レオナ・ハイデルンがパンツ1枚身体測定を受ける。
前編後編
レオナ・ハイデルンはショーツ一枚の姿であった。
男という男の数々に囲まれながら、その視線を一身に浴びている状態で服を脱ぎ、裸体を曝け出しているものの、顔には赤らみを浮かべていない。
よほど我慢強いのか。
それとも、羞恥心など捨てているのか。
誰も彼もが無遠慮に視線をやり、思い思いに乳房を眺めたり、下着の色をチェックしている中で、レオナはほとんど顔色を変えないのだ。
ただ、周りを囲む白衣の面々に対して、やるなら早く済ませて欲しいような、この状況を億劫がる眼差しだけを浮かべている。
恥じらいがあってもなくても、見ず知らずの複数人から視線を注がれ、ショーツ一枚の姿を見られるのは、決して面白いことではない。
「それでは、あちらへお願いします」
「ええ」
レオナは答え、男の指した方へと進む。
――身長計だ。
そこに置かれた身長計へと向かっていき、レオナはその台の部分に両足を乗せ、かかとを合わせて背筋も伸ばす。
彼女は今、身体測定を受けている最中だ。
任務のために所定の期日に受けることができなかったため、特別に別の日程を用意してもらい、今日はこうして身体測定を実施しているが、そこに立ち会う面々は、何故だかそろって男である。
どうして、こうも人数がいるのかもわからない。
対して検査項目もないので、一人や二人いればいいところ、実に十人以上の白衣の群れが、レオナに向かって一斉に視線を注いでいるわけだった。
その上、忠誠心を試すため、下着一枚で受けろなど。
(見るなら見ればいいわ)
レオナはすっと目を瞑り、身長計の柱に対して背筋を伸ばししていた。
大人しく従っていれば、こんなものはすぐ終わる。
胸でも、下着でも、いくらでも見ればいいと思っていると、男の気配が真横に迫り、次の瞬間、腹に手が置かれていた。
(…………セクハラね)
冷静に考えれば、もっと前の段階、下着一枚の格好を指定してきた時点でセクハラだ。
ならば、こんなことを思うのも今更だとは思いつつ、肌に直接手が触れてきていることの、薄らとした不快感を噛み締める。
勝手に体を触られるのも嫌なのだが、何より不快感を煽ってくるのは、男の手の平の動きである。腹をやや撫で回し、さりげなく下へといって、小指の先でショーツのゴムの部分に触れてくるのだ。
下着に接触されての不快感が込み上がる。
さらに今度は上へと動き、表皮を這い上がってきた手の平の、親指の側面部分が乳房の下半球に触れてきた。下から持ち上げてくることで、レオナの半球ドームは少しばかり位置を上げているのであった。
しかも、ここまで触って、やっとのことで頭上にバーが触れてくる。
「えーっと、177センチですか? 高いですねー」
関心したような声がすぐ真隣、耳に向かって直接放たれ少しうるさい。
直後、紙にペン先の走る音が聞こえ、自分の身長が書類に書き込まれたことを悟った。
「では今度は、あちらにお願いします」
男が指すのは体重計だ。
レオナにとって、それ自体はさっさと動き、さっさと体を乗せればいいだけの話である。
しかし、誰も彼もが体重計に注目している。
まるで舞台に俳優が現れるのを待つ観客のようにして、周囲の白衣は体重計という名の舞台に注目している。どんな面白いことをするでもなく、乗って降りるだけだというのに、何をそこまで注目するのかがわからない。
レオナは動いた。
身長計の台から降り、そして実際にさっさと歩き、無言のままに体重計に両足を揃えていく。
測るなら、さっさと計れ。
四方八方からの視線が、胸に尻にと絡みつく中、レオナが考えているのはそれだけだ。
そして、実際のところ時間がかかるはずもなく、出て来た数値が書き取られ、それでもう終わりである。
「あとはスリーサイズですね」
もっとも、測定に当たってくる男は、もう次の項目をこなすため、その手にメジャーを用意している。
「一人で良かったと思うけど」
レオナはそう口にした。
先ほどから、彼一人が測定を行い、身長と体重をチェックしている。メジャーも彼のポケットから出て来たものだ。あとは記入も彼自身が行えば、ここに複数人など必要ない。
どう考えても、この人数はおかしい。
「実施の証明をするため、複数人のチェックを入れているんですよね」
「そう」
「すぐに終わりますから、もうしばらく我慢して下さい」
男はメジャーを引き延ばし、それをレオナにかけようとしてきている。人にネックレスをかけようとするように、頭の上から被せてきて、それは背中からピンと真っ直ぐ、U字に近い形で伸ばされる。
折り畳むようにして、乳房の上に沿い合わさり、その目盛りは乳首の位置で重なっている。男はそんな目盛りから数字を見るため、あからさまに顔を近づけていた。
(どうせ楽しんでいるんでしょう)
冷めた目で、自分に迫った顔をレオナは見下ろす。
(さりげなく触ったりして……)
指が当たっている。
メジャーが埋まり、ラインに沿った部分だけがミリ単位で少しだけ凹んだ場所に、指も同時に当たって来ている。両手はほとんど拳の形で、親指と人差し指の部分にメジャーの両端を挟んでいるが、その拳から指の関節が当たっている。
それだけではない。
グーから小指だけを立て、下乳の部分も微妙に触ってきているのである。
しかし、男はいかにも生真面目そうな、ただ仕事をしているに過ぎない顔を装っている。そんな顔をしていても、本当は欲望から触っているだろうに、レオナは男の行為を実に冷ややかに見ているのだった。
男は数値を読み上げる。
バストサイズが大声で発表され、そのデリカシーの無さにレオナは少しだけ顔を歪めた。
メジャーがアンダーバストへずらされて、下乳に近い部分に目盛りが合わさっても、やはり大声で発表され、カップ数まで明らかにされてしまう。
プライバシーなどあったものではない。続けて腰に巻きついて、やはり同じく読み上げられ、さらにヒップサイズを測る時だった。
ぴとっ、と。
尻たぶに指が置かれた。
これまで上から下へとずらすだけだったのが、ヒップ測定になった途端、男はわざわざ巻き直す。まるで抱きつこうとするように、人の後ろ側へと腕を回して、すると指の腹を押し込まれ、その圧力に尻たぶが凹むのだった。
「……っ!」
明らかに不要なタッチに、レオナはさらに顔を顰める。
しかし、男の方は何食わぬ顔でメジャーを巻き、しかもアソコの近くに目盛りを合わせる。数字を読むため、あからさまに迫る男の顔は、鼻先が今にも触れてきそうな距離感だった。
「…………」
じわじわと、頬に熱が溜まり始める。
性器に顔が近づく状況は、さしものレオナも恥じらいを覚え始めて、ほんのりと染まろうとしているのだった。
「87センチですね」
読み上げられ、レオナの顔に軽く小さな苦悶が浮かぶ。
そして尻からメジャーは離れ、ようやく身体測定が終わったと思いきや、しかし男は信じられないことを言う。
「では次に性器と肛門の測定を行いますので、下着の方はお脱ぎ下さい」
レオナは絶句していた。
まさか、この最後の一枚すら、検査を理由に脱がされようとは――。
レオナはショーツのゴムに指を入れ、だんだんと下げていくのだが、その頬に微熱が宿っているのは言うまでもない。
今まではなんとか、ケロっとした涼しい顔で耐え忍んでいたものの、仮にも十人以上に囲まれている。視線という視線の数々に晒されて、こうも見られながら脱ぐというのは、いくらなんでも羞恥心を煽られる。
もっとも、せいぜい桃色までしか染まっていない分、我慢強さが表れていた。
「脱いだわ」
そして、堂々として見せていた。
仮にも羞恥心は皆無ではない、せめてアソコだけでも隠していたい心理が働いてはいる中で、レオナは毅然とした態度でもって両腕をだらりと落としている。
やるならやればいい、早くしろ。
そんな思いで構えていると、白衣の男はベッドを指す。レオナはそちらへ向かって進んでいき、指示された通りのポーズで横たわるのだった。
レオナの顔はさらに赤らむ。
指定のポーズはよりにもよって、M字開脚なのだった。しかも腰の下には枕を敷き、角度を若干調整することで、アソコと肛門が同時に見える形となっている。
ついでに言うなら乳房ですら、やはり男達の視界の中だ。
全ての恥部に視線が注がれ、幾人にも視姦され、なおも赤らまずにいられるはずはない。沸き立つ熱が顔に表れ、目元も口も歪んでいく。
(何を図るというの)
目の前に視線をやると、レオナは自分の状況をますます強く実感する。数いる男達の、一人一人の瞳が向いてきて、一体どこを集中的に観察しているかの、その動きが少しばかりだが感じ取れ、余計に恥ずかしさは増してくるのだ。
「性器や肛門のサイズです」
「……わからない」
それが一体、どうして測るべきデータなのかが本当にわからない。
「では始めますよ」
しかし、レオナの思いに関係無く、男はノギスを用意して、それによりワレメを測る。
定規にバーを装着して、その二つのバーのあいだに物を合わせて長さを見る。そんな金属製の器具が肉貝にぴたりと触れ、ワレメの長さに合わせてバーの位置が調整されると、すぐに数値は出たらしい。
それが大声で発表された。
性器の大きさを暴かれて、自分では気にしたことすらなかったデータが用紙の中に書き込まれると、何か決定的な弱点でも探られて、記録されているような気持ちになる。
計測されたのは、ワレメの長さだけでは済まされない。
縦の長さがわかったら、今度は扉の片側にノギスをやり、横の長さを計測する。両開きの片側ずつを計ったのなら、さらにその両方をまとめた横の長さも計測する。
ワレメから肛門のあいだの長さを計測する。
肛門の直径を測る。
そうやって、恥ずかしい部分を調べるために、バーの位置を調整したアームがその都度当て直されていき、レオナはしだいしだいに耳すら染めつつあるのであった。
さすがの恥ずかしさに、苦悶の思いは強まってくる。
「あとは中身ですね」
さらに、その時だった。
くぱぁ……!
と、指で肉ヒダを暴かれた。
「な……!」
顔から火が出そうであった。
男は指のV字で押し開き、その中身を覗き見た上、膣口やクリトリスですら調べ始める。小陰唇の長さは、膣口からクリトリスにかけての長さは――。
あらゆる細かいデータを探られて、レオナはまるで心の中身を刃物で抉られ、掘り返されでもするような、苦痛のような恥ずかしさを大いに味わい、耳から熱気を放ち続けているのであった。
…………
……
そして、ようやく身体測定の時間は終わる。
手放していたショーツを穿き直し、尻を衣類に包む安心感に少しは息を落ち着けるが、胸中にはいくらでも余韻がある。
体中いたるところを視線によって這い回られ、恥部の穴すら視姦された屈辱感は、心ばかりか皮膚感覚にも余韻を残し、何かムズムズするような、くすぐったいようなものを表皮に漂わせているのであった。
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