後編 過ちの代償
真夜中のホテルで目を覚ます。
本来、もう一人の女性が泊まっているはずのこの部屋で、今は彼女だけしかいない。
目覚めたのはふとした拍子だ。
寝る前に水分を摂り過ぎてか、尿意で体がトイレを求め、寝間着の女性はベッドを降りた。
電気を点け、便座に座り、用が済んだらドアを閉じ、それから何となく、今は不在のパートナーに思いを馳せる。本当は自分以外にももう一人分、人の気配があるはずなのに、それを感じる事の出来ない一抹の寂しさで、彼女は何となく窓辺へ行き、星空を見上げていた。
「イヴったら、まだ戻ってないなんて」
アストラ・ヤオは夜空を見つめた。
「こんな遅くまで、何をそんなにやることがあるのかしら……」
そんな独り言を呟くアストラは、こことは別のホテルで起こっている出来事など想像もしていない。下らないナンパや男の乱暴でどうこうなるイヴリンとは思っていないので、その手の心配をする発想すら浮かんでいない。
何かやる事があって、どこかで寝ずに動き回っている。
アストラはそう純粋に信じ込んでいた。
早く仕事が終わればいいのに、どうして仕事はイヴリンを離そうとしないのか。
イヴリンの寝顔が見たい。
星に願ってみるアストラだった。
*
今度はI字バランスと来たものだ。
足を高く上げるように命じられ、柔軟性に満ちたキックで腿を体に触れさせると、カメラを握った三人のうち、一人が社長の目配せによって動いていた。アソコを撮るため位置を変え、しゃがみ込んだ構えでレンズを向け、イヴリンは性器を至近距離から撮られる形となった。
「確かによく見えるだろうが、こんなポーズが望みなのか」
「そうとも、その女性の柔軟性、体幹の良さ、いわばI字バランスとは肉体が優れている証拠だ。そこらのか弱い女とは価値が異なるのが一目でわかる」
確かに訓練を積んだ肉体だ。
イヴリンの運動能力は一般女性のものとは比べものにならないが、そうした部分から女体の優良さを見出して、自分は価値あるものを味わっているのだと、悦に浸りたがっているわけだ。
性器とレンズの距離が近い。
たった数センチの位置からじっくり撮られ、社長はそれをやや遠巻きに眺めている。残る二人分のカメラは、撮られているイヴリンというものを撮っている。性器の接写に加え、アソコを撮らせるイヴリンが映像として収まっている。
肝心な部分の接写は、男にとっては面白いものなのだろう。愛液でべったりと濡れて輝いて、男根の挿入場所の準備が整ったような有様は、彼らの本能を刺激しているのかもしれない。
自分の姿が動画に納まっている事の抵抗感、レンズを向けられる恥ずかしさで、イヴリンは無念によって顔を歪めて、眉間をやや固くしていた。
そこからはほとんどポーズ撮影となった。
四つん這いになるよう言われ、カメラに尻を向ける羽目になり、肛門までじっくり撮られる。そんな状態で、三台あるカメラのうち二台は、角度を変えてもっと別のアングルから撮影している。
社長は正面に回り込み、人がどんな顔をしているのかを楽しみそうに見つめてくる。
M字開脚をさせられた。
全ての恥部が見えるポーズでカメラを向けられ、股への接写で性器と肛門を同時に撮られる恥ずかしさに苦悶した。
さらに社長が背後に回り込み、背もたれに体重を預けたような姿勢で、改めて後ろからの愛撫を受け、イヴリンは自らの声と言葉で実況をさせられた。
「み、見ての通り……。乳首を同時にやられている。指で集中狙いして、かなり気持ち良く――んっ、今度は……アソコか、両手ともこっちに移るとはな。右手の指は穴に入って、左手の指はクリトリスに触っている。体液が分泌されるせいで、水っぽい音が少し聞こえる。こんな事、いつまで説明させる気だ?」
撮られながらに、しかも言わされるという辱めに、イヴリンはカメラを睨みがちになっていた。
「そうだね。前戯はもう十分かな?」
「ようやく少しは終わりに近づいたか」
「おや、まだまだ夜は長い。ひょっとしたら、朝まで続いてしまうかもしれないよ?」
「その前にお前の体力が尽きることでも願おう」
「体力には自信があってね。そう簡単には帰さないから、覚悟をする事だ」
社長が背中から離れた時、いよいよだと腹を括った。
これまでも十分に覚悟のいる状況だったが、本番行為が迫った事で、耐え抜くための気持ちをより固くする必要があると感じていた。
イヴリンはベッドに上がった。
その周りを三人の男達が取り囲み、なおもそれぞれのカメラを構えている状態で、社長はイヴリンを前に寝かせる。目の前でゴムの装着を行って、挿入準備を済ませる社長に対して、イヴリンは全身の力を抜き、さっさと済ませて欲しい気持ちばかりを抱いていた。
右足が持ち上げられる。
片足だけを高く上げ、その足に抱きついてくる形となって結合する。松葉崩しと呼ばれる体位によって、社長はイヴリンの中へと収め、随分と満足そうな顔で腰を振り始めていた。
「んっ、あっ、んぅ――んっ、んぅ――――あっくっ……!」
これだけ準備が整っていたせいか、肉棒によってもたらされるのは、これまで以上の快感だった。
「あっ、あぁ……! あっ、んっあぁ……! あっ、あぁ……!」
腰が前後に蠢くことで、体位のために抱かれた足も小さく動く。力強い出入りによって膣を抉られ、一撃ごとに生じる大きな快感は全身を駆け巡った。
「あっ……!」
体内で袋が膨らんでいる。膣壁という名の皮を肉棒が被り、しかし出て行けば壁の狭間は閉じ合わさる。膨らみと収縮がピストンのリズムに合わせて延々と繰り返され、イヴリンは髪を振り乱していた。
「ふっく……! んんんっ!」
体がよがり、気づけば横向きになっていた。喘ぐ拍子に左肩を下にしていたイヴリンは、そこで男の一人と目が合って、自分のどんな姿を撮られているかに意識が及ぶ。
「あっ! ふぅ……あっ、んん……!」
感じた表情がカメラの中に収まっている。
揺れ動く乳房も、きっと収まっている。
そして、男は鼻息荒く性交を視姦している。自分も挿入したいような欲に駆られた熱気を瞳に宿している。ならば他の二人の眼差しにも、同じだけの情欲が宿っているだろうと思い至って、急に視線の存在を思い出していた。
「あっ! あん! あん!」
見られることで、肌の表面には何か不可視のものでも這っているような錯覚に囚われる。その感じが背中や尻にも現れて、大きな声で喘ぐ中でもイヴリンは周囲を気にしていた。
お尻はどんな風に映っているだろう。
それに男の一人はベッドに上がり、社長の背後に立って撮影している。イヴリンの体が上から映るようにと、カメラの位置を高くしている。
「あん! あっ! あん! あん! あっ! あっ!」
声を抑えていられない。
大きな刺激が駆け巡り、腰から爪先にまで稲妻が伝わると、社長の肩へと乗せた足首が上下に動く。指の開閉を無意識のうちに繰り返すほど、イヴリンはその快楽に翻弄されていた。
このままではまずい。
あの頭が真っ白になる感覚が再び迫っている。そうなる瞬間がもう近い。イカされる予感に駆られ、危機感に近いものが胸に湧き、しかしイヴリンにはそれをどうしようもない。
イヴリンの実力なら、こうも気持ちいい状況からでも、相手を張り倒す事はできるだろう。だがそれをやるくらいなら、そもそも体など許していない。
どうせ一晩するだけだ。
たかが体、大した事はない。
そう判断した以上、今更になってセックスを中断させようとは思わない。社長に満足してもらわなければ、性行為がそのまま写真の扱いに関する交渉結果を左右するのだ。
「くっあ! あっ! あっ!」
もう、近い。
あと何秒か。
残り数秒もない。
まるで爆弾のカウントダウンがゼロになる直前であるような、次の瞬間には強烈なものが来る覚悟をイヴリンは決めていた。
その時である。
「あぁぁぁ――! あっぐっ! あぁ……!」
体中の至る所が痙攣した。
肩へと乗せた足が、どれほど震えていただろう。肉棒の収まった下腹部の、膣周りの筋肉が、まるでバイブにでもなりきったように振動していた。
頭が一瞬、真っ白だった。
全身から力が抜け、放心でもしたような顔で、イヴリンは天井を見つめていた。
社長の肉棒が引き抜かれる。
すぐにコンドームを片結びして、中に溜まった白濁を指にぶら下げ見せつけてきた。勝ち誇った顔をしながら、とても満足そうに二つ目の包装を破き、既に二度目の挿入をする気でいっぱいの様子であった。
「イヴリン、君のイク瞬間の顔はなかなかよかったよ」
「私の醜態を拝んで気分がいいわけだ」
「醜態とはとんでもない。とても色気に満ちた顔だったよ」
つまりエロかったと言われ、そんな事が嬉しいはずもなく、イヴリンは眉を顰めた。
イカされた気分はやはり最悪だ。
勝ちも負けもないだろうに、負かされて悔しいような、相手の勝利が気に入らない気持ちであった。
だが、その随分と満足そうな顔さえ見る限り、こちらの望む答えを引き出せそうだ。屈辱に濡れる反面、頭の冷えた部分が状況を整理して、自分がどれほど良い結果に近づいているかの計算を行っていた。
アストラを守るのが自分の役目だ。
人の弱みとなる写真を使い、付け込む対象がアストラではなく自分であった事は都合がいい。自分が抱かれておきさえすればそれで話が済む。
悪いのは、そもそも周辺の動きを把握しきれず、まんまと罠にかかった自分の迂闊さか。
「次はどうする。体位は変えるのか」
「そうだね。四つん這いになってもらおう」
「二回で済むといいのだがな」
イヴリンは姿勢を変え、両手でベッドシーツを掴んで尻を突き出す。肘を突いた四つん這いで下半身を差し出すなり、コンドームを被った切っ先がすぐに当てられ、体中が緊張に満たされていた。
最初の挿入よりも、二回目の方が緊張した。
ウブな乙女のつもりはないのだが、一度目の挿入によって体が快感を覚えている。この男と交わる事で、どのくらい気持ち良くなるかを知ってしまった。それが再び、今度はバック挿入によってもたらされると、亀頭の接触と同時に体が理解したのだ。
ただ肉棒に身構えているのではない。
入ってくる事で、たちまちイカされるほどの悦楽を叩き込まれる。
嵐の前の静けさであるように、場が静寂を保っていた。まだ切っ先しか触れていない、愛液によって先端と入口の癒着した状態が何秒か、それから社長は腰を掴み、肉棒を前へ前へと進めて膣内へ収め始める。
愛液の分泌が激しくなった。
濡れた布からたっぷり染み出すような勢いで、みるみるうちに愛液は滲み出し、それが肉棒と膣壁に介在していた。ゴムの表面を一瞬にしてぬかるませ、ローション漬けも同然の滑りの良さで出入りは始まった。
「あぁあああ! あん! あぁん! あんっ! あっ!」
イヴリンは激しく喘ぐ。
尻へと叩き付けるグラインドで音が鳴り、衝撃を受けた体が前後に揺れる。暴れる前髪が額を叩き、視界がリズミカルに上下する。
「あん! あん! あん! あん! あん!」
素早いピストンが膣内を膨張させる。抜け出た分だけ膣壁は閉じ合わさるが、直ちに腰と尻のぶつかる音が鳴り、収縮が一瞬にして膨張に変わっている。
しっかりと膨らんだ袋と、空気の抜けた潰れた袋、二つの状態が延々と、それも素早く切り替わり、閉じた壁の狭間が広がるたびに、イヴリンは肉棒の逞しさを感じている。こんなにも大きく中を拡張してくる太さ、それが自分自身の愛液によってあっさりと、何の負荷もなく体を貫く。
槍で貫通された衝撃のようにして、イヴリンの体には電流が迸っていた。
周りからどんな風に撮られているか、顔まで撮られているのか、どう映っているのか、何も気にする余裕がない。体内で吹き荒れる嵐の中で、絶頂するまでもなく頭は真っ白に、だから次にイク時には予感などなかった。
あと何秒で絶頂する。
などと気づける状態になく、真っ白な中で急にビクビクと足腰を痙攣させていた。
「おっと、これで三度目か」
社長の言葉も届いてこない。
頭が真っ白な状態から、そのまま放心しているイヴリンには、音の聞こえる感覚はあれど、言葉の内容を脳が処理していなかった。
そんなイヴリンの膣内で、まだ射精していなかった社長は、あと何秒かのピストンの果てに引き抜いた。まるでローションにまみれたものを取り出すように糸が伸び、白濁のたまったゴムの部分と膣口が繋がっていた。
ゴムが外され、繋がりが断たれてなお、イヴリンの膣内からは滴が生まれる。それが重力に釣られて下へ下へと、揺れながら伸びていき、シーツに一滴の染みを作った。
もうしばし放心の続くイヴリンは、自分がどんなに格好の悪いポーズを取っているかに気づいていない。伸びた糸でシーツとアソコが繋がっている事も、水分が注がれ膝の間で面積を広げる円の存在にも気づいていない。
ようやく意識を取り戻したかのように、再び脳を稼働させ、まともな思考を取り戻した頃には、すぐ目の前に肉棒が鎮座していた。
いつの間に正面へ回り込み、胡座をかいていたらしい。
「はぁ……ふはぁ……! はぁ……! 休む暇もなく次の要求とはな」
息遣いから興奮が抜けていない。
肉体の悦んでしまっている状態を抱え、自分がいかに社長の思い通りであるかについて痛感しながら、イヴリンは唇を被せて頭を動かす。
精液の味がした。
二度も射精して、清掃は一度もしていない。白濁の付着が残った亀頭から、イヴリンの舌へと伝わるのは青臭さだ。
金髪を前後させ、肉棒を口内に出入りさせ続ける。四つん這いの姿勢でそうする事で、胴体もろとも前後に動き、周りの男達はそんな体を撮り始める。
真後ろにポジションを取る男は、魅惑の尻が画面に向かって前後している光景を収めている。真横に膝を突く男は、垂れ下がった乳房の前後を撮っている。さらに三人目の男は横顔にレンズを向け、唇から出入りする肉棒を撮っている。
これが自分をイカせた肉棒だ。
あんなにも大きな快感を与えてくれた逸物だ。
それに対して奉仕しなくてはいけないような、奇妙な使命感に気づいた時、イヴリンは自嘲気味となっていた。この短時間で我ながら堕ちたものだが、こんなものは一時的な感情に過ぎない。媚薬を飲まされ、テクニックにより感じさせられ、肉体が昂ぶっている今だから湧いているものだ。
行為が終わって時間を置き、一日か二日も経つ頃には、体も冷静に戻るだろう。
今はどの道、体を使った交渉の真っ最中だ。
「なかなか上手じゃないか」
社長は頭を撫でてくる。
「好きでしていると思うか? 抱かれ損ではたまらないから誠意を示そうとしているだけだ」
どうせ性接待をしている以上、イヴリンは自分なりの口技を披露している。娼婦のようにはいくまいが、舌を駆使してたっぷりと刺激を与え、懸命に頭を動かす奉仕をすれば、肉棒ばかりか心すら気持ち良くするわけだろう。
社長から精神的な満足感を引き出すためにも、イヴリンはいつしか根元を握り、左手では玉袋を優しく包み、手さえ使った奉仕を交えていた。
その果てに出て来た精液を口内で受け止めて、飲むことを厭わなかった。
さらに胸での奉仕も要求された。
飲んだ直後の、舌に味の残った状態で、イヴリンは床に膝を突く。社長はベッドから足を下ろして、椅子に座るのと同じ姿勢となって膝を広げ、その間にイヴリンの乳房を迎えていた。
胸の狭間で肉棒が悦んでいた。
両手で自身の横乳に触れ、乳圧をかけながら上下に動く。手で動かすだけではない、胴体もろとも使った奉仕でイヴリンは社長を見上げていた。
社長もまた、イヴリンを見下ろしている。
好みの女の顔、その胸に肉棒が納まった景色、それを彼は見下ろしている。
せいぜい満足すればいい。
だが、媚びるような態度、愛情でも抱いたような眼差しまでは求められていない。色目など使わずとも、体さえ捧げていれば十分だろうと、イヴリンはどことなく睨んだ風な、相手に対して線を引いた表情で社長を見つめた。
白濁の噴火が起こる。
顎に当たったそれは、喉の表面を伝い流れて鎖骨に至り、乳房の狭間に入り込む。顎から胸にかけての汚れた姿で、あと何回射精するつもりでいるかもわからない社長によって、今度は正常位を求められる事となる。
行為は長時間にわたった。
喉が疲れるほど喘いだ果てに、消費したコンドームの数といったらない。さしものイヴリンもぐったりとしてきた頃、ようやく社長はセックスを切り上げる。
やっと終わったと思ったのも束の間。
しかし、三人の部下が残っていた。
「さあ、いいぞ?」
社長がそう告げた途端、まるで合図を待っていた犬のように彼らは動いた。
イブリンは狼狽した。
らしからぬ表情で、思わず動きかけていた。それが抵抗のためなのか、逃げ出すためかは本人にもわかっていない。ただ、これ以上のセックスはもう無理だと、とにかくイヴリンは慌てていた。
「待て! ちょ、ちょっと待て!」
叫んでも男達は止まらない。
体に男の手が触れて、咄嗟に払い退けようとするイヴリンだが、長い長いセックスのせいで抵抗するだけの体力が残っていない。まともに拒むことができず、三人がかりの手の平に全身を撫で回された。
「なっ、まだ……続くのか……! 待て、少しは休憩を、体が持たなっ――あぁ――!」
その後、イヴリンはあと数時間ほど行為を続けた。
三人もの男が満足するまで、前後の穴を同時に使われた。両手で握った上で咥える同時奉仕をさせられた。一対一での時間もあり、イヴリンには休みがないのに、その間の男達は休憩していた。
もう一歩も動けない。
指を動かす気力すらない。
無気力となり果てたイヴリンを照らすのは、窓から差し込む朝陽であった。
*
一週間後。
社長は三人の部下達に取らせた映像を見つめ、イヴリンの様々な姿を堪能していた。最初のストリップ、自分の状況を説明する際の屈辱を帯びた顔、松葉崩しでの挿入やバック挿入、フェラチオ、パイズリ、ありとあらゆるものがパソコンの中に収まっている。
それを高級デスクで楽しむ彼は、次に乱交シーンを再生して、前後の穴を同時に塞がれる場面を拝む。
あの済ました顔の女が、後ろから突かれて口でも咥えた光景というのは、なんとも言えない興奮を煽ってくれる。
それに――。
「どうせするなら、早いところ始めたい」
面倒な仕事はさっさと潰すに限るとでも言わんばかりの、やはりクールや冷血を気取った顔の女がそこにいた。
「君と契約を結べて嬉しいよ」
「私は嬉しいわけではないがな」
「だが君は受け入れた。私との関係を」
「いずれ切る関係だ」
「そういうところも悪くない」
彼女とはいい交渉が出来た。
社長が満足した直後、続けて三人を同時に相手させ、疲れ果てたところへ話を持ちかける。彼女はそれでも頭を回し、不利な話には乗るまいと、誘いを躱そうとはしていたが、最終的な結果はこれだ。
イヴリン・シェバリエとは愛人契約を結んだ。
肉体と引き換えに、今後も様々な便宜を図る。
アストラの独立を目指す彼女には、目的のために良い後ろ盾を手に入れたわけだ。