モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。
今の沙織が身じろぎしても、下須井の乳揉みから逃れることは叶わない。足を踏みつけてやろうとはするものの、それしきは下須井とて読めるため、全ての踏みつけはかわされる。むしろ動けば動くほど、尻に挟まる肉棒に刺激を与えてしまっていた。
『おおっと! オッパイを揉まれています! 揉まれています!』
「ぐへへぇ、実況されてるぜぇ?」
それだけではない。
天井に釣り下がる四つの巨大モニターは、全てが沙織の胸をアップにしている。くねくねと踊る五指が乳房に食い込み、大胆に捏ね回す光景がよく映っていた。
「やめろ。これは戦いじゃない」
「はっはっは! これは俺の立派な技だぜぇ? 女の力を封じて、喘がせることで男が有利に立ち回る必殺技よォ!」
客席は沸き立っている。
もちろんブーイングの声もやまないが、素直に興奮している層の観客は、ここぞとばかりに下須井コールを放っていた。
『モミモミと踊る指先! それは柔らかな乳房を揉み潰し、黒いスポーツブラの中から着実に突起を浮かべ始める。乳首が勃起し始めているぞぉ?』
沙織はカッと顔を赤らめた。
スタジアムの収容人数約五万人以外にも、テレビ生中継も行われている。スタッフや各職員も存在する。あまりにも多数の人間が、同時に沙織の痴態を見ていることになるのだ。
「知ってるか? 沙織よぉ」
「な、なんだ……!」
「地上波じゃあ、オッパイ揉まれたお前なんざ放送できねぇ」
「くっ」
「だが世の中には有料チャンネルもあるよなぁ? おっぱい放送できる局ってあるんだぜ? お前が乳を揉まれる姿は、確実に世間に発信されちまってんのよォ」
すなわち、決定的瞬間のキャプチャーはインターネットで拡散され、この瞬間から神谷沙織の恥辱ワンシーンは、永遠に歴史から消えることはない。卑怯な薬を使われようと、どんな過程があろうとも、そんなことは関係無しに容赦なく映像は出回り続ける。
「はしたない! 戦いとは頂点を目指す道のり! それを穢すな!」
「穢されたくなければ、お前自身が守ってみろよ」
下須井はスポーツブラをずるりと持ち上げ、生の乳房をあらわにした。
『おおっと! 生のプルンとしたオッパイが、その桜色の乳首を立てながら、瑞々しい果実の香りと共に姿を見せたァァァァ!』
同時に客席も、さらに一段階沸き立っていた。
「馬鹿な! こんな馬鹿な!」
自分で自分が信じられない。
どうして、こんなことに――。
アジアチャンピオンでもある沙織にとって、もはや日本国内に敵はいない。この大した強敵もいないイベントは、再び海外へ出るためのおこずかい稼ぎに過ぎなかった。自分が連戦連破を果たすのは、肉食獣がシカやウサギを捕らえるがごとく当たり前の自然の摂理とさえ思っていたのだ。
しかし現実には、乳肌に指が食い込み、好きなように揉まれている。
「よく聞けェ! 神谷沙織のオッパイは、ゴムボールみたいにブヨブヨとした感じだ。物凄い弾力の良さと、コリコリした乳首の触り心地が最高だぜ!」
「や、やめろ……!」
「おいカメラども! こいつのオッパイをよく映せ!」
下須井はマットに腰を落とし、沙織の姿勢も強制的に変更させた。
男股の間に座らされ、両腕は腰の後ろに封じられる。手の甲が両方とも尻に潰されてしまっているので、腕での抵抗はできない。
ならば足は――。
沙織の脚は、下須井の足によって開かされていた。
まず下須井の姿勢を説明するなら、体育座りの足を開いたM字に近い座り方である。沙織の両足ともが、そんな左右に立てられた足の中に捕まり、大胆な開脚を強いられている。弱体化の薬が効いた沙織では、この状態から脱出できない。
つまり、沙織の胸もアソコも、下須井は好きなように触れるのだ。
そんな有様の沙織は、巨大モニターの画面サイズに全身丁寧にぴったり収まり、生乳を揉まれ続けていた。
「見ろよ。目の前のカメラが、モニターにお前を中継してるんだぜ?」
リングの外側にいるカメラスタッフは、撮影用の大型機材のレンズを向け、こんな沙織の姿を容赦なく撮っていた。
(こんな狼藉の場面を平気で記録に残そうというのか……!)
カメラとは目も合わせたくないように、沙織は顔を横に背けた。
「そして、見ろ! モニターにはお前がちゃーんと映っている」
見上げれば、そこには沙織自身の姿がある。
自分では見えない自分の姿が、解像度の高い画面サイズで、実際の身長よりも大きく映し出されている。無残に乳を揉まれて、足も左右に投げ出す正面からのアングルが、嫌というほど鮮明だった。
「何故こんなことをする。下須井」
「はん! 調子に乗ったお前にお仕置きをしてやるためさ」
「……調子にだと?」
沙織は自分が調子に乗っている自覚が――否、乗ってすらいない。慢心や見下しとは全く質の違う沙織の心は、あらゆる格下に関心自体を抱いていない。強くなりすぎた弊害でか、そこいらの生半可なバトラーなど、人間がアリを踏み潰しても気がつかないのと同じほど無関心だ。
ゾウのように巨大な生き物が、果たして蚊のように小さい存在に気づくか。
レベル99の勇者がはじまりの草原でスライムを倒したとて、そこに強敵を打ち倒した喜びや達成感が沸くものか。
良くも悪しくも、ただひたすら前を向いて歩き続ける沙織には、いつまでも後ろを歩く弱者など視界にすら入らない。
そして、下須井ヒロマサとは、沙織の関心対象にはならない強さだ。
そんな男の指が、沙織の乳首をつまんでいた。親指と人差し指で、強弱をつけるように挟んでは引っ張り、左右につねり、存分に刺激を与えている。
『なんという格好! なんという恥辱! これはAV撮影の光景か何かでしょうか!』
(え、AVだと……!)
沙織は真っ赤な顔を伏せ、屈辱に全身を震わせた。
「発表する! いいか? 神谷沙織の乳首は、グミのように硬い弾力がある。オッパイもだ! 指を跳ね除ける力は強く、物凄い揉み心地だ!」
『世紀の発表! 愛し合う恋人にでもならない限り、決して人には知ることのできない、十七歳の少女の情報が、五万人以上いる観客に向けて発せられる!』
そんなことは聞きたくない。
下須井の言葉も、熱い実況による言葉責めも……。
しかし、両腕が封じられている沙織には、耳を塞ぐことさえ許されない。発表を喜ぶ観客のざわめきも、下須井の興奮した息遣いも、鼓膜への到達を拒めるものなら拒みたい音が、容赦なく耳の穴に流れ込む。
『さすがの沙織も恥ずかしいのか。耳まで赤くなった表情を隠そうと、じっと下を向いたままカメラから目を背けています』
沙織の内心を見抜くような実況までされてしまい、屈辱の感情がふつふつと煮えたぎる。
「許さん! 許さん許さん!」
何がなんでも許すまいと、必ずや下須井を叩きのめそうと、必死の身じろぎを行うが、腕の締め付けを強められれば抵抗は封印された。
「おりゃぁ!」
下須井はスポーツブラを左右に引き千切った。
「いい加減にしろォ! このゲスがァ!」
腕の締め付けがなくなりなり、すぐまた身じろぎで暴れるが、その動きはDカップの乳房をプルンプルンと、左右に激しく揺らしている。
『オッパイが揺れています! なんという光景でしょう!』
必死に逆転を試みる沙織の頑張りは、実況の手でオスの欲望を刺激するエッセンスへと変換され、スタジアム全体の空気も変わり始めた。
もう、これは恥辱のショーだ。
沙織が好きなようにされる光景を楽しむ場所だ。
意図的か否かはともかくにせよ、実況の仕事はそうした空気を作り上げ、ニヤニヤと素直に楽しむ観客の比率は一人また一人と上昇している。薬を使った卑怯な手口に反対して、ブーイングを飛ばしていた良識派は、多数決に押されるように鳴りを潜めて押し黙り、今ここにある全ての感性は、いいぞもっとやれ! という下須井への応援に統一されてしまっていた。
「ほーら、お客さんもお前のオッパイが楽しいとよ?」
下須井は再び腕を巻きつけ、身じろぎを止めてしまう。
「馬鹿な……」
「耳を傾ければわかるだろう? みんなが喜んでんだよ。お前のオッパイにな」
下乳に指を沿え、見せつけんばかりにプルプル揺らす。綺麗な球形状のバウンドは、その張りの強さにより、小刻みな振動から直ちに元の形に戻ってしまう。その都度その都度、一瞬で揺れを沈める弾力は、そのたびに下から振るわされ、プルプルと揺れ続けた。
『乳房の痙攣とも言える光景。沙織選手、されるがまま』
下須井は次に、沙織のスパッツに手を入れる。
もっとも大事な部分に指が迫って、沙織はあらゆる感情から全身を強張らせた。下須井ごとき本当は負けるはずのない相手であること。多くの観客に見られていること。戦いという神聖な舞台でこんな目に遭わされること。
「発表しよう! あるべきはずの場所に毛の感触がない! 剃ってある! 神谷沙織のマンコはツルツルだ!」
『なんということだ! 今その手で、沙織がパイパンであることが明かされた!』
「それだけじゃねえ! 濡れているぜ! この状況で、無理矢理されてな!」
『まさか! 感じたというのでしょうか! ここで沙織にマゾ疑惑が浮上する!』
次々に沙織に秘密は明かされて、右手の潜り込んだ黒スパッツがモゾモゾと動いているのも、当たり前のように流される。割れ目で動く指の感触にゾッとして、背筋全体に寒気の走った沙織は、慌てて声を荒げていた。
「ふざけるな! 誰が濡れるものか!」
「いいや! 濡れている! クリトリスの突起も俺の指に当たっている! これから証拠となる愛液を指に絡め取ってみせよう!」
それがお前の真実だと言うように、下須井の指は突起した肉芽を探り当てる。蠢くような指の愛撫に表情を歪めていき、歯を食い縛って沙織は堪えた。
――頼むぜ! 下須井!
――沙織のマン汁を見せてくれェェ!
――下須井! 下須井! 下須井!
下須井コールが沙織の耳に聞こえている。
(私は応援されていないのか……)
いかに自分の恥辱が期待されているのかと実感しながら、なればこそ感じてなるものかと、反骨精神で全身に力を入れる。汚辱濡れの表情など見せまいと、横に背けた顔を下に向け、斜め下の方向ばかりをじっと睨んだ。
「さあ、ずっとスカして男を圧倒してきた女王様のご尊顔だ。たっぷり映せ!」
下須井は左手であごを掴み、強制的に正面を向かせる。真っ赤に染まり、頬は強張り、歯を食い縛るあまり痙攣じみた震えさえ起こす沙織の顔は、情け容赦なく巨大モニターに晒され、それが客席を盛り上げることとなった。
――すげえええええ!
――悔しい! でも感じちゃう!
沙織を煽る言葉さえ飛んできた。
『解説の田中さん。この光景はどうでしょう?』
『そうですねぇ? どうやら運営は初めから、薬で弱体化させた沙織さんに恥辱を与え、みなさんを楽しませる予定だったようです』
ふざけるな! 冗談じゃない!
私はそんなことのために戦ったのか。
私は……!
そんな仕事のギャラを受け取ってしまっていたのか!
『すると、全ては計画通りであると?』
『その通りです。今の沙織さんが浮かべている表情は、いかにも「悔しい!」と叫び声が上がりそうに見えますが、第一点は勝てるはずの男にいいようにされていること。いつもの力さえ発揮できればこんなことにはならないのにと、頭の中はそればかりでしょう』
当たり前だ!
正々堂々と戦えば私は――。
『しかし、若干十七歳の少女には酷な仕打ちですねぇ?』
『第二に羞恥心もあるでしょう。戦い、戦い。そんな日々を送る沙織さんは、厳しい鍛錬などに時間を費やすばかりですから、恋に勉強に忙しいといった高校生らしい日常は遅れません。彼氏なんていないんですから、人に裸を見せた経験だってありません』
何を勝手に断言している!
確かに事実だが、勝手に……!
「どうだ! 見ろぉ! これが神谷沙織の愛液よォ!」
勝ち取った獲物を誇るかのように、高々と右手を上げた下須井の右手には、見間違いようもないねっとりとした粘液が絡み付いている。
当然のように画面に大きくアップされ、粘液の絡み付いた指が視線を集めた。
「濡れてなど……」
「お前は濡れたんだ。その証拠が目の前にある」
沙織の目と鼻の先に、自分自身の愛液があった。
誤魔化しようのない真実がそこにはある。
大衆の前で、無理矢理されて股が湿ったことは、世間の沙織に対する目に大きな変化をもたらすだろう。
沙織自身も動揺していた。
(濡れただと? 私が……この私が…………!)
屈辱に震える沙織は、タイムアップのゴングが鳴るまで下須井の拘束から脱出することはできなかった。
確かに薬のせいかもしれない。卑怯なことをされてのことだ。
それでも――。
深い敗北感に蝕まれ、沙織はただ下を向くことしかできなかった。
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