後編 ミオの測定診断
3・内科検診
白いショーツの尻を椅子に乗せ、ミオはだらりと腕を垂らした。
内科の担当は二人いて、特に仕切りで遮ることもせず、ネイトも隣で検診を受け始める。まずは問診から始まって、ネイトの答える内容がいくらでも聞こえてくるので、困った質問が来ないように祈っていた。
幸い、そういった質問は何もない。名詠の最中や直後に体調が変化したことはあるか、名詠生物との接触で異常を感じたことはあるか、といった話で済まされた。
もっとも、すぐに医師は聴診器を近づけて、ミオの胸に当ててくる。乳房と乳房のあいだ、中央に触れる金属から、目の前の医師は心音を聴いている。
指示に合わせて背中を向け、深呼吸の音も聴いてもらい、正面に向き直る。
「では触診していくのでね」
医師の手が絡みつき、五指が乳房で蠢き始めた。
うっ、うぅ……男の手が触れてきている事実に、ミオは目元の筋肉を震わせる。好きでもない、名前すら知らない相手に揉まれる拒否感に、横へ横へと瞳を逸らすと、隣ではネイトも触診を受け、微妙そうな顔をしていた。
……あ、ははっ、男の子だって、そりゃ困るよね。
医師の指先が乳房の色んな部分に押し込まれ、色んな部分を探られている。立派な診察なのかもしれないけど、皮膚の表面をすりすりとやられたり、乳輪をくすぐられたりしているうちに、だんだんと甘い痺れを感じるようになっていく。
「んっ」
乳首をつままれた時、ミオは肩を跳ね上げていた。
やだ、変な声が……快感の声を出してしまったことに、ミオは真っ赤に恥じ入った。俯いていたいところだが、下を向けば自分の胸がもろに見え、どんな風に触れられているかがわかってしまう。
「えーっと、『少し声が出た』っと……」
……え? ちょっと! それ書くの!?
小さな声のことを記録係の手で記入され、少しでも喘いでしまった事実が記録へと残される。ネイトの耳にも、今の記録係の声は聞こえたはず。ネイトにまで知られたと思うと、ますます頭がおかしくなりそうだ。
ネイトの存在を意識すると、聞いてしまった様子のネイトがモジモジしていた。ネイトが何を思ったかはわからないけど、何を思われていようと気恥ずかしくて、ミオはネイトとは逆の方向に瞳をずらした。
「気持ちよさそうだねぇ?」
そこでは中年がニヤニヤしていた。
「どうなの? 気持ちいいの?」
中年の言葉を受け、医師は真顔で尋ねてきた。
「え、えへへ……そんなこと……んっ、んん……」
愛想笑いで誤魔化そうとしていると、そのあいだにも声が出てしまい、中年はニヤっとした。
やだっ、ほんと……視線による辱しめに、ミオはぎゅっと目を瞑る。視界を閉ざすことでしか、気になるものを締め出すことはできなかった。
「声を我慢しつつ、目を瞑る反応ね」
淡々とした記録係の声が、ミオの悶えをますます煽った。
「はい、じゃあね。側彎症の検査するから、立ってくれる?」
ミオは医師に背中を向け、綺麗な直立の姿勢を保ちながらも、まぶたは固く閉ざしたままだ。
側彎症――背骨など骨格の歪みを調べる検査では、尾てい骨から背中にかけてを見る必要があるのを、ミオもきちんと知っている。ショーツを少し下にずらして、見えるようにするのだろう予感もある。それだけにお尻に視線が刺さっている気がしていた。
「じゃあ、ずらすからね?」
やだぁ……きっとあのスケベだって見てるのに……ミオは中年のいやらしい表情を頭によぎらせ、余計に恥辱を感じてしまう。
……ううぅっ!
ショーツのゴムに、左右の尻たぶのところに、それぞれ四指が入ってきて、ミオは身震いした。皮でも剥くようにずり下げられ、少しずらすだけだと思っていたのに、お尻を全て丸出しにされてしまった。
なっ、なっ、なっ……慌てふためくかのような、パニックにも似た頭から、ミオは恥ずかしさの蒸気を噴き出す。前は平気でも、後ろ側がきっちりと下にずらされ、尾てい骨どころか全部が出ている。
そして、お尻のすぐ後ろに座る医師の存在で、視線が集中しているに違いないと、ミオは強く意識してしまう。
「うーん。綺麗な背中だね? お尻もなかなか可愛いし、とっても健康的だ」
体つきへのコメントまで聞かされて、ミオは苦悶を浮かべていた。
「じゃあ、前に倒れてみてね?」
側湾症検査では、肩甲骨の高さに左右差がないかを見るために、手の平を合わせて少しばかり前屈する。目の前には中年がいて、ミオにとってはいやらしい男に頭を下げるかのようで屈辱だ。
しかも、お尻を後ろに突き出すポーズだなんて……堪らない気持ちを抑え、ミオは徐々に上半身を倒していき、直角に近いところまで折り曲げた。
医師が見ているのは、きっと肩甲骨の高さだけ、左右差のチェックだけ、だから大丈夫だと言い聞かせ、なんとか堪え抜こうとする。
「やっぱり、可愛いお尻だねぇ?」
「そ、そんなこと……ないですよ……ははっ…………」
ミオは誤魔化し笑いを浮かべる。
「いやいや、いいお尻だよ。プリっとしてて、とってもキュートだ」
医師はそれでも賞賛を絶やさない。褒めていようと、体つきを指摘してくる言葉は、ミオには辛い。
……やっ、やだっ、触らないで。
しかも、可愛がらんばかりに、医師はにこやかに撫でていた。愛でたくてたまらない、微笑ましいものを見守る表情で、医師はたっぷりとお尻を撫でる。顔だけなら、それは優しいおじいさんが孫を可愛がるかのようだけど、やっているのはお尻を触ることなのだ。
ミオはそれを堪えていた。
「あ、あのぉ……早くしてくれると助かるなぁ……なんて…………」
無理に陽気を演じてみるも、すぐには撫でる手つきは止まらない。
「そうだねぇ?」
なんて言いながら、すべすべとした表面を撫で回す。
「あの……本当に…………」
もう泣きそうな声だった。
そんなミオの様子さえ、記録係は淡々と書いているばかりで、止めようとする者は誰もいない。我慢している以外になく、やっとのことで手が離れると、骨格には問題がないことが伝えられた。
側湾症の有無よりも、やっとやめてもらえたことの方に安心して、ミオは素早くショーツを元の形に穿き直す。
「ま、あとで脱いでもらうんだけどねぇ?」
医師の最後の言葉が突き刺さり、ミオの胸から抜けなくなる。
……本当に? 本当に全部?
もう、泣きたい。
ミオにとって、ここは地獄なのだった。
4・超音波検査
ミオが、ネイトが、二つ並びの診察台にそれぞれ横たわる。
超音波検査を行うため、皮膚とプローブのあいだに空気が入らないようにするための、専用のジェルを塗るらしく、二人の元にはそれぞれの技師が塗り広げ始めていた。
……うっ、ひんやりするし、気持ち悪いよぉ。
男の技師に胸を触られ、乳房やその周辺にかけてまで、ジェルが塗り伸ばされている。横目でネイトの様子を見ると、やはり男に同じくされていて、とてもとても居心地が悪そうだ。
……ネイトくんにも同情するけど、あたしの方がやばいよね、これ。
なんせ、オッパイをやられているわけだから。
専用ジェルを塗るまでは、少なくとも医療上必要な行為なんだと、ミオは自分に言い聞かせ、自分で自分を納得させていた。だけど、肩とか肋骨とか、脇の下とか、腹にまで、たっぷりと広がって、それでもなお胸を触ってくる。
……絶対、好きで揉んでる。
ひんやりとしたものが染み込んで、それでもまた塗り足すために、技師は容器の中からジェルを手の平に垂らしている。それをミオの乳房に塗りつけ始め、ヌルヌルとした滑りの良さに合わせて揉まれたり、乳輪をぐるぐると、乳首をくりくりと、指先を使った悪戯までされていた。
「うん。だいぶエロくなったね」
……え、エロって。
皮膚にジェルが浸透して、もう染み込むことができない上に、なおもジェルを塗ったのだ。もう水を吸えない布に、それでも水を垂らしたようなもので、ミオの乳房はヌルヌルとしたゼリーの層によって、しっかりとコーティングされていた。
「ジェルでヌルヌルに光ってるオッパイって、とってもエロいよ」
最後にもう一度だけとばかりに、せっかくだから揉んでおこうみたいな感覚で、人の乳房を気軽に揉んできた。
……さ、最悪っ。
恥辱感を覚えるミオの元に、やっとのことで検査用の器具が登場した。
プローブはレジ打ちに使うバーコードの読み取り機によく似ていて、それがコードで機材と繋がっている。画面の中に検査から得られたものが映し出されて、そこで臓器に不審な影があるだとか、心臓の波長がおかしいといったことがわかるという。
そんなプローブがミオの乳房に使われ始めた。
下乳を持ち上げるようにして、下から上へと、プローブは滑り動く。上までいくと、今度はずり下げんばかりに滑らせて、もう片方の乳房もそうして調べる。
腹部にも検査が行われた。
ヘソの周りを何度もなぞり、臓器のスキャンを繰り返し、機材の周りにいる男達は、画面の中に注目していた。
「健康だな」
「少年の方はどうだ?」
「うん、問題なし」
そういえば、医者の集まりだっけ……と、当たり前のことを今更になって思い出す。仮にも保健機関から派遣されてきた人材だから、きちんとした検査はするだろう。
そのついでの、おかしなセクハラが許せない。
……絶対、おかしいと思うんだけど。
憤りを抱えていると、超音波検査が終了して、ジェルの拭き取り作業が始まる。先ほどの技師が拭くついでに素手で揉み、どう考えても必要のないタッチをしきりに繰り返していた。
5・性器検査
ネイトがトランクスを脱ぎ、丸出しにしていた。
……お、大きくなってる?
それを横目で見てしまったミオは、慌てて反対側に目を逸らす。あまりジロジロ見てやるのは悪い。
「さあ、ミオちゃん?」
それよりも、ミオの正面には中年がニヤニヤと立っている。手招きのようなジェスチャーで、早く脱ぐようにと煽ってくる。そんな目つきのいやらしい中年の前で、隣にはネイトだっている中で、何人も何人もの視線を浴びながら、ミオはショーツのゴムに指を入れた。
……やだ、本当に。
ミオは強く目をつむり、ぎゅっとまぶたに力を入れた。耐え忍んだ表情で、ミオはするするとショーツを下ろし、片手でアソコを覆い隠しておきながら、もう片方の手で手渡した。
「はい、預かっておくからね」
それを、中年が受け取る。
なんでこんなこと、あたしのパンツ……脱ぎたてのものが、目の前で中年の手に渡っている。これみよがしに指にぶら下げ、ひらひらと旗振りのように揺らしてくる。見せびらかした挙げ句に、ピンと両手で伸ばした上、クロッチの部分を裏返した。
「おや? 綺麗だね? あまり穿いてなかったかな?」
下着に対する言葉をかけられ、ミオはみるからに引き攣った。
「そ、それは……わざわざ跡のついたやつなんて…………」
生理の痕跡を残したものなんて穿いていたら、今まさに声に出して指摘され、「これはおりものの跡かい?」「けっこう履き古しているんだね?」などなど、嫌な言葉をたくさん投げかけられたに違いない。
それだけはよかったけど、でもよくない。
人のパンツにあれこれ言ってきて、最悪……。
「ははっ、なるべく新しいものを穿いてきたわけだ」
「それはもう……そうです…………」
丸裸の、靴下とスリッパくらいしか身につけているものがない状態で、ミオ以外の女が一人もいない空間に立たされている。その不安に肩を小さく縮めていき、アソコを覆い隠す手の平も二つに増えていた。
「ではしっかりと気をつけ、全身を調べてもらうからね?」
「……はい」
隣から、ネイトの返事の声が聞こえた。
「はい」
なので、ミオも返事を返す。
気をつけの姿勢によって、隠し続けたアソコを解き放ち、ミオの頬が発熱する。顔から火が出るという例えの通りに、まさしく顔がカァっと熱くなり、頬も額もじわじわと茹で上がっていきそうだ。
男という男の数々が、二人の身体に群がった。
ミオの乳房に顔を近づけ、後ろからは背中に息がかかっている。お尻にも吹きかかり、足にもアソコにも、いたるところに視線が迫る。
「えーっと、お尻のホクロは――」
「オッパイの周りは……」
「アソコの付近はねぇ――」
といった具合に、殺到してくる顔という顔が、口々にホクロの位置を声に出す。記録係は忙しくペンを走らせ、それを素早く書き取っている。ネイトなどは同性に竿まで触られているわけだったが、今のミオには同情の余裕はない。
……くぅぅ! 無理! 無理! お願い! 早く終わって!
脳が煮えていた。
気がどうにかなりそうになっていて、陰毛を指で触られ、掻き分けられた時などは、もう脳の一部が火花を飛ばしたかのようだった。
やっと全身検査が終わっても、まだミオに安心は与えられない。
「はい。もう一度診察台に乗ってね?」
と、中年はニヤニヤと診察台を指す。
ミオにとって、もう地獄行きの道を行かされるようなものだ。
泣く泣く診察台に横たわれば、すぐさまM字開脚の指示が下され、顔から発火しながら開いていった。もう脳の内側で絶えず火花が飛び続けているようなもので、気がどうにかなっている状態で、アソコの観察は開始された。
「ワレメは綺麗なもんだねぇ?」
ミオの股に、中年の顔が接近する。
……い、いやぁぁぁ!
「どれ、中身は?」
指でワレメを開かれて、桃色の肉ヒダさえも中年の視線に晒される。あまりの思いに、ミオは両手で顔を覆い隠していた。誰のどんな力でも、決して仮面が剥がれそうにないほどに、強い力で顔に手の平を貼り付けていた。
「うん。綺麗な桃色で、ちょっとだけ濡れてるね? 見られただけでも、ある程度は体が反応しちゃったようだ」
中年はそんな発表を行った。
――うっ、うううう!
「ええっと? 処女だね」
――やあっ、ああああ!
「指を入れてみようか」
――いやああああ!
中年の人差し指が膣口に潜り込み、根元まで埋まる頃には、ミオは完全に発熱していた。首から上だけを熱湯に付け込んで、すっかり火が通ったかのように染まりきり、蒸気が上がっているかのようですらあった。
――無理っ、無理っ、無理っ、無理!
「お? 気持ちいいのかな?」
「あぁ…………! あっ、やめっ……!」
中年が指をピストンさせると、ミオはその刺激に反応していた。それを面白がるように、中年はますます活発に刺激を行い、クリトリスへのタッチまで始めると、ミオは髪まで振り乱して声を上げ、しだいに愛液を垂れ流した。
「あっ! うっ、うう! うん! うあっ、あん!」
固く貼り付けた両手の平は、ますます強く顔に食い込み、無意識のうちに必死になって表情を覆い隠している。それでも、手の大きさでは覆いきれない顎の下あたりから、顔がいかに真っ赤なのかが見て取れる。
中年が指遣いを施しているうちに、ピストンしている人差し指は、愛液のぬかるみをすっかり纏い、見え隠れするたびに光沢を放っている。クリトリスを弄っているせいで、脚もビクビクと反応して、足首は上下に動いている。
やがて、ミオ自身も自覚がないうちに、そもそも自覚の持ちようもなく、全身が高ぶり続けていた。
「あぁぁああああぁぁぁぁあああ――――!!!」
ミオは絶頂した。
背中を大きく弾み上げ、潮を吹いてしまっていた。
6・ネイトの視線から
ネイトもまた、亀頭やペニスのサイズを測られたり、精液を採取するとかで、射精を強要されるなど、とても散々な目に遭っていた。
――い、いっそ死にたい。
男の子ですら、そんな心境に至るほどの内容だ。
不幸中の幸いにも、肛門検査にかけてまで手早く済まされ、ミオよりも早く、検査からは解放されていた。いや、正確にいうなら、中年がミオの身体で遊んでいて、大いに楽しんでいるせいで、必要以上の時間がかかっていた。
診察台で身を起こし、トランクスを返してもらったネイトは見てしまう。
――み、ミオさん!
脚をM字に開いた姿で、中身をじっくり覗き込まれ、中年によって指をピストンされている。絶頂の潮を吹き、それが顔にかかっても、中年は構わず繰り返し、ミオを再び絶頂に連れていく。
刺激の強すぎる光景に、ネイトはすっかり赤らみながら、目を離せなくなっていた。
――ミオさん……い、いや! 見ちゃまずい気が!
そんなことは頭ではわかっていて、目を逸らそう逸らそうと、理性では思っている。だけど目の前の裸には引力がありすぎて、まぶたを閉じることさえできずにいる。
中年はノギスまで用意した。
「はーい。クリトリスは――」
と、性器の計測を開始する。
クリトリスは何センチか、大陰唇、小陰唇は何センチか。膣口の直径、アソコから肛門までの距離、肛門の直径までも測っていき、その全ての数字を機器として発表する。聞くべきではないとわかっていても、無意識のうちに耳に神経は集中していた。
――ミオさん、こんな……。
「はーい。撮るからねぇ?」
カメラまで用意され、一体どんな気持ちでいただろう。
パシャ! パシャ!
アソコに向かって、フラッシュが輝く。
目を逸らせない魔力があった。
ミオさんに悪い、見るべきじゃない――いくら頭で思っていても、体はそのように動かない。魔力のあまり、まばたきさえもしなくなり、ネイトはじっとじっと見つめていた。
「四つん這いになってねー」
姿勢を変える指示により、ミオが尻を持ち上げると、ネイトの視線はその曲線美に釘付けになっていた。
「では肛門を観察させて頂きます」
一体、ミオはどんな気持ちでいるだろう。
顔を埋め込み、シーツを力強く握った拳が震えている。全身が強張っていて、お尻まで小刻みにプルプルと震えて見える。こんなにも羞恥心を高ぶらせて、頭の中身がどうなってしまっているか、ネイトには想像もつかない。
中年の顔がぐっと迫って、肛門の観察は始まっていた。
「可愛いよ? ミオちゃん」
「大丈夫大丈夫」
「ネイトくんも見守ってくれてるからね?」
周りの男達も、嬉しそうに楽しそうに、わざわざそんな言葉をかけている。自分の名前を出されたことで、やっぱり見ていては悪い気持ちが改めて働いて、それなのにやっぱり、最後まで目は逸らせなかった。
理性よりも、目の前の光景が視線を引きつける力の方が、どうしても強かった。
パシャ! パシャ!
肛門の撮影が行われる。
どんなに深くミオの心を抉っているか、わかりもしなかった。
7・幕引き
さすがに気まずいなぁ……。
と、ネイトが思うのも無理はなく、全ての項目が終了して、やっと服を着て廊下に出ると、未だに顔が赤いままのミオが隣を歩く。ネイトの脳裏にも、あらゆる光景がしっかりと焼き付いているわけで、どうしても変な居心地がしてしまう。
「お願い!」
ミオは肩を掴んで迫って来た。
「お願い! みんな忘れて!」
どうか、一生のお願いです。
そんな切実さがありありと伝わってくるような、懇願に満ちた目で頼まれると、ネイトも頷かないわけにはいかない。
「は、はい……」
「本当に! 本当にお願いね!」
「はい!」
ネイトは大きな声で答えていた。
しかし、本当に忘れられるわけがない。ミオのおっぱい、ミオのお尻、イカされた光景、アソコや肛門の写真を撮られていた光景。
忘れないと、ミオさんが……そんな意識を持ってはみるも、いかに深く焼き付いた記憶であるか、ネイトはよくよくわかっていた。
生涯、消えない。
表向きに、忘れたフリをすることしかできない。
せめて、そうしようと、ネイトは心に誓っていた。