ひょんなことから、身代わりのようにエロバラエティに出演することとなる白雪千夜、彼女に待ち受ける試練は男水着チャレンジや放尿など、恥ずかしいこと極まりない企画の数々だった。
【第1話 裏のありそうな企画】【第2話 屈辱のゲーム】【第3話 そして全裸になってから】【第4話 街中を歩かされ】
過去、十二歳の時に起こった不幸で独りとなり、行くあてのなかった白雪千夜を引き取ったのは黒埼の家だった。
もっとも、養子にはなっていない。
名字が変わることを避け、白雪の名を守る道を選んだ千夜は、そして使用人として働く形となり、日本に来てからは今は黒埼ちとせと二人で暮らしている。
自分はあくまでご主人様に仕える身。
メイドや執事のような心情は、アイドルデビューを果たしてからも一貫している。
その千夜にとって、看過ならないことが起こっていた。
「お嬢様、私は反対です」
ちとせもまたアイドルとなり、二人で芸能活動を始めてから、雑誌撮影やテレビ出演にライブなど、仕事が舞い込んでくるのは当然だ。
それはいいとして、内容に問題がある。
「あれー? どうして駄目なの? 面白そうじゃない?」
「お嬢様をお誘いになった人物は、過去に何度もドッキリを仕掛けています。その結果はご存じなのでは?」
「うーん。だけど、絶対にそうなるとは限らないし」
「警戒はして下さい。私達はあんなことのために働いているわけではありませんから」
きっぱりと述べる千夜である。
話はいたってシンプルだ。
ちとせの元にとあるテレビ出演の企画が入り、幸いにも二つ返事はせずに持ち帰ってきたわけなので、まだ断るチャンスが残っている。
問題のない仕事なら、スケジュールと照らし合わせて引き受ければ良いと思うが、きっと問題のある仕事になると千夜は感じていた。
昨今のテレビでは、実に規制が緩んでいる。
一体、いつから法律が変化して、世間の常識にも変革が起こったのか。地上波で女性の裸を流したり、未成年の性器を映すことすら可能な今、どのテレビ局も面白おかしいエロバラエティの企画を捻り出し、少しでも有名だったり、容姿の優れた少女で視聴率を稼ごうとしているのだ。
多くのアイドルがその手の企画に狙われ、たびたび出演させられている。
そんな中、ちとせにテレビ出演の話を持ち込んだのは、かなりの『前科』持ちの人物だ。
その人物からの仕事では、普通のバラエティかと思いきや、急にエロ企画への対応を強要され、そして権力や根回しなどが理由で断り切れず、裸を流されたという話が多い。
ちとせの裸も狙われているのではないか。
そう危惧した千夜は、断るべきと言っているわけだった。
「心配はわかった。それなら、私も断りたいけど……」
言葉を重ねたおかげで、納得はしてくれた様子だが、かといって断ろうにも他に問題があるらしい。
「拒否はできそうにないのですか?」
「もろもろのパワーバランスっていうか。事務所的には一人は差し出さなくちゃいけないみたいなの」
「まるで人身御供ですね。ですが、それがお嬢様である必要はありません」
「でも、そんな身代わりみたいな話も、ちょっとなー」
「心配はありません。お嬢様の仰る通り、必ずしも裏があるとは限りませんので、どうしても一人は出演する必要があるのでしたら、その番組には私が出ようと思います」
「本当に? 本当に出ちゃう?」
「本当の本当に私が出ます。いいですね? お嬢様」
千夜はそう結論を決めきって、これ以上の有無は言わせないつもりであった。
お嬢様の大切な体が晒されるより、使用人に過ぎない自分が犠牲になる方が、ずっと良いに決まっている。あわよくば何の裏もない、ただの普通の番組で済むだろう。
千夜はその日のうちにプロデューサーに連絡を入れ、我こそが出演する旨について伝えるのだった。
*
そして、撮影当日である。
学校で着る黒いセーラー服を衣装として、いざ現場を訪れた時、そこで受けた説明を聞けば聞くほど、千夜の顔は険しく睨みの利いたものへと変わっていった。
だいたい、プールという時点で、怪しいとは思っていた。そこは様々なエロバラエティの企画現場として、たびたび登場しているからだ。
よって案の定だ。
「お前……」
と、恨めしさを声にすら出してしまった。
番組内容が変更になったなどと言われたのだ。
最初に目を通した企画では、そう警戒することのなさそうな、ごく普通の番組に見えた。
だが細かな契約内容には、始めから疑問があった。
不測の事態を理由にして、番組内容を臨機応変に変える可能性がある旨が記されていた上に、肌の露出にまつわることは書かれていなかった。
実に厄介な話である。
脱衣や過激な露出を伴う行為は一切ない、という約束を契約内容によって事前に出来ればいいが、そこがまず問題だ。
現在のこの世界、この業界では、そのような約束を事前にしてくれる企画がほとんどない。番組内容の急な変更、事前の約束が決してされない、この二つの組み合わせが業界全体でまかり通っている。
事前の約束を求めれば、あからさまに仕事が減り、やっていけなくなるという話も聞く。
ちとせに舞い込んだ企画の怪しさは、まさに予想通りのものだったのだ。
*
どうあれ、白雪千夜の出演は決定事項だ。
エロバラエティへの出演を後出しで突きつけられても、それを拒むわけにはいかない。ここで意地でも拒んだり、帰ったりでもしようものなら、後々の仕事に響くことはもちろん、事務所の経営にも影響が及び、最悪賠償請求が来るという。
そんな風に根回しが済んでしまっている。
だから、はっきりと物を言い、目上だろうと平気で逆らう性格をしていようと、退路を断たれてやむにやまれず、ということになるわけだ。
(まったく、下らない……低俗な番組……)
かくして、千夜はプールを背にして立っていた。
撮影スタッフがそれぞれの配置についている中、視聴者の目線ではセットや出演者の様子だけが映るのだが、千夜の視界には一般の見学者が何十人も集まっている。
募集企画に応募して、当選した男という男の数々が、アイドルの生裸を見に来ているのだ。静かにマナー良く立ち尽くし、壁を成している見学者の、誰も彼もが見るからに何かを楽しみそうにしていた。
さらにはには大型モニターがあった。
千夜の隣には、ホワイトボードほどに大きなモニターが鎮座している。遠目には見えにくい部分でも、存分に拡大できるわけだろう。
今のところ服は来ている。
黒いセーラー服に赤いスカーフを通しての、学校の制服をそのまま着るのが、番組指定の衣装である。
あくまで、最初の一着目だ。
どうせ着替えの指示が入ったり、脱衣を進める羽目になり、別の服なり下着姿なりへとさせられる。いつまでも着てはいられない、後で恋しくなるであろう予感は、この時点から既にしていた。
マイクを握った司会者が隣につき、スタッフの合図を経て、やがて撮影は開始となった。
「どうも皆さんこんにちは! 今週も始まりました毎度おなじみ『ドキドキアイドル危機一髪!』 今週のゲストはアイドルの白雪千夜ちゃんでお送りします!」
司会者は意気揚々とマイクを通し、集まった見学者達に、ひいては放映時の視聴者に向かって挨拶を行った。
「それでは千夜ちゃん! 挨拶をどうぞ」
千夜の元にも迫って来て、横からマイクを差し出してくる。
「よろしくお願いします」
「元気がありませんねー。他になにかコメントは?」
「特にありません」
「意気込みはどうでしょう」
「それもありません」
「これはこれはまた、個性を持ったアイドルの登場です。そんな千夜ちゃんは今――――」
どうやら宣伝タイムらしい。
デビューの際の楽曲は、次のCDの予定は、その発売日は……それらの言葉を流暢に吐き出している。放映時の映像には、ジャケットの画像も表示されていることだろう。
ひとしきりの宣伝を終えたところで、番組はようやく本題に入っていく。
その時が迫れば迫るほど、一見して無表情の、クールな千夜は内心で身構えていた。
(一体、どんなふざけたことをやらされるか……)
始まる前から辟易しきったように、ため息すらついたところで、司会者から早速の指示が飛ぶ。
「では最初に! お着替えタイムといきましょう!」
生着替えを予感さえる言葉が出るなり、見学者達は沸き立って、その期待感の高まった空気はひしひしと伝わってくる。
「ここでなんてことはありませんよね?」
険のある顔でそう尋ねる。
「そうですねぇ! ロッカーの方に水着を用意してありますので、そちらに着替えて頂く形となります!」
着替え自体は更衣室らしい。
撮影が始まって早々、千夜はプールサイドから離れていき、女子更衣室へと足を踏み入れることになるのだが、何故だか司会者も堂々と、さも当然のようにして入って来る。
それどころか、撮影スタッフも一緒であった。
「あの……」
「では白雪千夜ちゃんの生着替えです!」
司会者はカメラに顔を向けていた。
撮った映像で見てみれば、マイクを握った司会者が手前に大きく、その後方に千夜が小さく映る画面構成に違いなかった。
「さあ、これは単なる着替えではありません」
と、その言葉を契機にして、司会者は番組の趣旨を語り始める。
「毎週お楽しみの皆さんにはおなじみですが、初めて視聴なさる方々のため、改めて説明しましょう!」
この『ドキドキアイドル危機一髪!』では、毎回様々なアイドルが登場して、与えられたミッションをこなしていく。そつなくこなせばポイントが入り、さもなくば罰ゲームによって減点され、最終ポイントによって景品が貰えたり、貰えなかったりするのだそうだ。
「といったわけで、ミッションごとに失敗条件が設定されており、それを満たすと罰ゲームを実施するものとなっています」
「そうですか。それで、着替えるだけで罰ゲームとは?」
「見るからに躊躇ったり、着替えの手が止まった場合、たちまち執行されますが、内容はその時のお楽しみ!」
千夜だけでなく、カメラの向こうも意識する必要のある司会者は、始終マイクを握ったまま、視聴者への説明も兼ねているのだった。
衣装はテーブルに置かれている。
「わかりました。では早く始めて下さい」
「いいでしょう! それでは! スタート!」
司会者はストップウォッチをこれみよがしに、大仰な身振り手振りによって、過剰なまでに大胆にスイッチを押す。着替えタイムのスタートとなり、千夜は早々のうちに衣装を手に取って持ち上げた。
「これ一枚ですか」
男子用の水着であった。
トランクス型のそれ一枚きり、しかもサイズが小さそうだった。
「こうも早速最悪とは思いませんでした」
千夜はスカーフを解き始める。
罰ゲームの内容が伏せられている以上、何かロクでもない展開があっては困る。ここはさっさと脱いでしまおうと、千夜はなるべく無感情に、さっさと肌を晒そうとは思うのだが、いざ脱ぐとなると体が硬くなってくる。
「さあまず、赤いスカーフがほどかれました。次に待っていますはセーラー服にスカートですが、果たして千夜ちゃんは、一体どちらから脱ぐのでしょうか!」
司会者が実況の真似までしてくる。
こうも脱ぎにくい状況で脱衣を進め、しかも男子用の水着を穿くのかと思ったら、本当に嫌気が差してたまらない。
だいたい、サイズも小さい気がする。
千夜はカメラと向かい合ったまま、スタッフや司会者の視線を浴びながらに、セーラー服のファスナーを下ろしていく。胸の部分に隙間を作って緩めたら、あとはシャツの着脱と同じ具合に、袖の中から腕を片方ずつ引き抜いていった。
カンペによる指示が出ているのだ。
生着替えの披露のため、きちんと見えやすい形で脱衣しろとのことなので、千夜は罰ゲームへの警戒から従っている。
「さあ順当に上から脱いで行く千夜ちゃん! 右の袖が空っぽとなり、次は左腕が内側へと引っ込みます。そして、たくし上げる瞬間に見えてきますは、白く綺麗なおへそではありませんか!」
「脱ぎにくい……」
スポーツの実況中継でも意識しているのか。
ただでさえ恥ずかしいのに、脱ぎにくいことこの上なく、躊躇いながら上半身を晒した時には、下着にまつわる実況までもが始まっていた。
「おおっと! 白雪の名の通り、ブラジャーは白! 見たところ刺繍やレースに飾られて、とても可愛らしい! よく似合ったブラジャーが、ささやかな乳房を守っているというのでしょうか!?」
「うるさい……」
赤らみながらそうこぼす。
実況され、下着についても詳しく言われ、肌を露出する恥ずかしさに加えての、単純に声が大きくてうるさいことの不快感といったらない。
「さて次はスカートです! 腰へ両手が行きまして、まずは留め具とファスナーから! そしてそのスカートは、ばっさりと床に落ちるのでしょうか! 落ちました!」
足元にスカートを落としての、ドーナツ状のリングを作った瞬間、頬の赤らみはさらに広がる。
「ショーツもやはり可愛らしい! 見たところ、紐タイプというわけではなさそうですが、両サイドにはリボン結びらしきものが飾り付けされているようですね?」
恥ずかしい上にうるさい。
このたまらない状況で、ブラジャーまで外さなくてはいけないのかと思ったら、本当に頭が痛くて仕方がない。
(……はあ、とにかく胸も出す運命にあるわけですね)
頬に熱が溜まっていき、顔の赤らみが広がることを我ながらひしひしと感じつつ、千夜は両腕を背中に回す。指先でホックを見つけ、外そうとした瞬間だ。
「………………」
千夜は固まってしまった。
罰ゲームが何かしらあるとはわかっていながら、乳房を出すことを思ったら、急に腕が動かなくなり、数秒は硬直してしまった。
まずいと思った時には、もう遅い。
もしやと予感を抱いた時、まさにこれが失敗条件とされていた。
「罰ゲームです! 只今、一定の秒数以上、躊躇いによる停止が見受けられましたので、罰ゲームとなります」
「……ちっ」
無念そうな顔をしながら、赤面しきったままに小さな舌打ちをした時だ。
黒子が突入してきた。
ドアを蹴破りながらやけに素早く、ただ突入するだけで前回りまでしながらの、格好を付けたアクション混じりに入ってきたかと思いきや、その腕にはハリセンを握っていた。
千夜の後ろに黒子は立つ。
そして、背後に振り上げられたハリセンで――
――ベチィ!
大きく良い音が鳴る。
「なっ……! ううっ」
お尻を叩かれた屈辱で、千夜は目一杯に顔を歪めた。
「さあ生着替えの続行です! 千夜ちゃん! ブラジャーをお外し下さい」
(覚えてろ……)
何か報復でもしたい気持ちを胸に、千夜はホックを外していた。もうそれだけで、カップと乳房のあいだに一ミリでも隙間が生まれただけで心許ない気持ちになり、千夜は落ち着きを失っていた。
また尻を叩かれたくはない。
今度は躊躇わないように、罰ゲームにならないようにと意識して、肩紐を一本ずつ下ろしていく。片腕で胸を隠して、腕と胸の隙間から引き抜くまでの、千夜の一連の挙動はどこか、急かされたようでもあった。
「おおっと! 乳房は腕に隠されており、その乳首を拝むのは少しのあいだお預けとなりますが、果たしてショーツはいかにして脱ぐのでしょう!」
「後ろを向いてもいいですか」
「なるほど! 我々に向かって、まず最初にお尻を見せて下さるようです!」
「そういうつもりではありませんが、良いというのならそうさせてもらいます」
千夜はカメラに背中を向ける。
乳房に視線が来る恐れがなくなって、始めて両腕を下ろした後、やはり罰ゲームを恐れて早めに脱ぎにかかった。
しかし、指をショーツの両側に差し込んで、下ろそうとした瞬間の、猛烈に湧き起こる抵抗感から、やはり全身が硬直しそうになる。
さらにその瞬間、再び黒子が飛び込んできた。
「おっと! 一体なんでしょう!?」
司会者の驚いた素振りから、罰ゲームというわけでは無さそうだが、では一体何をしに現れて、しかも瞬間移動さながらに、素早く距離を詰めて来たのか。
「……なっ!」
タブレットを見せつけられた。
黒子は電子タブレットに動画を流し、それを千夜本人へと突きつけに現れたのだ。
プールサイドの映像である。
あの場所には、一般人から集めた見学客を置き去りにしてきているが、しかし大型モニターも残してある。
彼らはモニターを通して千夜の生脱ぎを鑑賞していた。
タブレットの中には、モニターに映る千夜の生脱ぎと、それに群がる男達という映像が流れていた。それもリアルタイムのもので、映像の中に流れるそのまた映像、モニターの中に収まる千夜は、ここでこうしてカメラに背中を向け、ショーツを脱ごうとする挙動に対応していた。
試しに適当な動作を取って、一歩横になど動いてみれば、モニター内の千夜もまた、まさしくその通りに動いていた。
「み、見られてる……最中だったんですか…………」
赤らみがみるみるうちに広がって、頬の温度が高まっていく。
そんな風に衝撃を受け、恥じらっている最中にも、固まっている時間は所定の秒数とやらを過ぎていた。
一体、何秒固まればアウトなのかは知らないが、司会者が高らかな宣言を行うのだった。
「はーい! アウト! 再びハリセンのお見舞いです!」
その時、もう一人の黒子が現れる。
二人以上いたのかと、そんなことを意外に思っている暇もなく、ドアから突入してきたとわかった時には、もうハリセンが炸裂していた。
パァン!
何かを破裂させでもしたような、実に良い音が鳴ったと共に、千夜の尻には衝撃が走っていた。
「くっ、屈辱……!」
千夜は歯を食い縛る。
タブレット越し、モニター越しに、自分自身の尻にハリセンが当たり、炸裂する場面を目の当たりにした。そのスパンキングの瞬間に、モニターの周りで盛り上がり、嬉しそうにざわめく男達の様子さえも見ていれば、恥辱感で頭がどうにかなりそうにもなってくる。
「では千夜ちゃん! 脱いでいきましょ!」
ハリセンの黒子は去っても、タブレットの黒子は去ってくれず、相も変わらず千夜に向かって動画を突きつけている。さらに今更気づくのは、ならば黒子の視線はきっと乳首に送られており、まだ見せないように守ったつもりの、乳房を視姦されての無念さえ千夜は味わう。
千夜はショーツを下げていく。
下げれば下げるだけ、尻の露出面積を上げていくだけ、見学者達の食い入るように見つめる姿勢が目立つ。熱中して群がる様子から、画面越しにも熱気が伝わってきそうである。
そして自分自身の尻の様子を、まさしくカメラの視点で確認できてしまう。
余計に恥ずかしい状況だった。
ただ司会者や撮影スタッフのいる場で脱ぐより、もっと恥ずかしい条件が整った上での、しかもショーツの脱衣である。尻を出し、もっとも恥ずかしいアソコを露出する。
「ええ、脱ぎますよ。脱ぎますとも」
耳すら赤くなりそうな勢いで下げ始め、ゴムの感触が尻を通り抜けていく。
そのまま膝すら通過させ、最後まで脱ぎきっての、一時的な全裸で立ち尽くした時である。
「……っ!」
千夜は俯く。
恥ずかしさで気がどうにかなりそうな、いっそこの場にしゃがみ込み、もう一歩も動きたくない気持ちにさえ駆られるが、まだ水着の着用が残っている。
というより、水着さえ穿いてしまえば、せめて下腹部だけは隠せるのだ。
千夜は手でアソコを覆う。
黒子の視線を気にしてワレメを守り、片手だけを後ろに伸ばし、指先で水着を探す。そして指に絡め取ると、やっと何かにありつけるようにして、勢いよく穿くのであった。
男子用の水着の中に、千夜の尻やアソコがぴったり収まる。
「小さいですね。きついのですが」
赤らみの引かない顔で、両腕のクロスを固くしながら、千夜はようやく後ろを振り向いていた。
やはりサイズが合っていない。
太ももが脚の部分のゴムに押し潰され、ぷにりと肉が浮き出た上で、尻にも何か食い込み、アソコにいたっては今に形が如実になってはいないかと不安になる。
「まあまあ、とにかく着替え終わりましたということで、次に進んでいきましょう!」
「そうですね。さっさと終わらせましょう」
「というわけで、お次のミッションははプールサイドでの実施となります! 一体どのような試練が千夜ちゃんを待ち受けているのでしょうか!」
視聴者向けの煽り文句を忘れない司会者だった。
(……ともかく、お嬢様に出演を断らせたのは正解でしたね)
そうして千夜は、司会者や撮影スタッフを伴いながら、ぞろぞろと更衣室を後にする。
女子更衣室から出て来た群れが、よりにもよって男まみれだ。
撮影のために貸し切りとはいえ、とても異常な光景だろうにと、千夜は俯いているのであった。
プールを背にして立つことで、ギャラリーの視線が殺到する。胸を守るための両腕には、より一層の力が籠もり、ますますガードは固くなる一方で、しかし下半身は隠せない。
腕は二本しかないのだ。
サイズの小さめな水着がぴったりとフィットして、脚に食い込むゴムからは、肉がぷにりと浮き出ている。丈は男のトランクスと同等なので、太ももは丸出しも同じであった。
脚の露出だけならまだしも、あまりにもフィットしすぎているから、きっとアソコの形さえも浮き出ている。ワレメの形がどこまで如実か、怖くて確認できない有様だ。
「さあ皆さん! 千夜ちゃんはこのプールにて、今度は一体どのようなミッションに挑戦するのか!」
マイクを握り、司会者は千夜の隣で元気いっぱい、活力に漲る声と表情で視聴者やギャラリーへの呼びかけを行っている。
「次のゲームは、こちら!」
その瞬間、モニターに画像が映る。
そこに書かれた文字からギャラリーへと、ミッションの内容は伝わっていた。
『物真似ゲーム』
それだけではまだ詳細はわからない。
「えー。只今から、私がいくつかのポーズを取っていきます。それを千夜ちゃんが次々真似していくもので、過剰に躊躇ったり、真似があまりにも下手な場合、罰ゲームになるそうです」
そう聞いてまず千夜が想像したのは、一般人は知らないようなヨガか何かのポーズを持ち出して、意外と難しいので真似できない、という展開である。
しかし、その想像が大きく外れていることに、千夜は直ちに気づくのだった。
「では早速、真似してもらいましょう!」
司会者はそう言って、すぐに一つのポーズを取る。
両手を左右に広げるポーズであった。
何一つ難しい要素がない、ただの十字架ごっこのようなポーズを見て、千夜は顔の赤らみを強めていた。
千夜は上半身裸なのだ。
普通なら、何一つ難しいはずもないポーズも、裸だからこそ抵抗感を伴うことになる。
これが物真似ゲームの趣旨ということか。
「ちなみに罰ゲームの内容は複数あるので、今度もハリセンとは限りませんよー!」
「遠回しな脅しですね。いいですよ、やればいいのでしょう」
千夜は恥じ入りながら両腕を広げていく。
動作そのものはあっさりと、何も躊躇いなどないように振る舞いこなしてみせるが、すぐさま乳房に視線が集まり、ギャラリー達の熱っぽい瞳が気になってくるのは言うまでもない。
薄らとした膨らみの、乳首を立たせた部分へと、全員の視線が集中していた。一般人からなるギャラリーばかりか、撮影スタッフ達の目も、総じて乳房へ殺到していた。
羞恥心が膨らんでいく一方だ。
頬が熱くてたまらない。
「では次のポーズです!」
司会者が次に取るのは、皆に尻を向けながら、自分で自分の足首を掴む前屈だった。
「なっ、こんな……!」
下半身には一応水着があるとはいえ、下半身を目立たせて、尻に視線を掻き集める恥ずかしさといったらない。
屈辱を噛み締めながら、千夜はギャラリーに背中を向け、身体を折り畳む。
上半身を前に倒していくことで、視界に地面が迫って来た。
足首を掴んだことで、自分の尻がいかに丸目立ちであるかを実感して、無数の視線が這い回ってくる感覚に、頬から火でも噴き出そうだ。
視線の感触など、錯覚ではあるのだろう。
だが確かに、何か蟻よりも小さいものが無数に集まり、蠢き続けてくるような、ぞわぞわとする感覚がある。肌にぴったり張りつく水着を思うと、ただ肌を直接出していないだけであり、尻自体はやはり見せびらかしてしまっているのだと痛感する。
「そしてお尻を振ります! ワン・ツー! ワン・ツー!」
司会者は何の恥ずかしげもなく、かなり平然とお尻を振りたくっていた。
前屈姿勢のままに横目で見て、千夜の目線からでも何か振り動かすような挙動は、それに連なる全身の微妙な動きでわかる。
「は、はしたないにもほどが……」
もうそろそろ、死にたくもなってくる。
千夜はその、ワン・ツー、ワン・ツーと、元気に声を張り上げたリズムに合わせ、本当の本当に恥を堪える気持ちになって、お尻を振り動かすのであった。
「ワン・ツー! ワン・ツー!」
しかも少々長い。
もしや数分はやるのだろうか。
お尻を使ったアピールで、下半身に視線を集める恥ずかしさは言うまでもなく、何か馬鹿なことをやらされて、下品な芸を笑われているのではないかと、そんな屈辱感も湧いて大きく膨らんでくる。
「っと、これはこのくらいにして、次は気をつけ!」
幸い、思ったよりも早く終了する。
司会者の気をつけに並び、千夜もまた気をつけをしてみれば、目の前に並ぶ顔という顔の数々の、にやけた表情といったらない。
たった今までしていた尻のダンスを鑑賞して、楽しんだ直後の顔が並んでいるのだ。
さぞかし良い気分なのだろう。
「さて続きましては、こちらです!」
司会者は急にがに股になる。
一体、それでどうするのかと思いきや。
「ぞーうさん! ぞーうさん!」
歌い始めていた。
「は……?」
「おーはなが長いのね!」
歌いながら腰を振り、さもペニスを揺らして遊んでいるような動作を取る。
「さあ千夜ちゃん! 今度は歌も真似して下さいねー?」
全身が総毛立つ。
こんな形で見世物にさせられて、馬鹿みたいな下らない芸が全国にまで放送される。悪夢のような未来を前に、頭が痛いといったらない。
だがやらなければ、罰ゲームがどんな内容かもわからない。
千夜は無念でいっぱいの顔をして、これ以上なく真っ赤になりながら、司会者の隣で腰振りを始めるのだった。
「ぞーうさん……ぞーうさん……」
司会者ほど元気にやれるはずもない。
比較的に小さな声で、動きもたどたどしい腰振りで、ありもしない架空のペニスを揺らす。
千夜の視界には、ありとあらゆる表情が浮かび上がった。
人の下品な芸を見て、何を興奮してか鼻の下を伸ばしきった顔がある。勝ち誇った顔をしてニヤニヤと、人を見下さんばかりにした顔がある。
哀れんでくる顔がある。
鼻で笑ってくる男もいた。
そんな数々の表情に耐えかねて、羞恥の熱が行き来する脳神経は、いつしか焼き切れそうですらあった。
「お、おーはなが……長い、のね……」
もう泣きたい。もう死にたい。
屈辱が、無念が、膨らみ過ぎるほどに膨らんで、どうしようもない気持ちになった時、なんと司会者は言うのである。
「ちょーっと、いまいちですねー」
その瞬間、千夜の表情が凍りつく。
「ま、まさか……!」
「罰ゲームと致しましょう!」
司会者が無情の宣言を下す。
その瞬間、たちまち更衣室から飛び出して、駆けつけてくる一人の男は、筋骨隆々の海パン一丁、日焼けによって浅黒い肌を剥き出しにして、ニカッと笑う逞しい青年だった。
*
罰ゲームもある種のミッションだった。
水泳帽を被った千夜は、プールの水に体を入れ、合図と共にゴーグルをかけて泳ぎ始める。二十五メートルをただ泳ぎ切るだけならいいが、これを罰ゲームと称するからには、他にもルールが課せられている。
泳ぎ切る前に追いつかれ、捕まったら水着を脱がされる。
よほど泳ぎが速いのなら、その難を逃れることは可能だが、全身に筋肉の凹凸を纏った逞しい男が相手では、とても逃げ切れる気がしない。
クリア不可能の難易度設定のつもりで、このルールにガタイの良い男を用意したのだろう。
千夜にミッションクリアの余地があったら、罰ゲームとしては出てこない。
きっと水泳経験者だ。
始まる前から捕まることを予感しつつ、千夜は水面に体を浮かべ、必死のクロールを行った。ハンデとして男は数秒遅れて入水し、後から追いかけてくる形ではあるものの、それでも勝負は始めから見えていた。
「!」
泳ぐ途中、驚愕に目を見開く。
バタ足の最中だった足首が掴まれて、やはり追いつかれてしまったのだと、無念に打ちのめされながら、千夜はその場で泳ぐことをやめたのだった。
泳ぎ切るまで、残り数メートルの位置だった。
(……脱がされる)
とうとう全裸になってしまうのかと、恐れを抱きながら水中に立ち尽くして、さらにその時である。
後ろから水着を脱がされた。
そして、その水中で起こっている出来事は、水着に着替えたカメラスタッフが潜り込み、防水カメラによって捉えている。プールサイドで大型カメラを担いだスタッフも、脱がされた直後に浮かぶ驚愕に満ちた表情と、その直後の反応を収めている。
急に後ろから手が伸びて、腰の両側に指が入ってきたかと思いきや、ずるりと一気に下ろされたのだ。
突如として触れられた驚きでまず固まり、その一瞬の隙に脱がしきる手際の良さに、千夜はとても呆気なく全裸にされてしまったのだ。
そして千夜の背後では、男は剥ぎ取った水着を高らかに掲げ、獲物の誇示のようにしているのだ。
「……っ!」
全身の肌に水を感じて、咄嗟に腕で胸を隠しつつ、アソコも手の平に覆うことこそ、脱がされた直後に見せた千夜の反応であった。
驚愕と、咄嗟の挙動。
それは放映時には傑作シーンとして扱われ、ネット上でもその部分の動画の切り抜きが出回るという、千夜にとっては最悪でしかない未来が待っている。
もっとも、それは放映日を迎えての話だ。
今の千夜にそんな未来の恥ずかしさを考える余裕はなく、水の中で全裸という、まさに置かれた状況のことで頭の中はいっぱいである。
(か、返して……もらえるわけ、ありませんね……)
つまり、全裸でプールから上がらなくてはいけない。
水の中にいるあいだは、水面の下に隠せる肌も、上がった瞬間から全てが剥き出しとなる。
「千夜ちゃん! 今からミッションです!」
しかも追い打ちをかけてくるのだ。
「今から十秒以内に上がって来ないと、追加の罰ゲームが実施されます!」
「なっ、待って!」
千夜は慌てふためきながら泳ぎを再開し、焦るあまりに水面に尻を浮かべることも厭わない。
「おおっと! お尻が浮上した! 尻の浮上、お尻の島、お尻アイランドです!」
そんな実況も耳に届かず、一刻も早く上がることだけで、千夜の頭は占められている。
(よし!)
手が壁に触れた。
あとは上がればいいだけだが――。
上がっていく最中、千夜は後ろから足首を掴まれた。
一度だけ引っ張られ、水中に引きずり降ろされる瞬間の、実に唖然とした表情には、ばっちりとカメラが向けられていた。カメラマンはそれが撮りたいばかりに地上で待ち構え、狙い通りに拡大して、レンズに収めたのだ。
そしてプールから上がった千夜は、右腕で必死になって胸を隠し、左の手の平ではぴったりと、隙間なくアソコを覆っている。恥ずかしさのあまりに肩が内側から縮もうとして、腰もくの字になった姿は、傍から見れば滑稽そのものだった。
じぃぃぃ…………
じぃ――じぃぃ…………
視線はいくらでも殺到している。
ニヤついたギャラリーの存在が羞恥を煽ることなど言うまでもなく、千夜の目の前には司会者が立っていた。
「ほーら、水着ですよー?」
と、プール内で脱がされたものを手に持って、見せびらかしてくる。
「お前……」
赤面しきった顔で、千夜は思わず司会者を睨む。
「ちょっと目が怖いですねー。さて、しかし次なるミッションがやはり千夜ちゃんを待っています!」
司会者は高らかに宣言する。
「物真似ゲーム再び!」
もう最悪だった。
いつまでも裸を隠し、胸やアソコを守ってはいられないことが、その一言だけで確定してしまったのだ。
しかも、これである。
「ぞーうさん! ぞーうさん! おーはなが長いのね! そーうよ! かーさんも! なーがいのよー!」
悪夢としか言いようがない。
品のない下ネタをやらされるのは、たとえ服を着ていても屈辱なのに、それを全裸で行うのだ。
司会者は平然とこなしているが、千夜はそんな性格をしていない。
だいたい、両手の位置を変えてしまえば、アソコや乳房が視線に晒されることになる。
「さあ、早くしないと、次の罰ゲームは今までよりもハードなものになってきますよ?」
司会者は急かしてくる。
できっこない。
死んでも無理に決まっている。
だが、さらにハードの罰ゲームと聞かされれば、その恐怖に背中を押され、千夜は呆気なく指示に従っているのであった。
「ぞ、ぞーうさん……ぞーう、さん…………」
いっそ舌でも噛み切りたい思いでいながら、千夜は涙目でがに股に、下品に腰を振りたくる。やはり、ありもしないペニスを揺らさんばかりに、振り子の運動を意識しての腰の動きを披露していた。
乳房も、そしてアソコも丸見えである。
ギャラリー達の血走った視線といったらなく、それにカメラも回っている状況など、本当に頭がどうにかなりそうだ。
「おーはなが、ながいの……ね……」
声もたどたどしくなってしまう。
(駄目です……もう、耐えきれない……)
途中で動きを止めてしまったその時だ。
ふと、それは届いて来た。
「なあ、アソコさ……」
「そうだな。クリトリスが――」
小声であった。
周囲が静まっていればこそ、辛うじて聞こえたギャラリーの声のおかげで、千夜はあらぬことを自覚する。
アソコがじんじんと焦れったく反応して、突起の部分に血流すら集まっている。
まさか、それがギャラリーの位置からでも見えたというのか。
数メートルも離れていれば、クリトリスなど点にしか見えないだろうに、そんなものを見定めた超視力は何なのか。
性器の状態への指摘は、千夜の頭を一層のこと燃え上がらせ、より大きな羞恥の渦に飲み込むには十分だった。
何故なら、思わず両手で隠してしまっていた。
指摘されるが否や、無意識のうちに手は動き、ハっと気づいた時にはもう遅かった。
がに股のままアソコに両手をやった姿は、後から思えばさぞかし滑稽なポーズだったことだろう。
「はい! 罰ゲーム決定!」
あまりにも無情である。
だが確かに、指摘のせいで動きは止まり、これまでの流れで考えるなら、罰ゲームの決定もおかしくはなかった。
*
罰ゲームの内容は愛撫であった。
このプールサイドにシートを敷き、その上にしゃがみ込むと、千夜は脚をM字に開く羽目になる。
もう最悪としか言いようがない。
アソコをひどく目立たせるポーズの上で、周囲を視線によって囲まれる。じっくりと覗き込み、舐め回さんばかりのカメラも回っている
こうして大勢の視線を浴びながら、千夜は今からクリトリスを触られる。
「さあ、いきますよ? 千夜ちゃん」
背中には司会者の身体が触れていた。
背もたれに寄りかかるようにして、ぴったりと触れ合っている形から、その両手は前へと回ってくる。アソコへと手は置かれ、すぐさま指がクリトリスにセットされると、くすぐるような愛撫は始まるのだった。
「はぁ……くっ、んぅ……!」
すぐに刺激は走った。
雷にでも打たれたように、ビクっと脚を反応させ、千夜は小刻みに髪を振り乱す。
「皮むけ勃起状態ですねー」
司会者は楽しそうに実況する。
「皆さん! 最初に触った瞬間から、千夜ちゃんのクリトリスは固くなっていましたよ? なるほどなるほど、先ほどからずーっと、本当は興奮していらしたんですね?」
「なっ、なんてことを……そんなわけ…………」
「ほーら、気持ちいいでしょう?」
「んふっあっ、あぁ――あっ、んぅ……!」
クリトリスの表面で指が動けば動くほど、それは電流の流れるような刺激となって、脚はいくらでもくねくねと上下する。
「気持ちいいそうですよ! 皆さん、千夜ちゃんは今、みんなに見られながらクリトリスを触られて、大いに興奮し、気持ち良くなっているのです!」
実に説明的で、少しでも情報を与えようとする実況に、千夜の頭は羞恥の嵐に晒される。吹き荒れる感情が脳を刻み、ドロドロに液状化するまでかき混ぜているほどの恥ずかしさで、心がどうにかなりそうだった。
「さぁて、脚がくねくねと反応し、息も乱れてまいりました!」
「あっ、んっ、あぁ……あぁ……あぁぁ……!」
「そして、声の色艶からも、快楽がどんどん膨れ上がっていることが窺えます! ということは、もうすぐなのではないでしょうか!」
司会者の指先は活発になっていく。
激しく揉み潰さんばかりにして、クリトリスを激しく刺激してくねり動くと、そのもうすぐ訪れそうな何かは、予感として急速に膨らんでいた。
「やっ、待って――な、何か……!」
その予感を恐れ、止まって欲しいばかりに声を上げるが、司会者の指は止まってくれない。
そして、ついにであった。
「んぁぁぁぁ………………!」
千夜は絶頂していた。
後ろに向かって頭を押しつけ、そうやって胴体をアーチのように浮かせながらの潮吹きで、数センチほどの距離へ散らばる滴という滴の数々が地面に染み込む。
「あ、あぁぁ…………」
すぐさま千夜は恥辱に苛まれた。
「そんな……私は…………!」
人前でイキ晒したのだ。
裸を見られ、アソコの目立つポーズを取らされ、あまつさえ絶頂まで晒すなど、もう本格的に生きていけない。人としての尊厳を剥奪され、どう扱っても構わない動物の身分にでも落とされたような気持ちでいっぱいなのだった。
そして、なおもミッションは続く。
もう本当に、心の底から勘弁して欲しい。あれだけの目に遭ったのだから、もういいではないか。そんな思いでいっぱいの千夜に対して、それでも次のミッションは言い渡され、衣装も用意されたのだ。
エロバラエティの趣旨に合わせて用意される衣装など、およそまともなものではない。
上半身を隠すのは、赤ん坊が使うようなよだれかけ一枚だった。それが乳房をすっかり覆い隠して、一応は視線から守れるサイズなのだが、ぺらっとした一枚が垂れかかっているだけでは、心許ないことこの上ない。
しかも下着の用意はされていない。
後や靴や靴下だけで、下半身は丸出しのまま、外を出歩く羽目になる。
「どういうことですか……なんなんですか……この問題大有りな企画は……!」
頭が壊れそうといったらない。
千夜は街に出されていた。
プール施設を後にして、一般の通行人もいるような、ガードレールの内側の歩道を歩く。早速のように向こうから、サラリーマンがぎょっとしながら現れて、露骨な視線を送ってきながら、千夜や撮影スタッフの近くを通り過ぎていくのであった。
さらには車道の向こう側から、高校生の男子グループが千夜に気づいて、身を乗り出さんばかりにする。
「うおっ、あれって撮影中じゃね!?」
「マジかよ! ぜってーエロバラエティじゃん!」
「何何? アイドル? あの子誰?」
三人組の男子達は、揃ってガードレールに腰を押しつけ、前のめりになっていた。
「エッロ!」
「下半身丸出し?」
「しかも風吹いたらオッパイ見えるべ!」
そんな声がかかってくれば、余計に恥ずかしいに決まっている。
ただでさえ、青空の下をこんな格好で歩くという、普通は露出狂の変態しか取らない行動を取らされている。その惨めさといったらない中で、こんな声までかかってくるなど、地獄としか言いようがなかった。
しかも、この野外徘徊のミッションも最悪だ。
この格好で出歩くだけに留まらず、所定のポイントに到達して、オナニーを披露するように言われている。
もはやミッション内容自体が罰ゲームだ。
なのに達成できなければ、きちんとした真の罰ゲームもあるというので、やらなければもっと酷いことになるのだろう。しまいにはAV撮影に参加させられ、犯されはしないかと、本格的に怖くなってもくるのであった。
(と、とにかく……これが最後という話ですし……)
これさえ終われば、元の服装に戻って家に帰れる。
その未来を信じて千夜は、両手でアソコを隠しつつ、しかし尻を隠すことは諦めながら、一般通行人の視線をいくらでも浴びながら歩いていく。
車道を通り抜けていく車からも、きっと視線は来ているのだろう。中にはわざとらしくスピードを緩め、千夜の隣で数秒ほど停止してから走り去るような車もあり、運転席からスマートフォンを向けられていないとは限らない。
顔がトマトのように真っ赤なのは、もはや言うまでもない。
羞恥の熱で脳の温度は上がる一方、恥ずかしさで頭がいつか爆発しそうな予感にすら駆られながらも、千夜は横断歩道に到達する。
信号待ちを始めた瞬間、隣には中年の男が立ち、露骨に視線を向けて、人の体を覗き込もうとするのであったう。
「すみません。露骨な視線はやめて下さい」
「でもエロバラエティなんでしょ? 放送されちゃうんでしょ?」
「それはそうですが……」
「ほら、青だよ? オジサンは後ろからお尻を眺めて歩くから、気にせず行って欲しいな」
「…………」
そう、エロバラエティなのだ。
放送されてしまうのだ。
きっと、どれほど死に物狂いで言葉を尽くし、説得を試みても、そう言って聞かないのなら、視線を引っ込めてくれることはないだろう。
諦めるしかないと思い、尻にまとわりつく眼差しが意識に絡みついてくる状況で、千夜は横断歩道を渡り歩いた。
プールサイドでのギャラリー達は、事前に移動してしまっている。
このミッションにおけるゴールポイントに集合しており、そしてゴールは特に遠くはない。
プールのすぐ近く、横断歩道を渡った先の、広々とした公園のベンチだというのは、不幸中の幸いだろうか。
しかし、入口から入っていき、ブランコや滑り台、砂場や鉄棒といった遊具の数々が視界に飛び込んだ時である。
何人もの利用者が行き交っていた。
サッカーごっこをやるだけの広さがあるので、ボールを追いかけ回す子供達の姿がある。砂場で遊ぶ年頃の男児や女児は、保護者に見守られながらお城を建てている。
何も小学校の低学年や高学年だけでなく、中高生あたりの年齢層も見受けられた。
高校生が二人組で、ラケットでラリーをしている。
部活動の一環なのか、曲を流してダンス練習をしている姿がある。
こうも人に溢れた光景を前にして、千夜は足を竦ませていた。
「おっと、千夜ちゃん! 立ち止まってしまうのでしょうか」
そう司会者の口から聞こえた時、罰ゲームの恐れが脳裏を掠め、千夜はさっさと足を進めていく。
もう出口はそこしかない。
ギャラリー達の集まりが目印となり、千夜はその像に向かって早足となった。一刻も早く地獄を抜け出し、自由になりたい一心だった。
(早く……早く終わらせたい……!)
焦燥に駆られるまま、犬の像の手前に立つが、ここでのミッションはよりにもよって、この青空の下で行うオナニーだ。
できっこない。
周りをぐるりと囲まれながら、この撮影の様子を気にする一般人が、さらにその周りから視線を寄越してくる。
まともな神経をしていたら、この格好でいること自体、普通はできないことなのだ。
「さあ! チェックポイントです!」
司会者が煽ってくる。
「ここで千夜ちゃんが行うのはオナニーショー! 果たして無事にこなしきることはできるのか! もしできなければ、今回の罰ゲームはとんでもないですよぉ?」
その脅し文句に背中を押され、千夜は慌てたように股間へ手をやり、自らを必死に慰め始める。
マイクを使って、大声を出してまでオナニーと口にして、それが注目を集めた状況はわかっていながら、しかし今以上の何らかの悪夢を想像して、突き動かされるように千夜はオナニーを始めているのだった。
「こんな番組……絶対、二度と出ない……!」
千夜の右手はアソコへ移る。
その指先でワレメを上下に撫で始めると、ギャラリーはこぞって前屈みに、さらには公園にいた一般人も、興味を持って近くまで寄ってきている。
「えっ、うそ」
「何やってんのあれ……」
引いたような女子の声まで聞こえてきて、千夜は心に傷さえ負いながら、深い無念の中でワレメを撫でる。
「さーて、感じはどうでしょうか」
しかも司会者はしゃがみ込み、すぐ近くからアソコの様子を窺い始める。
「おっと、濡れてます!」
「――っ!」
「濡れ濡れですねー! 既に愛液が出て来ており、指はヌルヌルと滑り動く! さぞかし活性油としての効果が働いているのでしょう! そして! クリトリスも突起状態! これは見物ですねぇ?」
周りに向けて伝えているのだ。
遠目には見えにくい、近くから観察した様子を言葉に変え、一人でも多くの想像を掻き立てようとしているのだ。
「や、やめて……ください…………」
弱々しい声が出ていた。
その懇願のあまりの声にも関わらず、司会者による実況は止まらない。
「香りもしだいに強くなり、鼻で吸い上げれば濡れていることは丸わかり! うーむ、メスの匂いですねー!」
「やだ……やだ……」
「脚のモゾモゾとした感じからも、いかに気持ち良くなってきているかが伝わってきます!」
「やだ……!」
それでも指は止まらない。
いや、止められない。
これ以上の悪夢があるかと思ったら、止まることでの罰ゲームを恐れて指の動きは緩められない。
相反する状況に陥っていた。
せめて濡れたり感じたりしている様子は見せず、実況のネタだけでも与えないようにしたい。しかし指を止めるわけにはいかないせいで、自ら快感を掻き出し続け、それが甘い痺れを体中に走らせ続ける。
「あっ……んぅ…………」
「声も色っぽくなってきました!」
「んぅ……あっ、あぁ……!」
「さてさて、指もさらに活発化しております!」
もちろん、見せびらかしたい意思はない。
千夜が指を早めるのは、少しでも早くゴールを切って、むしろこの状況から脱出したいためである。羞恥の地獄から逃れたい思いあればこそ、しかし傍から見れば一心不乱にオナニーして、必死に感じようとする姿に映ってくる。
「エッロ!」
「痴女じゃん痴女!」
「はしたねー!」
先ほどの、ガードレールに身を乗り出した三人組だ。あの男子高校生達も、千夜の行き先を伺ってか、この公園に入り込んで来ていたのだ。
「ち、痴女なんかじゃ……んっ、んぅ――――」
否定したかったが、その直後に快感は膨らんで、千夜は内股になってしまう。さらに前屈みとなって腰はくの字に、指の摩擦から生まれる電流は、全身の至るところにピリピリとした感覚を蓄積させ続けていた。
「んぅぅぅ――――!」
指はいつしか、クリトリスに集中的に絡みつく。
無意識だった。
この状況を心の底では喜ぶマゾヒズムは、千夜の内側で無意識のうちに働いて、指先をもっとも敏感な部分に集中させているのであった。
「あんっ、あっ、んぅ……あっ、あぁ……!」
指の上下は一点だけを集中的に擦り抜き、硬い突起をなぞり続けた感触は、本当のところ皮膚に伝わっているはずだ。それを無意識にやるあまり、周囲からの視線や実況に羞恥を煽られ、半ばパニック気味に恥じらっていればこそ、本人はそれに気づいていなかった。
「んっくぅぅ――――」
そしてクリトリスの快感で、明らかに反応が変わっている。
「おや、絶頂が近いのでしょうか?」
司会者が周囲の期待感を煽った時だ。
「――――――んっ!」
ビクっと急に、千夜の腰はくの字に引っ込む。
その次の瞬間だった。
「おっと潮吹きィ!」
実況さながらに盛り立てた。
「股のあいだから、プシャっと少しばかりの噴き出たものが、この公園の砂に染み込んでいます! 足元をご覧下さい! パラパラと降り注いだ水滴の跡がおわかりになるはずです!」
「や、やめて――」
「イったのです! 白雪千夜は公園でオナニーしながら絶頂したのです!」
高らかなに心を締め上げられ、顔中に苦悶が満ち溢れたその瞬間、千夜は即座に凍りつく。
「え……」
内股に不穏な滴が流れ落ちた。
それは決して、愛液から生まれたものではない。もっと別の水分が生み落とされ、表皮を伝い流れる筋を伸ばしたのだ。
「やだ……そんな……」
そんなわけにはいかない。
ありえない、これでは本当に人権を失ってしまう。
途方もない危機感に煽られて、必死に堪えようとした千夜なのだが、それ以上に膨らむ無情の尿意は、微塵の容赦もしてはくれないのだった。
千夜はそして、失禁した。
股から地面に向かっての、一直線の黄色い放水が行われ、司会者はすぐさま仰天していた。
「おおっと、ここで放尿!」
これさえも、マイクによって拡散される。
「どうやら絶頂のために感覚が緩み、中身が噴き出てしまっているようです!」
それはいかにも滑稽だった。
内股の前屈みで、後ろの像に向かって尻を突き出し、直線状の放尿はやや後方へと着弾している。像の足元へと、みるみるうちに水溜まりを形成して、しだいに円を広げていた。
「あ、あぁぁ…………!」
さしもの千夜にも絶望の顔が浮かぶ。
もう生きていけない。
もう外を歩けない。
アイドルとして、二度とやってはいけない。
この後、一体どこでどうやっていけばいいのか、先のことなど考えられず、現実から目を背けるように放心して、尿が途切れるその時まで、像を汚し続けるのだった。
*
「こんなに恥ずかしい番組だったのねー」
「お嬢様、見ないで下さい」
「あら、いいじゃない。私達の仲――でしょう?」
「そう言われましても……」
それは放映日を迎えてのことである。
良くも悪しくも、似たような目に遭うアイドルは他にもいるため、エロバラエティとはそういうものと、世間では認識されているところがある。
撮影中の失禁と、学校や社会生活でのお漏らしでは、後者の方がよほど人に蔑まれると、プロデューサーは力説していた。
テレビで放映されるというのに、本当に後者よりもマシと言えるのかは、あまりにも微妙な気がしている。
「消しますよ。お嬢様」
「あ」
有無を言わさず、千夜はリモコンのボタンを押す。
その直後、千夜はさりげなくスカートに手を運び、股のあたりを気にしていた。
(本当に…………)
あんな目に遭ったおかげで、かえって性癖が歪みでもしたというのか。ちとせに番組を見られることで、クリトリスのあたりが妙に疼く自分がいるのであった。
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