状況は深刻だった。
意識はあるものの声が出せず、体もまともに動かせない。脳の電気信号自体は行っているのか、意識さえすれば申し訳程度に腕は上がって、足も数センチは浮かせられるが、それが限界であった。
囚われの深雪
状況は深刻だった。
意識はあるものの声が出せず、体もまともに動かせない。脳の電気信号自体は行っているのか、意識さえすれば申し訳程度に腕は上がって、足も数センチは浮かせられるが、それが限界であった。
呼吸機能は正常だ。心臓も動いている。
主に手足の部分を狙い済まして、都合良く抵抗力を奪われた状況らしい。
場所はどこなのか。
背中にあたる感触から、自分がベッドシーツに沈んでいることはわかるのだが、まだ視界がぼんやりしている。妙に景色が薄暗く、壁や天井の様子も窺えないのは、脳がきちんと起きていないせいなのか。
眩暈なのかで、視界の色が変わっている。
だったら、体の動きが鈍いのも、あるいは体調のせいなのか。
脳が正常に稼働すれば、この手足の動かない感覚も治るのか。
(わ、私は……)
司波深雪は慎重に記憶を探る。
すぐに思い至ったのは、一人の教師に呼び出され、出されたお茶を無警戒に飲んでから、そこで記憶が途切れている事実であった。
朝起きて、学校へ行き、授業を受けて、といったおおまかな出来事は思い出せるのに、お茶を飲んだところで断裂して、今ここで目覚めている。
それが何を意味するのか。
身の危険を感じた瞬間、深雪の脳は急速に覚醒して、ぼんやりとしていた景色が鮮明に、薄暗く見えたものもはっきりと形となる。
(――――っ!)
意識が鮮明になった直後、深雪が真っ先に浮かべるものは戦慄だった。
「おはよう? 深雪ちゃん」
(先生!?)
全身の凍りつく思いがした。
闇に溶け込んでいたものが浮き出たように、そこには男の顔があったのだ。
「……っ!?」
深雪は二重に動揺した。
男に顔を覗き込まれていたことと、魔法が使えない事実であった。
身の危険を感じたために、魔法を試みたが、何の力も発揮できなかったのだ。やはり手足の可動もままならず、深雪はまるっきり無力な状態で、男と二人きりというわけだ。
「やっぱり綺麗だなぁ」
人の寝顔を今までずっと、観察していたのだろうか。
気持ちの悪いニヤニヤとした笑みで、男は深雪の胴体に馬乗りになっている。腹にその重みが来ていることに、随分と今更になって気がついた。
心が冷え込んでいく。
どうやら、何一つ抵抗の出来ない状況で、まともに声すら出てこない。助けが来るかも怪しい、どことも知れない部屋の中、いやらしい顔の男と二人きり、貞操の危機を感じるのは当然だ。
「初めて君を見た時から、ずっとこうしたいと思っていたんだ」
そしてその言葉で、男の目的はまさにはっきりとするのだった。
(お、お兄様!)
すぐさま兄の顔を思い浮かべ、心の中で助けを求めたが、直後に思い出してしまう。
駄目だ、兄には用事がある。
今日は帰りも別々で、自分がどれほど眠っていたかはわからないが、今頃はもう学校から消えている。家に帰るのも遅いので、深雪の行方がわからないと気づくまで、随分と時間がかかるはずなのだ。
「それじゃあ深雪ちゃん? もみもみさせてもらおうかな」
これみよがしの両手を近づけてくる。
わざとらしく、本当にゆっくりと、触手のように踊る指先をだんだんと近づける。スローモーションを維持して数ミリずつ、数センチずつ迫る両手は、深雪の胸に刻一刻と迫っていく。
(来ないで……)
このままでは揉まれてしまう危機感から、脳にはいくらでも警告が発せられている。早く抵抗しなければ危ないと、体中にアラートは鳴っているのだが、なおも魔法も手足も使えない。
「さわら……ないで、下さい……」
声だけがようやく出た。
しかし、拒絶の意思を示しても、男はそれを無視して手を近づけ、そのまま胸を揉み始めるのだった。
ネクタイのかかったその両側、制服の白い布地に指は食い込み、乳房はその手で捏ねられていた。
「そんな……!」
深雪はぐっと歯を食い縛る。
誰にも揉ませたことのなかった胸に、思いもよらない形で触れられた。大事に取っておいたものを摘み取られ、台無しにされたような感覚に陥って、まず先に哀しみが膨らんでいく。
そして次に沸き立つ感情は、こんな男に揉まれることの恥辱であった。
触手の群れがくねり動きでもするような、妙に柔軟性に満ちた指遣いは、食い込むことでシャツに皺を刻み込み、ブラジャーに隠れた部分に変形を繰り返させる。
「やめなさい……や、やめないと……」
深雪は顔を歪める一方だった。
溢れ出す嫌悪感がそのまま顔に表れて、秒刻みで頬は強張っている。眉間にも皺が寄り、険のある表情で深雪は男を睨み返しているのであった。
「やめないと、どうなるのかな?」
「ただでは済ませません」
深雪はきっぱりと答えた。
一体、どんな薬を飲まされて、どんな原理によってのことか。魔法は封じられているものの、力さえ発揮できれば報復は容易いのだ。
それに兄も黙っていない。
たとえ今だけは楽しめても、後が怖いという警告を深雪は全身から発していた。細く、鋭くなった目つきと表情で、後が怖いという脅迫の意思を放っていた。
「悪いけど、こっちは後先なんて考えてないんだよね」
男の指がネクタイの方へと絡む。
そしてほどかれ、首から抜けていった次の瞬間、男は改めて胸を掴んだ。
ただし、それは乳房を揉むためではない。
今度は乳房に触れないように、服の部分だけを掴むようにして持ち上げて、ブラジャーとシャツの間に隙間が生まれる。
一体、何をしようというのか。
その意図に気づいた瞬間、深雪は事前に顔を赤らめて、頬に羞恥をあらわにしていた。
そして繊維が引き裂かれた。
シャツは左右に引っ張られ、その引き延ばされた中心から、腕力に耐えきれなかった繊維から次々と断裂していく。そうして生まれる裂け目から、糸のほつれがおびただしく覗けた直後には、歪に別れた内側からブラジャーが露出していた。
「へえ、結構あるね?」
「や……!」
深雪は咄嗟に隠そうとする。
本来なら、その反射的な動作によって、腕のクロスに覆い隠したはずだったが、しかし深雪の腕は動かない。申し訳程度にしか持ち上がらず、せいぜい指くらいしか自由にならない四肢では、体を隠すことすら許されなかった。
下着を見られ、頬が赤らむ。
「可愛いブラだ。白なんだねぇ? あ、淡いグリーンが入っているんだね?」
深雪のブラジャーは純白で、買ったばかりの真新しさで繊維をどこか輝かせている。カップの上端、谷間に沿った部分には、紐が点線のように通されて、端っこの部分にこそリボンは飾られていた。
ブラジャーの左右両側をリボンで飾る。
そのリボンや点線こそ、薄らとしたグリーンだった。
「どこで買ったのかな? ねえ、それなりに高級なブランドなのかな?」
「う……!」
深雪はより一層のこと引き攣った。
男の顔が一気に迫り、鼻先が触れんばかりの至近距離から、ブラジャーの観察が始まったのだ。繊維や素材にかけてまで、細やかに視姦してくる顔からは、身体に向かって前髪が垂れ下がっている。
膨らむ一方の嫌悪感で、そのあまりに額が冷や汗を噴き出す。
(なにも……なにも出来ないなんて……!)
歯がゆいにもほどがある。
いつもの力さえ発揮できれば、どうとでも対処できるであろう男に対して、今は何一つできないのだ。
視線照射の分だけ羞恥を煽られ、深雪は頬を染め上げた顔により、なおも男を睨み続ける。
「こ、これ以上したら……!」
「これ以上したらどうなるの? 何か出来るの? 今ここで、このタイミングで何か出来るの?」
男がブラジャーに触れ始める。
「やっ……!」
下着にまで触れられることへの、まず嫌悪感が湧いた直後に、ブラジャーの布地だけが上手く掴まれ持ち上がる。乳房と下着のあいだに少しでも隙間が生まれた直後、同じく左右に引き千切られ、深雪の胸は完全に露出しきった。
胸部だけを抉り出さんばかりにして、糸のほつれをいくらでも露出したシャツが左右に広がり、ブラジャーのカップもひっくり返り、その中心では意外にも大きな膨らみが自己主張を行っていた。
「…………見ないで下さい」
深雪自身はすぐさまそう口にしているが、どれだけ見せたくない気持ちだけがあろうと、露出している時点で吸引力が働いている。
男の視線は乳房に集中していた。
血走った眼が乳首の色を確かめて、全体の大きさを楽しんでいた。
「さあて、味わっちゃうよー」
男の両手が乳房へと絡みつく。
「い、いや……!」
本当に心の底から嫌だと思う気持ちは沸き立って、それが声に出たのだが、男の指は止まらない。
「やだ……そんな……!」
取り返しのつかない事態でも前にしたような、狼狽が深雪の顔に浮かんだ。
服の上からだけでなく、直接見られた上に触られている。
初めてを大切に思う乙女心が蹂躙され、心を踏みつけにされていく感覚に、ますますの恥辱感が膨らんで、それが顔の強張りに現れていた。
蠢く指遣いによって、乳房は柔らかに変形している。
パン生地を捏ね回しているような、指の食い込みや手の平の押し込みに合わせた形を何度でも披露して、それが深雪の胸に刺激を与える。
「うっ、やだ……なんで……!」
気持ち良かった。
こんな形で触られて、尊厳を摘み取られているというのに、どうして少しでも快感があるというのか。
乳首に血流が集まっている。
自分がこんな男で感じたり、まして乳首を突起させようとしているなど、信じたくはなかった。あってはならない、恐るべき真実が明らかになりそうな緊張感を帯びながら、だんだんと硬くなりつつある乳首に、深雪はやがて無念を浮かべた。
おもむろに手が離れ、男は視姦に集中する。
その時には乳首が完全に硬くなり、何の誤魔化しも効かないまでに、乳輪さえも薄らと膨らんでいた。
本当は快楽を堪え、反応を抑え込みたいとすら思っていたのに、生理的な現象を食い止められない。本当に無念でならない、悔しさすら帯びた表情で、深雪は瞳を横に背けているのであった。
「乳首が可愛いねぇ?」
その言葉が羞恥を煽る。
頬の赤らみが拡大して、目尻や顎にまで桃色が進んだ直後、男の手は改めて絡みつく。
今度は乳首が中心だった。
乳輪を指先でなぞり、乳首の突起をつまんだり、引っ張ったり、桃色に対する刺激が活発に行われた。
「やだ……やっ、やめて…………!」
感じてしまっている事実に引き攣りながら、それでも生まれる拒否感を声に上げ、深雪は軽く髪を振り乱す。そんな風に嫌だ嫌だと、首を振りたくる動作さえ、筋力を抑制されてのことなのか、どこか弱々しいものだった。
「んっ、くっ、んぅ…………」
苦悶が浮かぶ。
拒否感のあまりに頬が極限まで強張っていた。手足や首が弱々しいことに反して、表情筋にはいくらでも力が籠もり、石のように硬い頬から、顔が歪み尽くしていた。
「やだ……いやっ、だ……!」
それは悲鳴に近い。
気持ちいいせいで喘ぐより、もっぱら拒否感や嫌悪感によっての声が出て、深雪は堪えんばかりの声を漏らしている。
そこには恐怖もあった。
この状況でもって感じてしまう事実はもちろん、こうして抵抗できない状況では、一体どこまでされてしまうのか。
もしや最後まで……。
深刻な危機感を持つのも当然、むしろ持たない方がおかしいわけだった。
「それじゃあ、こっちも見てあげるよ」
ちょうどその時、腹から体をどかす。
馬乗りの状態から横へと降りて、すぐさまスカートを捲り上げると、純白の三角形にニヤニヤとした視線を送る。
「あぁ……!」
深雪の顔はさらに赤らむ。
「いいパンツだね? やっぱり高級なのかな? 繊維が滑らかで、とっても柔らかい感じがするよね?」
しかも男は指でクロッチの上に触って、肌触りや見た目にまつわる感想まで述べてくる。
「うぅ……!」
恥ずかしさのせいで悲鳴が出る。
「可愛い声だねぇ? そんなに可愛く鳴かれたら、こっちも興奮してきちゃうよぉ」
男は急に膝立ちになったかと思いきや、見せつけるようにベルトを外し、ズボンを脱ぎ始めていた。トランクスを露出させ、ズボンをすぐさま脱ぎ捨てると、下着も適当に放り投げ、肉棒を露出するのであった。
「ひっ……!」
あらゆる意味での悲鳴であった。
それで一体、何をするのかという恐怖。男の象徴を生で目にすることの恥ずかしさ。裸体の男という、変質者に対してでも抱くような感情。
それらが入り交じっての声を聞き、男はさらに目元をにやつかせる。何か満足そうにした顔は、深雪にとって実におぞましい表情だった。
「ほら、見てごらん? 深雪ちゃんが可愛いから、こんなに硬くなったんだよ?」
人の身体を跨いだ形で膝立ちに、深雪の顔にペニスを運んで見せびらかす。その硬度で血管を浮き立たせ、角度を保った肉棒は、わざとらしく腰を振れば左右に揺れる。
「そ、そんなものを見せないで下さい!」
深雪はぎゅっと目を瞑り、顔を横へと背けていた。
「可愛いねぇ? 本当に」
そんな深雪の反応に満足して、男は改めてショーツの方に手をつける。
腰の両側に指が入って、ショーツを脱がされる直前となった時、深雪の中に膨らむ危機感は、いよいよ衝動として現れる。
「やだ……まさか……そ、それだけは…………」
本当なら咄嗟に両手を動かしたり、じたばたと暴れてがむしゃらに蹴り飛ばしたり、どうにか抵抗するところ、こんな状況になってもまだ、体は動いてくれないのだ。
(どうしたら――このままじゃ――――)
するするとショーツが下ろされていく。
何とかしなくてはならない焦りが、どれだけ心に募ったところで、結局は何もできない。
持ち上げようとした腕は、たった数センチ上がっただけでベッドシーツに沈み直す。大切な秘所まで見られようとしているのに、何も出来ずに無抵抗でいるしかない無念で頭がどうにかなりそうだった。
ショーツは呆気なく下がっていく。
尻とシーツの隙間を動き、太ももの上を通り抜けた時、深雪はその羞恥心でより赤く、より高い熱でもって顔を燃やして、苦悶の限りを表情に滲ませていた。
「ほーら、見えた」
男の視線はワレメへと注がれる。
「見ないで……下さい…………」
「とっても綺麗なアソコだねぇ? 毛は剃ってあるのかなぁ? 美白のきめ細かな肌で、見るからにスベスベしてて、一本筋も綺麗に引かれたみたいで整ってて、すっごくすっごく美しいアソコだよねぇ?」
見た目について実況して、高揚しきった声で感想を聞かせてくる。その行為に羞恥を煽られ、深雪は頭を沸騰させかけているのであった。
「それじゃあ可愛がってあげるよ」
「だめ……!」
そう口にしたところで、男は関係無しに指を置き、ワレメへの愛撫を始める。
ぞわぁぁぁ……!
一気に鳥肌が広がった。
体中から嫌悪感という名の信号が放たれて、男の方もそれをキャッチしていていいはずなのに、本当にお構いなしに愛撫が行われ、しかも快楽が走っていた。
(なんで……どうして……!)
わけがわからなかった。
こんな形で反応しなくてはいけない理由がわからずに、絶望にも似た感情を深雪は抱いていた。
すぐに濡れたわけではない。
しかし、興奮の息遣いで、犬がハァハァいうように荒っぽいものを吐き出す男の、血走った目で人の顔を観察してきながらの愛撫によって、時間をかけてしだいに濡れる。
反応してしまっているアソコから、数分後には密かな汁気が生まれ始めて、さらに数分経つ頃には、糸が引くようにまでなっていた。
「ほーら、こんなになったよ?」
男はその濡れた手を顔に近づけ、指のあいだで糸を引かせて見せつけてくる。
見たくない、そんな濡れている事実など知りたくない。
現実を拒否するように、深雪は思いっきり横向きに、耳だけを男に向けて目を瞑る。意地でも見ないようにしていると、おもむろに頬に触れられ、愛液が塗りつけられているのであった。
「いやぁ……!」
教えられてしまった。
見ることだけは拒んだのに、濡れている事実をそうして皮膚に伝えられ、結局は現実を痛感させられてしまったのだ。
「もっともっと可愛がってあげるよ?」
(いや! こんなこと! 一体いつまで!)
改めて性器への愛撫が行われる。
しかも今度は脚を持ち上げ、M字にポーズを変えさせた上での、両手を駆使した愛撫であった。片方の手は指の挿入に使いつつ、もう一方ではクリトリスを弄り抜き、先ほど以上の刺激を与えてくる。
「やっ、あぁ……あぁぁ…………!」
だんだんと喘ぎ声が出かかってくる。
そうやって快感が強まっても、深雪が抱く感情は悲痛なものだった。
(お兄様……!)
無駄だとはわかっていても、助けを求める思いを抱く。
「んっ、あっ、やめ……て……!」
深雪は繰り返し口走った。
やめて、やめてと、声が出るたび拒絶の言葉が入り交じり、時折恨めしそうな眼差しで睨みもするが、しかし男の指は止まらない。
クリトリスにも血流が集まって、しだいに突起していった。
包皮を内側から破った突起の分だけ、快感が増してしまい、甘い電流がより強く脚を駆け抜け、膣壁からは愛液が量を増やした。
(どうして! どうしてこんな!)
どれほど気持ち良くとも、深雪が抱くのは悲痛な思いだ。
アソコさえもが、初めての相手を自ら決めること無しに、こんな男の欲望で弄られている。だからこそ、下腹部や脚の内側を走る刺激は、無念や絶望を加速させるばかりだ。
だが、乳房やアソコへだけでで済むなら、それでもまだ良い方だ。
――男は肉棒を剥き出しにしている。
これから先を思えば、せめてここまでで終わってくれればどんなにいいか。たまたま部屋の近くを通りかかった誰かでも、偶然でも何でもいい。この行為を中断させるきっかけが都合良く起きてくれないかと、深雪は本気で願っていた。
「それじゃあ、この処女穴に僕のおチンチンをプレゼントだね」
願った直後、それは残酷な言葉であった。
「やだ……やめて下さい……お願いします……」
指でアソコが開かれている。
左右に扉が引っ張られ、肉ヒダをあらわにされて、膣口を目しで確認されている。実際のところ処女かどうかを見定めて、満足そうに頷いている男の顔が、そこには迫っているわけだった。
「じゃあ、しよっか」
にっこりと、男は笑っていた。
楽しい時間を前にして、笑顔にならずにはいられない。実に幸せそうな顔をしながら、男は深雪のアソコに肉棒を突き立てて、挿入の準備を始めている。
「お願いします……は、初めてで……だから……!」
だから、せめてそれだけは。
その深い祈りを声に出し、必死になって伝えるものの、聞き入れてもらえるはずがない。言えば止まるような相手なら、そもそも人を監禁して、こんな風に扱うわけがない。
「大丈夫だよ? 優しくしてあげるからね?」
ぴったりと、亀頭が入口に押し当てられる。
その腰を押し込もうとする力によって、切っ先が膣口に入り始めた時、深雪はより壮絶な顔をして、目尻には涙さえ浮かべているのであった。
「や……だっ、そんな……あ、あぁ……お兄様……深雪は……深雪は…………!」
徐々に肉棒は収まってくる。
男が腰を前に進めて、それにつれ膣口は拡張される。太さに合わせてリング状に広がりながら、その内側に竿を飲み込み、初めて味わう挿入感に深雪は脂汗を噴き出した。
裂けるような痛みが走る。
そして、半分までは収めた男は、ここぞとばかりのようにして、一気に鋭く貫いてきた。
「――んっ!」
叩きつけんばかりの押し込みで、男の腰が股へと密着する。
これで男の肉棒は、根元まで収まってしまったのだ。
「深雪の……初めてが…………」
まさか、こんな形で……。
信じられない気持ちがいくらでも大きく膨らみ、それだけに目の前の男が憎らしい。我が物顔で、勝ち誇ったようですらある笑みを浮かべた男の、こんな欲望のために蹂躙される悔しさに、深雪は深く歯を食い縛り、涙を零しながらも睨み返しているのであった。
「動いてあげるね? 深雪ちゃん」
ピストンが始まった。
「あっがっ、んぅ! んっ、あっ、あぁ……!」
最初のうちは、苦しいからこその声だった。
無理に穴を拡張されて、その上で出入りしてくる。負荷さえかかってくる摩擦感に、深雪は苦悶を浮かべていた。額に滲んだ汗が垂れ、黒髪の中へと流れて消えさえしていた。
「んっぐっ、んぅ――んぁっ、あぁ……!」
だが、それもしだいに慣れる。
(いやっ、どうして――――)
徐々に痛みが薄れていく。
苦しみとは入れ替わりに、またしても快楽の気配が浮上して、やはりこんな男のために感じたり、喘がなくてはいけないのかと、深雪はやはり絶望を味わった。
(いやです! そんな!)
せめて何も感じたくない。
そうは願っても、肉体には無情な快楽が走っていた。
「あっ、あん!」
深雪は髪を振り乱した。
この時には首だけは自由に動き、嫌がる素振りが激しさを帯びてあらわになる。振りたくられた髪はみるみる乱れ、シーツにも散らばるように広がって、目尻からは涙の筋すら流れていく。
「やめて……あっ、あぁ……!」
快感とは裏腹に、表情に浮かぶのもまた嫌悪感ばかりであった。
「あっ、んぅっ、あぁ……!」
しかし、その声には色艶がかかり、いかに感じているかは誰に耳にも明らかだ。
「んあっ、やっ、めて……!」
どれほど感じて喘いでも、嫌がる言動は入り交じる。
「いいねぇ? いい顔だよぉ?」
だが男は、そんな様子を見るに興奮を膨らませ、鼻息を荒くする一方なのだった。
そして、ついにだ。
ドクッ、ドクゥ――――
深雪はかつてない戦慄を浮かべていた。
避妊具など着いていないと、中に出されて初めて気づき、温かなものの広がる感覚に、深雪は心を凍りつかせる。膣内の奥まで届く精液は、きっと子宮にも到達していた。
「あぁ、いいなぁ……もっとイケそうだよぉ……!」
そして、深雪はなおも戦慄を深めていく。
男の目が未だ血走ったままなのだ。
脈打つような射精が止まり、なおも硬いままの肉棒が、そのままピストンを再開する。
(い、いつまで……!)
二回目が始まるとわかった時の絶望といったらない。
「あっ、あぁぁ――――!」
そして、やはり感じるのだ。
心がどれほど拒んでも、肉体には走る快楽で、深雪は延々と声を出し続ける。
そのピストンが数分も続けば、またしても射精が行われ、膣内には生温かいものが広がる。既に精液の収まっていたところへと、さらに追加が入ったことで、膣壁と肉棒の隙間からはいくらかが押し出される。
三回目のピストンが始まると、その肉棒は汁をかき混ぜ、愛液と精液を泡立てていた。摩擦によって擦り抜かれて、泡立ちを帯びて白い固まりが作られて、それが竿の見え隠れの部分に付着していた。
男は五回でも六回でも、何回でも射精した。
始終、肉棒を抜くことはなく、硬さを永続させながら、終わりなどないように、吐き出すたびにピストンを再開する。
やがてはもう、何十回出されたか。
何時間にわたって続いているか。
なんの感覚もなくなって、あれだけあった嫌悪感や絶望感も麻痺した頃には、深雪は虚ろな目で終わりを待っていた。
これだけ時間が経っても、やはり魔法は使えないまま、手足の可動もままならない。嫌でも無抵抗でいるしかない、その時間をやりきるために、いっそ心を殺し始めていた。
その時である。
ビクッ!
と、男は急に仰け反っていた。
目玉が上向きになるあまり白目となって、何かに突かれたように大胆に仰け反って、首が天を仰いだかと思った瞬間、事切れでもしたようにぐったりと、男は横へと倒れていった。
ベッドから床へと転落していた。
「え……」
一瞬、何が起きたのかがわからなかった。
「深雪!」
ただその声を聞くことで、ようやく地獄の時間は終わったのだと、今の深雪にわかるのは、それだけのことなのだった。
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