本文 鬼畜な丹恒と飼われる私

 部屋に丹恒が入ってくる。
 そのこと自体が既に合図で、私は目の前に突き出されるものを咥えることとなる。

「………………」

 丹恒は無言だった。
 ただ静かに見下ろし、さっさとやれ、と言わんばかりの圧力だけを発してくる。私はそれに心をくすぐられ、アソコをきゅっと引き締めていた。
 彼が私を『飼う』ようになったのは、私のそんなところを見抜かれて、心の隙間に入り込まれてしまったからだ。
 最初に彼を見た時から、頭の中にはずっとおかしな妄想が続いていた。冷たい眼差しの横顔といい、最初に降り立った惑星での、サンポに対する無言の圧力といい、何となくサディストに見えたところに刺激され、いつしか私の頭の中には、私のことを強引に押し倒し、無理にでも奪ってくる丹恒が存在していた。

 ――これがお前の望みなんだろう?
 ――叶えてやるよ。

 私のことを犯しながら、耳元に冷たい囁きを吹きかける。

 ――良かったじゃないか、望みが叶って。
 ――今後も面倒見てやるよ。
 ――気に入れば、だけどな。

 味を確かめるようにして、私に破瓜の痛みを与え、人が苦しそうにしている顔などお構い無しに、自分の好きなように動いてくる。
 人を物としか思っていない、何の愛情もない眼差しで、私の頭の中の丹恒は、きっと私が他の男と話したり、良い雰囲気を出していたとしても、あまり頓着しないのだ。
 いや、しないかと思っていたら……。

 ――あの男とは、随分仲が良さそうだったな。

 私の中には、異性と仲良くしたことを悪いことのように責める丹恒がいた。
 あんたは何を言っているの。
 私が誰と仲良くしようと、それは私の勝手じゃないか。
 そういうことを、私は半ば驚きながら言っている。てっきり、丹恒は私への興味なんて対してなくて、体さえ好きにできれば十分だと思っていた。
 意外な独占欲を前にして、私はドギマギする。

 ――そうはいかない。
 ――お前には俺の物になってもらわなくては困る。

 なんて言い出すほど、丹恒が私を想っていたなんて……。

 そして私は押し倒される。
 自分が一体誰のもので、誰に付き従わなくてはいけないのか、それを教え込むための行為で、私は苦しげな声を吐き出すことになる。
 我ながら、随分と妄想を繰り返したものだと思う。
 私には記憶がない。
 しかし、こんな妄想ばかりしているなら、私はきっとマゾっ気の強い子だったのだろう。記憶を失う以前にも、似たようなことを考えていたのかもしれない。
 みんな妄想だ。
 妄想の、はずだった……。

「お前、いつもどんな目で俺を見ている?」

 現実にそれが起こったのは突然だった。
 私は狼狽した。
 気づかれていた? いつから?
 まさか、最初からだろうか。
 それにどこまで気づかれているの?
 いくらなんでも、頭の中身を透視されているわけではない、はず……だけど、今までの妄想を全て見透かされたような気持ちになって、私はたまらなく恥ずかしくなっていた。全てを覗き込まれているような羞恥心が吹き荒れて、耳まで熱っぽくなっているところへと、丹恒は正面から迫って来た。

「望み通りにしてやるよ」

 胸がドキドキした。
 その言葉を、本当に聞くことになるなんて――。

     *

 処女を奪われた私を待っていたのは、丹恒の言いなりになる毎日だった。

「望み通り飼ってやる。それがお前のしていた妄想だろう」

 そう言って、丹恒はたびたび私を呼び出して、私の体を辱める。冷たい眼差しが妄想ではなく現実に目の前で、耳の中にもサディスティックな言葉の数々が囁かれ、私はそんな丹恒の中へと溺れていた。

     *

 目の前の陰部を見て、それから丹恒の顔を見上げる。
 機嫌でも悪いのか、咥えずにいる私を見下ろして、何かを言いたげな圧力を放ってきた。何の言葉もなく表情だけで、さっさと咥えろ、いつまで待たせる。そんな意思を伝えてくる。
 私はそれを口に含めた。
 大きく開いていなければ、とても収まらないそれを咥えるなり、すぐに顔を前後に動かし始めていた。
 息が苦しい。
 口がほとんど塞がって、呼吸をしにくい。
 なるべく鼻息をするように意識して、私は頭を後ろに引く。先っぽの近くまで唇の外に出したところで、また頭を前にやっていき、すると今度は逞しい腹筋が目前に迫ってくる。
 私はこの奉仕の中で、飲まされることに備えていた。
 私を辱めるようになってから、丹恒がたまに行うのは、口の中に遠慮なく解き放つことである。それをもう何度も経験している私は、そのつもりで奉仕を続けた。
 満足しているのだろうか。
 きちんと気持ち良くできているのか。
 最初にこれを要求された時、丹恒は冷え切った声で言ってきたのだ。

 ――それで奉仕しているつもりか?

 それを言われた瞬間の、大胆に体を使って前後に動く活発さといったら、我ながら必死なものだった。そうしなければ許してもらえない気持ちになって、どうにか満足してもらおうと、私は懸命になっていた。
 冷静に考えて、あの時の私は何を許してもらうつもりだったのだろう。
 彼の恨みを買うことなんて、特に何もしていない。
 ただ、だから興奮した。
 何も悪くない私だというのに、ただ丹恒に辱めを受けたというだけで、彼には誠意を尽くさなくてはいけないことになっている。これを射精に近づけるのは私の義務で、命令に逆らう権利は与えられていないのだ。
 強いていうなら、いけない妄想をしていた私が悪い。丹恒に見透かされ、妄想を現実にされてしまったのは、悪い想像をして気持ち良くなっていた私の悪事だ。
 妄想の罰として、私は本当に丹恒のペットになっている。
 私はさらに活発に動いてみせた。
 ただ頬張って前後するだけでなく、周りにたっぷりと舌を這わせて、丹恒のためにたっぷりと、濃密な刺激を与える自分を披露していた。
 そして、とうとう飲まされる時は来る。
 改めて頬張り直して、その最中に頭を掴まれたことが合図となって、私は受け止める姿勢に入る。
「こぼすなよ?」
 こぼしたら殴ると、初めての時に言われている。
 きっと今もそれは変わらない。

 口の中に尿の味が広がった。

 それを私は飲まされる。
 精液でなく、別のものを――性処理道具であるどころか、用足しのために使われて、しかもそれに胸をきゅっと引き締めさせている自分がいる。
 ああ、なんてマニアックなんだろう。
 こんな私だから、こんな目に遭わされたって文句は言えない。
 私は一生懸命に嚥下した。
 美味しいわけなんてない。だけど飲み干さないと、丹恒は満足してくれない。放出が終わるまで、私はどうにか鼻呼吸で酸素を維持して、唇にはぎゅっと力を込めていた。こぼさないように気をつけながら、何度も何度も喉を鳴らして、丹恒の出す全てを胃袋に収めていた。
 しかし、これでまだ終わりではない。
「俺の部屋に来い」
 続きが残っているのだ。
 放尿はしても、射精はしていないのだから、私には依然として奉仕の義務が残されている。
 丹恒の部屋に場所を変え、私は机の下に潜っていた。
 椅子に座った丹恒のものをしゃぶって、舌でたっぷりと唾液を塗りつける。途中で誰かが部屋を訪ねても、こうして机の影に隠れている以上、中断することは許されない。
 丹恒が部屋への訪問者と喋っているあいだでも、私は頭を前後に動かしたり、先っぽをペロペロと舐めたりして、彼の所有物に徹していた。
 まだ射精の様子はない。
 だけど、透明な汁は出ていて、私の舌にはその味が広がっている。丹恒から出て来たものが、私の中に取り込まれている。私はそれに密かな喜びを覚えていた。
 だから、舐める。
 いっぱい、舐める。
 私の唾液で濡れているのか、カウパーが塗り広がって濡れているのか、どちらともつかなくなるまで、本当にいっぱい舐め回して、それからまた深く頬張る。
 そして丹恒は私の髪を掴んだ。
 少し乱暴に引っ張られ、毛の根元が痛いような掴み方をされた時、私はすぐにまた身構えた。これが放出の合図なのだから、唇はきゅっと引き締めて、言ってきたりとも零さないようにしなくてはいけないのだ。
 私の舌に、味が広がる。
 さっきとは違う、精液の味だ。
 苦いような、青臭いような、そんな味が広がって、口の中は満たされて、私はそれを嚥下する。すぐに頭を引いたら零してしまうから、そうならないように量を減らして、やっとのことで口の中から棒を出す。
「…………」
 まだ、勃っている。
 私はそれをじーっと見つめていた。
「どうした。もう済んだぞ」
 だけど丹恒の目は冷たい。
 済んだのだから、もうどこへでも消えていい。突き放すような口ぶりから、続けて出て来る言葉はこうだった。
「それとも、俺に犯されたいか?」
 下腹部が疼いた。
 丹恒のその言葉は、私の中に火をつけた。そんなことを言われてしまったら、もうその通りのことが起こってくれなくては、今度は私の方が満足できない。
 私は丹恒を見上げた。
「どうやら、お望みのようだな」
 求めた通りの、期待通りの言葉が続いたことで、私は今夜も辱めを受けることが決定した。

     *

 初めての痛みを思い出す。
 丹恒が急に私のことを犯して、貞操を奪ったその日、私の股には破瓜の血が流れていた。前戯もしないで容赦なしに、無理にでもねじ込まれて、私の大切な部分は完全に荒れ果てていた。
 痛い思いしかしていない。

 ――何を泣いている。望んでいたくせに。

 耳元に囁かれた言葉も、全て冷淡だった。

 ――よかったじゃないか、願いが叶って。
 ――俺はお前の願望を叶えたんだぞ?
 ――泣いていないで、少しは感謝したらどうだ。

 お前は俺に犯されて当然だと、そう言わんばかりの態度で腰を動かして、そのまま中に注ぎ込まれた。その挙げ句に放り出されて、数日後には再び迫られ、私は『望み』を叶えられることになる。
 一度や二度なんてものではない。
 ほとんど日常的に丹恒は『望み』を叶えにやって来て、私のことを辱める。陵辱を受けた私は、その時は恐怖で強張っていたはずなのに、自分の身に起こったことを後から思い出しては興奮している。
 ああ、変態だ。
 こんなに変態で、私は悪い子だ。
 陵辱されて、その後で自慰行為をするなんて、そんな悪い子である限り、私は何度『望み』を叶えられてしまっても仕方がない。
 先ほどの奉仕に続き、丹恒は私のことをベッドに連れ込む。
 今日も大した前戯はせずに、早いうちから足を乱暴に開いてきて、さっさろやらせろとばかりに入れてくる。ほとんど濡れていないうちからの挿入で、最初は痛みを感じても、膣壁を保護するための粘膜が出てくるから、痛みはだんだんと和らぐのだ。
 そのうち快楽を感じるようになり、私は喘ぐ。
 もう経験の少ない私ではない。
 何度も、何度も、本当に繰り返し犯され続けて、私の中はとっくに丹恒の太さに慣れてしまった。だから痛みがあるのは前戯が不十分な時だけで、それでも保護粘膜が出て来るから、痛みは薄れて快楽へと移り変わる。
「ふん、何を感じてる」
 丹恒の顔が目前まで迫って来た。
 このままキスでもされるのだろうかと、思わず期待してしまうような、すぐそこに彼の唇がある。艶やかで整ったものに目をやると、それを今すぐに重ねて欲しい思いに駆られた。
「なんだ? キスでもして欲しいのか」
 そう言われ、私は頷く。
「生意気だな。お前の方から要求をしてくるとは」
 丹恒は意地悪だ。
 人の望みをわかっていながら叶えてくれない。こんな風に犯したり、奉仕させたり、どんな酷い扱いでもしてくるのに、唇だけは奪ってくれない。
「お前にはこれで十分だ」
 丹恒はそれを引き抜き、素早く私の顔に近づける。たった今まで私の中で動いていて、私の粘膜を纏ったそれから、飛び出てくるものが顔にかかった。
 目の近くに付着した。
 頬にも付いた。
 鼻にも、唇にもくっついて、私は顔をすっかり汚される。
「まだやりたりないな。大人しくしてろ」
 その部分が萎えない丹恒は、まるで道具でも使うようにして、遠慮なく私の中に収め直した。
 内側に入ったものの、出入りしてくる感覚の、なんて力強いことだろう。
 丹恒はまた引き抜く。
 今度は胸が汚された。
 そして、まだ出したりないと言ってくるので、私はベッドの上から逃がしてもらえない。容赦なく打ちつけるような力強さに晒されて、その勢いで私は体を揺らされる。
 また引き抜かれ、かけられた。
 顔も胸も、それにお腹も、白いものでべったりだ。

「済んだぞ。今度こそ帰れ」

 出すだけ出したら、また突き放すような言葉をかけてくる。
 もう終わってしまった。
 用済みとなった私は、再び『望み』を叶えてもらえることでも夢見て、寂しく背中を向けることになる。私はまだここにいたいと思っても、丹恒の方が消えろと言わんばかりのオーラを出す。
 だから早めに着替えを済ませ、部屋から出ようとした。
 丹恒の迷惑にならないように、自分の部屋へ帰ろうとして、その時になって急に手首が掴まれる。力強く引っ張られ、強引に振り向かされた次の瞬間、私の顎には丹恒の綺麗な指先が絡みついていた。
 顔がくいっと、持ち上げられる。
 そして、冷たく細められた双眸が迫って来て――――。

 この日、生まれて初めてキスをした。

「望みを叶えてやったぞ」

 耳元に与えられる彼の言葉は、やっぱり冷たいようでいて、だけといつもの冷気と比べれば、ほんの少しだけ温かかった。
 次はいつ『望み』を叶えてくれるだろう。
 私は贅沢な子だ。
 これだけ何度も、日常的に叶えてもらって、そうしたらそうしたで、今度はもっと別のものを欲しがり始めてしまっている。

 望みの種類が増えてしまった。
 次はいつ、叶えてもらえるだろう。