前編
不謹慎ではあるだろう。
この任務には同じロドス所属の仲間の身がかかっており、その救出を任された責任は重大である。
モスティマからも頼まれている。
なんとかフィアメッタを救って欲しいと。
しかし、屋敷への侵入という危険を伴うミッションに、彼女は心を躍らせていた。
今のところ判明しているのは、一度人身売買組織に囚われ、そこで一通りの調教を受けた上、買取先の元へ納品されているという情報だ。
その納品先こそ、貴族の屋敷である。
極東の元忍者、カゼマルにとって、忍び込んで取り返すほど、自分に向いた任務はあるまいと思っている。
潜入方法はメイドの募集を利用した。
夜間に泥棒よろしく忍び込み、セキュリティや警備を気にしながらの潜入調査も考えたが、表から堂々と入り込めるのも都合がいい。
現場の下見としては丁度良く、あわよくば職務中や休憩時間中を利用して、上手いことフィアメッタを見つけ出し、救出と同時に脱出したい。
だが、考えてもみなかった。
まさか面接の時点で身元が割れており、ロドスの仲間が救出にやって来たことがバレていたなど……。
身分を偽造したはずのカゼマルは、てっきり騙し通せていると思ったままに面接を突破して、業務初日を迎えたはずが、カゼマルにメイドとして働く時間など訪れなかった。
(あ、えーっと、ですね……)
ゆっくりと、落ち着いて思い出す。
記憶を掘り返していけば、屋敷に入り、更衣室で服を着替え、現場の先輩から業務説明を受けたところまでは覚えている。新人の初日である以上、ひたすら仕事を教わるばかりの段階から入ったまでは、はっきりしている。
そこから先がだんだんと朧気で、記憶に霞みがかかったようになっているが、何かを飲んだり、妙な匂いを嗅いだような覚えは薄らとあり、おかげで自分の状況に整理がついた。
(睡眠薬?)
かは、わからない。
薬の種類はともかくとしても、何かの成分によって意識を失い、そのあいだに運ばれて、こうして今ここにいる。
(これって、なんという拘束でしたっけ)
そしてカゼマルは、首や手首にある冷たい感触に意識をやり、拘束具の種類を確かめる。
確かギロチン刑では、受刑者にこういう枷をかけるのだったか。
一枚の板に三つの穴が空いたものを想像して欲しい。
その三つの穴に、それぞれ頭と手首をはめ込むのが、カゼマルにかけられている拘束である。Wの字を近い形で固定され、両腕の動きを奪われているのだった。
(とにかく、困りましたね。アーツも使えませんし……)
板は木製だ。
ただ、穴の部分の内側には金属のフレームをかけてあるので、それが硬い感触として触れてきている。
そして、どうやら今の今まで、椅子で眠っていたらしい。
両足には拘束がない様子で、試しに立ち上がってみるのだが、その瞬間にじゃらりと金属の音がなり、板に何かの重みがかかってくる。
どうやら、三つだと思っていた穴には、鎖を通すための四つ目の穴があり、それがうなじの近くに空いている。こうも変わった首輪によって、カゼマルは鎖に繋がれているらしい。
すぐに周りを観察した。
壁、床、天井は、いずれも灰色のコンクリートで構成されており、蛍光灯の光が室内を照らしている。
鎖は首の後ろから垂れており、どこに繋がっているのかを辿っていくと、カゼマルの視線は壁へと進む。壁にものを通せる凹みを作り、そこから鎖を伸ばしているようだった。
長い鎖がだらりと、床には垂れ下がっていた。
前に向き直ると、目の前には扉があった。
もちろん、鍵はかかっているのだろうが、そもそも鎖の届く範囲までしか進めないので、開いていようと扉の外には出られない。どうにか拘束を解除して、自由にならなければ始まらない。
だが、飲まされた薬は睡眠薬だけではなかったのか、カゼマルは他にも異変を感じている。
筋力が少し、抑えられている気がする。
それから、アーツユニットが手元にないのは当然のこと、あったとしても、扱える感覚がしない。アーツ阻害効果のある成分すら、今は浸透しているらしい。
スカートの感触にも気づく。
膝上一センチほどまであるはずのスカート丈が、太ももに触れていない。破かれているのか、何なのか、太ももの前側が丸出しに、アソコも丸見えのはずだった。
そう、アソコが丸見えだ。
下着が脱がされており、後ろ側のスカート丈も、尻に直接触れてきている。
つまり、眠っているあいだに何をされたのか。
まさか既に犯された後ではないかと、恐怖と不安が込み上げるが、アソコにはこれといって違和感がない。だから何もされていないとは限らないが、少なくとも挿入はされていないと思いたかった。
(だいたい、なんですか。なんか、お尻が……)
違和感といえば、むしろ尻の方にあった。
いや、そもそもどうして、この一番の違和感に今まで気づかずにいることができたのだろう。真っ先に感じても良かったはずの、大きな大きな違和感に気づいた時、カゼマルの意識は一気に肛門へと注がれていた。
肛門が異物によって拡張されている。
物が挿入されることにより、咥え込んだ皺の窄まりは、丸く大きく拡張され、そのリング状の締め付けが異物を支え、内側にキープしている。
(いや、これは――本当に、何なんですか――――)
カゼマルは戦慄した。
眠っているあいだに、何者かによって下着を取られているばかりか、肛門に異物すら挿入されているのだ。その事実を思うと恥辱感が大きく膨らみ、こんなことをしてきた何者かへの、憤りの熱さえ胸に疼いた。
すぐに気づけなかったのは、すっかり馴染んでいたせいで、逆に違和感がなかったからなのか。
だが、気づいてさえしまえば、急に途方もない違和感が湧いてくる。
しかも両腕が使えないのだから、取り外すことも出来ないのだ。
さらに、その時である。
カチャリと、ドアの方から急に鍵の外れる音がして、直後にドアノブが回転する。
開かれるドアの中から、上等な衣服に身を包んだ一人の貴族が現れた。背後には幾人もの、黒いスーツの男達を手下のように引き連れて、その恰幅の良い貴族はニヤニヤと、人を品定めする視線と共に歩んでくる。
「おはよう? ロドスのオペレーターにして、極東の忍者」
「ご存じなんですね」
視線がアソコを向いてくる。
剥き出しの部分を見られ、視姦される恥ずかしさに赤らみながらも、カゼマルは真っ直ぐに彼らを見据えた。
どうせアソコは隠せない。
それよりも、人のスカートを裂いておいたり、下着も脱がせておいたり、まして肛門に異物を入れてきている男達など、ロクなことは考えていないだろう。
これから、彼らはカゼマルのことをどうするのか。
何人も何人もの男を前に、たった一人の状況で、カゼマルは唇を引き結ぶ。
「君が何を望んでここに来たのかも読めている。君の探している性処理道具なら、確かにこの屋敷に置かれているよ」
「人を物扱いですか」
「彼女だけではない。君だって、これから私の物になるんだ」
貴族の男はおもむろにポケットをまさぐると、何かのスイッチを取り出して、これみよがしにオンにする。
その時だった。
「っ!」
カゼマルは突然の刺激に目を見開き、まるで尻を後ろから蹴られでもしたように、腰を突き出すように背中を反らし、軽く天を仰いでいた。
快楽が走ったのだ。
ブィィィィ!
と、肛門の異物が振動を帯び、その刺激が皺の部分や腸内を揺らし、甘い刺激をもたらしてくる。激しくも狂おしいものが背筋を駆け上がり、脳が痺れんばかりの気持ち良さに、たちまち愛液の分泌が始まっていた。
やられているのは肛門でも、ワレメの表面がみるみるうちにしっとりと、さらに急速に水気を帯びて、ぬかるみを帯びていく。ラインに沿って縦状に、浮かび上がった光沢がキラキラと、蛍光灯の明かりを反射していた。
「んくっ! んっあっ、あぁ……!」
カゼマルは知らない。
薬で意識を奪われ、アーツ阻害薬まで投与されている他に、媚薬すら飲まされていることを――。
さらには腸内洗浄や拡張など、アナルプレイに必要な下準備すら、眠っているあいだに済まされているなど、カゼマルには知る由もない。
「はっあっ! あっ、あぁ!」
何も知らないカゼマルには、予想外の快楽が走り、この体をよがらせてきているのだということしかわからない。
「あっあっ! あぁっ!」
そして早速、カゼマルの中で何かが膨らむ。
絶頂の予感である。
今にもイってしまいそうな、性器の中から何かが弾け出てしまい兼ねない感覚に翻弄され、カゼマルは太ももを引き締める。振動に振り回されでもするように、尻を上下左右に振りたくり、熱っぽく息を乱して喘ぎ続けた。
――来る。
アソコの奥で、見えない何かが弾け散る。
「あっあぁぁぁ――――――――――」
頭が急に真っ白に、電気が弾け、次の瞬間にはアソコから愛液が滴り流れる。ワレメから出て来た汁気は、内股の表皮を伝って広がり、擦り合わせていた脚の狭間を濡らしていった。
その絶頂に合わせたように、貴族の男はスイッチを切り、ディルドの振動も停止する。
カゼマルはぐったりと膝を突き、肩で大きく息をしながら、自分をイカせたその男へ、憎らしい貴族の男へと、睨まんばかりの目つきを向けていた。
それに対する貴族の男は、優位の立場からニヤニヤと、鼻の下を伸ばした表情で、カゼマルのことを見下ろしていた。
「さあ、自由にしても構わない。好きにしたまえ」
貴族の男が告げた途端、周囲に控えていた何人もの群れが動き出し、一斉に迫って来る。
カゼマルは反射的に身構えて、逃げるか反撃するかの意思を手足に走らせる。
しかし、拘束されている上、筋力抑制剤による制約すら入っているのだ。全力など出しようもなく、まともな抵抗もできないままに、手という手の数々に全身をまさぐられる。
胸が、脚が、尻が、あらゆる部位が触られる。
いくつもの手の平が這い回り、自分の身体を楽しんでくる状況に、怖気や危機感でひたすら強張り、カゼマルは顔を顰め込んでいるのであった。