*第3話「飛べないライオン」より
『止まれ! ここは帝国軍の演習地だ!
無断通行は禁止されている!』
†
レオ、バズ、サリーらの三人が海を渡って移動を行っていたのは、帝国もジャミンガもいない空白地帯がそこにあるからだ。帝国に追われるお尋ね者となった身には、それ以上の地はないはずだった。。
しかし、知らぬ間に演習場が出来ていたのだ。
それを目前に、バズは慌てて後退を試みるが、演習場を目視した頃にはとっくに帝国船に囲まれており、無断通行は許可できないとの勧告を受けたのだ。周囲に逃げ場はなく、面々は仕方なく船を降りることとなる。
民間人が何故こんなところにいるかと訪ねられ、運び屋の商売だからと、そんな話でお茶を濁そうとするものの、帝国軍との取引履歴とライセンスを提示すれば、登録は二名なのに三人いるのはどういうことかと指摘を受ける。
新入りなんで、登録が済んでいない。
という誤魔化しが通じたものの、登録がされているレオとバズについては本部に照会を行い、確認が取れしだい通行を許可するとの話になる。
ただし、確認が終わるまでのあいだは監視がつく。
しばらくは足止めを受けるものの、拘束されるわけではない。帝国軍の中でも、お尋ね者となったレオ達の情報は、まだ全体には共有されきっていなかった。運良く誤魔化しきれているものの、一刻も早くこの場を離れたい気持ちは否めない。
そんな時にだ。
「そこの女の子。名前は?」
一人の兵士が銃を抱えつつ、そんなことを尋ねてきた。
「え? さ、サリー・ランド……ですけど……」
「登録が済んでいない君については、ちょっとした取り調べを行う」
淡々と言い出す兵士。
「取り調べ?」
レオが立ち上がり、視線を真っ直ぐに兵士に突き刺す。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ! 何もこの子は――」
明らかに不安を浮かべるサリーに、バスも慌てて取り繕う真似をする。レオも警戒心をあらわにして、いざとあったら機械化した肉体の強さでもって戦う意志で構えていた。
「大丈夫だ。軽い質疑応答に過ぎない」
あるいは彼らは、レオ達の素性に気づき、サリーを引き離そうと考えているのか。
そんな不安も浮かんで来る。
別室への連行など、できる限り避けたい話だ。
「それ、俺も着いてっちゃ――」
「駄目だ」
レオの言葉は一蹴された。
レオさえ一緒なら、いざという時にサリーを守れるが、それが封じられては痛い。
三人には状況が読めない。
バレていて、これから拘束しようとしているのか。あるいは本当に、ただ未登録だから行う手続きがあるのか。前者ならここで今すぐ抵抗したいところだが、後者ならば無用なトラブルを起こす方が悪手となる。
どちらが吉で、どちらが凶かがわからない。
これはそういう状況だった。
「……大丈夫です」
その時、サリーは言った。
「すぐ、戻りますから」
無用なトラブルの方を嫌って、サリーはそうして兵士に連れ出されていくのだった。
†
名前は? 出身地は? 年齢は?
いつから運び屋の仲間に?
そういった質問攻めはわかっていた。
いつからなのか、どうやって雇われたのかのエピソードなど、そうそう綺麗に思いつくものではなかったが、それでもサリーは苦し紛れの応えを吐き出し、苦々しい笑みを浮かべる。誤魔化せているのかいないのか、まるでわからない不安を胸の奥に押し隠し、とにかく質問に答え続けた。
サリーを不安にさせているのは、何もそればかりではない。
男という男の数々に囲まれているのだ。
質問を行う男、サリーの回答を書き留めている男。
振り向けば、ドアの方にも逃亡防止のためのようにして、二人の男が銃を抱えて立っている。何のためかはわからないが、とにかく立ち会っている男もいる。
そして、何よりもサリーの心に影を差し込み、表情を曇らせるのは、実にいやらしい笑みを浮かべた肥満の男である。サリーのことをつま先から頭の上まで、舐めるように見て回す視線には、どうしても怖気が走る。
顔さえみれば、いかに卑猥なことを考えているかはよくわかる。
脚や胸ばかりを見ているのも、よくわかる。
そんな中でだ。
「そろそろボディチェックといこうか」
肥満男が言い出すと、質問男が脇にどき、その役目を肥満に譲る。
この中では最も地位が高いのは、肥満男なのらしい。
「あの……ボディチェックって…………」
「心配はいらん。大人しくしていれば、すぐに終わるからね?」
じゅるりと、ヨダレの音が聞こえるような舌なめずりで、肥満男は自身の唇をべったりと濡らしてにじり寄る。明らかにセクハラを目当てにした顔つきに、まるで追い詰められるようにして、サリーは一歩ずつ後ずさる。
完全に、痴漢目当てのボディタッチを想像していた。
「あまりそういうことは…………」
弱々しく咎めたところで、そんな言葉に力はない。
「駄目だよ? サリーちゃん。ちゃんとやらないと、通行が許可できないんだから」
さらに迫る肥満男に、サリーはさらに後ずさり、とうとう背後に控える二人の兵士が、逃亡防止にドアの前に立っていた二人が、それぞれの抱えた銃をサリーの背中に押しつける。銃口は向けないが、二人の銃身がクロスした壁により、サリーはもうこれ以上は下がることができなくなった。
「……変なこと、しませんよね?」
サリーがそう問いかける声の震えには、お願いだからいやらしいことはしないで欲しいと、切実に訴えかける気持ちが存分に込められていた。
「君しだいさ」
遠回しに、手間をかけさせれば酷いことになるように言われては、今度は下手に逃げたり騒いだりすることが怖くなる。サリーはぐっと気持ちを堪えて押し黙り、自分に向かって伸ばされて来る肥満男の両手を受け入れた。
「早めに……済ませて下さい…………」
「そうだね。ではでは」
腰のくびれが、両手でがっしりと掴まれる。
全身に怖気が走った。
もっともらしいことを言いながら、女の子の身体をまさぐるつもりということを、わかっていながらサリーは耐えているしかない。
いつしか背後の兵士は離れていく。
最初はまだしも、ボディチェックといえた。
腕を少しばかり持ち上げるように指示が出て、バンザイではないが、脇下が空くように両腕を軽く上げ、すると肥満男はくびれから脇にかけてを調べていた。手の平で軽く圧しつつ、パンパンと叩きながらのようにして、だんだんと上へ上へと、そうして脇の部分も探る。
不快は不快でも、正統なチェックなのなら、まだしも我慢の余地がある。。
いや、目の前にある表情は、女の子に身体に触って楽しそうにしているものだったが、とにかく耐えようのあるものだ。想像していた痴漢行為に比べれば、ずっとマシなのだった。
「後ろを向こうか」
今度は背中を触られた。
肩甲骨に手の平が、そしてぐるぐると撫で回され、背骨のラインに沿って探られる。それもまだ、服の内側に危険物がないかのチェックに過ぎない。卑猥極まりない表情に反して、さほどしつこくねっとりとした手つきではなかった。
しかし、その時だった。
初めて猥褻な手つきを使い、しかもお尻を触られた。
「ひッ!」
そっと、尻のカーブに手を乗せて、即座にぐにっと揉み込む手つきに、サリーは反射的に悲鳴を上げ、背筋を反らし、慌てたように両手で後ろをかばっていた。肥満男の手を払い退け、本当に咄嗟に、お尻を守っていた。
「どうしたのかなサリーちゃん。長引いちゃうよ?」
「で、でも! お尻は……!」
「長引くよ?」
肥満男は決して有無を言わさない。
あくまで尻を触らせなくてはならない雰囲気は、この部屋全体が醸し出していた。見張りの兵士二人から、早くしろと言わんばかりの視線が突き刺さる。「ちっ」と舌打ちが聞こえ、仕事が長引いていることへの苛立ちを抱える男もいる。
こんな中では、サリー一人が割を食うしかなかった。
お尻を守ろうとしていた手をどかし、静かに俯いてみせた途端、先ほどのようにスカートの上からタッチされ、そのまま手の平は張り付いてくる。表面を撫でる形で、肥満男は尻のフォルムをなぞっていた。
(やだ……こんなこと…………)
右の尻たぶが、ぐるぐると撫で回される。
手の平全体を使ってフォルムをなぞり、それによって衣擦れを起こすスカート丈が、手の動きに合わせてずれている。ぐるぐるとした動きに合わせ、左右にずれ、上下にも動き、最初は自然とそうなっていたものが、肥満男の目論見がしだいに現れていく。
少しずつ、丈を持ち上げていた。
五指を芋虫のようにくねらせて、揉みながら丈を掻き上げ、わずかずつ、少しずつ、ずらしていく。
やがては丈が上がりきり、肥満男の手はストッキング越しのショーツの尻に当たっていた。
尻しか、触っていなかった。
手慰みのようにして、肥満男の左手は腰のくびれを掴んで上下に撫でるが、とっくに確かめた部位をさすっても意味はない。もはやボディチェックなどではなく、単なる痴漢行為と化していた。
「すみません……」
「どうしたね」
「お尻ばっかり…………」
もちろん、それは痴漢行為をやめて欲しい気持ちから、か弱い声でこぼしたものだった。
「そうだね。胸も確かめようか」
「そんな……!」
肥満男は都合の良いように受け止めて、サリーはもう泣きたいような顔を浮かべていた。
しかも、尻から手が離れるわけでもなく、左手さえも尻に張り付き、肥満男は両手でもって左右の尻たぶを同時に揉みしだく。勝手気ままに指を踊らせ、食い込ませ、サリーの尻はひとしきり遊ばれていた。
満足いくまで何分かけても揉み尽くされ、やっと両手が離れた後も、続いて前を向くように指示が来る。そうすれば胸を揉まれるとわかっていて、逃げも隠れもできないサリーは、ここでトラブルを起こすことも恐れて素直に身体を前に向け、胸に向かって伸びてくる両手を黙って受け入れていた。
(こんなの……おかしい…………)
さして大きくはない、けれどささやかに膨らんでいるサリーの胸は、服の上からとはいえ肥満男に揉まれている。こうして胸を触るのさえ、必要以上に時間をかけ、一体何分揉まれていたかもわからない。
「さて、衣服に物を隠している様子はなし」
などと言いつつ、手は胸から離れない。
指に強弱をつけながら、延々と揉み続けている。
「お待ち下さい。持ち出し禁止のリストには貴重な繊維の数々も」
もうすぐ終わるかと思いきや、しなくてもいい助言を一人の男が行った。
舌打ちをしていたのに、自分で仕事を伸ばそうとしていた。
「なるほど」
そして、肥満男は大きくニヤける。
「また、違法薬物の国外持ち出しの実例として、性器及び肛門に隠したケースがあります。一応調べられては?」
その瞬間、サリーの脳が電流で弾けた。
性器や肛門と聞き、ならばこれからどうなるか、実に素早く理解したサリーは、そうなることを心の底から恐れて反射的に叫んでいた。
「そんなことしません! そんな……恥ずかしい場所……!」
「登録が済んでいないということは、信用がないということだ。別にサリーちゃんの人柄がどうこうという話じゃなくて、規則として簡単に信じてはいけないことになっている。どんなに善良に見えても、立場上は疑ってかからなくちゃいけないんだ」
またしても、もっともらしいことを言っている。
言葉を聞くには、犯罪防止にはその方が合理的と言えなくはないが、ここまで痴漢とセクハラを働いた肥満男の口からでは、そういう名目でサリーのことを嬲ると宣言して聞こえても無理はなかった。
「お願いします! それだけは!」
「それだけは?」
「恥ずかしくて……とても…………」
「うーん。そうだねぇ。確かに、そこまでするのは可哀想だし、男だって嫌がるからねぇ?」
自分の身が危ない時なのに、男でも同じ目に遭うのかという、そんな疑問をサリーは抱く。
どうか、裸だけは勘弁して欲しい。
アソコの穴も、肛門も、何も見せたくない。
それだったら、触られるだけで済む方がどれほどいいか。
「そうそう。国外持ち出し禁止の繊維を下着に仕込んで、後で解体して取り出すっていう手口があったんだよ。みんな君達が共和国へ行くかもって思っているから、そのあたりは厳しくしていかないとね」
肥満男がニタニタと語っていく。
「つまり、スカートを捲って下着を見せるということだ」
一人の男が捕捉の言葉を続けていた。
「それで裸にならなくて済みますか?」
サリーは縋る思いだ。
ただスカートを持ち上げて、中身を見せれば済むというなら、一体その方がどれだけマシか。
「ああ、済むとも。捲ってごらん?」
だから、サリーは自分の丈を握り締め、だんだんと持ち上げていく。
じぃぃぃぃぃぃぃぃ…………。
何人もの視線が、これから丸見えとなるサリーの下着を見るために突き刺さる。ドアを守っていた二人さえ、パンツのために移動して、この場にいる男の全てが鑑賞の態勢に入っていた。
(こんなに見られながらなんて……)
嫌だった。
恥ずかしかった。
しかし、サリーは丈を持ち上げ、ストッキング越しの太ももは、それに応じてみるみるうちに露出面積を広げていく。やがて白いショーツの三角形の、その一点が見えるなり、すぐにでも純白の下着は視線に晒されるままとなった。
「うん。そのまま。全て、しっかりと見えるようにね」
言葉によって固定され、サリーの腕は動かない。ショーツが丸見えとなったまま、ストッキングの布を介することで色合いの変わっている純白は、全員の目を楽しませ、肥満男のこともニタニタと笑わせている。
早くスカートを戻したい。
「では確かめます」
だが、一人の男がサリーの目の前までやって来て、しゃがみ込むなり顔を近づけ、至近距離から下着を凝視する。それどころか、ストッキングに手をかけて、下ろす真似までした時には、またしても驚きと恥ずかしさで、反射的な抵抗をしそうになった。
「おっと」
と、その声がかからなければ、全力で手で隠し、もう見せまいとしただろう。制止が効いたことにより、サリーの腕は動かなかった。下ろされたストッキングは膝に絡んで、正真正銘の純白が晒されていた。
「繊維を鑑定させてもらう」
男はショーツに指を触れさせ、目視と触感で品定めを開始した。
持ち出し禁止の繊維には、一体なにが該当するのか。検討もつかないサリーにとって、ただ下着を探られる恥ずかしさばかりか、これがきっかけに逮捕や長期拘留といったことになりはしないかの恐怖もある。
ショーツ越しに、指を押し込まれる感触があった。
すぐ下には陰毛が生えているような、そんな位置を指で押し、何度も強弱をつけながら、表面をさすりもする。これだけでも年頃の乙女には辛すぎて、このままアソコに触られないように願う気持ちは、神様に必死のお願いをしたいほどである。
クロッチの上にあるゴムの部分に手が及び、指が入り込んだとき、アソコを見られてしまう予感にサリーは引き攣る。
(いや! お願い!)
誰にでもなく、ただ運命に向かって、脱がされずに済むことを祈り叫んだ。
そして、それは果たして叶ったといえるのか。
パツンっ、
それはゴムを引っ張り、それから離す。
ゴムを弾く遊びであった。
ぱつ、パツ、パツン、
意味のない遊びで引っ張って、軽い引っ張り具合だから、幸い下着の中を見られるわけではない。しかし、ショーツを遊び道具にされ、弄ばれる悔しさと、何も言うわけにはいかない歯がゆさに、サリーは歯を食い縛る。
「後ろを向いて、尻を出せ」
命令口調であった。
有無を言わさぬ雰囲気に、サリーは泣く泣く後ろを向き、お尻が見えるように丈を持ち上げ、至近距離からの視線を嫌と言うほど感じ取る。
尻を揉まれた。
何らの遠慮もなく、当たり前のように両手を尻たぶに貼り付けて、ぐにぐにと指を踊らせ揉み始めていた。
(また痴漢みたいに……)
まるで声を出す勇気を持てない、大人しい少女のように、サリーは尻を揉んでくる手の平に耐えている。
「これは詳しく調べないと判断がつかないな。脱いでもらおうか」
「そんな……!」
「大丈夫だ。アソコを見せる必要はない。スカートで隠せるだろう」
「でも……」
「自分で脱がないなら、力ずくで脱がせるが?」
脅迫されれば、もう従うことしかできなかった。
サリーはストッキングを脱ぎきると、スカートの内側で見えないように、気をつけながらショーツを下げる。
じっ、
じぃぃ……
じッ、
じぃぃぃ――――
視線という視線が、サリーの下着を脱ぐ動作に殺到していた。ショーツがスカートの下まで降りて、膝を通過していく有様から、足を一本ずつ抜いていく動作まで、その全てを見届けていた。
「渡しなさい」
サリーはショーツを男に手渡す。
「さすがに脱ぎたてだ。体温がよく残ってるぞ」
男はニヤニヤと目の前で、これみよがしにショーツを弄び、わざとらしくジロジロと、クロッチの裏側を眺め始める。それはアソコの穴が接する部分の、生理からなるオリモノの痕跡が残る場所でもあった。
男達はショーツをテーブルの上に置き、何やら検査の器具で調べ始めた。虫眼鏡にも似た形状の、下着の抗生物質を調べるのだろう器具は、コードによってコンピューターに繋がっている。その画面に測定結果が出るようだった。
「シロか。二重の意味でな」
「ははははっ」
検査にはかからないものの、下着の色をシャレのネタにまでされてしまう。下着を穿かない股がスカートの内側でスースーするのも、ノーパンとなったサリーのことをいやらしい目で見てくる視線も、ショーツを持ち上げニタニタとしている男も、全てが気になった。
「一応、ブラジャーも調べておこう」
「え……!?」
「そいつはいい」
「さっそく脱いでもらわないとな」
もうこれで済んだのではなかったのかと、そんな動揺で瞳を震わせているサリーの思いなど関係無く、男達はそうすることを決めている。
「では脱ぎなさい」
肥満男が命じてきた。
「でも! これ脱いで、ブラも取ったら……!」
サリーの衣服は上下一体で、その上に一枚を羽織っている。それらを脱ぐということは、つまり全裸になるということだ。
「それもそうだねぇ? では代わりのパンツを用意しようか?」
まともに返してくれることもなく、肥満男は顎で指示を出しては持って来させて、そうして男が用意したのも、とてもでないが穿けないようなものだった。
ヒモのショーツだった。
そもそも、布というものがない。アソコの部分も、尻の部分も、前後両方がT字になっている下着など、そんなはしたないものは穿きたくない。見ただけで引いたサリーだが、すると肥満男はこう言うのだ。
「おや? ならノーパンのまま脱ぎ脱ぎするかい?」
「それは……」
結局、有無を言わさない。
そうと決めたら通すものと、ここではそう決まっている。
卑猥な下着を受け取って、それを穿くしかないのだった。
***
サリーは丸裸同然で震えていた。
言われた通り、単なるヒモでしかない下着を穿き、それから他の全ては脱ぎ去って、ブラジャーも男に手渡している。ストリップショーも同然の状態で脱衣を披露し、あまつさえ下着を取られる恥辱に表情を歪めきり、サリーはこれ以上ないほどに赤くなっていた。
Tバックのヒモは割れ目に食い込み、お尻は全て丸出しだ。
前の方さえヒモなので、アソコのワレメに沿う以外、肉貝はほとんど見えている。たかだかヒモ程度の面積では隠せるはずのない女性器はしっかりと露出しており、サリーは必死になって手で隠していた。
腕で乳房を守りつつ、手の平でアソコを覆っていた。
(こんな……! こんなの……!)
辛すぎる状況だった。
それでなくてもヒモなのに、腰の両サイドの部分も結んで締めるタイプのため、リボン結びを引っ張るだけで脱げてしまう。こんなにも心許ない下着など、あってもなくても同じようなものだった。
しかし、ならば本当になくてもいいかと思ってみるも、こんなヒモにも縋りたいほど、サリーは裸で心細い気持ちになっていた。
「お願いします。早く返して下さい……」
目尻に涙を溜め込みながら、サリーは切実に訴えかける瞳を浮かべている。
「まあ待ってて」
肥満男がサリーの腰に手を回す。
素肌のくびれを直接さすられる不快感に震えつつ、サリーはそのままテーブルの目前まで導かれた。テーブルにはブラジャーとショーツが並べて置かれ、ショーツの方はわざわざクロッチの裏側の、オリモノの染みが見えるようにされていた。
(ひどい……)
何の配慮もない。
むしろ、サリーのことを辱めて、彼らは楽しんでいる。
「どうだ?」
ブラジャーが持ち上げられ、目の前で測定にかけられる。
「こっちも、シロだな。はははっ」
手で摘まんでぶらさげて、そこに測定器をかざしていく。コンピューター画面の測定結果を見た男は、笑い交じりに答えていた。
「じゃあ! も、もう返して下さい!」
サリーは訴えかけるのだが、全員が笑っていた。
「へへっ」
「はっはっはっはっ」
一人一人がせせ笑う。
一体何がおかしいのか、不安にまみれるサリーに向け、肥満男は再び尻をがっしり掴み、揉みながら、耳に息を吹きかけんばかりの、唇さえ触れそうなゾっとする距離で、囁くように告げてくる。
「通行料として、サリーちゃんの下着は接収する」
「うそ…………」
「代わりに、今穿いているそれをあげるよ。ああ、ヒモのブラジャーもね」
肥満男は痴漢の手つきで、手の平全体を使ってじっくりとさすりつつ、たまに思い出したように指を食い込ませ、ぐにぐにと深く揉み込む。
そんなこの状態だけで、サリーには泣きたい辛さだ。
本当にヒモのブラジャーを手渡され、乳房を隠すべき布の大きさは、せいぜい乳首だけを覆えばいい、非常に小さな三角形だ。もう自分の下着は帰って来ないのだということに呆然としながら、サリーは目の前のヒモブラジャーを受け取ることなく放心していた。
そして、躊躇っていた。
肥満男の手から受け取るために、右手を使っても、左手でも、せっかく隠している身体の一部を見せてしまう。ヒモをワレメに沿わせただけのアソコも、それに乳房も、どちらも一秒さえ見せたくはない。
だが、ずっとこうして立っているわけにもいかなかった。
「どうする? いらないなら、ヒモパンツも返してもらうよ?」
そう言われ、片方の手で受け取ろうとする。
するとだ。
「おっと」
わざとらしく持ち上げて、サリーの手からヒモパンツを遠ざけた。
「え、あの……」
「きちんと両手で受け取るんだ」
「…………は、はい」
そうするしかなかった。
乳房に視線が突き刺さり、乳首まで見られている。正面からも、横合いからも、誰もが胸を舐め回す。
視姦で胸を攻められながら、ヒモブラジャーを受け取るサリーは、本当に乳首を覆う分の布しかない、もしも乳輪がこれより大きければ、結局はみ出るような卑猥な下着を身につけた。 あまりにも変態的で、一層のこと全裸の方がマシではないかと頭をよぎるほどだったが、ほんのわずかでもいいから隠れているのを、わざわざ露出したいとも思えずに、淫らな女と言われそうだと思いつつもサリーはそれを着用していた。
幸い、サリーの乳首は小さな布の範囲に収まるが、本当に乳首だけを隠していて、乳房自体は丸出しだった。
「では衣服も一応みんな調べるよ? ああ、大丈夫、こっちは接収しないから、安心して待っていてくれたまえよ。ところで暇だね? 終わるまで、オジサンとスキンシップでもしていようか」
地獄のような時間であった。
そもそも、逆らえば逆らったで、今度は力ずくでどうにかされはしないかの恐怖もあり、サリーは嫌でも大人しくしていた。全身をまさぐられ、胸を揉まれて、結局はアソコさえ触られても、サリーは最後まで静かに耐え忍び、ただただ終わりを待っているのだった。
†
戻って来たサリーを見るに、真っ先に声をかけるのはレオ・コンラッドであった。
「大丈夫だったか!? サリー」
怖くはなかったか、何ともなかったか、真っ先に気にかけていた。
レオは知らない。
知りようもない。
サリーが今の今までどんな目に遭い、しかもまともな下着でもなくなっているか。想像すらすることはないだろう。レオが器具しているのは、強面の男に大声を出されたり、知らない人達に囲まれた状態で、何か都合の良い発言をするように脅されてはいないか。そういう心配ばかりであった。
性的な辱めなど、常識としてないだろうと、レオはそう思っているのだった。
「大丈夫! 大丈夫だから……!」
サリーはすぐさま炭へ駆け込み、レオにもバズにも背中を向けて蹲る。
明らかに要すがおかしかった。
「なあ、どうかしたのか?」
バスも声をかけてみる。
「何でもない! 何でも……ちょっと疲れただけだから…………」
サリーは自分の殻に閉じこもり、決して口を開こうとしなくなる。それを気遣い、レオは辛抱強く声をかけるも、それでも乙女にしてみれば、あんな辱めを受けたなど、あっけからんと言えるはずはないのだった。
やがて、レオも気を変えて、無理に喋らせるのはまずいと思うようになる。
そんな風に、サリーの身に起きた何かを聞き出すことは諦めて、暗くどんよりとしたものを引きずりながら、通行許可を得たので一行は船に乗り、演習場を後にした。
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