第2話 水着とマッサージ

 場面は屋内。
 このエロビデオ作中での、ルリの住まいなのだろう。どこかのマンションをまず遠巻きに、たった数秒映る建物から、すぐに画面が切り替わっての屋内で、壁掛けのカレンダーがアップになり、日曜日の日付に『水泳』と書かれている。
 視聴者に作中の曜日と予定を一瞬で伝えた上で、またさらに場面は切り替わり、ルリは更衣室の中にいた。
(お、お? おお?)
 タナカは興奮した。
 ケープを外し、その下に衣服も脱いで、下着姿となったルリの両手が背中へと回っている。ホックが外れ、ブラジャーが胸から離れた時、もしや胸を拝むことができるのではと期待した。
 しかし、着替えは始終後ろ向き、パンツが下がっていくことで、お尻を拝むことはできたが、乳房は映ってくれなかった。
 競泳水着に着替えを済ませ、プールへと出て行くルリであるが、何やら気恥ずかしそうな顔をして、手を太ももや股のあたりに彷徨わせている。
 その白い競泳水着は股の布が心許なく、食い込みが激しいような、見える面積が大きいような、いかにも性器だけをギリギリで隠した細い細い三角形となっている。
 それを後ろから見たならば、Tバックになりそうでなっていない、しかし丸出しに近いまで肉の出ているお尻が映り、タナカは鼻息を荒くした。
『えっと、確かいつものコーチはお休みで……』
 毎週日曜日はレッスンを受けている設定なのだろうか。
『やあ、ルリちゃん』
 なんと、コーチはあの中年だった。
『え……』
『ここに通っていたなんて知らなかったよ。僕が手取り足取り、それに腰取り、教えてあげるからねぇ?』
 痴漢やセクハラを繰り返す中年と二人きり、ルリのいかにも不安そうな、警戒心もあらわになった様子がたまらない。それでいて逃げるでなく、準備体操を始めて入水するのだ。
 しばしのあいだ、クロールで泳ぐ映像が流れていく。
(お、お、お尻が……!)
 透けていた。
 泳いでいる映像の時点で、白い水着が水を吸い、内側にある肌の色をくっきりと透かせていた。
 では水から上がればどうなるか。
 ルリは何も気にしていない顔をして、ほとんど無表情のまま銀色の梯子でプールサイドに上がって来る。
 乳首が透けていた。
 アソコも透けていた。
(おおおお!)
 全裸を拝んでいるも同然だった。
『うん、いい泳ぎだったね』
 カメラはルリの真正面を捉えたまま、その声は画面外からかかっている。
『ありがとうございます』
『ところで、前を見てごらん?』
 と、透けていることへの指摘。
 ルリは一瞬きょとんとして、それから自分の体へと視線を下ろす。
 その時になって、初めて気づいたのだろうか。
 今の今まで、何もおかしいとは思わなかったのだろうか。
『やっ……!』
 小さく可愛い悲鳴を上げ、ルリは慌てて胸とアソコを隠していた。咄嗟に素早くしゃがみ込み、恨めしそうな顔を中年へと向けていた。
(演技なのか? 本当に演技か?)
 もしそうなら上手すぎる。
 ルリに演技の心得があったことになる。
 この場面ではルリが更衣室へ逃げていってしまうところで終わっていき、画面は一時的に暗転する。

     *

 また壁掛けのカレンダーがアップされ、その祝日の日付には『マッサージ』と予定が書かれている。

『あ、あの……こんな格好でないと、駄目なのでしょうか……』

 ルリは実に恥ずかしそうに、赤らんだ顔で俯きながら、マイクロビキニを着用していた。
(ああ! 最高だ!)
 乳首をギリギリで隠しているだけの三角形に、アソコの布もかなり際どく、たった一センチずれれば大切な部分が露出しそうだ。後ろが映れば紐状のTバックで尻たぶは丸出しだった。
 全裸ではないが、極限まで全裸に近い。
 ルリにとって、このマイクロビキニと透けた状態の競泳水着なら、一体どちらの方がマシなのか。
 マッサージ師は女性であった。
 最後まで中年で通すのかと思いきや、このシーンだけは女性
らしい。ルリが施術台に乗ることで、女性の手が体へと触れ始め、タナカは画面を強く凝視した。
 手が腹部を這っている。
 そして次には太ももが揉まれ始めて、ルリは明らかに落ち着きのない様子でいる。カメラアングルも全身を舐め回すものとなり、今まで以上に興奮を煽られたタナカは、隣にヤマダがいることも忘れて、つい肉棒を握ろうとしてしまった。
(おっと)
 ベルトに手を触れたところで気づいて踏み止まるが、たった一瞬でも隣の男を忘れるほど、タナカは映像に見入られていた。
 もう罪悪感どころの話ではない。
 そこにルリが映っていて、胸やお尻を拝めるなら、なんだって構わない気になっていた。
 オイルが使われていた。
 白い施術着を身に纏い、女性はその都度オイルを手の平に、それをルリの体に塗り伸ばす。二の腕に擦り込んで、鎖骨にも指を置き、体の至る所にオイルが浸透していくにつれ、その部位が光沢を帯びていく。
 マイクロビキニの紐にもオイルは触れるので、その水分を吸収するにつれ、だんだんと変色が進んでいる。
 乳房に手が置かれた。
『あっ……』
 驚いたような困った顔で、ルリは大きく目を丸めていた。
 仰向けの頭上に立ち、ルリの頭の向こうから手を伸ばしての、女性の両手がマイクロビキニに絡んでいる。乳輪だけをギリギリで隠した三角形の周りを指が這い、そのうちに周りの紐を何度もずらして布の内側にも入り込み、乳首が直接弄られるようになっていた。
『あっ、んぅ……んぅぅ…………』
 ルリが乳首責めを受けている。
『んっ、んぅ……んぅ……あぁ…………!』
 布に潜った指が蠢いている。
(か、艦長……)
 たった十六歳にして目上の立場で、艦長の席に座る可憐な少女が、ビデオの中ではセクハラや快楽に翻弄されるか弱い女の子でしかない。
 本来、拝めるはずのない光景だ。
 どうしてルリがエロビデオに出演しているのか、その理由は想像がつかないが、奇跡でもなければ起こり得ない出来事がVHSの中に詰まっている。
『四つん這いになってもらえるかしら』
 女性が指示を出す。
『は、はい……』
 ルリはとても不安げに、その通りの姿勢になったら、次はどの部分のマッサージが始まるのか、薄々とわかった風に身体をひっくり返す。
 四つん這いのポーズによって、お尻が持ち上がっていた。
 カメラアングルが切り替わり、頭や肩の位置を低めにしての、ルリの顔が手前に映った。下へ視線を注いだ俯く角度で、傾斜のかかった背中の頂上に、Tバックのお尻は聳えていた。
 お尻のさらに向こう側に、女性の着る施術着は映っている。
 ぺたりと、尻たぶに両手は置かれた。
 撫で回して塗りたくり、最初は乾いていたお尻がみるみるうちに光沢を帯びていく。光の反射でぬらぬらと輝く尻山の、その狭間にTバックの紐の通った光景は、なんとも艶めかしくいやらしい。
 どうしてお尻とは、あいだに紐が通ることで際立つエロさがあるのだろう。
『あっ…………』
 その時、ルリは小さな声を上げていた。

 Tバックの紐がずらされている。

 つまり女性からは、肛門やアソコがばっちりと見えている。
 そのせいか、ルリの顔は赤かった。
 恥じらう様子は始めからだが、恥部に顔が迫っているのだ。赤らみが増さないはずはなく、ぷるぷると震えるほどに頬の筋肉が固くなり、顎も力んでの歪んだ表情は、見ているタナカに羞恥心をひしひしと伝えてきた。
 ルリがどれほど恥ずかしい思いをしているのか、あまりにも明確に視覚化されていた。
『んぅ――――――!』
 何が起こっているかは明らかだ。
『んっ、んんぅ――んぅ――――』
 画面には映らずとも、お尻の向こうに見える腕や体の動きから伝わってきた。ルリの反応している声からも読み取れる。

 アソコを触られているのだ。

 最初のうちは、きっとワレメをなぞっている。
 愛撫が続けば続くほど、もしや指が挿入されていて、もう膣内をやられているのではないかと期待感が湧いてくる。
『はぁ……あっ、んっはぁ……はぁ…………』
 ルリの息は荒っぽい。
 熱の籠もった呼吸に乱れた声が入り交じり、表情もいつしか悩ましげになっていた。
『あっ、あぁ――あぁぁ――――』
 声がしだいに大きくなる。
 感じれば感じるほど、恥ずかしさを忘れて快楽に翻弄され、髪を振りたくる挙動が活発なものとなる。俯いているルリの、少しばかり垂れ下がった前髪は、しきりに左右に揺らされていた。
『あぁ――あっ、あぁぁ――――』
 声のトーンが上がっている。
 振り乱す動作も大きくなっている。
(まさか、ひょっとして…………)
 タナカはそこに予兆を見た。
 あともう少しで訪れる未来が垣間見え、その時には愛液をかき混ぜる音まで聞こえていた。

 くちゅっ――くちゅっ――くちゅっ――――。

 さすがに膣へのピストンに決まっている。
 ルリのアソコを指が出入りし、鳴らされる水音がスピーカーから響いてくる。
 そして、ルリはビクっと尻を跳ね上げた。

『んっあぁぁ――――――』

 大きな声を上げながら、四つん這いであるお尻を一瞬だけ弾ませて、一度きりの上下運動の直後には潮が噴く。顔を手前に置いたアングルで、視聴者には見えにくい潮吹きだが、飛び散る滴は確かに映り込んでいた。
 女性の顔や体には、きっと噴きかかっているはずだ。
『はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………』
 ルリが息を切らせている。
 驚いたように目を丸め、少しだけ放心気味に、息を大きくしているせいか、お尻が改めて動いていた。呼吸のリズムに合わせてゆったりと上下して、タナカはその緩やかな上下運動をまじまじと見つめていた。

     *

『私のエッチな姿でいっぱい射精して下さいね?』

 エロビデオはそんな言葉で締められていた。
 マイクロビキニの姿で体を起こし、座り姿勢となってカメラを向き、視聴者に向けて笑顔を作る。
 そのぎこちなさといったらない。
 恥ずかしい格好で、恥ずかしい台詞を唱える抵抗感が伝わるおかげで、まるで心の声が聞こえるようだ。
 ――ほ、本当にこんなことを言うんですか?
 そんな戸惑いを抱きながらの、視聴者に自慰行為を促す言葉である。抑揚もたどたどしく、恥ずかしそうな様子も蘇り、もしやタナカにとってはこの場面が一番かもしれなかった。
「なあ、どこで買ったんだ?」
 タナカは尋ね、その答えを聞くなり購入を決意していた。