!」
「露出狂となって夜中に出歩き、マントに隠した裸を人に見せびらかしてよォ!」
 大声でアリッサの罪状を唱えて回り、それを耳にした労働者がぎょっとした目を向けてくる。ツルハシの手を止めて、ニヤニヤと視姦してくる。
「おい聞いたか! 裸マントだってよ!」
「変態露出狂の罪で捕まるって、一体どんな育ちをしてんだ?」
「真っ当な教育なんざ受けちゃいねーよ! 下手すりゃ俺ら以下よ!」
「おーい! 俺にも裸を見せびらかしてくれよ!」
 罵詈雑言が飛び交って、生まれや育ちのことまで勝手に想像して、まともな教育も受けていない、学もなければ読み書きもできない阿呆のようにまで言われる。それらの言葉を見張りの男も衛兵も誰も咎めず、むしろアリッサが受けるべき罪の一部として扱っていた。
 そして、アリッサ自身も何ら言い返す気力はなく、ひたすら言われるままに俯いて、現場に入れば暗い顔で淡々とツルハシを振り下ろした。
 それら苦行の一日が終わり、やっとのことで眠りにつける時間が来ても、ここにふかふかのベッドはない。糸のほつれた古びた毛布一枚で、一体どこまで体が休まることか。これなら冒険中のテントの方が、まだしも贅沢な備品を整えられる。
 しかし、そういった文句を言うはおろか、心の中でぼやく元気でさえ、今のアリッサには残っていない。ただただマリーサのショックを受けた表情が、悲しげな顔が、色んな顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えるばかりだ。
「マリーサ……ごめんね……」
 一人呟く言葉はそれだった。
 マリーサへの申し訳なさでいっぱいの心には、どんよりとした重いモヤモヤがかかったまま、晴れる気配すらないのだった。
 その時だった。

 ぎいっ、

 と、木製のドアが開かれ、そのために周囲の板が軋んだ音が聞こえてきた。とても小さな音ではあるが、真夜中の静寂において、小さな音はよく目立った。

 みしっ、みしっ、みしっ、

 誰かが床を踏み締めることで、板がその都度軋み続ける足音がする。入って来たのは三人だろうか。事務所としても使われる小屋だから、アリッサはまず職員の可能性を考えた。
 忘れ物でも取りに来たのか。
 仮にも人が寝ているはずだから、なるべく音を立てないようにしてくれているか。
 アリッサとしては、そういった用事であってくれれば有り難いが、女一人が眠る密室に入り込む理由は、もっと他にもあるはずだ。
 心に警戒心を膨らませるが、今のアリッサに武器はない。素手でも戦う力はあるが、重労働の疲労で動きは鈍い。一体、自分にどこまで抵抗ができるだろうか。
(お願い、こっちには来ないで……)
 願ってみるも、アリッサの眠るテーブルの影に向かって、みしみしと軋む足音は迫って来る。いよいよ間近で見下ろしてくるまでに、三人の気配が並び立つ時、アリッサは意を決して毛布を投げ捨て立ち上がった。
「夜這いかしら? 悪いけど起きてるわよ?」
 アリッサは三人の男を見据えた。
「おやおや、バレちまったか」
「しかしまあ、本当にここで寝てたとはな」
「覚えてる? 俺、お前の身体検査受けるところを見てたんだぜ?」
 人相の悪い三人組が揃ってニタニタと笑いかけ、あからさまな目つきでアリッサの肉体に視線を突き刺す。乳房で膨らむシャツの丸みをわざとらしく覗き込み、谷間を堂々と視姦した上、さらに一人はしゃがみ込むなり丈に手を伸ばしてくる始末だ。
「やめなさいよ」
 腕で胸を隠し、伸びてきた手を払い退ける。
「なーにがやめろだ」
「お前、変態露出狂なんだろ?」
「俺達にも裸を見せびらかしてくれよ」
 否定できない事実をダシにヘラヘラと笑ってくる。
「だ、誰が……」
 まともに言い返すことはできずに、アリッサはそんな声を漏らして俯くのが精一杯だった。「まあ、いいか。とっととヤっちまおうぜ」
「へへっ、本当は静かにヤりたかったとこだけどな」
「起きていたんじゃ、しょうがねぇしょうがねぇ」
 三人組は口々に言い出すなり、揃ってアリッサに躙り寄る。もう十分に距離を詰め、これ以上は迫りようがなさそうな距離までになりながら、なおも迫って密着しようとしてくる男を前にアリッサは後ずさる。
 だが、後退する先もなく、すぐに背中が壁に当たった。
「ほれ! いくぜ!」
 一人が手を伸ばしてくるのを皮切りに、そのまま他の二人も手を伸ばす。
「ちょっと! やめっ、やめなさいよ!」
 抵抗するアリッサの手を掴み、足を掴み、三人がかりで押さえ込もうとしてくるのに、アリッサはどうにかもがき続けたが、肉体には疲労感があった。何より、いくら剣術や武術に長けていても、鉱山で働く屈強な男三人に、為す術もなく押し倒され、あれよあれよというまに犯される直前までもつれこんでいるのだった。
 仰向けに倒されたアリッサは、両手を頭上に押さえ込まれ、片足も持ち上げられ、効率良く女を封じて挿入に持ち込む連携で、既にペニスが入り口に当たっていた。
「やめ! やめて! 大声出すわよ!」
「いいぜ? 誰も来ねぇっつーか。来るとしても参加者が増えるだけだぜ?」
「そんな……!」
「おーら、挿入挿入っと!」
 元気よく楽しげに、玩具にありつくかのようにねじ込まれ、処女だったアリッサは呆気なく初めてを奪われていた。
「そんな……そんな……!」
「へっへっへ! なんで最初から濡れてんだ? オナニーでもしてたのかぁ? それとも、俺らに囲まれて興奮しちゃったぁ?」
 初体験のはずだったが、日頃のオナニー経験で慣らされたアリッサのアソコは、驚くほど簡単に肉棒を受け入れて、それどころかピストンに対してさえ、きっちりと愛液を分泌させて、滑りを良くしている始末である。
「んっ! んぁぁ……! なんでっ、なんでこんな……!」
 好きなように腰を振られて、膣奥を貫かれる重い衝撃が腹に伝わる。肉棒の出入りしてくる感覚が苦しいのは、最初の数分程度のものだった。入った直後は穴を拡張される圧迫感に喘いだが、アリッサの膣はすぐさま肉棒に馴染んでしまい、苦しさでの喘ぎは快感での喘ぎに移り変わった。
「んんぅぅぅぅ! んっ! んあぁっ、駄目っ、やめて! やめなさいよ!」
 喘ぎながらも激しく髪を振り乱し、三人がかりで女を襲う蛮行への、非難がましい目つきや思いを撒き散らすが、しだいにそんな余裕もなくなった。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 十分も経つ頃には、快楽に翻弄されて喘ぐことしかできなくなった。
「おー気持ちいい気持ちいい」
「お前さ。俺らのこと悪く言いたいみてーだけど、言える立場なわけ?」
「そーそー。裸マントやった上に公園でオナニーして帰ったって、もう鉱山にいる連中はみんな知ってるぜ?」
 三人組は口を揃えて、アリッサのような変態にレイプを非難する資格はないと、ニヤニヤとした説教をかましてくる。
「おおっと、そろそろだ」
 そして、挿入していた男が急に肉棒を引き抜くと、胸より上のラインへと、肩や鎖骨の位置に馬乗りになってくるなり、唇に切っ先を向けて来る。
「な、なにっ? やめて!」
「飲め」
「飲めって、何考えて――」
「おら! いいから口開けろ!」
「んんぅ!?」
 鼻をつままれ、唇に指をねじ込まれ、二人がかりでどうにかアリッサの口をこじ開けて、そこに一人は肉棒を入れてくる。強引に咥えさせられ、亀頭が唇の内側に収まるなり、アリッサの口内に白濁のねっとりとした生温かい感触が放出された。
「んぅ! んっ! んぅぅ……!」
 汚液が注ぎ込まれる感覚に、全身に鳥肌を立てながら、アリッサは必死に頭を振る。嫌だ嫌だと目で訴え、亀頭が唇から抜けた途端に吐き出そうともしたのだが、間髪入れずに手で口は塞がれる。
 口どころか、鼻までつまんで押さえられ、呼吸を封じてくる男達は、言葉にせずとも目で十分に語っていた。

 ――飲まなければ窒息させる。

 アリッサは涙ながらに喉を鳴らして嚥下して、こんな男の精液が体内に流れ込むことへの肌寒さを感じていた。
「まだ一人目が終わっただけだぜ?」
「全員の相手が済むまで終わりゃしないからな」
 こうして、アリッサは犯され続けた。
 誰の助けが来るはずもなく、夜の静けさには延々と、小屋の外までアリッサの喘ぎは響き渡っているのだった。

     *

 その翌朝である。
「はじゅぅぅ――ずぅぅぅ――じゅりゅぅぅぅ――――」
 アリッサは口淫をさせられていた。
 一日目とは異なる現場に回されて、作業そのものは同じでも、労働者の面子が異なるために環境も異なっている。元盗賊、強姦犯、殺人、窃盗、あらゆる犯罪者が揃った真ん中で、そんな凶悪な面々を見張るための鞭持ちの衛兵は、我が物顔でアリッサに奉仕を命じたのだ。
 当然、アリッサは抗議した。
 しかし、罪人の立場で意見を唱えても、アリッサが有利になることはない。衛兵が一言許可を出せば、この場にいる奴隷全員でアリッサの輪姦が行われることになる。生殺与奪ではないが、そういった引き金を衛兵は握っていた。
 だから衛兵は嬉々として語った。
 自分に逆らうことがいかに得策ではないかを楽しげに述べてみせ、従わざるを得ない空気をいとも簡単に形成しちえた。
「後で訴えても無駄だからな? ここにいる全員で口裏を合わせるだけの話だ。お前みたいな変態の言うことと、全員の証言の一致となら、世間はどちらを信じるかな。この程度のことは簡単になかったことにできるんだぜ」
「んぅずぅ――はじゅっ、じゅずるぅぅ…………」
 無駄な知恵を回しても意味がないかを上から唱え、いい気になって頭をポンポンと叩いてくる男に対して、いつものアリッサなら腹を立てたり、睨み返す程度のことはしただろう。
 今のアリッサにそんな元気はない。
(私が悪いから、あんなことをしたから、こんなことに……)
 マリーサに与えたショックが、マリーサに浮かべさせてしまった悲痛な顔が、アリッサの心には深々と食い込んでいる。罪の意識に溢れたアリッサは、三人組に犯された昨晩の出来事も、奉仕を強要されている今この状況も、どこか仕方のないことのように思っていた。
「ずぅ……じゅずるぅ……」
 だからこそ、さしものアリッサも粛々と頭を前後しているわけだった。
「ここには何百人もいるからな。その全員ってのは無理だろう。懲役が三日しかないんだから、そもそも時間だって足りやしない」
「じゅっ、ちゅるぅぅぅ――じゅっ、ずむぅぅ……ずっ、ぢゅりゅぅ…………」
「ま、だが二〇人か三〇人か。それくらいなら、なんとかなるかもなぁ?」
 鞭持ち衛兵のそんな言葉を聞くなり、アリッサはみるみるうちに青ざめていく。
「ちょ、ちょっと? もしかして、そういうことをさせる気じゃ――」
 不安になって、つい奉仕を中断してしまっていた。
「あぁ? 罰のうちだろ? お前みたいな変態は、こういう目に遭ったって文句を言う資格はないんだぜって、その体に教え込んでやるための――ま、刑務作業の一種と思え」
「冗談じゃないわよ……そんな何十人もって……せめてもっと、数くらい……」
「うるせえな。お前にくどくど言い出す資格はねえ!」
 衛兵はおもむろに頭を掴んだ。
 アリッサの金髪に指が食い込み、頭蓋骨が痛いほどまでの握力で頭が固定され、前後に動かすことができなくなる。両手で衛兵の腰を押し退けて、自分の身体を押し出すことさえできず、間もなく口内に白濁の青臭い味が広がった。
「ほーら、きちんと飲めよ? それから、残ったものをペロペロと舐め取って掃除するんだ。そいつが終わったら、次の『仕事』が待ってるからよ」
 そうして精液を飲まされて、アリッサがやらされる仕事の内容は、まさしく肉便器とでもいうべきものだった。
 アリッサは壁に両手を突かされた。
 尻の後ろには長々とした列が出来上がり、一人何分までのピストンを許すといった具合に次々とアリッサのことを犯しに来る。働きが認められ、褒美にありついても良いと見做された男が一人また一人と列につき、アリッサは一日のうちに何十人も、数え切れない人数を相手にすることとなっていた。

「あぁっ! あん! あん! あん! あん! あん! あん! あん!」

 長髪の汚らしい男が嬉々として腰を振っている。
「いやぁぁ! 思い出すなぁぁ! 女を攫ったりしてた盗賊時代をさぁ!」
 激しいピストンで打ち鳴らし、こう見えて彼は射精を急いでいた。
 一人当たりの時間は衛兵によって管理され、時間が来れば鞭を使ってでも引き離し、次の順番待ちに膣穴を譲ってしまう。列に並んだ男にとって、制限時間付きの楽しみなのだ。
「なあ! 中に出していいんだよなぁ!?」
「ああ、許可する」
「おっしゃあ! 孕め孕めぇ!」
 アリッサ本人の意思は関係なく、その許可を出す役割は衛兵にあった。当然のように許可が出るので、奴隷は遠慮もなしに膣内射精を行っていた。
「おいおい」
「次の奴のこと考えろよ」
「うわぁ、あんナカに入れんのかよ」
 後ろでそれを見ていた面々は、引いたような引き攣った顔をしていたが、どんなに文句があったところで、奴隷の身分に落ちた彼らは自由に外に出ることが許されない。ここで生涯を終えることになっている者が大半だ。
 ここでアリッサに挿入しなければ、二度と女にありつく機会はないかもしれない。
 そんな彼らにしてみれば、前の男が膣内射精をしていようと、背に腹は変えられない。嫌だ嫌だとは思いつつ、仕方なく挿入して、一度快楽を感じてしまえばそのまま夢中で腰を振り出すのだ。
「あっ! あぁっ、あん! あん! あん! あん! あん!」
 こうして、アリッサの喘ぎ声は坑内に甲高く響き渡った。
 極太もいれば短小もいる中で、個人差によって様々な形状をした肉棒が、この限られた時間のあいだに何本も何本も、既に十本以上も収まっている。男達は決まって膣内に射精するので、誰のものかもわからない精液はとっくに子宮に行き届き、股のあいだからは汚らしい白濁が愛液混じりとなってポタポタと、糸を引いた滴となって垂れ続けているのだった。
 こんな時間が朝から夕方にかけて延々と続いていた。
 当然、これではアリッサの身体に多大な負荷がかかってしまい、何百、何千回にもわたるであろうピストン回数の摩擦によって、普通なら膣肉が擦り切れるなりしてもいい。ところが体力を回復される魔法薬を小休憩の時間に飲まされて、アソコには数時間おきにヒールがかけられる。
 溜まった負担は強引にリセットされ、だからいつまでも喘ぐ元気は維持されてしまうのだ。
 このような『仕事』が終了時間を迎え、長蛇の列から解放されると、今度は衛兵がアリッサを兵舎に持ち帰る。
 ベッドを軋ませながら正常位で交わる夜を強制的に過ごさせられ、しかも相手は一人だけではない。一人の衛兵が満足すれば、別の部屋へ行くように強要され、その部屋でも相手の思う体位で交わった。
 そして、衛兵だけがアリッサの身体をその都度綺麗に磨き上げ、清潔で抱きやすい状態にしてから楽しんでいた。
 三日目も、そういった一日を過ごしていた。
 早朝には衛兵達へのフェラチオを行い、昼が近づくと壁に両手を突いたポーズを取らされ、尻の後ろに長蛇の列が出来上がる。夕方を過ぎればまた兵舎に持ち帰られ、朝まで抱かれ続けていた。

     *

 鉱山から出てくる主の姿に、さすがのマリーサも心を痛めた。
 見栄えだけは元の衣服を着せ直し、身体も清潔にさせ、さもボロボロではないかのように見せかけている。
 だが、虚ろな瞳に感じる生気の無さで、マリーサは悟った。
 きっとアリッサは犯され続けていた。
 露出だの、変態趣味で捕まっただの、マリーサにとってそんなことはどうでもいい。もちろん、まったく引かなかったといえば嘘になるが、それが罪に問われると聞いた時の衝撃で、それどころではなくなっていた。
 確かに言い逃れできない変態行為で、誰に咎められても仕方がない。
 しかし、人を殺したわけでも、物を盗んだわけでもない。誰かに具体的な危害を与えたわけではない罪で、愛しのアリッサが牢屋に入るかもしれないとあっては、身内としては必死に弁護を行った。
 確固たる証拠が上がった裁判では、その弁護も無罪を勝ち取るには至らず、刑期を縮めることが精一杯だった。
 とにかく……。
「待ってましたよ。お嬢様」
 出て来たアリッサを優しく抱き締め、マリーサは懸命に癒やしてやった。優しい言葉をたっぷりとかけ、美味しい食事を用意して、気晴らしの外出にも連れ出して、思いつくことなら何でもしながら慰めていた。
 やがては元気を取り戻すが、きっと慰み者にされていたせいだろう。
 その後の笑顔にも、高飛車な態度にも、マリーサから見ればどことない影を感じた。他の者から見れば変わりなくとも、マリーサからすれば十分に変貌していた。
 きっと、二ヶ月後に発覚した事実も大きいだろう。

 アリッサは妊娠していた。

 堕胎魔法が存在するため、命が形を作り始めないうちに、早い段階から子供をなかったことにするのは簡単だ。専門の呪文師を呼び、その呪文一つで妊娠を打ち消したが、心理的なショックまで打ち消すことはできないだろう。
 誰の子かもわからない命を、堕胎したとはいえ身籠もった。
 その時の呆然とした顔は忘れられない。
 きっと、今でも引きずっている。
 笑っていても、高飛車な態度で使用人をコキ使っていても、美味しい肉にヨダレを垂らしている最中さえ、マリーサの目にはやはり見えるのだ。以前まではなかったはずの、薄暗い影の色が……。

 ただ一つだけ良かったのは、こうしてまた一緒にいられることだ。

 罪に問われ、裁判になった時など、ショックのあまりマリーサは、もう二度とアリッサと会えなくなる想像さえしていたのだ。
 想像通りにならずに済んだことだけは良かったと、マリッサは思うのだった。



 
 
 

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