結局のところ、アリッサは前回のように平民を装った服装に着替え、マリーサは相変わらずのメイド服で馬に乗る。メイド服では主従関係の印象が強すぎて、第一印象でそう思われかねないのではないか。平民を装いきれないのではないか。
と、そんな意見を前回も唱えたが。
やはり、装備効果を期待して購入した装備品で押し通すつもりらしい。
どうも、メイド服は着ていたいらしい。
今度は通行証の紛失はしなかったので、滞りなく検問所を通過して、その先の町に宿を取る。
マリーサがギルドに顔を出し、所定の手続きを済ませておいてくれるので、翌朝には依頼を受けた扱いで鉱山へ向かう流れとなる。町から山への移動にも馬を使い、二人は出入り口として設置された門の近くへ、小さな小屋の事務所へ顔を出す。
「待っていましたよ。二人とも」
そこにいたのは鉱山長だった。
「どうも、マリーサです」
「アリッサよ」
「いやいや、遠方遙々と来て頂いて、まずはお礼から言わねばなりませんね。本当に、どうもありがとうございます」
鉱山長は二人に対してどこか腰が引けている。
「よほどお困りと聞いたものでね?」
「ええ、アリッサさん。既に詳細はご存じでしょうが、過去にも魔物の出た事例はありました。その際は冒険者や兵士を頼ってきましたが、やはり魔石の不当な持ち出しがありまして、とうとう身体検査の必須化です。で、なかなか依頼を受けてもらえなくなり、お二人に来て頂けたのは本当に救いなのですよ。私にとって」
物腰丁寧で腰の引けた鉱山長の態度に合点がいった。
彼からすれば、せっかく依頼を引き受けた冒険者を逃がしたくない。直前になって気が変わり、やっぱりやめたなどと言い出されては困るのだ。
「さて、そういうわけなんですが、全裸での身体検査など普通はお嫌でしょう。喜ぶ方がどうかしています」
(ん……)
鉱山長の発言は至極真っ当なものだったが、検問所で絶頂して、何か危険な性癖の芽生える感覚を自分自身に感じたアリッサには、どうにも刺さる言葉である。
「私の力でどうにか免除しようと思っています。身体検査を簡易化して、せいぜい手荷物検査のみを行い、他の者には規定通りに全裸検査を受けたことにして説明しようかと」
「なるほどね」
アリッサは顎に指を当てて考え込む。
正直、まるで一切悪い話ではない。
刺さったから、というわけではないが、これ以上ああいった体験を重ねることで、危険な性癖の芽を育てることもないはずだ。
「そうね。だったらその通りに――」
「いいえ、身体検査は実際の規定通りに受けます」
「マリーサ!?」
「いい? アリッサ。こんなことが発覚してみなさい。失礼ですが、発覚時には私達だけが罪人になりかねませんね? そちらは権力がありますから、いくらでも自分の身を守れるわけで、さしずめ脅されて仕方なく免除したことにできるでしょう」
マリーサは冷たく言い放つ。
「い、いえ! そんな!」
鉱山長は思わぬことを言われて大いに驚き、その顔はほとんど慌てふためいていた。
実際、善意に違いない。
ただ、きっとマリーサは万が一を考えている。本当に万が一、わずかな可能性によって免除が発覚すれば、勝手な判断を行い、角方に示しがつかなくなった鉱山長は、果たしてどんな対応を取ることか。
今は真っ当な善意でも、その時はさすがに保身に走るだろうと考えている。
……権力というなら、本当はアリッサとしても、いくらでも自分の身を守れるが。
「そうね? アリッサ。受けるべきね?」
何故だか、マリーサは有無を言わさぬ圧をかけてくる。
「……べき、かしら?」
「ええ、そうすべきよ? もしもの事態を考えて、後から不利になる材料を作りたくはないでしょう?」
「といっても、ねえ?」
平民のフリをして、平民の立場で冒険を行うことで視野を広める。などというのは、前回もそうだが二次的な目的にすぎず、無理に真っ当する必要はない。その時は身分を明かして権力には権力で対抗すればいいだろうと、アリッサは考えている。
「例えばね? 仮に私達に権力があって、免除を迫ることができたとしても、それはそれで違法な取引を疑われるわ。正当に検査を受け、規定通りに鉱山の探索を行った事実は、きちんと作っておくべきなのよ」
「そう言われると……」
「さあ、どうするの。身体検査を受ける? 受けない?」
アリッサは迷った。
いや、本当は迷わず免除を選びたいが、そんな風に言われてしまうと、もしもの際の対応について言われてしまうと、マリーサの言うことが正しい気がしてならなくなる。
(だからって全裸? またああいう体験を?)
冗談じゃない。
だが、発覚時は……。
「どうするの」
迷っているあいだにも、改めて圧をかけてくるマリーサには、どういうわけか鬼気迫るような凄味が滲み出ている。嫌でも検査を受けさせようとするような、必死な何かをひしひしと感じられる。
(え? そんなに?)
アリッサは勘違いをした。
もしもマリーサの性癖に気づいていて、単にアリッサの痴態を見たがっているだけだと気づいていれば、決してそういった見方はしないだろう。
しかし、気づいていないアリッサは、そういった小さな可能性から大きな事態に発展して、面倒な対応を迫られる展開を、よっぽど避けたがっているかのように見た。いくら可能性は低くとも、万が一の心配をしているのだと、アリッサはそう感じてしまった。
「わかったわよ。いいわ? 受ければいいんでしょう?」
もう、そう答えるしかなかった。
「いいんですか!?」
「よくはないけど、まあいいわよ。マリーサの意見を汲むわ」
「わ、わかりました。それでは担当の者達が来ますので、そちらの方達の指示に従って下さい」
そう言って鉱山長は事務所を後にする。
その数分後に現れる面々の前で、これから身体検査は始まることとなる。
*
六人もの男達が揃って事務所に現れていた。
「マリーサです。そして、こちらが妹のアリッサになります」
「アリッサよ? よろしく」
二人が挨拶を行うのは、場の総指揮を行う現場リーダーと、経営責任を背負う経営者に、加えて三人ほどの重役と、一人の医者が集まった面々だ。
「どうも、よく来てくれたね」
真っ先に経営者が前に出て、挨拶とばかりに握手を求めてくる。
「こちらこそ、確かに契約書の方は拝見させて頂いています」
「うん。そうかそうか」
この握手に応じてやり取りを行い、話を進めるのはもっぱらマリーサだった。これでは普段の主従関係と変わらないように思いつつ、もっとも向こうからすれば、単に年上の姉の方がしっかりして見えるだけかもしれない。
「入山にあたっての条件にも同意しています。どうかお調べ下さい」
ここで行うのは、身体検査及び手荷物検査により、二人でどんな物を持ち込み、どんな武器を扱うのか。全てを事前に検めておくことで、魔石の違法な持ち出しがないか、作業員の盗品を持ち出していないか、確実にチェックをするという。
また、鉱山内は大量の魔素が出ている。
魔素を含んだ大気は体質によっては害が大きくなってしまうため、適合性を見極めるための医療検査も行われる。体質に問題があれば弾かれるか、危険を承知で入るための同意書が用意されることになる。
「では荷物や武器はこちらに、脱いだ衣服も同じテーブルにお願いします」
経営者が一台のテーブルを指す。
「さあ、脱ぐわよ? アリッサ」
単なる姉妹を装うため、主従関係を隠して言葉遣いも変化する。
「そうね。お、お姉さん……」
慣れないがそう呼びつつ、共に衣服を脱ぎ始めた。
じぃぃ……じぃぃ……。
じぃぃ……。
じっ、じぃ……じぃぃ……。
六人もの視線が突き刺さる。
マリッサがメイド服の紐を解き、しだいに下着姿になろうとしている横で、アリッサも革製の胸当てを取り外す。シャツを脱ぎ、上半身はブラジャーのみに、続けてスカートも脱いでいく。
幸か不幸か、前回の経験があるおかげで、下着姿には過剰な抵抗は湧いてこない。
ただ、ジロジロと見られながら何かをするのは、どうしても落ち着かない。気が散るような、気になるような、そんな感覚の中でブラジャーを取り外し、ショーツを脱ぐ。
マリッサと共に全裸になると、一糸纏わぬ姿で二人並んで、六人の男と向かい合う。
(奴隷にでもなった気分ね)
服を着た男の前で、自分達だけが裸となり、商品として陳列されている気分がする。身体検査とはわかっていても、どことない惨めさが胸で膨らみ、売りに出された悲劇の少女に今なら痛く共感できそうな気がしてきた。
(さすがに、少しは恥ずかしいわ)
いい加減慣れたと思いたかったが、やはり少しは恥ずかしい気持ちがある。
体毛処理をしていないのだ。
あの検問の時から、また随分と陰毛や尻毛が伸びてきたので、そろそろ処理をしようと思っていたら、マリッサが言い出したのだ。毛の処理に使う魔法ジェルは、皮膚にちょっとした影響を与え、魔石鉱山の魔素から悪影響を受けやすくなると。
学のあるアリッサなので、その指示を守って未処理なのだ。
確かに、魔素にまみれた大気の中では、魔法タイプの塗り薬を使った皮膚が病気になるケースがある。脱毛ジェルも同様で、皮膚に残った微細な魔力が魔素と結びついた時、思わぬ反応が起きて炎症に繋がりかねない。
もちろん、個人差がある。案外、何もないケースもある。
だが、用心にこしたことはない、
そういったわけで、アソコの周りは毛が伸び放題となったまま、後ろから見れば尻毛もそれなりに出ているだろう。単に裸になる恥ずかしさは言うまでもなく、未処理の汚いものを晒すかのような恥じらいも重なって、その分だけ頬は赤い。
(ま、それでも慣れたもんよ)
あの検問所の時よりは、まだしも平気な気持ちではあるが、いくらかは強がっている。慣れといっても、完全に慣れきっているわけではない。男の視線に堂々と肌を晒し、何も感じずケロっとしているかといったら、決してそういうわけではなかった。
「まずは荷物と衣類の方から検めていきますからね」
経営者がそう述べると、三人の重役達がテーブルへ向かう。迫り来る三人は、アリッサとマリーサの隣を横切ることでテーブルへ辿り着き、小袋に詰めた道具や武器から、衣服は下着にかけてまで、じっくりと調べ始める。
(まったく居心地が悪いわねぇ)
今回はマリーサも一緒だから、一人で脱ぐよりはまだしもいい。
しかし、後ろでは今頃ショーツまで触られて、ブラジャーも指でなぞられているのだろう。ベタベタと触られた後の下着を身につけるのは少々気になる。というより、気持ち悪いといい捨てて、本来ならばマリーサに新しいものを買ってくるよう命じるのが、貴族としてのアリッサの性格だ。
今はそうもいかず、ただ視姦されながら立ち尽くす。
(今度買い換えてやるわ)
などと心に決めつつ、自分の荷物が漁られている物音にアリッサは耐える。
「おや?」
しばらくして、一人が声を上げていた。
「何か不思議な道具が入っていますね」
「なんでしょうねぇ?」
あからさまに不思議がっている声に、アリッサとしても首を傾げる。
「何よ。変なものなんてないはずよ」
前回、アナルパールを発見され、恥ずかしい思いをした。二度と同じ過ちを犯さないため、きちんと宿に置いてきている。間違っても、これから魔物と戦いに行くというのに、荷物に紛れ込ませてなどいない。
「あ! アナルパールだね!」
「へ!?」
アリッサはぎょっとしていた。
まさか、そんなはずはない。
きっと何かの間違いだ――マリーサが隣で浮かべる黒い笑みには、アリッサは気づく様子がない。
「ああ、確かに!」
「そうだそうだ」
「ええ? でも、どうしてこんなエッチなアイテムを持ってくる必要があったのかな? これは気になるね? アリッサちゃん?」
重役達が一斉に、三人揃ってアリッサの正面に回り込む。
「あ、あ、あの、それはその……間違えて…………」
「へえ、間違えてねぇ?」
「ってことは、宿には持ち込んだんだよね?」
「使ってるってことでしょ? アナルパールを!」
おかしい、どうして入っている。
わけもわからず、アリッサは動揺していた。
「なんで……なんでなの…………」
アリッサには置いてきた記憶しかない。
荷物から抜いたはずの物品が、どういうわけか勝手に付いてきたかのような、不可思議な魔法にでも遭った衝撃で言葉が出ない。
「普段から使っているのかな?」
「ねえ? アリッサちゃん?」
「かかかかか関係ないでしょう!?」
アリッサは声を荒げる。
「いやぁ教えてよ」
「何かよからぬ目的じゃないか」
「実は恐ろしい武器ではないか、形式上は疑わないといけないから」
重役の一人がアナルパールを握り締め、これみよがしにアリッサへと突きつける。肛門でのオナニーにはまり、日頃から使用しているそれが、今はこうして男の手に握られている。その恥辱感に顔を染め、アリッサは目を背けた。
「そんなの……本来通りにしか使わないわよ……」
「本来通りとは?」
「だから……本来通り…………」
「その本来通りを教えて下さいよ」
あくまでも追求して、言い方を誤魔化すことは許してくれない。
そんな重役の言葉に耐えかねて、アリッサは声を荒げた。
「ああもう! お尻よ! お尻に入れるの!」
やけになってぶちまけていた。
「へえ」
「やっぱりねえ」
「アナルオナニーするわけか」
そして、わかりきった言質を取り、何がそんなに嬉しいのか、誰も彼もが必要以上にニヤニヤと笑っている。堂々と笑った顔もあれば、平然を装おうとしながらも、唇の歪みをどうしても止められずにいる顔もある。
(くぅぅぅぅ! 何が面白いんだか! 馬鹿じゃないの!)
「いやぁ、アナルでねぇ?」
関心とも感嘆ともつかない、何か満足した表情が目の前に浮かんでいる。
「そうよ! だから何!? 何か問題でも!?」
「いえいえ」
「あなたみたいに美しい方がだね」
「意外なものだな、と」
何が意外だ。
美しいのは事実だが、外見とアナルオナニーは関係無い。醜悪だろうと美しかろうと、興味さえあればやるはずだ。
「もういいでしょう!? さっさと戻しなさいよ!」
「はいはい」
アリッサとしては真面目に大声を出しているのに、男の方はヘラヘラと、仕方がないと言わんばかりにアナルパールを小袋の方へ戻しにいく。
(ああもう! ああもう!)
アリッサは怒りに歯を食い縛った。
(なんでまた! 確かに置いてきたと思ったのに! ああもう! 本当にもう!)
自分自身のミスだと思い込んでいた。
別の可能性など、アリッサは想像さえしていない。隣のマリーサがニヤニヤと、嬉しそうにしていることに気づいていない。自分の過ちに腹を立て、壁に頭を打ちつけたい心境にアリッサはある。
もちろん、男達の態度にも大いに腹を立ている。それに対して貴族権力を振りかざし、気持ち良く跪かせることが出来ない歯がゆさも強かった。
「このあたりで、次は検診といきましょうか」
腰の後ろに手を組んで、白衣の医師が前に出る。
「そうね。何でもいいから、さっさと済ませて頂戴」
いつまでも裸は居心地が悪い。
ふとマリーサの様子を横目で見るが、言うまでもなく頬に赤らみがある。早いところ済ませたいのは、マリーサとて同じ気持ちに違いないと、アリッサとしては信じていた。
「では最初に網膜と乳房から調べていくので、お二人とも頭の後ろに両手を組んで頂けますかね」
「まったく、罪人でもないのに」
「仕方がないわ。我慢しましょう? アリッサ」
「ええ、ね、姉さん……」
姉と呼ぶ照れくささも加わって、アリッサは余計に赤らみながら、指示通りのポーズによって己のバストを強調する。Fカップの形良い膨らみは、実に張りの良い美乳であるが、ぷっくりとした大きめの乳首は焦げ茶色である。
対するマリーサは、アリッサよりもいくらかサイズは小さいものの、同じく半球型の美乳であり、乳首も薄桃色で綺麗なものだ。自分の乳首にいささかのコンプレックスを抱くアリッサには、あの淡い色合いは羨ましかった。
「さて、あなたから」
医師のにったりとした顔が目の前に、視診行為で顔をジロジロと眺めてくる。網膜を覗き込むことで、魔法体質の型式を見ていることは、学のあるアリッサは説明を受けるまでもなく理解している。
だが、目と目で見つめ合う形になるのが、どうしても気持ち悪い。
(早くしなさいよ)
心の中で放った声は、圧として目つきにも浮かんでしまう。
「ふむふむ。では乳房の方は、と」
医師の視線は下へと移り、自ら無防備にも突きだしている形となる瑞々しい乳房が視診の対象となっていた。
「うぅぅ……」
間近で毛穴まで覗く勢いに、裸ぐらいは平気なつもりが、思った以上の羞恥心が湧いてくる。「さてはて、触診もしていきますからね」
(や、やっぱり……触るのね……)
鷲掴みにしようとする手が目の前にあることで、アリッサは身構える。
「んっ」
そして、実際に触れられて、アリッサは頬を固くした。
乳房の表面が撫で回される。指先が、手の平が、肌中の表面を滑っていき、皮膚がぞわぞわと落ち着かない。やがて指が食い込み始め、アリッサは一層の我慢を顔に浮かべた。
(私なら平気に決まっているのに)
自分の魔法体質くらいは把握しているアリッサには、ただでさえ貴族の身なら受けずに済む検査など、尚更必要ないものだ。それを直ちにこちらから証明したいが、そうもできない歯がゆさの中で、アリッサの乳房に五指は蠢く。
「んぅ……」
そのうち、もっと別の我慢もしていた。
「おや、どうかなさいましたか?」
「なにもないわよ。早くしなさい」
甘い痺れのことなど言い出せない。言うはずもなく、堪える色を強めた顔でひたすら触診の終わりを待つ。
「ん……!」
だが、乳首への接触が始まると、さすがに声が出そうになった。
「大丈夫ですか?」
「平気だって言ってるでしょう!?」
「では続けますからね?」
乳輪をぐるぐると、両手の指でなぞり抜き、つまんで引っ張る。乳首が済んだと思いきや、乳房の方を指先で掬い上げんばかりにして、下から上へと揺らしてくる。
板で押し潰すかのように、手の平で上下から圧してくる。ツボでも探るようにして指を押し込む。
あらゆるタッチの末にようやく乳房が解放され、医者はマリーサの方へ移っていた。
マリーサも同じく瞳を覗かれ、乳房を触診されている。
それを周りの男達はニヤニヤと、実に楽しそうに眺めているのだ。アリッサの時もそうだったが、マリーサの揉まれる姿も当然のこと嬉々として拝み、鼻息を鳴らしている。
「このあたりで、上半身の診察は終わりにして、一度身体的特徴を書類に取らせて頂きましょう」
医師は二人分の書類とペンを取り、書き込みを開始する。
「乳房、乳首、ホクロなど文面にしつつ、簡単なスケッチも行いますからね」
スケッチは重役がやるらしい。
二人の重役がそれぞれアリッサとマリーサを担当して、丸裸の肌に向かって鉛筆を走らせる。
「……」
「……」
黙々とした時間となった。
ひたすらに鉛筆が紙を引っ掻くが聞こえ、他にあるのは音のない視姦のみである。経営者や鉱山長が飽きずに二人の肢体を眺め、医師もアリッサのことを見つめている。
前を描き終わると後ろ向きになるよう伝えられ、アリッサは尻に如実な視線を感じた。
(マリーサは……)
ふと隣を横目で伺うと、頬を染め上げ俯きがちに、落ち着きのない瞳で黙している様子があった。
(ったく、しっかりしなさいよ。お姉さん)
元より、侍女に風呂の世話をさせているアリッサと、そうでないマリーサでは、肌を晒すことへの慣れ方が違う。検問所での検査までこなしたアリッサに比べ、マリーサの方が新鮮な羞恥心に駆られるのは当然だろう。
「書き終わりましたよ」
そう告げられ、二人して振り向く。
「ふん」
その瞬間に鼻を鳴らしたのは、アリッサにとっては体験済みの、完成した絵を見せつける行為があったからだ。
確かに、恥じらいが完全に消えているわけではない。まるでケロッとしているとも言い難いが、こんなことは想定済みのことでもある。一瞬は慌てかけたが、腰に手を当て睨み返してやる程度の余裕は持てた。
しかし、マリーサは目を逸らしていた。
少し様子を見ただけで、全身から恥じらいが醸し出されて、絵を直視できずにいる空気がよく伝わる。自分の裸が男の手中に収まっていることへの、恥辱というべきか、弱点を握られたというべきか、そんな感覚に溺れているのが見て取れた。
(大丈夫よマリーサ。こいつら、どうせこれ以上なにもできないんだから)
アリッサは気を引き締め、真っ直ぐに彼らを見据えた。
「なによそんなの。はいはいお上手ね? さっさと次へ移ってくれる?」
「ははっ、これは失敬。では次に身体計測を行います。身長、体重、スリーサイズなどを取らせて頂くので、もうしばしお付き合いを」
「付き合いたくないけどね」
それらが済めば、少しは終わりに近づくだろう。
アリッサは身長計へ迫っていき、さっさと計れとばかりに背中を付け、そこで背筋を伸ばすのだった。
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